254話─国境防衛、完了!
キルトがパティラを倒した一方、アスカはレマイダスに襲われ絶体絶命の危機に陥る……と思われた、その時だった。
「さあ、ぶっ殺してや」
『やっほー、聞こえるー? いえーい、リオくんですーす! 今マジンフォンを使ってる薄汚いウォーカーの一族さーん、残念だけどもう時間切れでーす!』
「んなぁっ!? ど、どこから声がっ……!?」
「な、なんや? 急に動きが止まったで?」
突如、どこからともなくリオの楽しそうな声が響いてくる。直後、レマイダスが苦しみはじめた。キルトたちの激突を余所に、アスカは困惑する。
『お前たちにわざと盗んでもらったマジンフォンなんだけどね? ウォーカーの一族に悪用されないためのアンチウォーカーシステムが組み込んであるんだ』
「が、ぐぅ……! まさか、お前……」
『そ、ちゃんとシステムが機能するか調べるためにあえてお前たちの手に渡るようにざる警備にしてたんだよねー。おかげでちゃんとシステムが機能してるって分かったよ、だからもう死んでいいから』
どうやら、リオはキッチリと対策を仕込んだうえでわざとレマイダスたちに虎の子を盗ませたようだ。その抜かりなさに、アスカは舌を巻く。
「ちゅーことは、あのボンどっかでこの状況見とるっちゅーことかいな。見とるんなら手助けくらいしてきれたらええんのになぁ」
『やー、そっちはそっちで頑張ってるみたいだし? 僕がいなくてもなんとかなるから大丈夫!』
「おああああ!? き、聞こえとるんかーい!」
アスカが呟くと、耳聡く聞いていたリオがからかうように答える。びっくり仰天していたその時、レマイダスの身体からマジンフォンが弾き出された。
元の姿に戻った直後、レマイダスの身体が砂に変わっていく。ウォーカーの法則による、全ての運命変異体を含めた消滅が始まったのだ。
「う、あ……? なんでだ、オレっちの身体がぁ……」
『システムが起動するとね、強制的に変身を解除してから使用者を消滅させるのさ。全ての並行世界にいる運命変異体諸共ね』
「バ、カな……」
落下していくマジンフォンが光に包まれて消えるのを見ながら、レマイダスも砂になり崩れ落ち……アスカの目の前で完全に消滅した。
これで、ひとまず危機は去った……そう思われた。だが、敵の隠し球はまだ存在していたのだ。それは……。
「くっ、バカな!? オルタナティブ・コアを所有しているのはこちら側だけのはず。なのに……何故フェルガード軍の全兵士が装備しているんだ!?」
「おいおい、こりゃやべぇな……あの二人が戻ってこえねと、ハッ! オレらだけじゃジリ貧だぜこりゃあよぉ」
襲来したフェルガード軍の兵士たちが、一人残らず装備していたのだ。髑髏のシンボルを持つ、ベルト型のオルタナティブ・コアを。
男性兵士はサモンマスターゴーム、女性兵士はサモンマスタークインビーと瓜二つの装備に身を包み砦を攻撃してきた。
流石にこれは予想しておらず、ドルトやガルドン、ニルケも驚愕してしまう。劣勢に陥り、苦戦を強いられていたが……。
「みんな、お待たせ! ここからは僕たちも戦う! お姉ちゃん、やっちゃって!」
【アドベント・コキュートスドラゴン】
「よし任せろ! 味方は全員退け、我がブレスで敵を一掃してくれる!」
そこに、決着をつけたキルトたちが帰還する。途中でカード補充のため変身解除・再変身をしたキルトがルビィを召喚する。
ドルトが四天王二人に働きかけて退避命令を出させて、ラズマトリア兵は全員砦の内部に退却した。そこを好機と、フェルガード兵が攻勢を強めるが……。
「行け、奴らが引っ込んでる間に防壁を破壊し」
「させると思うか? 絶対零度の冷気で一人残らず氷像にしてくれるわ! コキュートスブレス!」
「なっ……うわあああああ!!」
全員纏めて、ルビィの放った氷のブレスを食らいあえなく氷像の群れと成り果てた。後方の部隊には十人ほど、難を逃れた運のいい者たちもいた。
が、そちらはそちらでアスカの砲撃により各個撃破されることに。結果として、二人を捕虜とし残りは全滅する末路をたどった。
「おお、すげぇ……これが純正サモンマスターの力ってわけか」
「あんなのにやられちゃ、ひとたまりもないなー。思ってたよりやるじゃん、あいつら」
シャンゴ兄妹は双眼鏡を使い、砦の中からルビィの圧倒的な戦闘能力を観察する。そこに、捕虜を連れたキルトたちが戻ってきた。
「二人ほど捕まえてきたよ、煮るなり焼くなりお好きにどうぞ」
「むぐっ、もがぁ~!」
「おう、済まねえな。思いのほか苦戦してたんだ、助かったぜ」
兵士二人はすでに武装解除され、キルトが作り出した魔法のロープで縛られ猿ぐつわを噛まされている。フィリールがいたら、あられもない縛り方をされていただろう。
ガルドンに捕虜を引き渡した後、キルトとアスカはドルトと合流して一旦砦の一室に引っ込む。少年の手には、二つのベルトが握られていた。
「……これ、どう見てもオルタナティブ・コアだよね。そろそろかなとは思ってたけど、やっぱりタナトスも製造してたんだ……」
「ああ、敵軍全員がコレを装備してたんだ。最初に見た時は度肝を抜かれたよ。よりによって女兵士はクインビーの見た目をしてたからな」
「そら嫌やなぁ、ドルトはんもウチもあいつには因縁ありまくりやもん」
『我も上空から見ていたが、別人とはいえゴームとクインビーが大挙して押し寄せてる光景は軽くめまいがしたぞ……』
以前から、キルトはタナトスも自分たちに対抗してオルタナティブ・コアを製造してくる可能性があると考慮していた。
のだが、すでに大量生産済みだとまでは予想していなかった。これは流石にまずいと判断し、打開策を考えていると……。
「あ、連絡用の魔法石が震えてる。たぶんエヴァちゃん先輩かな……もしもし?」
『もしもし、キルト? そっちの状況はどう? こっちはちょっとまずいことになってたから連絡しとこうと思って』
「そのまずいことって、もしかしてウォーカーの一族が来たりフェルガード軍がオルタナティブ・コア装備したりしてることかな?」
『あ、そっちもそんな感じなんだ。実はね……』
どうやら、エヴァたちの方もキルトたちと似た状況になっていたらしい。ウォーカーの一族は仕留めたものの、Ω-13のメンバーは取り逃がしたようだ。
その後、マトリやバズと協力してフェルガード軍を全滅させ相手が使っていたオルタナティブ・コアをいくつか分捕ることに成功したとのことだった。
「そっか、エヴァちゃんたちも大変だったんだね」
『全くよ、マジンフォンとかいう訳分かんないガジェット持ち出してくるし。ねえキルト、敵が使ってたオルタナティブ・コアもどきを解析してくれない? 量産出来たらこっちの戦力大増強出来るわよ』
「うん、僕もそうしようと思ってたとこだよ。幸い、こっちも二つ確保したからさ。一旦アジトに戻って解析してみるよ」
『分かった、ありがとう。手間取らせちゃって悪いわね~……あ、そうそう。例のマジンフォンも回収出来たから、後でアジトに置きに行くわ』
「ホント!? そっちも解析してみたいなぁ、魔神の技術を直に見られるまたとない大チャンスだもん!」
キルト側は出来なかったが、エヴァたちはアンチウォーカーシステムが起動する前に敵を倒せたらしい。そのおかげで、マジンフォンを手元に置けたようだ。
技術者としての血が騒ぎ大興奮するキルトを、アスカとドルトは微笑ましそうに見つめる。ひとしきりはしゃいだ後、キルトは落ち着きを取り戻す。
「さて、やるべきことをやらなきゃね。これ以上タナトスたちのいいようには絶対させないから」
決意を口にし、キルトは手にした魔法石を握り締めるのだった。




