276話─サウルとレドニス、猛攻
「援軍ですか。でも、たった一人だけでどうにか出来るほど僕は弱くありませんよ!」
「なるほど、確かにこれだけの数で一斉に斬り掛かられたらひとたまりもないな。だが……お前はそうした動きをまるで見せない。何故だ?」
サウルとレドニスの救援に現れたウォンは、手にした剣を使う素振りを見せないキッシュに問う。直後、無数に増えた少年のうちの一人が動く。
「この剣はね……こうやって使うんですよ!」
「!? 剣を投げ……そうか、そういうことか! 二人とも気を付けろ、奴は剣を乱反射させて攻撃してくるぞ!」
「マジかよ、おっかなさすぎだろソレ!」
「ウェッ!?」
キッシュはウォンたちではなく、自身の分身へと手にしていた剣を投げ付ける。当然、分身にもリフレクトコマンドの効果がかかっている。
その結果、何が起こるか。すでに存在している斬撃や衝撃波と合わせ、剣までもが飛び交う超絶危険地帯が完成してしまったのだ。
「さあ、どうします? 剣は分身全員が持っていますからね、これを全部投げたら……五分も生きていられないでしょうね!」
「そうだな、お前に好き放題させれはそうなる。だが俺が来たからには……そうはさせん!」
【REGENERATE】
【Re:MARINE ADVENTURE MODEL】
飛び交う剣やらを避けつつ、ウォンはリジェネレイトを果たす。そして、デッキホルダーから一枚のカードを取り出しつつサウルたちを呼ぶ。
「二人ともこっちに! 安全地帯を作る、一度立て直すぞ!」
【オーシャンコマンド】
「うおっぷ! なんだこれ……塩辛っ! 海水だこれ!」
「ムダですよ、水の中に隠れようと僕の攻撃からは逃げ……!?」
ウォンは海水の鎧を身に纏い、さらにその鎧を展開して水の塊を作り出す。その中にサウルとレドニスを匿い、キッシュの攻撃から守った。
水の塊に剣が振れると、中に侵入する間もなくあっという間に錆びて崩れ落ちてしまう。ウォンか魔力を注ぎ、フルパワーを発揮しているのだ。
「おお、すげぇ! あれ? でもこの海水、俺たちにも効果あるんじゃ」
「そこに関しては心配無用だ。仲間には錆びの力が及ばないようにコントロールしているからな」
「おお、さっすが! ありがたいな!」
「くっ、舐めるな! なら錆びなんて関係ない斬撃と衝撃波をぶつけるだけです!」
剣による攻撃では海水の守りを突破出来ないと判断したキッシュは、サウルたちが放った飛び道具を使い攻撃を行う。が……。
【ガードコマンド】
「ムダだ、このジョリーロジャーカーテンで俺たちごと水の塊を覆えば……」
「くっ!?」
「全て防げる。もうお前の攻め手はないぞ」
ダメ押しとばかりに、ウォンは巨大な海賊旗で水の塊を包み込む。外の様子がまるで見えないという欠点はあるものの、キッシュの攻撃を完全に防ぐことに成功した。
これにて一安心だと喜ぶサウルとレドニスを尻目に、ウォンは逆に警戒心を強める。ダイナモドライバーを巡る戦いに身を投じた彼は知っているのだ。
精鋭部隊、Ω-13にはまだ切り札があることを。そして、それを眼前の相手も所持しているだろうと。
(恐らく、あの少年は使ってくるだろう。ダイナライズキーをな。そうなれば、こちらも全力でかからねばなるまい)
そう考え、注意深く気配を探知し相手の動きを探り即座に対応出来るよう身構える。数分後……ウォンが危惧した通り、キッシュが動いた。
『ダイナライズ:アニマクロス』
「この音声は……! サウル、レドニス! 敵が次の手を仕掛けてくる! 気を付けろ!」
「マジか……!」
「まだ奥の手あんのかよ、めんどくせえ!」
『ディセプティス・トーチ……オン・エア』
ダイナライズキーを使い、状況を打開するために動いたのだ。海賊旗への手応えが無くなったことに気付いたウォンは、防御を解除しいつでも動けるようにする。
水の塊を包んでいた海賊旗が無くなったことで、キッシュの姿が見えるようになった。相手の姿を見て、サウルとレドニスは目を丸くする。
「な、なんだあいつ!? 姿が変わってやがるぞ!」
「ありゃ……砲台か? 人間砲台だなあれ」
ダイナライズしたキッシュは、背中に巨大な砲台を接続していた。砲身をウォンたちに向け、分身たちと共に魔力を練っている。
「全員撃ち落としてあげますよ。この魔砲台のパワーでね!」
「へっ、やれるもんならやってみろ! 俺たちは負けない、絶対にな!」
「やっとシャバに出てこれたんだ、早々くたばってたまるかっつーの!」
【♠K:PROMOTION KING】
【PROMOTION:SKY KING STYLE】
【♣K:PROMOTION KING】
【PROMOTION:FORTRESS KING STYLE】
自分たちも負けじと、サウルとレドニスはキングのカードを取り出す。それぞれのキングスタイルへと変身し、ウォンと共に突撃する。
「幸い、分身たちは変わっていないようだ。本体と簡単に見分けがついてありがたい……な!」
【アンカーコマンド】
「ああ、ホントにな! 全部変わってたらやりにくくって仕方ないとこだったぜ! ハアア……ウェイッ!」
「オラッ、よっと! でもよ、流石にこんな数いたらしんど……うおっ!?」
襲いかかってくる分身たちを蹴散らし、数を減らしていくウォンたち。直接攻撃ならば反射されずに済むため、ひたすら近接戦闘を仕掛ける。
が、その最中。キッシュ本体が背負った砲台から、熱線が放たれた。熱線はレドニスをかすめ、遙か遠い空へと消えていった。
「避けましたか。分身たちがいい具合に視界を塞いでくれているから当たると思ってましたが……なかなか勘が鋭いですね」
「んにゃろ、やってくれたな! もういい加減飽きたぜ、終わらせてやる!」
「よし、ならお前とサウルに本体を任せる。分身は俺が食い止めておく、存分にブチかませ!」
「ありがとよ、ウォン! よし、行くぞサウル!」
これまでやられっぱなしなレドニスは、本格的な逆襲を決意する。サウルと共に、熱線を避けながらキッシュへと迫っていく。
「くっ、まずい……! 分身たちよ、僕の守りを」
「そいつは無理だな、ウォンさんが相手してっからよ! いい加減、この戦いも終わらせてねえとな。まずは……」
『♥K:RELOAD』
「キルトさんに仕込んで貰ったカードを使わせてもらう!」
「舐めるな、僕は負けられない! シモンズ隊長のためにも!」
『アルティメットコマンド』
サウルがカードを補給するなか、キッシュは奥義を発動させる。丸い結界の中に鎮座する、リミアスタチューが描かれたカードをスロットインした。
「来い、リミアスタチュー! 奥義……パニッシュメント・サウザンドアイ!」
「イイィアアア!!」
直後、無数の目を持つ柱型の魔物が現れ球状の結界を生成する。その中にサウル、レドニスと共に入り、目から大量のレーザーを放つ。
結界を乱反射するレーザーを避けながら、サウルたちはアブゾーブカードを取り出す。戦いを終わらせ、仲間の援護に向かうために。
『♠2:SLASH』
『♠6:FREEZE』
『♠9:SPIRAL』
『ULTIMATE COMMANDO:BLIZZARD SMASH』
『♣2:CLASH』
『♣6:THUNDER』
『♣8:EXPLOSION』
『ULTIMATE COMMANDO:THOR HAMMER』
「ハァァァァ……ウェイッ!」
「こんな結界、ぶっ壊してやる!」
サウルは冷気を纏った剣を掲げ、全身を氷のドリルへと変えてそのまま錐揉み回転しながら突撃する。レドニスも、かつてキルトを屠った雷の鉄鎚を構え突撃する。
リミアスタチューの攻撃を掻い潜り、結界をブチ破って脱出した。キッシュは迫り来る敵を止めるべく、必死に熱線を放つ。
「くっ、このっ! こっちに来るなぁぁぁ!!」
「へっ、効かねえよそんなもん。俺たちはこの大地を守るために戦ってんだ! 個人の仇討ち程度が目的の奴なんかに負けるわけないだろ!」
「そういうわけだ、オレもサウルもやられてやるつもりなんてねえ! これでトドメだ!」
「う……ぐはっ!」
冷気によって熱線を無効化されたキッシュに、サウルたちの奥義が炸裂する。サモンギアとデッキホルダーが砕け散り、キッシュは地上へと落ちていく。
「シモンズ、隊長……ごめんなさい、僕……お役に、立つことが……でき、なかった……」
「イギ、アガッ!」
一筋の涙を流しながら、落下する途中でキッシュは息絶える。それと同時に、本契約モンスターも運命を共にし……分身たちも消えた。
「二人とも、よくやってくれた! やはり頼りになるな、お前たちは」
「へへ、そんなやめてくださいよ! んなこと言われたら、俺たち天狗になっちゃいま……いたっ!」
「そうならないよう諫めるのも、俺の仕事だ。行くぞ、まだ戦いは終わってない。エヴァたちの援護をしなければな」
「よーし、この調子で敵をぜんめ……ぐふっ!」
「だから調子に乗るな、レドニス。気を引き締めていけ、いいな?」
「はーい……」
ウォンの飴と鞭を食らいつつ、サウルたちは次なる戦いに身を投じるため空を行く。イシュナルギを巡る戦いは、まだ終わらない。




