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225話─決戦! キルトVSネガ!

 テラス組の戦いが呆気ない幕引きを迎えた頃、キルトはネガと激闘を繰り広げていた。お互いに召喚した剣を振るい、相手を切り裂こうとする。


「食らえ! コキュートススラッシャー!」


「返り討ちにしてやるさ! インフェルニティスラッシャー!」


 甲高い金属音を鳴らしながら、二振りの剣がぶつかり合う。腕に力を込め、相手を打ち負かそうとキルトとネガはつばぜり合いでしのぎを削る。


 その末に打ち勝ったのは、キルトの方だった。ネガの持つ剣を払いのけ、そのままガラ空きになった相手の胴体へ攻撃を叩き込む。


「今だ! てりゃああああ!!」


「がふっ! この……やられるわけにはいかないんだよ、こっちはね!」


【アドベント・インフェルニティドラゴン】


『奴が来る! キルト、我を解き放つのだ! あの小娘は我が仕留める!』


「うん、分かった!」


【アドベント・コキュートスドラゴン】


 鎧の胸元を切り裂かれたネガは、一旦距離を取ってオニキスを召喚する。それに対抗して、キルトもルビィを呼び出した。


 いつかの時のように、再び二頭の巨竜が相まみえることとなる。今回はもう、何者も……戦いを止めることはない。


 キルトとルビィ、ネガとオニキス。どちらかのコンビが倒れ滅び去るまで。決戦は続くのだ。


「コノ時ヲ待ッテイタ! 今度コソ貴様ヲ食イ殺シテヤル!」


「やってみろ、貴様らのようなまがい物に我とキルトの愛と絆は砕けはしない! 返り討ちにして空の藻屑にしてくれるわ!」


 互いに啖呵を切り、二体のエルダードラゴンは同時に体当たりを放つ。そのすぐ側では、再度組み合ったキルトとネガが剣を斬り結ぶ。


「その首を切り落として、君の仲間にお届けするよ。いや、それは無理か。みんなオニキスの運命変異体のエサになるからね! インフェル……」


「そんなことにはならない! お前を倒して、もうタナトスたちがサモンギアを作れないようにしてやる! てやぁっ!」


「がふっ! このっ、調子に乗るな! お前さえ死ねば僕が本物になれる、だからさっさと消えろ!」


「うぐっ! やったな、このっ!」


 お互いに急所への攻撃だけを必要最低限の動作で防ぎ、ひたすらに攻撃を行う。鎧の表面に傷が増え、少しずつ耐久力が減っていく。


 それでも二人は攻撃をやめない。ただ相手を滅ぼすことだけを念頭に入れ、ひたすらに剣を振るい攻撃を繰り返す。


「いいぞ、そこだキルト! 奴を……ぐうっ!」


「クハハ、クリーンヒットシタゾ! ドウダ、我ノ拳ハ痛イダロウ!」


「ああ、そうだな。確かにズシリと響く重い痛みだ。だがな、そんなものはキルトが味わってきた苦痛よりも! 遙かに軽いわ!」


「ウゴッ……」


 サモンマスター側が互角の戦いを繰り広げているのに対し、エルダードラゴンたちの戦いは明確にルビィが優位に立ちはじめた。


 頭突きを繰り出してオニキスを仰け反らせた後、お返しとばかりにボディブローを叩き込む。キルトへの思いを叫びながら。


「貴様には分かるまい、我が伴侶が流した血と涙の量を! 苦しみに苛まれてきた多くの日々を! あの子がどれだけ悲しみ、我が腕の中で泣いたかを!」


「お姉ちゃん……」


 片腕でオニキスの首を掴み、抵抗を封じつつ容赦ない攻撃を浴びせるルビィ。彼女の脳裏によみがえるのは、辛い過去に苛まれ涙をこぼすキルトの姿。


 ボルジェイに故郷と家族を奪われ、研究と称した虐待を受け、片腕を切り落とされ……。さらには、両親の霊を使った卑劣な精神攻撃にも晒された。


「だからこそ我はあの日誓った! 貴様らを完全に滅ぼし、もう二度とキルトが泣かなくていい明日を作るのだと! 貴様らがその邪魔をするのなら……」


「ウグ、オォ……」


「どんな理由があろうとも! 消し去るだけだ!」


「ガハァッ!」


「オニキス! よくも」


「隙だらけだ! コキュートススラッシャー!」


 思いの丈を叫びながら、渾身の一撃を叩き込みオニキスを吹き飛ばすルビィ。ネガが怒り、ルビィへ刃を向けようとした瞬間。


 その際に生まれた隙を見逃さず、キルトもまた必殺の一撃をネガに放った。鎧の上半身部分が砕け、ネガはオニキスの方へ吹き飛ぶ。


「ぐはっ! クソッ、調子に乗るなよ……。こっちにはまだ使ってないカードがあるんだ、お前なんかに負けるか!」


【リペアコマンド】


【ヒールコマンド】


「いいよ、回復しなよ。全力のお前を倒さないと、僕は前に進めない。全ての因縁に決着をつけられないからね!」


 大ダメージを負ったネガは、二枚のカードを取り出して効果を発動する。砕けた鎧の上にRの文字が描かれたものと、赤背景に黒いしずくが描かれたものの二枚を。


 自身の傷を癒やし、破壊された鎧を修復して万全の状態になるために。フリーズコマンドで妨害することも出来たが、キルトはあえてしなかった。


 相手に一切の言い訳を許さない、完膚なきまでの敗北を叩き込むために。


「ククク、バカナ奴メ。ムダナコダワリヲ持ツト、後々致命傷ニナルゾ」


「そうかな? キルトと我は必ず勝つ。貴様らの奥義など粉砕してな!」


「そうさ、僕とルビィお姉ちゃんは負けない! お前たちを倒して、エルダードラゴンの群れも撃滅する!」


「うるさいなぁ……! お前が、お前さえ死んでくれれば! 僕の身体を蝕む痛みも! 消えるんだよぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


【アルティメットコマンド】


 狂ったように叫びながら、ネガは最後の切り札を使う。翼を広げ、黒炎を吐くオニキスが描かれたカードをスロットインする。


「キルト、来るぞ。我らも……」


「うん! 必殺技を叩き付けてやろう!」


【アルティメットコマンド】


 ネガの動きに呼応し、キルトも奥義を発動する。今回はオーラを放たず、ルビィを宿したまま背後へ飛んでいく。


 そして、反転した後加速しながら前方へ跳び蹴りを放つ。そんなキルトの身体を、青い冷気となったルビィの頭部が包み込む。


 対するネガも、キルトと同じ動きをして前方へと向かっていく。その身体を、黒い炎となったオニキスが包み突撃する。


「食らえ! アウロラルスターシュート!」


「お前たちを殺してやる! バーニングデストロイヤー!」


 青と黒、二つの竜の頭部がぶつかり合う。清らかな冷気と、邪悪なる獄炎。互いを食らい尽くし滅ぼさんと、激しくうごめく。


「うおおおおおおおお!!!」


「りゃあああああああ!!!」


 竜の頭部の中にいるキルトとネガは、お互いに跳び蹴りを放って足裏をぶつけ、魔力を流し合う。そうして相手を体内から破壊し、打ち勝つのが狙いだ。


「う、ぐ……! こんな、時に……身体が、痛んで……」


「勝負アリだ、ネガ! これで……トドメだ!」


「う、あああああ!!」


 永遠にも思えるぶつかり合いを制したのは、キルトの方だった。相手の力が弱まった隙に、一気に蹴りでブチ抜いた。


 黒い竜の頭が消え、獄炎が爆散する。ネガを貫いた青い竜の頭部は、少し進んでから止まり……霧散してキルトだけが残った。


「く、はは……。僕が、負ける……オリジナルなんかにこの僕が? なんで、なんでさ。サモンギアの質も、本契約モンスターのパワーも! 何もかも全部、僕が上だったはずなのに!」


「違うよ、ネガ。全部上回ってたわけじゃない。サモンマスターと本契約モンスターの間にある絆は……僕たちの方が! 圧倒的に上だった!」


『ああ、そうだ。所詮貴様らは利害の一致かなにかで組んだだけのコンビに過ぎぬ。強い愛と絆で結ばれた我らに、勝てる要素など最初からないのだ』


 少しずつチリになっていく身体を見ながら、ネガはそう呟く。そんな彼に、キルトとルビィは誇りに満ちた力強い声でそう声をかけた。


 内に宿るオニキスと何かしらのやり取りを脳内でした後、ネガはフッと笑う。そして、残り少ない魔力を集めて一枚のカードを作り、キルトへ投げ渡す。


 カードに描かれているのは、黒い渦の背景と白いRの文字。【REVOLUTION(レボリューション)─支配】と、上部に記されていた。


「これは……」


「僕に勝ったご褒美さ、それをあげるよ。でも、気を付けるんだね。そのカードには僕の思念が宿ってる。僕のカードを利用するつもりで、乗っ取られないように……気を、付ける……こと、だ……ね……」


 カードを受け取ったキルトにそう言い残し、ネガは微笑みを浮かべながら消滅した。同時に、侵食されていたキルトの身体が元に戻る。


『……終わったな、キルト。これでもう、くびきから解き放たれた。完全に過去を絶ったのだ』


「うん、ありがとうルビィお姉ちゃん。僕一人じゃここまで……っと、感傷に浸ってる場合じゃないや。アスカちゃんたちを助けに行こう!」


『ああ、そうだな!』


 己がクローンを討ち滅ぼした少年は、愛する竜と共に空を駆ける。いまだ戦い続けている、仲間を助けるために。

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― 新着の感想 ―
[一言] ついに己のクローンを打ち破ったか・・・
[一言] また1つ、因縁が終わったか(´-﹏-`;) これでキルトのクローン・ネガは死んだが(ʘᗩʘ’)まだタナトスの所にキルトの腕が保管されてる限りクローンは増産されるがソイツがネガじゃないのがまた…
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