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247話─四天王との顔合わせ

 オズインとの試合も終わり、城に戻ったキルトたちは無事国交樹立の調印式をすることが出来た。大臣たちがまた妨害しそうだったが、今回はオズインが睨みを効かせ阻止する。


「……うむ、後はこの書簡を本国に持ち帰れば正式に我がデルトア帝国とラズマトリア公国とで外交が始まる。公女殿、これから末永くお付き合い出来ることを願っているよ」


「はい、こちらこそ。……ところで、キルト様たちはどちらに?」


「ああ、彼らは兵舎の方にいるよ。この場に居合わせると、また面倒なことになりそうだからね……心苦しかったが、席を外してもらったんだ」


 調印式には、アリエルはもちろんのことキルトやルビィもいなかった。アリエルは同席を大臣たちに認められず、キルトとルビィは怖がられたからだ。


 そのため、三人は調印式が終わるまで訓練場に隣接する兵舎で待機することに。先ほどの試合によって、多少はラズマトリア兵たちと打ち解けられた。


「へえー、オルタナティブ・コアねぇ。そんなすげーもんがたくさんあるのか、霊峰の向こうの国には」


「将軍をタジタジにした兵器の簡易版かぁ。いいなぁそれ、俺たちもほしーい!」


「そんなのを造れるなんて、キル殿は頭脳明晰なのだな。全く、アホ揃いな我が部下たちにも見習ってもらいたいものだよ」


「あはは……どうも」


 兵士たちはオズインを完封してみせたサモンマスターの力に魅せられ、ひっきりなしに質問を浴びせてくる。その最中、オルタナティブ・コアの話題が出た。


 本来の開発者はアリエルなのだが、彼女はマリアンナ以外の民から蛇蝎の如く嫌われている。そのため、飛行艇での移動中に口裏を合わせておいたのだ。


 オルタナティブ・コアを製造したのはキルトであると。今のところ、兵士たちはその話を完全に信じているらしい。


「フッ、我が伴侶は凄いだろう? もっと崇め奉ってもいいのだぞ?」


「もー、お姉ちゃんったらすーぐそうやって調子に乗るんだから。ダメだよ? あんまり迷惑かけちゃ」


「よいのだ、キルトのいいところはどんどんアピールし」


「やあ、どうも。さっきの戦い、観戦させてもらいました。いやぁ、君凄く強いんですね。僕たち驚いちゃいました」


 兵舎の食堂に集まり、談笑をするキルトたち。そこに、四人の男女……オズイン直属の部下であるラズマトリア四天王が現れた。


 そのうちの一人、白い鎧の上に明るい青色のサーコートを身に着けた少年が声をかけてくる。猫耳のようなはねっ毛がある緑色の髪が特徴的だ。


「えっと、あなたたちは?」


「あ、まだ名乗ってませんでした。僕はマトリ・フィーズ、ラズマトリア四天王の一人です。ま、つい最近抜擢されたばかりのぺーぺーですけど」


「ほう、なるほど。では、他の三人も……」


「ええ、その通り。私はバズ・ストラウス、オズイン様の右腕として四天王を纏めています。以後お見知りおきを」


 少年……マトリが名乗ると、続いて彼の隣に立っている青年が自己紹介をする。マトリと同じく白い鎧を身に着け、その上から赤いサーコートを羽織っている。


 厳格そうな引き締まった表情と、炎のように赤い瞳が目を引く青年だった。品定めするような視線に、キルトは思わず一歩引いてしまう。


「そう警戒なさることはありませんよ、別に取って食おうなどとはしませんから。まあ、彼らは別かもしれませんがね」


「おう、ってことで自己紹介させてもらうぜ。オレはガルドン・シャンゴ。ラズマトリアじゃ知らない者のいねえシャンゴ兄妹の兄だ、よろしくな」


「で、あたいがニルケ。泣く子も黙る暴れん坊、シャンゴ兄妹の妹さ。よろしくぅー」


 最後に、マトリたちの後ろにいた二人組がキルトに挨拶をする。ハゲ頭の巨漢、ガルドンと茶髪を三つ編みにした女、ニルケ。


 ガルドンは自慢の筋肉を、ニルケはプロポーションをアピールするため鎧を改造して露出を増やしているようだ。当然、サーコートは羽織っていない。


「これはご丁寧に……僕はキルト・メルシオン。サモンマスターをしています。こちらは僕のあいぼ」


「魂の伴侶、だ」


「……こほん。魂の伴侶にして本契約モンスター、エルダードラゴンのルビィお姉ちゃんです。こちらこそよろしくお願いします」


「ほう、エルダードラゴン……。もしかして、シャポル霊峰を住処にしていたあの……」


「ああ、そうだ。訳あってキルトと出会い、それからは行動をともにしているというわけだ」


 今度はキルトたちが自己紹介をするが、ルビィはちゃっかり自分とキルトの関係を訂正させる。キルトが苦笑いするなか、バズがルビィに尋ねた。


「なるほど、ここしばらく妙に霊峰が静かだとは思っていましたが……そういうことでしたか。おまけに、何やら奇妙な建造物まで」


「あ、それは僕たちガーディアンズ・オブ・サモナーズのアジトです。……もしかして、何かまずかったりします?」


「いんや、問題はねえぜ。あの山ぁ基本、どこかの国の領土に属しちゃいねえからな。登るのが面倒くせぇしエルダードラゴンも住み着いてるし……いや、もう過去形か。で、どこも欲しがらねーってわけだ」


「フッ、そのエルダードラゴンの前でそんな口を叩くとは。貴様、なかなか豪胆だな。気に入ったぞ」


 この時ふと、キルトは思い至る。霊峰にアジトを建ててもらう際、東側の国々に許可を取っていなかったことを。


 恐る恐るそのことを問うと、特に問題はないという答えがガルドンから返ってきた。ホッとしていたその時、ニルケの一言が緊張を生む。


「にしてもさー、アンタらも変わってんねー。アリエル……あんな裏切り者と仲良くするなんてさ。あんな奴くたばってればよかっ」


「訂正してください、ニルケさん。フロスト博士が、この国の人たちから恨まれているのは知ってます。でも、今の彼女は僕たちの仲間。侮辱するのは許しませんよ」


「ああ、キルトの言う通り。アリエルにはなんだかんだ助けてもらっている、奴の過去は知らぬが不用意な発言は控えろ。竜の逆鱗は案外すぐ手の届く場所にあるぞ」


「お? なにさ、あんな奴の肩を持つわけ? 分かんないなー、なんで」


「ニルケ、そこまでにしておきなさい。これ以上問題が起きれば、オズイン将軍や公女様に迷惑がかかるのですよ」


 不穏な空気が広まりかけるも、即座にバズがニルケをたしなめどうにか一触即発の危機は避けられた。兵士たちはホッと安堵の息を吐く。


「……いい頃合いだろう。キルト、そろそろアリエルの過去について聞いてみようではないか。本人はとっくのとうに雲隠れしてしまったがな」


「確かに……。バズさん、教えてください。どうしてフロスト博士がこの国を出て行き、民に恨まれるようになったんですか?」


「ええ、教えて差し上げたいのはやまやまなのですがね……あいにく、私を含め四天王は大臣たちやオズイン将軍からの又聞きでしか話を知らないのですよ」


「ですので、後で将軍に聞いてみるといいんじゃないですかねぇ。あの人、先代の公王時代から仕えていますから」


 いい加減、公国で過去に何があったのかを知るべきだと判断したキルトたち。だが、食堂の端っこにいたアリエルはいつの間にか姿を消してしまっていた。


 バズたちに聞いても、当事者ではないらしく詳細は分からないらしい。それを知ったルビィは、呆れたように尻尾をだらりと下げる。


「ハッ、くだらん。その様子だと、貴様らが直接不利益を被ったわけではないのだろう。他人からの又聞きでアリエルを恨むなど、ずいぶんと図々しい奴らだ」


「ちょっと、お姉ちゃん。いくらなんでもその言い方は」


「いえ、彼女の言うことも一理あります。……思えば、アリエルの悪評を吹聴しているのは大臣たちですね。それも、古参の老人ばかり……」


「あのじーちゃんたちがフカしでもしてるって? バズったら考え過ぎだよ。どのみち、アリエルが公位を捨てて出てったことには変わりないんだもの」


「ま、確かにな。だが、これ以上この話をしてもなーんも進展しねえ。こういう時は、なんか身体を動かしてる方がいいってもんだ。つーわけで、次はオレの相手をしてくれよ。手合わせさせろ!」


「あ、なら僕も……あ、もちろんガルドンさんが先でいいです」


「もちろん。なんなら、全員纏めて相手してあげますよ。ね、お姉ちゃん?」


「ああ、どうせならここにいる兵士全員でかかってくるがいい。サモンマスターの強さを叩き込んでくれるわ」


 アリエルに関して、大臣たちがわざと悪評を広めている疑惑が出てきた。が、今そこを議論しても進展はしない。


 空気を変えようと、ガルドンがキルトに手合わせを申し込む。マトリもそこに乗り、やっと空気が完全に変わった。


 ビッグマウスを叩き、キルトとルビィは再び訓練場へと向かう。それから一時間後、宣言通り四天王と兵士たち全員を相手取り圧勝してみせたのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] フィリールは調印式でアリエルは論外だからキルトが対応するしかないけど(ʘᗩʘ’) 今回メンツ少ね〜な(٥↼_↼)オルタナティヴ・コア分配してもこのメンツで凌ぎきれるか?(゜ο゜人)) 予…
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