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234話─殺人鬼を倒せ!

『キルト、敵の奥義が来るぞ!』


「大丈夫だよ、ルビィお姉ちゃん。こんな時のためにあるんだからね、このカードが!」


【フリーズコマンド】


 今、七人のサモンマスターたちの奥義が発動しようとしたその刹那。キルトは素早くサモンカードをスロットインし、その効果を使う。


「あんまりこのやり方はしたくないんだけど、今はそんなこと言ってられない! ありったけの魔力を使って全員分のサモンギアを凍らせてやる! おりゃあああああ!!」


「グ、オ……?」


「バカナ、サモンギアガ……」


「なんと……! こんな隠し球を持っていたとは!」


 本来、フリーズコマンドの効果対象は任意の相手一人だけ。だが、サモンギアのオーバーヒートの危険性やキルト自身の戦力低下という代償を払い……魔力を注ぎ込めば。


 効果対象を増やすことが出来るのだ。だが、七人分ともなると莫大な魔力を消費してしまう。この裏技は基本的に、使いたくない奥の手なのだ。


「今、だ……! フリージングサークライト!」


「グッ……アアア!!」


「う、ぷっ……。まずい、魔力欠乏症が……」


『キルト、大丈夫か!? すぐに我の魔力を』


「補充などさせませんよ、このまま一気に押し切らせてもらいます。ふふふ、アルティメットコマンドを使うだけの魔力も無いようですねぇ。この勝負、私の勝ちですよ!」


 残った僅かな魔力を使い、コキュートスカリバーの刀身を氷の刃で覆うキルト。一回転しながら剣を振るい、回転斬りで敵を全滅させた。


 が、出来たのはそこまで。魔力が底を突き、欠乏症の症状が出始める。激しい吐き気と脱力感に襲われるキルトに、亮一が迫る。


 ルビィが魔力を分け与えようとするも、相手の速度と武器のリーチにより欠乏症を脱するのが間に合わない。万事休すかと思われた、その時。


「よお、次はお前がオレと遊べ。なあ、それくらいの余裕は……あるだろ?」


「おや、これは。Ω-13のメンバーをこんな短時間で殲滅するとはね。その力、少し侮りすぎていましたねぇ。サモンマスターノーバディ」


『ヘルガ! よくやった、そのまま奴を押し留めろ!』


「ククク、言われるまでもねえ。こいつとも一度遊んでみたかったんだ。ハアッ!」


 シモンズたちを撃破したヘルガが割って入り、短剣で亮一の攻撃を受け止めた。妨害を掻い潜るべく、亮一はデッキホルダーに手を伸ばす。


「では、私はこうさせて」


「やらせねえぜ? 何をするつもりかは大体分かるんだよ、匂いでな」


『サポートコマンド』


「行け、バブルスライム。奴を逆に妨害しな!」


「プルルァ!」


 レイスコマンドのカードを取り出そうとしているのを察知したヘルガは、サポートカードを使って相手の策を潰しにかかる。


 毒々しい紫色のスライムを召喚し、亮一のデッキホルダーに投げ付けた。デッキに粘着質のスライムが張り付き、カードを取り出せないようにしてしまう。


「ほう、そんな使役方法があるとは。学ばせてもらいますよ、ふふふ」


「余裕だな……イライラするぜ。策を潰されたんだからよぉ、ちったぁ悔しがったらどうだ!」


 劣勢に追い込まれてなお、どこまでも余裕の態度を崩さずペストマスクの下で不気味な笑みを絶やさない亮一。そんな相手が気に入らず、ヘルガは舌打ちする。


 そのまま亮一と熾烈な接近戦を始め、相手を後退させていく。十分近く経って、ようやくキルトは魔力欠乏症から回復した。


「う、げほっ……。ふいー、ありがとうお姉ちゃん。助かったよ……」


【ヒールコマンド】


『ヘルガのおかげで何とか間に合ったな。さあ、逆襲の時間だ!』


「うん! ヘルガさん、今助けに──!?」


 念のためカードの効果で体力も回復し、万全な状態になるキルト。その勢いのまま、ヘルガに加勢しに向かおうとする。


 が、その直後。亮一の振るうグレイブが、ヘルガの右脇腹を切り裂いたのを見た。苦しげに後退したヘルガの左脇腹を、グレイブが貫く。


「て、めぇ……」


「ふふふ、私は常に余裕があるのですよ。絶対に負けないという自信がありますからね。さあ、トドメを」


「やめろおおおおお!! てやあっ!」


「うぐっ!」


 グレイブを引き抜き、亮一はヘルガの首を刎ねてトドメを刺そうとする。その寸前で、キルトのドロップキックが炸裂しギリギリで凶行は未遂に終わった。


「ヘルガさん、大丈夫!?」


「……へっ、気にするな。あのマスク野郎が、オレより上手だった。ただそれだけだ……」


『コピー・ヒールコマンド』


「お前のカードを借りるぜ。悪ぃが少し休ませてくれや、流石に……まだ傷む」


「大丈夫、僕が倒すよ。リョウイチをこの手で!」


 亮一を吹き飛ばした後、キルトはヘルガの元に駆け寄る。少年のカードをコピーし、傷を癒やしたヘルガは強がりを言い笑う。


 傷自体は癒えたが、消耗した体力が戻るには少しタイムラグがある。少しの間、ヘルガは戦線離脱することになってしまった。


 だが、キルトは大丈夫だと笑いかける。次は自分が彼女を助ける番だと、デッキホルダーに手を伸ばし……最後のサモンカードを取り出す。


「来い、リョウイチ。今回は決着をつけるつもりで来たんだろ? なら……奥義を使え! お前諸共打ち破ってやる!」


「ふふふ、大きく出ましたね。いいでしょう、私としても望むところです。……あなたたちを倒し、私の死者のコレクションに加えてあげましょう!」


【アルティメットコマンド】


『アルティメットコマンド』


 デッキホルダーからバブルスライムを引っ剥がし、亮一もまたアルティメットコマンドのカードを取り出した。描かれているのは、鳥かごの中で叫ぶ人魂。


 二人同時にカードをスロットインし、奥義を放つべく動く。ネガの時同様、キルトはルビィのオーラを自身に纏い上空へ飛び上がる。


「てやああああっ!!」


「ふふふ、仕留めてあげますよ! 奥義……スクリームディストーション!」


「絶対に負けるもんか! アウロラルスターシュート!」


 対する亮一も飛び上がり、空中に制止する。直後、本契約モンスターである人魂の魔物『レイスレイブ』を召喚した。


 レイスレイブと下半身を融合させ、内側にビッシリと刃が生えた鳥かごへと変化させる。そのままキルトへ下半身を向け、勢いよく突っ込む。


 青い竜の頭部と化したキルトと、捕らえた相手に断末魔の叫びをあげさせる処刑具となった亮一。両者が今、それぞれの意地を賭けてぶつかり合った。


「うおおおおおおおお!!!」


「ぬうううううううん!!!」


「くっ……すげぇ量の魔力が溢れてやがる。地上にいても感じるくらいにな……!」


 二人のぶつかり合いを、地上から見上げるヘルガ。五分近くに渡って攻防が続き、キルトと亮一は相手を滅さんと力を込める。


「僕は……負けない! お前みたいな邪悪な存在なんかに! 負けちゃダメなんだぁぁぁぁぁ!!!」


『そうだ、その意気だキルト! お前には我が着いている、力の限りぶつかっていけ! 生きるも死ぬも、常に我が共にある!』


「ぐ、う……! 押されているというのですか、この私が!? バカな……この爆発的な力は、一体……」


「分からないだろうね、お前には! これが僕とお姉ちゃんの! 絆のパワーだぁぁぁぁ!!」


「う……おおおおおおお!!!」


 壮絶な攻防の末、押し勝ったのは──キルトとルビィだった。亮一を貫き、跳び蹴りを炸裂させる。全身に凍傷を負い、亮一は声もなく地に落ちた。


「これで終わりだよ、タイドウリョウイチ。お前は、僕たちに負けたんだ」


『ああ、そうだ。我とキルトの愛の前に敗北を喫したのだよ。ま、こうなるのは分かりきっていたことだがな!』


 地上に降り立ったキルトに、ルビィが誇らしげに声をかける。キルトが頷くと、そこに体力が回復したヘルガがやって来た。


「ククッ、見てたぜ。よくやったもんだ、あのいけ好かねえマスク野郎を……むっ!」


『まさか、あやつまだ生きてるのか!?』


「く、ふふ。万が一に備えて、タナトスから守りのペンダントを貰っておいて……がふっ! 正解、でしたよ……」


 勝利を喜ぶなか、キルトたちは信じられないものを見た。息絶えたと思っていた亮一が、瀕死ながらも起き上がったのだ。


「ゴキブリみたいにしぶといな! ヘルガさん、僕の奥義コピーしていいよ! あいつにトドメを」


「ふふ……今回は、私の負けです。完膚なきまでにね。だから……次は、私が勝ち……う、げほっ! くっ、せめて……仕事は完遂せねば……」


 捨て台詞と吐き散らした血だまりを残し、亮一は転移魔法を使い無様に撤退していった。キルトは追おうとするが……。


「逃がさ……う、ダメだ……。まためまいが……」


「無理はするんじゃねえ、キルト。ついさっきまで魔力欠乏症になってたんだ、荒療治で完全回復出来るほど甘くはねえ」


『取り逃がしはしたが、完膚なきまでに叩き潰してやれたからよしとしておこうか。それより、今はキルトの治療が先だ』


 ルビィから貰った分の魔力も尽きかけてしまい、またもやダウンしてしまうキルト。亮一がティアを始末しに向かったことを知らず、ひとまず身体を休めるため帰還するのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 今回は危機一髪からの根性勝ちか(ʘᗩʘ’) 亮一にしてみれば必勝の作を考えて、その場に引きずり込んで、余計な奴は来たけど必勝の作に嵌めて内心勝ったと思ったけどフラグ落ち?、追い詰めた以上後…
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