230話─乱入者現る
ルヴォイ一世の挨拶の後、パーティーが始まった。広いホールは二つのエリアに区切られ、招待客たちはめいめい好きな場所に散る。
片方は、立食形式のビュッフェになっているエリア。宮廷料理人たちが腕によりをかけて作った食事を堪能することが出来る。
もう片方はダンスエリア。ルヴォイ一世お抱えの楽団が奏でるメロディに合わせ、ペアになった男女が優雅に踊っていた。
「いやあ、美味いなぁここのメ……料理は! こんなに美味いといくらでも食べられるな!」
「全く、始まって早々食事とは。この分だと、今日は踊れぬかもしれんな……。後でプリミシアに交渉して、キルトと踊らせてもらうか」
のっけからビュッフェエリアに入り浸り、食事に夢中なサウル。そんな彼を見て、フィリールはやれやれと呆れてしまう。
一方、キルトはプリミシアと共にダンスを楽しんでいた。魔導学園時代に習った踊り方を披露し、周囲の客を魅了する。
「わ、わ! キルトくん、凄いステップだね。ボク、ついて行くのに精一杯だよ」
「ふふ、『一流の闇の眷属は踊りも一流じゃなきゃダメよ』ってエヴァちゃん先輩に仕込まれたんだよ。もうちょっとペース落とすね、その方が合わせやすいだろうし」
「ありがとね。ボクもその踊り方、真似してやってみよっと」
闇の眷属の世界……その社交界において、ただ腕っぷしが強いだけの者は三流として扱われる。相応の知識や教養、文化的な技能を兼ね備えて初めて一流と認められるのだ。
そうした一流の存在になれるよう、キルトは幼少の頃からエヴァや学園の教師にいろいろと教えられてきた。ダンスもその一つだ。
「ほお……あの少年、なんと軽やかな動きだ。あそこまで優雅な踊りは見たことがない」
「さすが、英雄ともなるとワルツを踊るのも上手いものですな」
周囲の客に褒められ、キルトは踊りつつも頬を赤らめる。そんな彼を、少し離れたところからアルセナとカイザレオンを侍らせたルヴォイ一世が見ていた。
「ふふ、満喫してくれているようで何よりだ。ではアルセナよ、そろそろ朕たちも踊ろうか」
「はい、このアルセナ……フィリップ様とどこまでも」
『♦2:BARRETT』
『♦6:FIRE』
『METEOR SHOOT』
皇帝たちも混ざろうとした、その時。どこからともなくアブゾーブカードの発動音声が響き、会場に炎を纏った弾丸が撃ち込まれる。
壁が炎に呑まれて大破し、客たちはパニックに陥ってしまう。異変に気付いたキルトたちは、即座に変身を行い迎撃準備をする。
『サモン・エンゲージ』
「レオナトルーパーズよ、演奏中止! 招待客を安全な場所に避難させよ!」
「ハッ、かしこまりました!」
「ワタシたちはキルトたちと協力し、敵を迎え撃つ。さ、任務開始だ!」
変身後に真っ先に動いたのは、ルヴォイ一世とアルセナだった。即座に親衛隊に指示を出し、客を安全な城の方へと避難させる。
一方、キルトたちは避難誘導完了までの時間を稼ぐため壁に空いた穴から外へと飛び出す。すると……。
『ふふ、あなたはこちらですよサモンマスタードラクル。少し私と遊んでもらいましょう』
「! この魔法陣と声……タイドウリョウイチか!」
『ええ、残りの者たちは彼女たちが相手をしてくれますよ。さあ、案内してあげますよ。あなたの墓場となる地へ!』
広い中庭に、どこからともなく亮一の声が響く。そして、キルトは足下に現れた魔法陣によって別の場所へと転移させられた。
「キルト、無事に勝つんだぞ。私たちは信じているからな」
「ハッ、無理な話ね。みんな死ぬの、ここで。久しぶりねーサウル、鞍替えした気分はどう?」
「ティアさん……! 隣にいるのは……新しい俺か」
「……」
フィリールが呟くと、そこにティアと新たな個体のサウルが姿を見せる。どちらもすでに変身を済ませており、戦闘準備は万全なようだ。
プリミシアが仕掛けようとした直後、旧サウルが彼女の肩を叩く。そして、敵に聞こえないよう小さな声である頼み事を伝えた。
「なあ、プリミシアさん。俺は丸腰だからさ、あんたらのお荷物になっちまう。だから、ちょっと協力してほしいんだ。サモンアブゾーバーを取り返すんだ」
「ふんふん、なるほど。確かに、そうすればサウルも戦えるようになるね。いいよ、一緒に」
「何をコソコソ話してるのかしら? 行きなさい、サウル! 向こうのサウルを殺すのよ!」
「……了解」
【♠K:PROMOTION KING】
ティアに命令され、新サウルは青と金の集中線と、その中央にKの文字が描かれたアブゾーブカードをデッキから取り出す。
そして、カードを剣に吸収させてレドニス同様キングスタイルへの変身を遂げる。
「……俺は、オオワシのモンスター『ハイドイーグル』と契約している。空の王の力……知れ」
【PROMOTION:SKY KING STYLE】
新サウルの背中にマントのように折り畳まれた黄金の翼が生え、鎧の両肩部分にワシの頭を模した肩当てが追加される。
さらに、全身に金のラインが走りその威容を余すことなくフィリールたちに見せ付けていた。ティアの援護射撃を受け、攻撃を始める。
「行きなさい、サウル! 奴らを細切れにしてやるのよ!」
「来るか……二人とも、私の後ろに隠れるんだ。隙が出来るまでは、守りに専念してくれ!」
『ウォールコマンド』
「おっけ、そうするよ!」
「わりぃな、フィリールの姐さん。……どうにか隙を見つけて、あいつからアブゾーバーを取り返さねえと」
フィリールはタワーシールドを召喚し、ティアの銃撃と新サウルの斬撃から仲間を守る。無理に攻めず、相手が隙を見せるのを待つ作戦だ。
だが、そんなガン待ち戦法をティアたちが許すわけもなく。相手の守りを崩すため、積極的に攻撃を仕掛け分断を図る。
「……させない」
『♠4:TACKLE』
『♠5:ACCEL』
『RAMPAGE PARADE』
「……ハッ!」
「はや……うぐおっ!」
「わわ、あぶな!」
二枚のアブゾーブカードを使い、新サウルは猛スピードの体当たりを食らわせる。中庭に積もっている雪のせいで踏ん張りが利かず、フィリールは吹き飛ばされてしまった。
プリミシアと旧サウルは直前で避けられたが、そちらはそちらでティアの標的にされてしまう。銃口が向けられ、旧サウルへ弾丸が放たれる。
「獲った! これで終わりよ!」
「させないよ、今カードを」
「その必要はない、ここからは朕が参戦するからな」
『シールドコマンド』
プリミシアがサモンカードを取り出そうとした、その時。ルヴォイ一世ことサモンマスターエンペラーがテレポートを使い、戦場に現れた。
レオニグルシールドを召喚し、放たれた弾丸を防ぎプリミシアたちを攻撃から守った。頼もしい援軍の到着に、フィリールは笑みを浮かべる。
「皇帝殿! 助太刀感謝する!」
「気にするな、サモンマスターは助け合う。キルトからそう教わったのでな。それに……我が国を土足で踏み荒らす輩は、皇帝として処さねばならぬ」
「フン、新手が来たわね。誰が来たところでムダなのよ、アタシたちには勝てないの!」
『♦K:RELOAD』
サモンマスターエンペラーの参戦に、ティアは好戦的な笑みを浮かべる。そして、ダイヤのキングのカードを使い消費したカードを復活させた。
「ほう、貴様……朕たちとは異なるサモンギアを用いるのか」
「皇帝さん、気を付けて! そいつらは並行世界から来た全く違うサモンマスターたちだよ! ボクたちですら、まだ全容を解明出来てないんだ!」
「そういうこと。だから……アンタも消えなさい、永遠の闇の中にね」
【♦Q:PROMOTION QUEEN】
プリミシアが警告するなか、ティアは緑と金の集中線を背景に、中央にQの文字が描かれたカードを取り出して武器に吸収させる。
「アタシが契約してるのは、サーベルタイガーのモンスター『バルバトゥース』。さあ……見せてあげる、アタシの力をね」
【PROMOTION:OPPRESSION QUEEN STYLE】
サーベルタイガーの頭を模した飾りがティアの額に装着され、左腕に長い牙のような二つのブレードが装着される。
胴体から手足へと金のラインが放射状に広がる模様が追加され、ティアもまた強化形態へと変身を遂げ全ての敵を屠らんとする意思を示す。
「来なさい、纏めて消し炭にしてあげる」
「やってみろ。朕はルヴォイ、このゼギンデーザを束ねる皇帝。貴様らの狼藉、これ以上は許さぬ」
空には雲一つなく、太陽が雪の積もった中庭を照らしている。並行世界のサモンマスターたちとの戦い、第三ラウンドが始まった。
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