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222話─レドニスの正体

 エルダードラゴンの群れを引き連れ、フライハイトを目指すネガ。そんな彼の懐で、連絡用の魔法石が振動を始めた。


『ネガよ、どこにいる? お前のためにわざわざカトラを居残らせたのだ、サモンアブゾーバーの解析はしなくていいのか?』


「あー、悪いけど代わりにやっといてー。今が千載一遇のチャンスなんだよ、オリジナルを殺すのに。だから、タナトスの仲間の……なんてったっけ、なんとか星の奴にオキニスの運命変異体たくさん呼んでもらったんだよ」


『……エゴあたりがしゃしゃり出たか。まあいい、それならそれでこちらでやっておく。だが敵を侮るなよネガ。そこは命王アゼルの領域、踏み荒らせば不死者たちの洗礼を受けるぞ』


「だいじょぶだいじょぶ、僕は死なないから。じゃ、またねー」


 予定をすっぽかして出撃していったネガに呆れ、タナトスは咎めすらせず好きにやらせることにしたらしい。ティアたちに先駆け、ネガは攻撃を行う。


 一方、フライハイトでは迎撃準備が着々と進められていた。会議室に移動し、キルトはネガの気配を頼りに、敵の正確な座標を割り出そうと瞑想をしている。


「……感じる。東の方にネガの気配を。真っ直ぐこっちに来てるね、たくさんの気配と一緒に」


「東か……よし、魔力を多めに消費するがこの姿見に映像を出してみよう。キルトといったな、少し痺れるが我慢しておくれ」


「うひゃっ!」


 キルト自身の中に渦巻くネガの魔力と、ヴァールの魔力が混ざり合い会議室に設置された姿見に敵の様子が映し出される。


「げっ、なんやエルダードラゴンがぎょうさんおるやんけ! どっから連れてきたんやあの数!?」


「なんともこれは……流石に想定外だな。だが、アスカの言う通り……ネガめ、どこからこれだけのエルダードラゴンを連れて来た?」


「……多分、タナトスよ。あいつが並行世界からネガの相棒の運命変異体をパンパカ連れてきたんでしょ、どうせ。面倒なことしてくれるわね」


 アスカが仰天し、ルビィが訝しむなかエヴァがそんな推測をする。実際に運命変異体の群れを呼び込んだのはタナトスではないが、今の彼女らにはどうでもいいことだ。


「ふむ。このまま迎え撃てば街に住まう民に犠牲が出かねん。ならば……この雷帝の寝床を一時切り離し、島ごと迎撃に向かうとしよう」


「出来るんですか!? そんなことが」


「ああ、妾の魔力を全て注ぎ込めば可能だ。だが、それをやると妾は他のことを一切やれん。全て汝らに託すことになる、やれるか?」


「もちろん! ネガをここで倒します、見ててください!」


「分かった、汝らを信じよう。……雷霆の四肢よ、汝らに告ぐ! フライハイトの四つの島々を守るのだ!」


 エルダードラゴンの大艦隊が相手だと判明し、ヴァールは作戦を変更する。自身の居城がある島を他の浮島から切り離し、直接敵の元に乗り込むことを決めた。


 キルトたちに迎撃を、自身の部下に四つの浮島の守りを任せヴァールは全ての魔力を解放する。すると、島々を結ぶ金結晶のリングが消え去った。


「さあ、行くぞ! 揺れるからな、全員転ばぬように踏ん張れ!」


「はい! さあ、今行くぞネガ。あの時の勝負の続きだ、今度は白黒つけてやる!」


 雷帝の寝床が島ごと動き、敵の元へ飛んでいく。気合いを入れるキルトの肩を、エヴァが指でちょんちょんと突ついた。


「ねーキルト、敵にあのレなんとかの仲間がいないとも限らないじゃない?」


「あ、そうだねエヴァちゃん先輩」


「で、今ちょうどプリミシアが持ってきた生首があるんだけど……蘇生の炎使って頭だけよみがえらせてさ、情報引き出さない?」


「え、待ってそれ聞いてないよ!? プリミシアさんになんてことさせてるのさエヴァちゃん先輩!」


「ううん、いいんだよキルトくん。キミとルビィさんを死なせてしまった、ボクのみそぎだから」


 エヴァからのとんでもない提案に、キルトは嫌そうな顔をする。だが、並行世界のサモンマスターについては謎が多い。


 情報を引き出せれば、対抗策を容易に編み出せるようになる。エヴァの説得を受け、キルトは渋々彼女の案を受け入れた。


「蘇生の炎ならたんまりストックがある、今部下に取りに行かせるから待っているがよい」


「うう、やだなぁ。タイドウリョウイチみたいな真似するの、凄い落ち着かないよ」


「まあ、仕方ないさキルト。エヴァの言う通り、時には非道な行いをしてでも情報を得ねばならん。今回の敵は、色々と格が違うからね」


「うむ、フィリールもたまにはいいことを言うではないか。いつもドMってヨガるだけの阿呆ではないというわけだ」


「ルビィからの辛辣な一言……おっふ❤」


 そんなこんなで、桶に入れたまま持ってきていたレドニスの生首を蘇生させることに。そのままでは身体まで再生してしまうため、一工夫こらす。


 大きめの鉢植えに入れた土に、ヴァールとルビィの血を染み込ませた上でそこに蘇生の炎を入れ、レドニスの生首を土の上に置く。


 そうすることで、レドニスの意識を繋ぎ止める程度に再生させつつ、身体の復活を防ぐことが出来るのだという。実際にやってみると……。


「う……あれ? っかしーなー、オレ死んだはず……って、なにコレ」


「案外冷静なんだね、キミ。もっと驚いたらどうなのさ?」


「いや、驚けっつわれてもな。オレたち、そういうの特に何とも思わないように『造られてる』し」


 目論見通り、レドニスの生首がよみがえった。が、鉢植えの上に生首があるというシュールかつ不気味な光景に、キルトは顔を背ける。


 代わりに問うたプリミシアに、レドニス(生首)はどこか意味深な言葉をかける。異様な状態を平然と受け入れているあたり、何か事情がありそうだ。


「造られてる? どういうこっちゃねん、ジブン。一体何者なんや?」


「こんな状況じゃ、だんまりしても無意味だし教えてやるよ。オレとサウルはな、サモンマスター養成のために生み出された『フラスコの中の小人(ホムンクルス)』なんだよ」


「えええ!? ほ、フラスコの中の小人(ホムンクルス)って……生み出すのがとんでもなく困難なのに!? あの伝説の魔戒王、グランザーム様ですらたった一人を生存させることしか出来なかったのに……」


「へえ、基底時間軸世界はそうなのか。オレらのいた世界じゃ、フラスコの中の小人(ホムンクルス)なんてありふれたもんよ」


 フラスコの中の小人(ホムンクルス)。それは、大昔に闇の眷属たちの技術を集結させて定着させようとした人工生命を指す。


 だが、類い希なる英知の持ち主たちが知識を総動員しても生み出したフラスコの中の小人(ホムンクルス)を生きながらえさせる方法を編み出すことは出来ず、今では忘れ去られたモノとなっている。


「あー、ウチ知っとるで。地球でもむかーしヨーロッパとかで研究されてたんよ、錬金術と一緒に」


「ふぅん。ま、お前のことは置いといて。無から生まれた存在だからさぁ、これくらい見慣れてんだよねオレとサウル。だから、全く驚かないってわけよ」


「そう、まあそれはどうでもいいわ。今聞きたいのはあんたの仲間に関することよ。洗いざらい全部話しなさい、じゃないとまた死なすわよ」


「いーよ別に、どうせオレが死んだって別のオレがタナトスだっけ? あいつに呼ばれてくるだけだし。それに、仲間の情報売るわけねーだろよ」


 エヴァが脅しをかけるも、レドニス(生首)はけんもほろろに突っぱねる。自身の生死など、心底どうでもいいと考えてるようだ。


「そういえばさ。あの戦いで、キミは死ぬことに全く怯えてなかったね」


「おうよ、負けるのは嫌だからいろいろ抵抗したが別に死ぬのはどうってことねえ。そもそも、オレは人間じゃねえから命の価値なんてないしな」


「……哀れなものだ。創られし命とは、こうも自分を無下に扱えるものなのか」


 どこまでも自分の命に無頓着なレドニス(生首)を見て、ヴァールはそう呟く。キルトたちも、彼に哀れみを感じはじめていた。


「そう、分かったわ。とりあえず、棚か何かの中で大人しくしてなさい」


「へーへー、わぁーったよ。オレをまた殺すんならさっさとやりな、生かしておいても絶対喋らないから」


 話し合いは平行線をたどり、情報を引き出せそうにない。ネガたちの元にもうすぐ到着するため、一旦レドニス(生首)を片付けることに。


「……なんだか、可哀想な人だね。あんなにも自分の生死に興味なさそうな人初めて見た」


「そうね……でも、生き返ったとはいえ大勢の人間殺した奴だし。そこを反省しないと、生かしちゃおけないわ」


 どうにかして、レドニス(生首)に真っ当な人生を送ってほしいと思うようになったキルト。だが、まずは目の前の敵の撃破が最優先。


 複雑な思いを抱きながら、戦いの準備を進めるのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 本当に首だけ復活されてるレドニスだけど当人が白けきってるよ(ʘᗩʘ’) こいつ等もどういう組織の一員なんだ?(٥↼_↼) こんな事をしそうなのは理術院だろうけど全員ホムンクルスじゃないのが…
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