223話─遙かなる空の調べ
レドニスのことは一旦棚に上げ、キルトたちは素早く配置を決める。アドベント無しでは自力での飛行が出来ないフィリールと、ポータルによる移動の要となるエヴァは城に残ることに。
並行世界のサモンマスターたちの襲撃に備える意味でも、二人の役割は大きい。城の守りを託し、キルトたちはエルダードラゴンの群れを滅するため出撃していく。
「おー、見えてきおったで。ホンマえらい数おるな、こら骨が折れるわ」
「アスカちゃんとプリミシアさんは、エルダードラゴンたちをお願い。僕とルビィお姉ちゃんは、ネガを探して叩くよ」
キルト以外の二人は、能力の関係ですでにリジェネレイトを済ませた状態で敵の元に飛ぶ。少しして、エルダードラゴンの群れが見えてくる。
『ヴァール殿がアゼルたちに救援要請をしてくれたからな、しばらく辛抱すれば援軍が来る。それまで持ちこたえるくらい、お前たちならやれるだろう?』
「もちろん! 生まれ変わったボクの勇姿をたっぷり見せてあげるよ!」
いくらなんでも、キルトたち三人だけでエルダードラゴンの群れを全滅させるのは不可能。そのため、アゼルたちへ救援要請が送られた。
目下のところ、彼らの目標は二つ。雷帝の寝床への敵艦隊の到達阻止、並びに首謀者たるネガとオリジナルのオニキスの撃破だ。
「くぅ~、地球におった頃スマホゲーで遊んだタワーディフェンスみたいでワクワクするで! さあ、大暴れ開始や!」
「あ、待ってよアスカちゃ~ん!」
『やれやれ、騒々しい奴らだ。……さ、キルト。我らはネガを探そう』
「うん、気配は……こっちだ!」
キルトは気配を頼りに、ネガの元へ向かう。が、そうはさせまいと漆黒のエルダードラゴン五体が向かってくる。
「ギャオオオオオ!!」
「グルァァァ!!」
『来たか、面倒な連中め。キルトよ、さっさと』
「ここはウチにお任せやで、危ないから離れといてーや!」
敵を迎え撃とうと、デッキホルダーに手を伸ばすキルト。が、そこにアスカが現れ巨大砲を召喚する。そして、魔力をチャージしぶっ放した。
【シュートコマンド】
「ほれ、ドッカーン!」
「ギィアアアア!?」
「凄い、五体を纏めて……かっこいいよ、アスカちゃん!」
一撃で全てのエルダードラゴンを撃墜したアスカを、キルトが褒め讃える。ヘルメットで目元しか見えないが、ルビィにはアスカがニヤけ顔をしているのが丸わかりだ。
「ふへへへ、もっと褒めてくれてええんやでー? なんなら、ご褒美くれても」
「むっ、ボクだって負けないぞ! キルトくんからのご褒美を貰うのはボクだもんね! ギガブレイブナックル!」
「ウギアアアア!」
「ほーん、ほなら競争しよか! たくさんエルダードラゴン倒した方がご褒美や!」
キルトの意見を聞くこともなく、勝手にそんなルールを作った二人は竜の群れに突っ込んでいった。苦笑いした後、キルトは行動を再開する。
ネガの元へ向かうなか、またしてもエルダードラゴンが襲ってくる。今度はサモンカードを使い、自身の手で迎撃することに。
「グルウウウ!」
「邪魔だよ、引っ込んでてね!」
『ソードコマンド』
「食らえ! ドラグネイルスラッシャー!」
「グ、ルアアア!!」
背中に回り込み、右側の翼三枚を切り落として墜落させるキルト。最小限の消耗だけで済ませ、効率よく敵を倒し進むための工夫だ。
そうした攻撃を繰り返し、敵陣の奥へと進む。しばらくして、ついにキルトは見つけ出した。一際巨大なエルダードラゴンの頭に乗るネガを。
「やあ、早かったねえオリジナルくん。どう? 驚いてくれたかな、僕からのご挨拶は」
「うん、ビックリしたよ。どこからこんなに集めたのさ、エルダードラゴンたちを」
「ククク、連中ハ我ノ運命変異体。ネガガタナトスノ仲間ニ頼ミ、並行世界カラ連レテキテモラッタノサ」
『フン、リオから聞いたウォーカーの一族とやらか。くだらぬ小細工をしおって』
キルトとネガ、二人がついに対面する。ネガもまたオリジナルの要素が混ざり、右目の色がキルトのソレになっていた。
様子を窺うように周囲を旋回しているエルダードラゴンたちに、ネガはハンドサインを見せる。すると、一斉に雷帝の寝床へ向けて飛んでいく。
「さて、君には死んでもらわなくちゃならないんだよねぇ。僕がオリジナルになるためにさ。だから……空の藻屑になれ!」
『サモン・エンゲージ』
【Re:MUSPELHEIMR MODEL】
契約のカードをサモンギアに挿入し、変身とレボリューションを同時に遂げるネガ。オニキスが消え、黒き鎧となって相棒を包む。
『キルトよ、こちらもリジェネレイトで対抗してやろう。漆黒の獄炎など、我らの青き冷氷の力で消し去ってくれようではないか!』
「うん! やってやるさ!」
【REGENERATE】
【Re:NIFLHEIMR MODEL】
キルトもまたリジェネレイトし、青き聖騎士の姿となる。互いに構えた後、両者同時に相手へ突撃していく。
「てやっ!」
「はあっ!」
そして、渾身のパンチを相手目掛けて放つ。どちらの攻撃も相手の胸板にヒットし、キルトもネガも後方に吹き飛ぶ。
『キルト、大丈夫か?』
「うん、挨拶代わりの一発くらいでやられちゃうほどヤワじゃないよ」
『ネガ、我ハイツデモ出ラレル。必要ニナッタラスグニアドベントスルガイイ』
「ベストタイミングで召喚してあげるよ、だからそれまではじっくり蓄えておいてねオニキス。地獄の業火をね」
それぞれの相棒とやり取りをした後、キルトとネガは再び相手へ突進していく。因縁の対決のゴングが、ついに鳴らされた。
◇─────────────────────◇
「キルトたち、大丈夫だろうか……。やられていなければいいのだが」
「大丈夫よ、フィリール。何かあったらアタシのポータルでこっちに戻せばいいんだから」
「それもそうか。あまりやきもきし過ぎてもよくないな、うん」
一方、待機組の二人はバカみたいに広いテラスで双眼鏡を覗いていた。遠くに見える竜の群れを観察し、味方が劣勢なら呼び戻すために。
だが、そんな暇が彼女たちに訪れることはなかった。何故なら……。
「あらら、ネガったらアタシたちより先に来ちゃってるんだ。ま、いいけどね。余計な連中を引き付けてくれてるわけだし」
「二対二なら十分こっちにも勝機がありますからね、ティアさん!」
「貴様ら……いつの間にテラスに? ……レドニスの仲間か?」
並行世界のサモンマスター、ティアとサウルが到着したからだ。テラスと城を繋ぐ扉付近に現れた二人に、フィリールが問う。
「そうよ、アタシはティア。コードネームはサモンマスターダライア。それくらいは教えてあげる」
「俺はサウル、サモンマスタースペイダーって呼ばれてるよ。さあ、勝負だ! レドニスの仇を討たせてもらうぞ!」
「ふうん、なるほ……? ちょっと。そっちの女、あんたまさか……アタシの運命変異体?」
「あら? へぇ、これはとんだ偶然もあったものね。まさかアタシのオリジナル個体が敵だなんて。運命のイタズラって……やつかしら!」
『サモン・アブゾーブ:♦A:ENGAGE』
エヴァとそんなやり取りをした後、ティアは腰に巻いたダイヤのスートが描かれたベルトからダイヤのエースのトランプを取り出す。
そして、緑色の鎧を身に纏いカードに描かれていたオートマチックタイプの銃を構える。それを見て、サウルも変身を行う。
『サモン・アブゾーブ:♠A:ENGAGE』
「さあ、いざ尋常に勝負だ! 二人と二人、どっちのコンビが強いのか試してやる!」
「だそうだ、エヴァ。私たちの方が練度も絆も上だと見せ付けてやろうじゃないか」
「そうね、あんたと組むのもこれで三回目だし楽しい戦いになりそうだわ。さあ、来なさい。叩き潰してあげる!」
遙かなる天空を舞台に、それぞれの戦いが始まった。




