266話─勃発! 第二次メソ=トルキア大戦!
フェルシュを打ち破ったキルトとルビィは、双頭巨人を連れシェンメックに急ぎ帰還する。街の軍区画からテレポートし、帝都から東に数十キロ行った場所にある飛行艇の発着場へ向かう。
「みんなお待たせ! 敵は今どこ!?」
「お待ちしておりました、マスター。敵艦隊はすでにシャポル霊峰を超え、デルトア帝国領空内に侵攻しています。敵艦の数は、現時点で三十四ほど……」
「なんだと!? まずいぞ、こちらの倍以上ではないか! ゼギンデーザと合わせてようやく互角か……」
第一次メソ=トルキア大戦ののち、両帝国は外部の敵……要は理術研究院の襲来に備え戦闘用飛行艇の開発に乗り出した。
現時点ではデルトアが十三艦、ゼギンデーザが二十艦ほど建造を終え実戦配備を完了させている。……のだが、敵に対抗するにはまだ足りない。
「間違いなく、相手には後詰めの艦隊がいる……数じゃこっちが不利だよ」
『3・6・1・1:モニターアイ』
「すでにミス・エヴァンジェリンたちは艦隊と共に出撃しています。ですが……戦況は芳しくないようです。やはり、数で上回られては……」
ミューは左腕に取り付けてあるマジンフォンを操作する。そして、戦場となっている空域の様子を映像として自身の目から空中に投射した。
映し出された映像の中では、砲撃戦が繰り広げられている。が、デルトア艦隊が劣勢に立たされているようだ。
「キルトよ、我らも加勢しようぞ! そうすれば」
「いや、僕たちだけじゃ焼け石に水だよ。劣勢をひっくり返すのは無理だ。……こういう時は、敵のやり方を真似るのが一番だ」
「? なに、なんの話?」
エシェラが首を傾げるなか、キルトは静かに語り出す。劣勢を覆せるかもしれない、驚くべき奇策の内容を。
「ルビィお姉ちゃん、前にネガがオニキスの運命変異体を大量に連れて襲ってきたのは覚えてる?」
「ああ、忘れ……待て、まさか!?」
「うん。僕の身体には、ウォーカーの一族であるフィル様の血が流れてる。だから使えるはずなんだ。僕にもウォーカーの力が」
キルトの奇策。それは、自身の中に眠るウォーカーの力を呼び覚まし、並行世界からルビィの運命変異体の群れを呼び込んで味方にすることだった。
「無茶だ! その力が目覚めるか分からぬし、第一目覚めたとて上手く使えるか」
「それでもやらなきゃ! 見てよ、このままじゃゼギンデーザからの救援が来る前に全滅しちゃう! そんなのは嫌だ、だから僕はやる! どんなに可能性が低くても!」
味方の飛行艇が一隻撃墜されるのを見ながら、キルトはそう叫ぶ。両手を前に突き出し、目を閉じて集中する。
(落ち着け、ご先祖様に言われたことを思い出せ。自分の中にある力の脈動を感じるんだ!)
以前、ダイナモドライバー騒動解決後に行われたパーティーでキルトはフィルに尋ねた。ウォーカーの力を扱うにはどうすればいいのかを。
『そうですね……いつか、君も並行世界を渡る力を必要とするかもしれません。その時に備えて、力の使い方をレクチャーしておきますよ』
『はい! ありがとうございます、ご先祖様!』
『とは言っても、難しいことはありません。どれほど薄くとも、ウォーカーの血を引く者はみな力を宿しています。眠っている力を呼び覚ますには……』
かつてのやり取りを思い出しながら、キルトは自身の内に眠る力を見つけ出そうと極限まで集中する。十数分後、少年は『ナニカ』を感じ取った。
(! これだ、今感じた力の鼓動……これが僕の中に眠ってるウォーカーの力なんだ! お願い、どうか目覚めて! そして、並行世界を渡る力で……僕たちに味方してくれる、ルビィお姉ちゃんの善なる運命変異体を呼び寄せて!)
キルトは己の中に眠る力に呼びかけつつ、魔力を放出する。すると、少年の数メートル前に丸い金色の門が現れた。
驚くルビィたちの前で、門に取り付けられたハンドルがゆっくりと回り出す。そして……。
◇─────────────────────◇
「オラッ、くたばりなさい! キルトに代わってアンタをぶっ殺してやるわ、とっとと死ねメスガキ!」
「パワーアップした俺たちの力を見せてやる! 心臓を貫いてやるから覚悟しろ!」
「お~コワコワ、雑魚がイキっちゃって面白いね~。アハハハハ!」
その頃、デルトア帝国東端の空では激しい戦いが繰り広げられていた。リジェネレイトしたエヴァは、ドルトと共にセネラが指揮する飛行艇に乗り込んでいた。
パワーアップしたサモンギアを使い、サモンマスター童魔を討ち取るため戦いに臨む。今のところ、互角の勝負となっている。
『バブルコマンド』
「それじゃあ~、この『トラップバブル』で動きを封じちゃうもんね~。動けなくなったところをぶっ殺してあげるよ~!」
「気を付けろ、エヴァ! 床から染み出してくる泡を踏まないようにしろ!」
「ハッ、わぁってるわよんなこと。……にしても、ずいわね。アタシたちはこうやって敵艦に攻め込んでるからいいけど、味方艦の被害がヤバいわ」
戦いの最中、エヴァは遠くで砲撃戦を行っている味方艦隊を見やる。すでに二艦が撃墜され、四艦が大破寸前に追い込まれていた。
このまま撃破されれば、敵艦隊がシェンメックへ向かってしまう。それだけは避けねばと考えていた、その時だった。
「ん? んんんん!? ちょ、なにあのドラゴンの群れ! あんたらなんつー隠し球出してくるのさ!」
「はあ? ドラゴンの群れ……って、なんか来てる!?」
「……先頭にいるのはルビィとミューか? あり得ない、どこからこれだけのエルダードラゴンを?」
西の方から、数十頭のエルダードラゴンたちが戦場目掛けて雪崩れ込んできた。赤、青、黄、緑、白……色とりどりの鱗を持つルビィの運命変異体の群れが加勢しに来たのだ。
「よかった、全滅する前に合流出来た! ミュー、先に行って。敵の飛行艇を落としちゃえ! たくさん撃破したらご褒美あげるよ!」
「かしこまりました、マスター。それでは、サモンマスターEX-マキナ、敵を殲滅します」
「少年、我々も力を貸すぞ。エルダードラゴンのパワーを存分に見せ付けてやろうではないか!」
「うむ、流石並行世界の我だ。頼もしいことこの上ないな!」
「みんなは敵の増援をお願い! 味方に攻撃する前に潰しちゃって!」
キルトはミューを先行させ、ルビィの運命変異体たちを散開させて敵艦隊へ突撃させる。予想外の助っ人に、窮地に陥っていた味方艦隊は大喜びだ。
「おお、流石キルト殿! こんな援軍を呼んでくださるとは……毎度実に痺れますなぁ!」
「反撃に転じるぞ、竜の群れを援護しろ! ありったけの砲弾を敵にくれてやれ!」
頼もしい援軍の到着に、デルトア艦隊の士気が急上昇する。ミューの援護もあり、少しずつ勢いを盛り返していく。
そんな味方の戦意の高揚を嗅ぎ取り、エヴァとドルトは笑う。今こそ決着の時だと、鞭剣を構えるセネラへ攻撃を仕掛ける。
「それじゃ、そろそろアンタに消えてもらおうかしらね! 食らいなさい、スパークリングシャウト!」
「うるさいなぁ、雑魚は雑魚らしく死……いたっ!」
「俺を忘れるな、これで片足は封じたぞ!」
「よし、ナイスよドルト! 行くわよ、ボルテクスミューズ!」
「あぐああっ!」
エヴァが放った黄色のリングから電撃が流れ、ドルトに脚を射抜かれ動けないセネラに大ダメージを叩き込んだ。怒濤の攻めに、セネラは膝をつく。
「この、クソどもぉ……! 死ね、二人仲良くあの世に送ってやる!」
『アルティメットコマンド』
「ハッ、そりゃ無理ってものね。死ぬのはアンタよ、トドメを刺してやるわ!」
「ああ、まだ他の敵もいるんだ。まずはお前から倒させてもらう!」
【アルティメットコマンド】
『アルティメットコマンド』
セネラがオーシャリゾールを召喚した直後、エヴァたちも奥義を放つためサモンカードを使用する。オーラとなったパーリナイトブルがセネラに直撃し、鎖となって動きを封じた。
「ぐうっ! 舐めるんじゃ~ないよ、この程度であたしは止まらない! やれ、オーシャリゾール! 奥義ィィ……渇水の」
「遅い! 奥義、絶唱のジーニアス!」
「これで終わりだ! レールエンド・アロー!」
「カキュイイイ!!」
強引に奥義を放とうとするセネラだが、パワーアップしたエヴァたちの方が速かった。衝撃波を纏うエヴァの蹴りと、レールタイバーを通し放たれた光の矢の直撃により……セネラは断末魔の叫びと共に爆散する。
「う、があああああ!! 嘘だ、あたしは……ガルドフォースの、幹部……。アルバート、たいちょおおお……!!!」
「……終わったわ。さ、飛行艇を落とすわよドルト。そしたら次のに行くわ」
「ああ、急がないとな。エルダードラゴンたちの隙間を縫って、新しい敵艦が来てる……味方への被害が出る前に潰さないと」
サモンマスター童魔を撃破したエヴァたちは、飛行艇を撃沈するため艦内へと入り込む。第二次メソ=トルキア大戦が始まり、世界は再び……血に塗れていく。




