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226話─そして、ピリオドは打たれた

「だいぶ数も減ってきたね、ここまで長かった……」


「せやな、早いとこケリつけたいところやけど疲れてきたわ……」


 キルトとルビィがネガを倒した頃、プリミシアとアスカは終わらない戦いが続きスタミナが尽きはじめていた。


 どれだけ倒してもエルダードラゴンが湧いてくるせいで、消耗した体力を回復する暇がないのだ。体力が無くなれば、集中力も途切れる。


「あ、ヤバい……立ちくらみが」


「モラッタ……シネェェェ!」


「アカン! プリミシアはん、避けーや!」


 一足先に限界を迎えたプリミシアに、一頭のエルダードラゴンが襲いかかる。アスカが助けに入ろうとするも、他の個体に阻まれてしまう。


 万事休すか、と思われたその時。空のあちこちに亀裂が走り、そこから骨で出来た無数の空飛ぶ船が姿を現した。そして……。


『ネクロコマンド』


「さー、お仕事の時間だよみんな! 悪いドラゴンをやっつけるよー!」


『みんなー! 頑張ろうねー!』


 そのうちの一隻の甲板に、サモンマスターライトサイドに変身したイゴールが立っていた。サモンカードを使い、骨の怪鳥を大量に呼び出す。


 一番近くにいた怪鳥の背中に飛び乗り、自らエルダードラゴンを葬るため飛び出していく。心強い援軍の到着だ。


『アックスコマンド』


「さあいくよー! このへいるぶりんがー・れぷりかでやっつけてやる!」


『おとーさんたちもいるし、かっこいいところ見せちゃお! いーくん!』


「うん! がんばろめーちゃん!」


 デッキホルダーに宿る双子の片割れと話をしながらイゴールはエルダードラゴンの首を()ね、頭をカチ割って撃破していく。


「おお、ようやく援軍が来てくれおったんか! こら助かったで!」


「ホントホント、ボクたちだけじゃスタミナ切れで押し負け……あれ、あそこにいるのアゼルくんじゃないかな?」


「お、せやな。船の舳先に立ってなにしとんのやろ?」


 里帰りしていた仲間の登場により、もう安心と胸をなで下ろすアスカたち。そんななか、ネクロ旅団の主アゼルの姿を見つける。


「……全く。久しぶりに可愛い可愛い子どもたちが帰ってきてくれて、楽しく親子でお出かけしてたのに! 家族の団らんを邪魔する悪い竜はお仕置きです!」


『ネクロ・リボーン』


 帰省した双子との団らんの時を邪魔され、アゼルはご立腹のようだ。太陽のマークが納められたオレンジ色の結晶を取り出し、自身の胸に突き刺し起動させる。


 すると、少年の身体をオレンジ色の炎が包み込む。背中に巨大な翼が生え、頭には炎の王冠が生成され不死鳥のような輝きを放つ。


「……さあ、行きましょうか。数多の恵みと災いをもたらす太陽の化身……『サンブラストノスフェラトゥス』参る! メレェーナさん、サポートお願いします!」


「はいはーい! おっまかせー!」


 翼を羽ばたかせ、船から飛び立つアゼル。そこに、サキュバスのような露出の多い衣装を着た女が現れ少年に追随する。


「さあ、纏めて薙ぎ払っちゃいますよ! 出でよ、魔凍斧ヘイルブリンガー! パワールーン……シールドブレイカー!」


「お仕置きターイム! そーれ、アメ玉シャワーを食らえー!」


「ギィヤァァァ!!!」


「オモ……アアア!!」


 アゼルや双子たち、ネクロ旅団のメンバーの参戦により勝敗は決した。途中でキルトが合流したのも拍車をかけ、エルダードラゴンたちは二十分もしないうちに全滅した。


「やったー! だいしょーりー!」


『ふっふーん、これがサモンマスターの力だよー!』


「ああ……誇らしげにしてるイゴール、とても立派です……! たくさん録画しておかないと! メレェーナさん、いきますよ! あの子たちの勇姿を記録します!」


「わわ、待ってー!」


『なんだ、騒がしいものだ。……アゼルめ、子煩悩全開だな』


「あはは……そうだね、お姉ちゃん」


 敵を全滅させた後、大喜びしている我が子の元へ向かうアゼル。彼を見ながら苦笑しているキルトのところに、アスカたちがやって来る。


「キルトー! 無事勝てたんか!? 取り逃がしたりしてへんか!?」


『安心しろ、アスカ。ネガは葬った、キルトと我の二人でな』


「うん、僕の見た目も戻ってるはずだよ。そうじゃなかったらちょっと困る……」


「あ、ホントだ。ちゃんと元通り! でも、ボクはオッドアイなキルトくんも好きだったなー」


「ふふ、ありがとうプリミシアさん。さて……アゼルさんたち(あっち)はあっちで盛り上がってるし。城に帰ろっか!」


 家族全員で揉みくちゃになりながら勝利を喜んでいるアゼルたちにお礼を言った後、キルトたちは雷帝の寝床へと戻る。


 そこでキルトは、最後に残った問題に直面することとなる。捕虜となったサウル、そして生首状態のレドニスをどう扱うかという問題に。


「……なるほど、そっちはそんなことになってたんだ」


「ああ。ま、あの二人をどうするかは貴殿らが決めればいい。余はアゼルと我が子のところに行くので、これにて失礼する。では!」


「協力してくれてありがとう、アーシアさん!」


 アーシアから一通り話を聞いたキルトたちは、エヴァ&フィリールと合流し話し合う。サウルとレドニスの処遇を、どうするかについて。


「僕としては、両方とも生かしてあげたいなって思うんだ。自分の命にすら価値を見出せずに、仲間に捨てられて死んでいくなんてあんまりだよ」


「それは別にいいんだけど……レドニスだっけ? そいつにはちゃんと罪を償ってもらわなきゃね。全員生き返って事なきを得たとはいえ、あいつが大勢殺したのに変わりはないもの」


「うん、僕もそのつもりだよ。レドニスはコリンさんに引き渡して、罪を償ってもらう」


 レドニスに関しては、あっさりと結論が出た。実質的に死者は出なかったが、犯した罪は消えない。まずはそれをキッチリ償わせることに。


 問題はサウルの方だった。フィリールが聞き出したところによると、造られてすぐティアに預けられ、彼女の元で訓練に励んでいたらしい。


「ある程度仕上がってきたところで、レドニスとティア、もう一人の仲間と実戦に出ようとしていた時にタナトスに呼ばれた。本人はそう言っていたよ」


「ほーん、つまりまだなんもやらかしとらんちゅうわけやな?」


「ええ、あいつはシロね。ただ、信頼してた先輩に見捨てられたのが相当ショックだったみたい。別室にレドニスと一緒に放り込んでるけど、かなり気落ちしてるわ」


「なんだか可哀想だなぁ。はるばる別の世界に呼ばれて、仲間に捨てられて……ボクだったら泣いちゃうよ、そんなの」


 一切サウルに関与せず、放り出すこともキルトたちには出来た。だが、並行世界でたった一人……知り合いもいない中で生きていくのはほぼ不可能。


 どこへ行っても馴染めず、つまはじきにされてしまうことだろう。処遇をどうするか悩んでいると、アスカが挙手する。


「なぁキルト、一つ思い付いたんやけど。そのサウルっちゅうの、サモナーズショップで雇わへん?」


「僕たちのお店に?」


「せやせや、実務の経験積ませたるんや。そうすれば、最終的に自立するにしてもオマンマの種に困らへんやろ? 当面の資金も稼げてサウル的に一石二鳥なはずや」


「ふむ、確かにその方がいいだろうな。アゼルやコーネリアスたちに、これ以上負担はかけられん。ここは我らが引き取ってやるのが筋だろう」


 最終的に独立するかどうかはサウル本人に任せることにして、ひとまず彼をサモナーズショップの従業員として雇うことに決まった。


 別室にいる本人の元に向かい、その旨を伝える。


「へえ、あんたら……人がいいんだな。俺は敵だったんだぜ、それを救うどころか職までくれるってのか?」


「うん、僕はね……君やレドニスにチャンスをあげたいんだ。生きるってことは、楽しくて素晴らしいことなんだって知ってほしいんだよ」


「……サウルの言う通り、ホント底抜けのお人好しだね。オレ、あんたを殺したんだけど。気にしてないんだ?」


「気にはしてないが、やったことはチャラにはならんぞ。レドニス、貴様はコーネリアスのところでしばし罪を償ってくるのだな。ちゃんと身体を生やしてやるから、刑務所で奉仕作業をしてこい」


「うへぇ、まあそうなるか……仕方ない、真面目にやってくるか」


 キルトたちの意見はしっかり伝わったようで、サウルもレドニスもそれぞれに与えられた選択を受け入れた。


「ま、しばらくよろしくな。キルト……だっけか」


「うん、僕はヒトとフラスコの中の小人(ホムンクルス)で区別なんてしないよ。いろんな意味で平等に扱うからね」


 ネガを討ち滅ぼし、並行世界のサモンマスターの一部と和解することが出来た。新たな変化を加えながら、キルトたちは帰っていく。


 サモンマスターの日常へと。

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― 新着の感想 ―
[一言] 最後に美味しい所を持って行ったねぇ、アゼル。
[一言] 元々アゼルの領域に侵攻してる時点で時間の問題だったんだろうけど(ʘᗩʘ’) 何とか間に合ったか(٥↼_↼) しかし連中もチームを正式始動の前に呼ばれるとは(↼_↼) 連中が本心隠したなら何…
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