275話─イシュナルギを止めろ!
アリエルとモルドの戦いが終わった頃、キルトたちの乗る飛行艇が覇導船イシュナルギに近付いていた。先行しているサウルたちを援護すべく、キルトらは砲撃を行う。
「撃ち方はじめ! てー!」
「なんやえらいデカいなぁ……。ま、ええわ。地球にいた頃にシューティングゲームで鍛えた腕前披露したるわ! おりゃー!」
船内にある操作室にて、アスカとドルトが二つの主砲を操りイシュナルギへ砲撃を行う。だが、船体の外壁に刻まれた守りのルーンが結界を作り出し攻撃を防いでしまった。
「ダメだな、あの船かなり厄介なルーン魔法を搭載してるぞ。これじゃ攻撃が通ら」
「アカン、敵の砲撃が来る! このままじゃ直撃し」
相手の防御を崩せず、難儀していたその時。自動操縦状態のイシュナルギが八つの主砲を使い、反撃の一斉掃射を始めた。
スペックの差から避けきれず、キルトたちの乗る飛行艇はあっさりと大破・轟沈してしまう。サウルやレドニスと追走劇を繰り広げているハリファーたちは、勝利を確信するが……。
「ハハハハ! よぉーしいいぞ、敵艦は木っ端微塵になった! これで俺たちの」
「へっ、そうそうキルトさんたちがくたばるわけないだろ! よく見ろよ、前髪ヒョロヒョロ野郎。あの光景を!」
喜ぶハリファーたちに、サウルは墜落していく飛行艇を指差しながらそう口にする。いつ撃破されてもいいよう、キルトたちはあらかじめ脱出の準備をしていたのだ。
自力で飛べないウォンとドルト、双子はボーンバードに乗り、それ以外のメンバーはそれぞれの方法で飛びながら脱出していた。
「凄まじい破壊力だね、あの飛行艇。アレに乗り込んで停止させないと、戦いどころじゃないよ」
「下手をすれば、地上を巻き込みかねん……どうする、キルト」
「よし、こうしよう。僕とミューがあの飛行艇に乗り込んで機能停止させる。その間、みんなはサウルたちと一緒に敵の相手を!」
「任せといて、キルト。アタシたちがちょちょいのちょいでぶっ殺してくるわ」
「奴らは任せてくれ、必ず仕留める」
フィリールに問われたキルトは、一つの作戦を立てる。仲間に敵サモンマスターの相手を任せ、自分とミューがイシュナルギに乗り込む。
そして、艦内に残っているだろう敵を倒して艦橋を制圧。その後、イシュナルギを機能停止させて砲撃を封じる……というものだ。
「うん、みんな頼んだよ! それじゃあ、作戦開始だ!」
ノリノリなエヴァやウォンの言葉に頷き、キルトは作戦開始の合図をする。真っ直ぐイシュナルギに向かうキルトとミューを見て、ハリファーは眉根にシワを寄せた。
「イシュナルギを乗っ取るつもりか。面白い、なら俺が相手してやる。ニブリス、トラスト! お前たちは他のメンバーの相手をしろ。キッシュ、お前はあの二人を足止めしろ!」
「はい、分かりました! ハリファーさん、気を付けて!」
「サウル、あいつら止めるか? どうする?」
「いや、他のみんなを信じて任せる。俺たちはあのガキの相手をするぞ、レドニス!」
ハリファーはキルトの阻止のためイシュナルギにとんぼ返りし、キッシュを除いた仲間二人がエヴァたちの足止めに向かう。
一人残ったキッシュは、華麗に空を飛びながらサウルとレドニスが乗るボーンバードに体当たりを行う。相手の飛行手段を奪えば勝ち。そう考えているのだ。
「お二人とは面識もありませんし、直接的な恨みはありませんが。キルトに与するなら、僕はお前たちを倒させてもらいます。シモンズ隊長たちの仇討ちのためにね!」
『サモン・エンゲージ』
キッシュはタナトスに新調してもらったベルト型のサモンギアに『契約』のカードを挿入する。取り出したカードに描かれているのは、無数の目を持つ柱型のモンスターだ。
「リミアスタチュー、僕に力を! さあ、行くぞ……『サモンマスターリバース』参る!」
『ソードコマンド』
「来るか、ならこっちも応戦してやるぜ! へへ、一番乗りだ!」
「あっコラ、ズルいぞレドニス!」
水晶のような輝きを持つ、紫色の鎧を身に纏ったキッシュは複雑に曲がりくねった刀身を持つ剣を召喚する。そんな相手に、レドニスが突っ込んでいく。
自慢の得物である巨大なハンマーを構え、サモンアブゾーバーからカードを取り出して攻撃を行う。まずは小手調べにと、遠距離攻撃からのようだ。
『♣9:SHOCK』
『♣10:WAVE』
『IMPACT SONIC』
「さあ、衝撃波を食らいやがれ! オラアッ!」
「残念でしたね、お前たちの能力はもう解析済み。何をしてこようと、僕を倒すことは不可能です!」
『リフレクトコマンド』
レドニスの放つ衝撃波を避けつつ、キッシュは鏡が描かれたカードを取り出しベルトのバックルにスロットインする。
直後、彼が纏っている鎧に水色のグラデーションが加わった。それを確認した後、ピタリと動きを止めてわざと衝撃波を食らおうとする。
「なんだ、あいつ何やってやがる?」
「レドニス、一旦様子を見るぞ! あんなに動き回ってたのに、急に止まるなんてどう考えてもおかしい、罠だ!」
「ってもよ~、もう撃っちまった分は止められねえって!」
「ふふ、おバカさん。そのまま自分の放った衝撃波の餌食になりなさい!」
サウルに攻撃を止めるよう進言されたレドニスであったが、すでに出してしまった衝撃波を消去する方法はない。案の定、攻撃を跳ね返されてしまう。
慌てて逃げようとするレドニスだったが時すでに遅く、直撃を食らいボーンバードが消滅してしまった。
「うおおおお! や、やべえええ!」
『♣J:FLOAT』
「っはー、っぶなかったぜ。あの野郎、もう許さねえぞ!」
「一人で先走るからそうなるんだよ、ったく。こっからは俺も加わる、二人でやるぞ!」
『♠Q:STEELE』
「まずはその厄介な能力を奪うぜ!」
「! 反射効果だけを奪った……なるほど、そんな使い道もあるんですね」
「へへ、これでもう怖くねえ! 反撃だあ!」
『♠10:SWING』
『♠J:PENETRATE』
『SWORD DISTANCE』
リフレクトコマンドの効果を奪い、自身の鎧に付与したサウルはレドニスと共に思う存分遠距離攻撃の嵐を見舞う。
が、調子に乗った彼らは失念していた。サモンマスターは基本的に、デッキの容量が許す限り同じカードを複数積んでいることを。
『リフレクトコマンド』
「あ」
「あ」
「本当におバカさんですね、あの一枚で終わりなわけないじゃないですか。ついでに、ダメ押しさせてもらいますよ!」
『ファントムコマンド』
当然用意していた、二枚目のリフレクトコマンドのカードを使うキッシュ。さらに、二人の黒い人間が描かれたカードをスロットインしていく。
直後、反射効果持ちの鎧と剣を装備したキッシュの分身たちが大量に出現する。キッシュたちの間を衝撃波と斬撃が飛び交い、大変な事態になってしまう。
「ひえええ、こんなの予想してないぜ! サウル、どうすんだよ!?」
「こうなりゃしょうがねえ……逃げる! んで、誰か仲間を呼んで」
「その必要はない、こちらから来たぞ。それにしても随分と……えらいことになってるな」
サウルたちは跳ね返された自分たちの攻撃を避けるのに精一杯で、とてもではないが反撃に出る暇など全くない状況だ。
これはもうどうにもならないと、仲間に助けを求めに行こうとしたその時。ボーンバードに乗ったウォンが救援に現れた。
「向こうはエヴァたちがやってくれていてな、手が空いたから助けに来た。とはいえ、この中に飛び込むのは流石の俺でも少し大変だな」
「来ましたね、キルトの仲間が。いいでしょう、三人纏めて相手してあげます!」
「威勢のいいことだ。だが、挑む相手を間違えると大変なことになる。それを教えてやろう、先達としてな」
天空の戦い、第二戦の幕が上がった。
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