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253話─天空の仇討ち

 激痛によってキルトが戦闘不能に陥り、アスカは劣勢を強いられる。時折ドルトが放つ矢が援護してくれるが、形勢逆転は流石に不可能。


「う、ううう……!」


「ふふふ、悶えているね。苦しいだろう、痛いだろう? ドラクル、お前の身体に突き刺さった暗黒植物『ギンピスペイター』のトゲが」


「あーもううっさいわ! ちっとだーっとれやジブン! こうなったら荒技や、ルビィはん頼むわ!」


【アドベント・コキュートスドラゴン】


 戦いの中で実力を高めてきたアスカでも、キルトを守りながらの二対一では流石に相手を倒すところまで攻めきれない。


 得意気に本契約モンスターの能力をペラペラ話し出すパティラを遮り、アスカは逆転のためとんでもない行動に出る。


 キルトのサモンギアに自分の魔力を流し込み、強引に操作しなんとルビィをアドベントしてみせたのだ。


「うおっ!? 貴様いきなり何をする! ……まあいい、これでキルトを守りつつ本格的な反撃に出られるな。キルト、我が腕の中で守って」


「ハーッ! 逃がしゃしねえよ、仲良くあの世に」


「うるさいわ! 人が喋っているのを邪魔するでない、この不埒者めが!」


「おぶーっ!」


 想定外の形ではあるものの、召喚されたルビィはキルトを抱いて懐で守る。ついでに、突進してきたレマイダスを尻尾の一撃で吹き飛ばす。


 これで、しばしの間アスカとパティラの一騎討ちとなる。気合いを入れ直したその時、フェルガードの軍勢が砦に向かうのが遠くに見えた。


「む、不味いな。遠目から見ても、ざっと百は超えてるぞ。キルトの治療がてら、我が加勢に……」


「行かせるわきゃねーだろ! よくもオレっちのイケてるサングラスをぶっ壊してくれたな、あれ高かったんだぞコラァ!」


 ドルトたちだけでは荷が重いと判断したルビィは、パティラの相手をアスカに任せ砦に戻ろうとする。だが、そうはさせまいとレマイダスが邪魔をする。


 それに加え、パティラも二枚目のサモンカードを使ってルビィの帰還を妨害しにかかってきた。砦に向かわせるつもりはないらしい。


『テールコマンド』


「逃がしはしない、特にドラクルはね! この『プランツテイル』でもっと苦痛を与えてあげるよ! 伸びろ、イバラの尾よ!」


「チッ、面倒な。アスカ、飛べ! こうなった以上は一気にケリをつける他あるまい!」


「はいな、でもどうやって決着つけるつもりや?」


「フッ、我は神に最も近き竜。サモンマスターの本契約モンスターとなって力が増しているのだ、キルトの代わりに奴らを滅ぼすくらい朝飯前よ!」


 丸まった緑色のつるが描かれたカードをスロットインし、かつてキルトが戦ったサモンマスターケルベスのように腰に尾を生やすパティラ。


 尾を伸ばし、ルビィやアスカも猛毒の細毛の餌食にしようとする。このまま悠長に戦えば相手の思うつぼだと、ルビィはアスカを伴い大空へ舞う。


「う、うう……」


「キルト、もう少しの辛抱だ。奴らを仕留めたら、我の体液で痛みの元を消し去ってやるからな」


「へえ、やれるもんならやってみな! ヘイ彼女、オレっちたちも大空にランデブーしようぜ! ハーッ!」


「う、わっ、いきなり肩を掴むな!」


 そんなルビィたちを追うため、レマイダスは両足の爪でパティラの肩を鷲掴みにして空へ飛び上がる。戦いは地上から空へと移った。


【シュートコマンド】


「さあ、来いや! 二人纏めて木っ端微塵にしたるさかいな!」


「やれるものならやってみろ。隊長を殺された私たちが、どれだけ悔しかったか、悲しかったか……お前たちに思い知らせてやる! レマイダス、前進だ!」


「あいよ、行くぜぇ!」


 ルビィたちへ突撃するパティラの脳裏に、在りし日の思い出がよみがえる。彼女は戦争で親を失った孤児だった。


 誰にも救ってもらえず、孤独に苛まれながら生きてきたところを当時精鋭部隊の隊長に就任したばかりのシモンズに拾われたのだ。


『お前、行くトコないんだろ? ならウチに来い。ウチは世間から爪弾きにされた連中の溜まり場でな、お前みたいな奴を集めてるのさ。ま、ちゃんと働いてもらうがな』


『うん!』


「……許さない。私やキッシュにとって、隊長は父親のような存在だった。それを……貴様らがァァァァ!!」


「そうか、だから貴様は我らをここまで憎むのか。……運命とは残酷なものよ」


「せやけど、だからってここでやられてやるわけにはいかへんのや。ウチらには、この世界を守る義務があるんやから!」


 レマイダスと共に突撃しながら、パティラは慟哭し怨嗟の視線をルビィたちに向ける。彼女に同情しながらも、アスカたちは戦う。


 彼女たちにも、守らねばならないものがあるから。その時、話を聞いていたキルトが身体を起こす。激痛に耐え、戦線に復帰しようとしていた。


「僕も、戦う……みんなが頑張ってるのに、いつまでも転げ回ってられない! お姉ちゃん、お願い!」


「分かった、荒っぽくなるが我慢してくれ!」


 ルビィはキルトの腕に、自身の唾液を垂らして無理矢理痛みの元を除去しにかかる。血の方が効果が高く即効性もあるが、今はそんな時間はない。


「ふう、痛みがだいぶよくなった……ありがと、お姉ちゃん」


「なに、これくらい朝飯前だ。さあ、反撃だ!」


「ふ~ん、イキってくれちゃってるねぇ。オレっちたちに勝てるわけないだろうがよ!」


「勝つさ、僕たちはもう負けない!」


【サポートコマンド】


 接敵したレマイダスの攻撃を避け、ルビィは再びキルトのデッキに戻る。直後、キルトはテントウムシの絵が描かれたカードを取り出す。


 カードをスロットインすると、大量のテントウムシ型のモンスター『サンパイント』たちが召喚される。キルトは彼らを、パティラの元に向かわせた。


「行け、サンパイントたち! あの葉っぱを食い尽くしちゃえ!」


「なるほど、そう来たか。ならば食い尽くせないほどの葉を食らわせてやる!」


『リーフコマンド』


 本来は敵の目くらましに使うために用意したカードだが、今回に関してはパティラに特効となった。植物食タイプのテントウムシのため、パティラの操る暗黒植物を食い尽くせるのだ。


 そうはさせじと、パティラもカードを使う。舞い散る花びらが描かれたカードの力で大技『リーフテンペスト』を発動した。


「サンパイントたちを切り刻んでくれる! 勿論お前たちもな!」


「ヘイヘイ、オレっちもやってやるぜ! ウィングスナイプ・レイン!」


「させへんわ、全部ウチが撃ち落としたる! キルト、こっち使ってええで!」


 サンパイントたちがパティラの金棒と尾を食い尽くさんと迫るなか、レマイダスも含め反撃に出る。アスカはキルトに大砲を渡し、葉っぱと羽根の嵐を二人で銃撃し破壊していく。


「くっ、まずい……! レマイダス、足場になるものを出せないか!? こうなれば直接奴らを」


「足場ぁ? んなもんいらねぇだろよ。ほぉら、飛んでけー!」


「おおおおっ!?」


 武器を食われはじめ、焦るパティラはレマイダスにそう尋ねる。が、あろうことかレマイダスは彼女をキルトたちへとブン投げた。


「そのまま奥義撃っちゃえよ、こっちはあの嬢ちゃんを倒しに行くからよ!」


「うわっ、あいつとんでもないことするな……なら、返り討ちにしてやる!」


『よし、行くぞ!』


【アルティメットコマンド】


「レマイダスめ、後で覚えていろ! まあいい……ドラクル、まずは貴様を殺す!」


『アルティメットコマンド』


 パティラは空をすっ飛びながら、三枚の葉っぱが描かれたカードをスロットインする。キルトもまた、相手を迎え撃つべく奥義を発動した。


 竜のオーラを纏い、キルトは突撃する。対するパティラは、背中から三枚のトゲトゲしい葉っぱを呼び出し内向きに湾曲させる。


 その姿は、獲物を食らわんとする食虫植物のようだった。


「これで終わりだ! アウロラルスターシュート!」


「返り討ちにしてやる! イーター・ジ・エンド!」


 一切速度を落とさず、キルトは蹴りを放つ。着弾の少し前、パティラは葉を閉じてキルトを握り潰して抹殺しようとするが……。


「ムダだ! お前より……僕の方が数段速い! てやあああ!」


「う、がはっ……! 私では、ダメなのか……隊長の、仇を……」


 キルトの蹴りが先に炸裂し、パティラを物言わぬ氷像へと変えた。無念の言葉を残し、パティラは地上へと落下していく。


 地面に激突し、粉々に砕け散りその生涯を終えたのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 何とか根性で押し返して1人撃破(ʘᗩʘ’) でも悲しい戦いだったな(´-﹏-`;) 敵側にも仲間意識、親愛があったのか(-_-メ) これもどっかの傭兵会社が金銭取引なんかするからだ(⌐■…
[一言] 運命とは残酷だが、悪く思うな・・・
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