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231話─二人のサウル

「気に食わないわね、その余裕の表情。決めた、アンタから殺してあげる。サウル、他の連中はアンタに任せるわ、皆殺しにしなさい!」


「……了解」


 ルヴォイ一世の態度が気に入らないティアは、彼を標的に定める。残るフィリールたちの相手を新サウルに任せ、皇帝へと突撃していった。


 そんな彼女に、旧サウルは思わず返事を返しそうになってしまっていた。彼の脳裏によみがえるのは、初めてティアと出会った日の思い出。


『ふぅん、アンタがサウルってフラスコの中の小人(ホムンクルス)ね。アタシはティア、サモンマスターダライア。アンタの教育係よ、よろしく』


『はい! こちらこそよろしくお願いします!』


『元気ね、そういうの嫌いじゃないわ。早速ビシバシ鍛えていくわよ、覚悟しときなさい』


 時に厳しく、時に優しく。一人前のサモンマスターになれるよう、日々指導してくれたティア。だが、その献身は偽りのものだった。


 利用価値がなくなれば、あっさりと捨てられてしまう。それがフラスコの中の小人(ホムンクルス)の宿命にして悲哀なのだ。


「……覚悟しろ。纏めて始末する」


『♠10:SWING(スイング)


『♠J:PENETRATE(ペネトレート)


SWORD(ソード) DISTANCE(ディスタンス)


「ヤバい、二人とも気を付けろ! もう一人の俺は斬撃を飛ばして攻撃してくるぞ!」


 スペードの十とジャックを使い、新サウルは剣にモンスターの力を宿らせる。旧サウルの警告通り、振るわれる剣から青色の衝撃波が飛んできた。


 フィリールは盾で防ぎ、プリミシアは旧サウルを担いで踊るようなステップで避けながら相手に接近していく。プリミシアの動きは、キルトのを真似たものだ。


「こうやって接近してるわけだけどー、ここからどうするのサウル」


「実はな、サモンアブゾーバーには正規登録者用の緊急パージボタンがバックルとデッキの接合部にあるんだ。それを押せば、あいつを変身解除に追い込める。ついでにベルトも奪還するってわけだ」


「なるほど、じゃあもっと近付く必要があるね」


 プリミシアと旧サウルがサモンアブゾーバー奪還に向けて作戦を練るなか、ルヴォイ一世はハルバードを振るいティアと戦う。


 相手の左腕に装備された武器、『バルバブレード』を捌きつつまずは様子見を行う。下手に攻めれば返り討ちにされると分かっているのだ。


「ほらほらほら、どうしたの? あの余裕の態度はなんだったのかしらね!」


「ふっ、本当に強い獣はむやみやたらと吠えないものだ。吠えるのは弱き者である証、あまり喋るとメッキが剥がれるぞ?」


「チッ……どこまでもスカしてくれてるわね。ホント気に入らない……死ね!」


 バルバトゥースによる攻撃をことごとく防がれたティアは、銃を連射してルヴォイ一世を牽制しつつ後ろに下がる。


『♦3:KNUCKLE(ナックル)


『♦8:RAPID(ラピッド)


JAB(ジャブ) MACHINEGUN(マシンガン)


「弾丸よりもパンチの方が効きそうだからね、アタシ自慢のゲンコツを食らわせてやるわ!」


「ゲンコツか。幼い頃、武術の師範(せんせい)によく食らったものだ。……来い、朕の守りを崩せるものなら崩してみろ!」


 本来、ダイヤの二のカードと組み合わせて使うカードであるダイヤの八を変則的な使い方をするティア。相手の懐に飛び込み、左手でパンチの嵐を放つ。


 対するルヴォイ一世はレオニグルシールドを構え、ドッシリと腰を下ろす。盤石の態勢でティアを迎え撃ち、攻撃を防ぎきるつもりだ。


「オラララララララララララァ!!!!!」


「ぐっ……! なかなかの威力だ、朕が後退させられるとは」


「アンタ、もしかしてアタシをイラつかせるためだけに生まれてきたわけ? でも、そのスカした態度もそろそろ出来なくなるわね。盾を弾き飛ばせば、アンタをぶっ殺せ」


「させると思うか? このワタシが。愛しい陛下を殺そうなどという不届き者は……ここで死ね」


『シックルコマンド』


 少しずつルヴォイ一世のガードが上がっており、後少しで盾を吹き飛ばせる……とティアが笑った直後。皇帝の後ろからアルセナが跳躍し、腕に生やした鎌による一撃を放つ。


「な……っぶな! アンタいつの間に!?」


「陛下、招待客の避難完了しました。ここからはワタシも共に戦います」


「ああ、ありがとうアルセナ。共にこの不届き者を成敗するとしよう」


「チッ、新手ってわけね。サウル、こっちに来て手伝っ……!? なによ、この吹雪!」


『ブリザードコマンド』


「仲間との合流はさせない。お前の相手はワタシたちだ」


 アルセナの参戦により、少し苦しくなってきたティア。早めに決着をつけようと、新サウルを呼び戻そうとする。


 が、それを許すアルセナではない。即座にサモンカードの力で吹雪を起こし、フィリールたちと戦っている新サウルと分断した。


「チッ、舐めたことしてくれるわね。いいわ、そんなに死にたいなら……纏めてあの世に送ってあげる!」


「やってみるがよい。朕とアルセナが揃えば敵はないということを教えてやる」


 数多の獅子を束ねる皇帝と、白き氷雪の狩人を相手にティアは笑う。銃に魔力を込め、攻撃を始めた。



◇─────────────────────◇



「よっ、ほっ! なんかいきなり吹雪いてきたけど、戦うのに支障はなさそうだね!」


「だな、チラッと見たがアルセナが合流したようだ。たぶん、彼女の仕業だろう。敵同士の合流を阻止する狙いがあるのだろう……な!」


「……しぶとい奴らめ。そろそろ……消えろ」


『♠Q:STEAL(スティール)


「!? 盾が消え……うおっ!」


「フィリール! お前、よくも!」


 一方、新サウルとの戦いは進展があった。新たなアブゾーブカードの投入により、フィリールが一時戦線離脱してしまった。


 彼女の盾を奪い、新サウルは遠距離から近距離攻撃に切り替えプリミシアへ迫る。旧サウル諸共斬り捨てるつもりだ。


「……次はお前たちだ、覚悟しろ」


「ふん、やれるもんならやってみなよ! お前なんかね、こうやって轢いてあげるよ!」


『アドベント・モートロン』


『シューターコマンド』


「いっけー、ひき逃げアターック!」


 モートロンを召喚したプリミシアは、旧サウルとニケツしつつ敵へ突撃する。先にブーメランを投げて相手の剣を弾き落とし、容赦ないひき逃げをかます。


「うぐっ! この、よくも──!?」


「よう、俺。悪いけど、そのアブゾーバーは俺のモンなんだよ。返してもらうぜ!」


「このっ、離せ!」


 そして、スタンバイしていた旧サウルが飛びついてサモンアブゾーバーを外そうとしがみつく。新サウルは翼を広げ、空に飛び立ち相手を振り落とそうと暴れ回る。


 が、その程度で落とされる旧サウルではない。ガッチリと相手にしがみつき、片手で緊急パージボタンを押すことに成功した。


「うおっと! 落ちる前に変身……!」


「させん! ここで……俺と共に死ね!」


「お前……。悪い、俺は……生きてたいんだ。キルトたちと出会って、知ったんだよ。生きるって、こんなにも楽しいんだってのをさ!」


『サモン・アブゾーブ:♠A:ENGAGE(エンゲージ)


PROMOTION(プロモーション) KING(キング)


PROMOTION(プロモーション)SKY(スカイ) KING(キング) STYLE(スタイル)


 かなりの高度まで上昇していたため、このまま落下すれば墜落死は確実。旧サウルは道連れにしようとする新サウルを振りほどき、素早く変身する。


 そこからさらにキングスタイルに変身し、ゆっくりと降下しながらプリミシアとフィリールに向かって叫ぶ。


「姐さんたち、もう一人の俺を倒してくれ! 俺はこのまま……ティアさんを倒しに行く!」


「ああ、任せろ!」


「おっけー、行っておいでサウル!」


『アルティメットコマンド』


 もう一人の自分へのトドメをフィリールたちに任せて、旧サウルは吹雪の中に突っ込んでいく。託された二人は、奥義を発動する。


「これで終わりだ! ヘルクレスクレイドル!」


「このままやるよ、モートロン! エクステンドブレイク!」


「あいよ、任せな!」


 落下してくる新サウル目掛けて、二人はそれぞれの奥義を炸裂させる。身を守るすべがない新サウルは、直撃を食らい地に落ちた。


「ぐああっ!」


「済まない、君たちフラスコの中の小人(ホムンクルス)の事情は聞いている。だが、こうなった以上は倒さねばならないんだ」


「……気にするな。俺たちは……所詮、使い……捨て……」


 謝罪するフィリールにそう答えた後、新サウルは息絶えチリとなって消滅した。プリミシア共々、フィリールは彼に黙祷を捧げるのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] このティアってエヴァの運命変異体だよな?(ʘᗩʘ’) その割にカリカリ怒ってばかりで余裕無さそうだけど(゜o゜; これもフィニス戦役で勝った世界と滅び掛けた世界の違いか(´-﹏-`;) …
[一言] >「……気にするな。俺たちは……所詮、使い……捨て……」 ……哀れだねェ
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