268話─降臨! 鏖殺の魔剣士!
三幹部の敗北から少しして、フェルガード第二艦隊を退けたゼギンデーザ帝国の飛行艇師団が援軍として現れた。
旗艦にて指揮を執るのは、ルヴォイ一世本人。アルセナを副官に据え、祖国と同盟国を守るため自ら出陣したのだ。
「陛下、前方に無数の竜と艦隊を確認! 如何致しますか?」
「すでにキルトから連絡が来ている。エルダードラゴンたちは攻撃するな、フェルガードの飛行艇のみを叩き撃滅せよ!」
「ハッ、かしこまりました! 砲撃用意、ドラゴンたちには当てるなよ!」
「了解!」
乱戦の最中、キルトはルヴォイ一世に魔法石でルビィの運命変異体たちを呼び寄せたことを伝えていた。そのおかげで、ゼギンデーザ軍は同士討ちをせずに済む。
デルトア・ゼギンデーザ連合にエルダードラゴンの群れ、そしてサモンマスターたち。全員がそれぞれ別の飛行艇を落としている頃……。
「アルバート・フェイン! その命貰い受ける! 貴様に倒された部下たちの仇、ここで討たせてもらう!」
「……来たか、オズイン。地上最強と呼ばれたその力を見せてもらおうか」
アルバートが指揮する飛行艇に、オズインたちラズマトリア兵が乗り込んだ。甲板で戦いが巻き起こる中で、オズインはアルバートに一騎討ちを挑む。
死んでいったバズやガルドン、部下たちの仇を討つために。彼の胸には、届けられたバズの形見が納められていた。
「行くぞアルバート、我が剣技を受けよ!」
オズインは剣を抜き、アルバートに挑む。対するアルバートも大剣を構え、相手を迎え撃った。激しい斬り合いが行われるが……。
「……なるほど。お前の腕は見切った。私がサモンマスターの力を使うまでもないな……フン!」
「ぐあっ! くっ、速い……! この私がなんとか避けるだけで精一杯とは」
「部下たちの元へ送ってやろう、苦しまず……むっ!」
自身の好敵手たる実力はないと判断し、手早くオズインを始末しようとするアルバート。その時、ビークルモードになったミューに乗ったキルトが現れる。
「そこまでだ、アルバート! 僕たちが来たからにはもう誰も殺させないぞ!」
『敵性生命体を排除します。覚悟しなさい』
「来たか。やはり私が真の力を見せるのはお前たちしかいないと思っていた。降りてくるがいい、相手をしてやろう……」
『サモン・エンゲージ』
「……この私、『サモンマスター鏖魔』が!」
キルトたちを見上げながら、アルバートは腰に下げた金色のデッキホルダーから『契約』のカードを抜き取る。
そして、大剣の刃根元にあるスロットに挿入する。今、ついにアルバートがサモンマスターとしての姿を見せる時が来たのだ。
「おおおおお……ハアッ!」
「いけない! ミュー、全速降下! 障壁を張ってみんなを守って!」
「かしこまりました、マスター!」
アルバートは力を溜めた後、リング状の黄金の波動を身体から放つ。それを見たキルトは嫌な予感を覚え、ミューと共に飛行艇に降り立つ。
「な、なんだこ……ぎゃああああ!!」
「か、身体がチリに……将軍、たすけ……」
「な、なんだ!? 一体何が起きている!? これは……くっ!」
ミューが障壁を張ろうとした直後、アルバートの一番近くにいたオズインと数人の兵士が波動を食らってしまう。
兵士たちは身体がチリとなって消滅し、オズインも武器と鎧をちりに変えられ大ダメージを負ってしまった。
マトリやニルケ、他の兵士たちは障壁が間に合いどうにか無事だった。が、みなあまりの出来事に驚愕してしまっている。
「お前……今、何をした?」
「本契約したあの日から……私の身体の中には、破壊のエネルギーが満ちている。変身をする度にその力が放出される……ゆえに私は、破壊の力に耐えられると踏んだ相手と戦う時にしか変身しないのさ」
『こやつ……感じる、恐ろしいまでの力を秘めているのを。気を付けろキルト! 気を抜くとやられるぞ!』
「そうだ、全力を出せ。そうでなければ……この力を解放した意味がない!」
『エンチャントコマンド・ファイア』
アルバートはデッキホルダーから炎が描かれたカードを取り出し、表側のスロットに挿入する。すると、大剣が炎を纏う。
「やる気だね……ならこっちもやるよ、お姉ちゃん! ミュー!」
『もちろんだ! ラズマトリア兵たちは引け、巻き込まれればタダでは済まんぞ!』
『わたくしとしてどうでもいいことですが、マスターが悲しむ顔は見たくありませんので撤退を進言致します』
「そう、だな……。済まない、全員引くぞ! キルト殿、バズたちの仇……頼んだ!」
サモンマスターの力を解放したアルバートに、自分では勝てない。そう判断し、オズインは部下たちと共に横付けしていた自分たちの飛行艇に戻っていく。
残ったキルトたちと戦うべく、アルバートは剣を彼らに向ける。両肩にティラノサウルスの頭部を模した肩当てが付いた、黄金の鎧を纏い……笑う。
「さあ、来い! お前たちの力、私に見せてみろ!」
「言われなくてもやってやるさ! お姉ちゃん、ミュー! あいつを倒そう!」
『ああ、我らの力で返り討ちにしてくれようぞ!』
【REGENERATE】
【Re:NIFLHEIMR MODEL】
【カリバーコマンド】
キルトはミューから降りると同時にリジェネレイトし、コキュートスカリバーを召喚しアルバートへ斬りかかる。
「マスターの援護をします。サモンマスターEX-マキナ……起動」
【ヒューマンモード】
『アックスコマンド』
ミューもバイク形態から人型に変形し、キルトを援護するため戦闘準備を行う。左腕に装着してあるマジンフォンを操作し、右腕に取り付けられた赤銅色のデッキホルダーからカードの効果を起動させる。
そうして、機械仕掛けの巨大な片刃の斧を召喚し跳躍する。アルバートの背後に回り込み、キルトの攻撃に合わせて挟み撃ちにするつもりだ。
「食らえ! コキューススラッシャー!」
「マスターを援護します。エクスプルトスマッシュ!」
二人同時の、前後から放つ攻撃。アルバートは左腕に炎の盾を装備し、大剣と盾を使いとキルトたちの一撃を軽々と受け止めてみせた。
「いい連携だ。だが、私に傷を付けるには……まだ足りないな」
「分かってるさ、これはただの小手調べだからね! ていっ!」
「むっ……!」
コキュートスカリバーを振り上げ、相手の持つ大剣を跳ね上げるキルト。すかさず足払いを放ち、アルバートの体勢を崩した。
そこに畳み掛けるように、ミューが再び斧を振り下ろす。が、アルバートはあえて転倒し、そのまま転がって攻撃を避ける。
「素晴らしい、そうでなくては面白くない。次は私の番だ、これをかわせるか? フレアディスパーダ!」
「ミュー、気を付けて! 炎が飛んでくる!」
「この程度であれば問題ありません。わたくしの装甲の破損率は小数点以下で抑えられます」
立ち上がったアルバートは、大剣を振るって刀身に纏った炎を飛ばして攻撃する。キルトはヘイルシールドで防ぐが、ミューはそのまま受けていた。
装甲そのものが頑強なのはもちろん、マジンフォンに内蔵されているアプリケーション『ヒーリングメイル』により、破損したそばから再生していくのだ。
ゆえに、一撃で死ぬような攻撃でもない限りいちいち防ぐ必要はない。ミューはそのまま前進し、斧を振りかぶってアルバートに叩き付ける。
「フッ!」
「ほう、いい一撃だ。思わずよろめいてしまった……久しぶりにな」
「では、そのままなます斬りにして差し上げましょう!」
「面白い、だが……そう簡単に行くと思わない方がいい。フンッ!」
「くっ!」
ミューの攻撃を盾で受け止めたアルバートは、そのまま相手を押し返し吹き飛ばす。が、その直後。ミューの真後ろから追随していたキルトが不意打ちを放つ。
「食らえ! コキュートススラッシャー!」
「ぐうっ! ……ふ、やるな。仲間に注意を向けさせ、こちらの気が緩んだところを攻撃するとは。なら……少し本気を出さねばな」
『エンチャントコマンド・ウィンド』
キルトの攻撃をまともに食らったアルバートは、バックステップで距離を取りつつ新たなカードをスロットインする。
渦巻く風が描かれたカードを表側のスロットに挿入し、今度は風を刃に纏わせた。あくまで武器は大剣一本なようだ。
「さあ、戦いはこれからだ。来い、サモンマスターたちよ!」
「言われるまでもない、お前をここで倒す!」
今、頂上決戦の幕が上がった。




