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269話─決戦! サモンマスター鏖魔!

 キルト・ミューとアルバートの戦いが始まった頃。フェルガード帝国最大の軍事基地にて、覇導船イシュナルギの発艦準備が進んでいた。


 メタリックシルバーに輝く、通常の飛行艇の三倍の大きさを誇る空飛ぶ要塞戦艦。八門の主砲を備えたソレが、西の国々を滅ぼすべく飛び立つ。


「システムオールグリーン、覇導船イシュナルギ発艦し……うわっ!?」


「な、なんだ!? なんでいきなり地震……うわわわわ! みんな逃げろ、地面に亀裂が!」


 が、その直後。基地を激しい揺れが襲い、地面に無数の亀裂が広がる。発艦準備をしていたクルーたちが逃げ惑うなか……。


『その飛行艇、私が貰い受けよう。キルトたちを滅する切り札としてな』


「なんだ、どこから声……ああっ、イシュナルギが!」


『ついでだ、お前たちの命も貰おう。オニキスの餌としてな!』


「ひえっ、亀裂から腕が!? だ、誰かたす……うわああああ!!」


 亀裂の中に広がる暗黒の空間から、タナトスの声が響く。そして、無数の闇の腕が現れ基地を丸ごと亀裂の中へと呑み込んでいく。


 そうして、基地があった場所は痕跡一つ残らず全てが消え去った。そのことをキルトたちが知るのは、戦いが終わって遙か先のことだ。



◇─────────────────────◇



『エンチャントコマンド・ロック』


「なかやかやるな、私に三枚もカードを使わせ……ここまで耐えるとは」


「伊達にここまで戦ってないんだ、僕たちを見くびらない方がいいよ! はあっ!」


 一方、キルトたちとアルバートの戦いはさらに熾烈を極めていた。岩石を纏った大剣を振るい、アルバートは敵を屠らんと攻める。


 岩石の刃による一撃は強力無比、まともに食らえばただでは済まない。慎重に攻撃を回避しながら、キルトとミューは反撃を重ねていく。


「その大剣、確かに一撃の破壊力は驚異的です。しかし、重量が増した分振りが遅くなり体勢も崩しやすくなる……。そこが致命的な弱点となるのです! エクスプルトスマッシュ!」


「ぐっ! いい一撃だ……では、そろそろ『裏』のスロットを使うとしよう」


「あいつ、何を……?」


 ミューの一撃を食らって吹き飛んだアルバートは、立ち上がった後大剣を裏返す。そして、これまで使っていなかったスロットにエンチャント・ファイアのサモンカードを挿入する。


『エンチャントコマンド・アイス』


「!? さっきと効果が違う! アルバート、お前何をしたんだ!?」


「この大剣には、表と裏の二つのスロットがある。どちらにカードを装填するかで、エンチャントの効果が正反対に変わるのさ」


『なるほど、炎の逆は氷……というわけだ』


「その通り。さあ、これは避けられるかな? グランダルブリザード!」


 アルバートは氷の刃に覆われた大剣を掲げ、凄まじい吹雪を発生させる。キルトたちの視界が吹き荒れる雪に閉ざされ、何も見えなくなってしまう。


『むう、これでは目視で奴を追えんな。キルト、我の鼻を』


「その必要はございません。わたくしに内蔵されたマジンフォンの機能『スネークピット式センサー』で敵の居場所が分かりますので。原始的な手は不要です」


『ヌガー! 貴様、キルトにいいところを見せようという我の邪魔を』


「余裕だな、ゴチャゴチャと喋っていられるようならさらに苛烈に行くぞ! アイスリドルブレイド!」


 ルビィとミューが争い始めた瞬間、吹雪の中からアルバートが突っ込んでくる。ミューは即座にキルトと相手の間に割って入り、攻撃を受け止めた。


「わたくしがいる限り、マスターへは傷一つ付けさせませんよ」


「そうか、その言葉をどこまで貫けるか試してみようか!」


「ええ、貫いてみせましょう。マスターをお守りすることが、わたくしのアイデンティティーですから!」


『ニトロコマンド』


 右腕を斧から離し、素早くマジンフォンを操作して第二のサモンカードを使うミュー。全身にエネルギーが満ち溢れ、パワーが上昇していく。


 アルバートを押し返し、吹雪にも負けず激しい連続攻撃を浴びせかける。流石のアルバートも防戦に回らざるを得ず、守りを固めていた。


「いいぞー! やっちゃえミュー!」


『ぐぬぬ……口惜しいが相当な実力があるようだな。分かってはいたが、強力なライバルの登場といったところか……』


 キルトの歓心を買うミューに嫉妬しつつ、その実力の高さに唸るルビィ。このまま押し込み、打ち勝てるかと思われた……が。


「なるほど。確かにパワー、スピード、正確性……何を取っても申し分ない。だが、お前には致命的に足りないものがある」


「何でございましょう、わたくしにそのようなものなど」


「キカイの如き正確さゆえに……お前の攻撃はすぐに見切れるということだ!」


「! くうっ!」


 ミューの攻撃は正確無比、常に最も効率のいい方法で弱点を狙う。だが、それ故に攻撃パターンが乏しくなってしまうのだ。


 その点をアルバートに見抜かれ、僅か数分の防戦でそのパターンを完璧に見極めた。そうしてミューの攻撃をカウンターで潰し、反撃に出る。


『エンチャントコマンド・サンダー』


「キカイの身体であれば電撃は怖かろうよ! プラズマーレイン!」


「そうはさせ……うあっ!」


「マスタ……うぐうっ!」


 アルバートは裏のスロットに風のエンチャントコマンドのカードを挿入し、対となる雷の力を権限させ無数の落雷を発生させる。


 電撃対策をミューに施してはいるが、相手のパワーであれば容易く貫通してしまうだろう。それを察して助けに行こうとするキルトだが、落雷に阻まれる。


 ミューは雷が直撃し、全身の回路が一時的にショートしてしまった。命に別条は無いが、ヒーリングメイルを以てしても容易には回復出来ない。


「まずは一人、戦闘不能になったな。さあ、キルト。次はお前を倒させてもらおう」


『ミューを殺さないのか? ま、我としても殺させるつもりはないがな』


「最後に仲良くあの世に送ってやろう。私からのせめてもの情けだ」


「……そう。でも、その情けはいらないよ。僕たちがお前を倒すからね! ……この力で!」


REVOLUTION(レボリューション)


【Re:ALL(オール) ENGAGE(エンゲージ) MODEL(モデル)


 ミューが戦闘不能になった以上、キルト一人で戦わねばならない。相手に勝つためには、さらなる力が必要……少年はそう判断した。


 そして、デッキから『REVOLUTION(レボリューション)─絆』のカードを取り出しスロットインする。今、絆を束ねし黄金の騎士が顕現する。


「ほう……感じるぞ。私以上の力があるのを。素晴らしい、こうでなくては面白くない!」


「面白いかどうかなんて知ったことじゃない! アルバート、お前をこの力で倒す!」


【ポールコマンド】


【ブリザードコマンド】


 キルトはサモンマスターエンペラー、そしてアルテミスのサモンカードを使う。ハルバードを召喚し、相手の吹雪を相殺して打ち消す。


 直後、ハルバードを構えキルトは突進する。自由自在に得物を振るい、アルバートを打ち倒さんと猛攻を仕掛ける。


「ハッ、ていっ、やあっ!」


「くっ! 先ほどよりも膂力が強くなっている……これがお前の真の力か!」


「そうさ、でもこれだけじゃない。今の僕にはこんなことも出来るんだ!」


【ダーツコマンド】


「食らえ! ビューティフルレイン!」


「羽根の雨か……なら!」


『エンチャントコマンド・アクア』


 連撃でアルバートを後退させたキルトは、サモンマスタールージュのカードを使いクジャクの羽根を飛ばして攻撃する。


 アルバートは裏のスロットにエンチャント・ロックのカードを挿入し、雷の力を消して水を刃に纏わせ防御を固める。


「防いでやろう、アクアカーテン!」


『フン、くだらぬ真似を。本命はそこではないのだからな! キルト、行け!』


「うん! これを食らえ!」


【シュートコマンド】


 水の塊を空中に作り出し、羽根の雨を中に納めて勢いを止めるアルバート。その一瞬に出来た、攻撃を防げたという安堵をキルトは見逃さない。


 サモンマスターミスティのリジェネレイト体が持つ大砲を召喚し、素早く砲撃を行う。水の塊を貫き、砲弾がアルバートへと迫る。


「しまっ……ぐはっ!」


「どうだ、これが僕たちの絆の力だ!」


 大剣を構えてガードしようとするアルバートだが、間に合わず砲弾が直撃する。甲板を転がり、呻き声を漏らす。


「ふ、ぐ……。なるほど、これは侮れぬな。今のは油断した私への戒めとして……かふっ、痛みを刻ませてもらう」


「流石マスター……なんという強さ。ああ、実に惚れ惚れします……」


 ミューが見守るなか、アルバートが立ち上がりキルトへ向かって走る。二人の戦いは、ついにクライマックスを迎えようとしていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] REVOLUTION─絆を使ってもまだ戦えるのか・・・てか冒頭のアレ、キルトのクローンか?
[一言] ミューも基本スペックは高いけどまだ生まれたばかりだから経験が少なかったか(ʘᗩʘ’) 戦闘不能状態だけど特等席でキルトの活躍鑑賞とはいいご身分だな(٥↼_↼)
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