261話─公女を守り抜け!
ガルドンたちの献身により、敵に追い付かれる前に秘密の通路への逃れたキルトたち。通路……と言うよりトンネルと言うべき広さの道を、急ぎ進んでいく。
「う、ひっく。チクショウ、アニキィ……」
「ニルケ、辛いだろうが我らは前に進まねばならん。彼らの想いをムダにしないためにも……。マトリ、ニルケを頼む」
「はい、さあ行きましょうニルケさん」
「うん……」
マトリと手を繋ぎ、泣きながらも前へと進んでいくニルケ。兄の想いをムダにしないためにも、悲しみを乗り越えようとしていた。
……だが、現実は非常だった。一行の遙か後ろ、玉座の間の方から何かを破壊するような音がかすかに聞こえてきたのだ。
「今の音……! どうやら、ガルドンたちは……」
「……アニキ」
「もう敵が来るみたいだ……。なら、僕が残って足止めを」
「いえ、その必要はありませんよキルトさん。残るのは……私です」
不穏な気配が近付いてくるなか、キルトは時間を稼ぐため敵の足止め役を買って出ようとする。が、それをバズが制止した。
「貴方はこの国を……いや、この大地を救う希望だ。その灯火をここで消させるわけにはいきません。公女様を……将軍たちを頼みます!」
「バズ、待て!」
オズインが止めようとした直後、バズは魔法で突風を起こしてキルトたちを出口の方へ吹き飛ばす。そして、天井にファイアボールを放ち崩落させた。
瓦礫が落下し、バズとキルトたちを隔てるように通路を埋めていく。バズは柔らかな笑みを浮かべ、オズインに感謝の言葉を贈る。
「オズイン将軍。これまでずっと、あなたの右腕として戦えた事を誇りに思います。お側に仕えさせていただき、ありがとうございました」
「バズ、ダメだ! お前まで失ったら、私は……」
「ニルケ、マトリ! 私の分まで、将軍を支えるんだぞ! ……この国の未来、お前たちの手で繋いでくれ!」
そうバズが叫んだ後、崩れた瓦礫によって通路は完全に埋まった。血が出るほど拳を強く握り、震わせながらオズインは絞り出すように声を出す。
「……行くぞ。バズのためにも……急ぎ、ここを脱出するのだ」
キルトたちは何も言えず、黙って頷くことしか出来なかった。ペースを速め、地下通路の出口を目指して進んでいく。
それから十数分後、一人残ったバズの元にアルバートたちが姿を見せる。ガルドンたちの敗北と死を悟ったバズは、表情を険しくする。
「来ましたか、アルバート・フェイン。ガルドンたちの仇、討たせてもらいますよ」
「彼は敵としておくには惜しい勇猛な男だった。もちろん、彼の部下たちも。お前も……忠義の将だな。たった一人で私たちの足止めをしようとは」
「私一人の命で、将軍や公女様が逃げ延びることが出来るならしめたもの。さあ、来なさい! ラズマトリア四天王筆頭、バズが相手だ!」
アルバートやガルドフォースの隊員たち相手に一歩も退かず、バズは巨大なハンマーを構え走り出す。命を賭けた、男の戦いが始まった。
◇─────────────────────◇
時を同じくして、キルトたちは通路を抜け出口に到着していた。出口からは、有事の際に用いる脱出用の飛行艇がある発着場に繋がっている。
「着きましたね……早速外に」
「お待ちください、公女様。もしかしたら、敵が待ち伏せしているかもしれません。まず我々が様子を見てきます」
「モルドはこの場所を知らないはずだけど、もう何が起きてもおかしくないからね……。それがいいと思う」
「では、偵察を頼む。残りの者は、公女様の守りを固めよ」
すでにフェルガード軍が先回りしていないとも限らないため、まずは兵士二人が様子を見に行くことに。二人が通路から出た、その直後。
『アルティメットコマンド』
『アルティメットコマンド』
「え? うわあっ!」
「なん……ガボゴボッ!」
どこからともなくサモンカードの発動音声が響き、空からツインドリーガーが飛来する。兵士の片方を捕まえ、肩を掴みうつ伏せにして引きずっていく。
もう片方の兵士は、突然現れた水の玉に囚われ上空に連れ去られてしまう。思わず飛び出したキルトが見たのは、遠くに立つ二人のサモンマスターの姿。
「クァァァァァ!!」
「……いいぞ、ツインドリーガー。さあ、獲物を連れてこい」
「んっふふ~、まさかセネラちゃんたちが先回りしてるなんて、あのざぁこ共は思ってもないでしょうね~ぷぷっ! さあオーシャリゾール、やっちゃうよ~!」
「フルルル……」
「あいつらは……! そうはさせるか!」
待ち伏せしていたドルギーズとセネラを阻止せんと、キルトは走る。だが、もう間に合わなかった。ドルギーズは地面に尖った槍のような物体を生成し、上空に飛び上がる。
「……まずは一人。奥義……双頭の早贄刺し!」
「うぐっ……がはっ!」
「はーい、こっちも処しちゃいまーす! 奥義、渇水の魔獄!」
「ガボッ、ゴバッ……」
ドルギーズは兵士の身体を掴み、本契約モンスターと共に急降下して槍で貫き息の根を止めた。セネラの方も、相棒である首長竜型のモンスター『オーシャリゾール』を水の玉の中に呼び出し、兵士に噛み付かせる。
噛まれた兵士は全身の水分を奪われ、ミイラとなって死んだ。キルトは怒りを燃やし、敵対者たちを睨み付ける。
「お前たち……よくもこんなことを!」
「……お初にお目にかかる、サモンマスタードラクル。それがしはガルドフォース三幹部が一人、サモンマスター憎魔」
「アタシも同じく三幹部~、サモンマスター童魔で~す! さあ、そこに隠れてる公女ちゃ~ん? ここでぶっ殺しちゃうよ~」
ドルギーズが指を鳴らすと、隠れていたガルドフォースの隊員たちが姿を現す。彼らを退けなければ、マリアンナは守れない。
アリエルやオズイン、ラズマトリア兵たちも通路から飛び出し敵を撃滅せんと得物を構える。マトリとニルケは、マリアンナの護衛として通路に残った。
「ニルケ、マトリ! お前たちはマリアンナ様をお守りするのだ! 決して側を離れるな!」
「は、はい! ここは僕たちに任せてください! 死ぬ気でお守りします!」
「クソッ、アタシも戦いたいけど……公女様の命を守るのが最優先だ!」
乱戦が始まるなか、キルトはセネラ、アリエルはドルギーズへと向かっていく。それぞれの得意分野を鑑みて、相手を選んだのだ。
「お前の相手は僕だ、ここで叩っ斬ってやるから覚悟しろ!」
『貴様らの行い、断じて許さん! 我らの怒りの炎に飲まれ朽ち果てるがよい!』
「ぷぷぷ、雑魚がイキると後で恥かくよー? 見せてあげるよ、サモンギア・第五世代機の力をね~!」
『チャクラムコマンド』
セネラは銀色のチャクラムが二つ描かれたカードを取り出し、サモンギアにスロットインする。一方、ドルギーズはアリエルを迎え撃つため空へ飛び立つ。
『ウィングコマンド』
『シュートコマンド』
「……来い。お前も他の連中のように頭を撃ち抜いてやる」
「へえ、余裕だね。やれるものならやってみなよ、私の速度についてこられるならね!」
『今日のあたいは絶好調、ビュンビュン飛べるよアリエル! あのいけ好かない根暗ヤローをぶっ飛ばしちゃお!』
「もちろん、やるよフロウラピル!」
『スラッシュコマンド』
翼をブレードに変え、アリエルはドルギーズへ突撃していく。放たれる銃弾を翼で防ぎ、すれ違い様に斬撃を浴びせかけた。
が、ツインドリーガーの翼を生やした相手に軽々と避けられてしまう。空中での機動力は、アリエルと互角なようだ。
「へえ、避けたんだ。ま、いいさ。なら当たるまで攻撃するだけだからね!」
「……その前にお前の頭を撃ち抜くさ」
お互い啖呵を切った後、両者はぶつかり合う。一方で、キルトはセネラ相手に互角の勝負を演じていた。
「そ~れそれ、バラバラになっちゃえ~。ムーンシュート!」
「そんなもの当たるもんか! てやっ!」
「おろろ、『サークルハンサー』を叩き落とすなんて雑魚じゃ出来ないのに~。なるほど~、やっぱり一筋縄じゃいかないね~」
『騒がしい奴め、キルトは雑魚などではないぞ。その無礼な口を二度と利けぬようにしてくれる!』
「うん、今回ばかりは頭にきてるんだ。全員返り討ちにして、公女様を守り通してみせる!」
マリアンナを亡命させるため、キルトたちは命がけで戦う。その果てに、彼らは敵を倒し勝利を掴むことが出来るのか……。




