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273話─憎悪の戦士、サモンマスタークライシス

 キルトたちは一旦アジトに戻る。そして、大戦を勝利に導いたお礼にデルトア帝国軍から譲ってもらった飛行艇に乗り込み、改めて東へ向かう。


 敵性反応に近付くなか、サウルとレドニスが偵察に生きたいと言い出した。自分たちが先行し、何が待ち構えているのかを調べたいとのことらしい。


「気持ちはありがたいけど、ここはフロスト博士に行ってもらうよ。サモンカードを使わなくても飛べるからね」


「二人は戦闘に備えて力を温存してておくれよ。まあどうしても行きたいってことなら、イゴールくんたちの力を借りてはどうだい?」


「チビッコどものか? こいつら空飛べるようなモンあったっけか」


 キルトやアリエル相手に、そんなやりとりをするレドニス。まだ加入してから日の浅い彼は、仲間全員の能力を把握していなかった。


 そんなレドニスに、イゴールとメリッサは自分たちの持つ能力についてアピールする。大量のスケルトンを召喚出来ると聞き、レドニスは冷や汗を流す。


「げー、オレそういうのあんま得意じゃないんだよなあ……アンデッドの類いは苦手だぜ。オレはパス」


「なんて言わせねーぞレドニス! ほら、一緒に来い! 三人の方が何かあっても対応しやすいからな!」


「おいサウル、引っ張るんじゃない! やめ……ああああ!!」


 お化けやスケルトンは苦手なようで、双子が呼び出すボーンバードに乗るのを嫌がるレドニス。そんな彼を強制連行し、サウルはアリエルと共に偵察に出る。


「クソー、覚えてろよなサウル! 全部終わったらこの借りを百倍にしてお返ししてやるからな!」


「はいはい、言ってろ言ってろ。で、博士さんよ。どっちが先行する?」


「私が先に行くよ、敵らしきものが……む、もう見えてきたね。あれは……飛行艇?」


 キルトたちが乗る飛行艇を出発し、一時間ほど経った頃。偵察に向かったアリエルたちは、ラズマトリア公国へ向けて高速航行しているイシュナルギを見つけた。


「なんだありゃ、物凄くデカいな! たぶん、アレに敵が乗って……」


「二人とも、気を付けて! 主砲がこっちを向いた……砲撃が来るよ、避ける準備を!」


「あいよ、ってもう来る!? サウル、アブゾーバーを起動しろ! 万が一に備えておけ!」


「おう!」


『サモン・アブゾーブ:♣A:ENGAGE(エンゲージ)


『サモン・アブゾーブ:♠A:ENGAGE(エンゲージ)


 敵もアリエルたちに気が付いたようで、迎撃のため主砲を向けてくる。ボーンバードが撃墜された場合に備えて、サウルたちは変身を行う。


 一方、すでにサモンマスターギーラに変身済みのアリエルは先んじて覇導船イシュナルギへと向かう。そんな彼女の元に現れたのは……。


「止まるがよい、アリエル。あの大戦を生き延びておったとはな……実に運と実力に恵まれたものよ」


「やあ、モルド。やっぱり生きてたね、私のカンが当たってよかった。あの飛行戦艦……かなりヤバそうな代物だね。アレで公国を滅ぼすつもりかい?」


「そうとも、そのために儂はタナトスの元に着いた。八十年に渡る恨み、晴らさずに死ねるものか!」


「……そう。ところでさ、モルド。なんでお前は私を国外に追放したんだい? お前にとって、私も滅ぼすべき公国の民。なのに何故見逃すようなことを?」


「答えが知りたいか? ならば儂に勝ってみせい! さすれば教えてやろう。もっとも……儂をそう簡単に倒せると思わないことだ!」


 空中に浮遊したまま、モルドは片手を横に突き出した。そして、円形の魔法陣を作り出しそこに手をかざす。


 直後、魔法陣が茶色い杖型のサモンギアに変化する。先端にあるコブのような握り部分に、サモンカードの読み取り機構が取り付けられているようだ。


「へえ、お前も貰ったんだ。サモンギアを」


「老体だからと侮るでないぞ、アリエル。儂とレイスレイブの力を見せてくれるわ!」


『サモン・エンゲージ』


 人魂型のモンスター『レイスレイブ』のエンブレムが彫られたチョコレート色のデッキホルダーを呼び出し、右腰に下げるモルド。


 デッキホルダーから『契約(エンゲージ)』のカードを取り出し、杖にかざして変身を行う。全身をボロボロの赤いローブで覆った、死神のような姿へと変わる。


「レイスレイブ……確かタイドウリョウイチとかいう奴も同じモンスターと本契約してたね。なるほど、読者くんの言った通り……同種のモンスターと本契約しても、全く同じサモンマスターにはならないわけだ」


「お前の仲間はイシュナルギに乗った者らがしてくれよう。邪魔は入らぬ、この『サモンマスタークライシス』が相手をしようぞ!」


『ポッドコマンド』


 公国を護りたいと願う者と、滅ぼさんと憎む者。二人の戦いが幕を開けた。モルドは黒い花瓶のようなナニカが描かれたカードを取り出し、スキャンする。


 直後、モルドの両サイドにカードに描かれていたモノが召喚される。起動音を響かせながら、ソレは花瓶でいうところの花を活ける口をアリエルに向けた。


「我が『クライシスシューター』で穿たれるがよい、アリエル! ぬうん!」


「おっと、危ない危ない。なるほど、レーザーの射出装置ってわけか。しかも自動で狙いを付けてくるってなると……ちょっと厄介だね」


『アリエル、どうするの?』


「まずは見に回るよ、フロウラピル。モルドの手札を全部暴いてから反撃に移る!」


 二つのレーザーポッドから放たれる攻撃を避けつつ、アリエルはサウルたちの方を見る。覇導船と接触し、すでに戦いが始まっているようだ。


 レドニスが離脱し、状況報告のためキルトたちのところに戻ろうとしているのが見えた。向こうは任せて大丈夫だと判断し、アリエルは飛翔する。


「ほーら、こっちまでおいで! そのヨボヨボな身体で着いてこられるかな!?」


「挑発か? ムダなことよ、儂を怒らせようとしても無意味だというのにな」


『ポッドコマンド』


 これから到着するであろうキルトたちを巻き込まないよう、イシュナルギの航路から大きく距離を取り離脱するアリエル。


 そんな彼女の挑発を鼻で笑いながら、モルドはさらに二機のレーザーポッドを召喚する。四機が相手ともなると、流石に回避も難しくなる。


『ゲーッ! あいつ射出装置増やしてきたよ! どうすんのアリエル!?』


「どうするもこうするもないさ! 増えたら減らす、これ常識ってね。私の見立てだと、あの射出機の破壊は出来るはず。だから……」


『スラッシュコマンド』


「一回試してみるとしようか!」


 フロウラピルに問われたアリエルは、ポッドの破壊を試みることに。翼をブレードに変え、レーザーを避けつつ旋回する。


 四機のポッドの側面に回り込み、敵機が方向転換するよりも前に猛スピードで接近していく。そして、翼を用いて一機を両断した。


「やっぱりね、斬れないことはないよこれ! ……でも結構痛いね、翼がジンジンするよ」


『無茶はしちゃダメだよ、翼をやられたらもう落っこちるしかないんだからね!』


「分かってるって。でも、これならいろいろやりようが」


「フン、一つ破壊した程度で図に乗るとはまだまだ青いのう。なれば……これはどうじゃ?」


『アームズコマンド』


 レーザーポッドを破壊し、喜ぶアリエルとフロウラピル。そんな彼女らに、追い付いたモルドは新たなカードを使い攻撃を行う。


 両肩にキカイ仕掛けの黒い肩当てを装着し、そこから長いアームを展開する。右のアームの先端には四本の鋭い爪、左のアームの先端にはドリルが付いている。


「さあ、レーザーと儂の攻撃……両方を避けきれるのならやってみるがよい! ぬうん!」


「っと、モルド本人も攻撃してくるってわけだ。でもね、こうやって距離を取れば」


「バカめ、このアームは伸縮自在! 少し距離を離したくらいで逃げ切れると思うな! ドリルクラッシャー!」


「げっ、やば……あぐっ!」


「獲った! そのままレーザーに貫かれるがよい!」


 アリエルは後退し、モルドの攻撃範囲から逃れようとする。が、その直後アームが伸張して再びアリエルを射程に捉えた。


 そのままドリルによる一撃で大ダメージを与え、遙か下の地表へと叩き落とす。リカバリーが出来ない間にトドメを、とレーザーが放たれる。


「そうはいかないな! 私はここで負けるわけにはいかないんだよ、モルド!」


「ほう、避けおったか。じゃが、無傷とはいかぬようだの。え?」


「そうだね、でも……ふうっ。これくらいどうってことないさ。読者くんたちはこれ以上の傷を負いながら戦ってきたんだ。私だって戦い抜けるさ!」


 右肩を抉られ、出血しながらもレーザーを避け舞い戻るアリエル。宿敵を倒し、祖国に真の安寧をもたらすため。


 モルドへの反撃を、始める。

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― 新着の感想 ―
[一言] 討つことで憎しみを解放させてやってくれ・・・アリエル!
[一言] モルドもどんな事してでも潰したい妄執に取り憑かれてるのか(ʘᗩʘ’) 1度はぶっ壊れて変わり出したんだし(٥↼_↼)これ以上にやってお前の何が満たされるだよ(´-﹏-`;)
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