219話─燃え上がる真の勇気! プリミシア覚醒!
「っつう……やってくれたな、お前。危うく新品の釣り具がおシャカになるとこだったぞ!」
「フン、そんなの知らないよーだ。どうせならバキッと折れちゃえば……よかったのにね!」
【アサルトコマンド】
プリミシアの一撃で撃墜されたレドニスは、静かに怒りを燃やす。自分がやられたことより、趣味に使う道具が壊されかけた方が許せないらしい。
そんな相手を見下ろしながら、プリミシアは銃身に黄色いラインが引かれた赤色の拳銃が描かれたカードをスロットインする。
「今度はボクがお前を攻撃する番だ! さっきのボクみたいに逃げ回ればいいさ! サンフレアショット!」
「っと、銃使いか。でも残念だったな、そのテの相手はティアさんとの訓練でもう慣れてんだ!」
『♣2:CLASH』
「そらっ、ゴルフでお相手してやるよ!」
赤い毛皮を持つゴリラが描かれたトランプを武器に吸収させ、破壊の力を発現させるレドニス。ハンマーを地面に叩き付けて砕き、いくつかの土塊を作り出す。
そして、それをゴルフの要領で空にいるプリミシア目掛けてカッ飛ばした。予想外の攻撃に一瞬面食らうも、すぐに冷静さを取り戻し飛行する。
「べー、そんなの当たらないよー! 悔しかったらもう一回飛んでごらん! 食らえ、サンフレアショット!」
「うおっ、あぶね! んにゃろ、いつまでも調子に乗るなよ!」
『♣Q:GRAVITY』
挑発されたレドニスは、八枚の翼が生えた車輪に大きな目玉が付いたなんとも形容し難いモンスターが描かれたカードを取り出す。
カードの力を解き放つと、彼の身体が少しずつ浮き上がる。重力を操り、飛行とは別の形で再び空へと舞い戻ってきた。
「こいつは色々と制御がムズいんでね、普段は使わないんだが……今回は別だ、今度はオレがお前を叩き落としてやる!」
「やってみなよ、ボクを捕まえられるならね!」
【ナックルコマンド】
「ふふ、こうやって銃を撃つのもいいけど……やっぱりヒーローは殴り合いしなきゃね!」
真っ直ぐ突っ込んできた相手を避け、プリミシアは手の甲に太陽を模した装飾が施された、赤色の篭手が描かれたカードをスロットインする。
銃が消え、今度は篭手を装着しインファイト戦法へ切り替える。素手とは比較にならない、凄まじい破壊力を込めた拳でレドニスへ反撃していく。
「そらそらそらそら! もうボクは止まらない、このままお前を倒す!」
拳とハンマーがぶつかり合い、耳をつんざく金属音が鳴り響く。プリミシアもレドニスも、一切退かず互角の戦いを繰り広げる。
得物が大きい分取り回しが悪く、攻撃速度も劣るはずのレドニスの守りは堅い。プリミシアは焦らず、時間をかけて攻撃していく。
「なかなかやるな。だが舐めるなよ。さっきも言ったろ? オレにはまだ切り札があるって……な!」
「あ、どこ行くんだコラー!」
十数分に渡り、一進一退の攻防を繰り返す二人。しばらくして、このままではラチが明かないとレドニスが一旦離脱する。そして……。
「リジェネレイトっつたか、それと同じようなことをオレも出来るんだよ。さあ……オレのキングスタイルを見ろ」
【♣K:PROMOTION KING】
初戦も含め、エースからクイーンまで全てのカードをお披露目したレドニスは最後に残ったクローバーのキングのカードを取り出す。
白と金の集中線の中央にクローバーのスートが描かれたそれを、武器ではなく自身の鎧に融合させる。すると、レドニスに変化が現れた。
「オレが本契約しているのは、ゾウのモンスター『ガウズネーシャ』。ド迫力のパワーを全身で味わえ!」
「こ、これは……!」
レドニスの纏う鎧が増強され、より分厚く巨大なものになっていく。手足も胴体も、頑強な装甲に覆われ要塞の如き姿になった。
胸元には金色のひし形に囲まれたクローバーのスートが刻まれ、手足にも金のラインが走っている。
【PROMOTION:FORTRESS KING STYLE】
「ふう、この姿になるのも久しぶりだぜ。さあ、オレの装甲を砕けるもんなら砕いてみろ!」
「砕くさ、この命に代えてもね! ボクは負けない、キルトくんのためにも!」
【ブレイブコマンド】
たった一枚、ノーマルモデルの時から続投しているサモンカードを取り出しベルトにスロットインするプリミシア。
全身に金と赤のグラデーションに彩られたオーラを纏い、レドニスに突撃していく。渾身のパワーを乗せたパンチを放つが……。
「食らえ! ブレイブナックル!」
「おー? なんだ、今なんかしたか? へへへ、もう効かねえよ! そんなヤワなパンチなんてな!」
「うぐっ! クッ……ホントに分厚いね、拳が痺れたよ」
「余裕だな、じゃあもっと殴ってやるぜ!」
強固な鎧に弾かれ、隙が生まれるプリミシア。そこにハンマーがフルスイングされ、直撃を食らう。幸い、オーラで強化されているため軽傷で済んだ。
だが、相手の守りを崩せなければ勝機はない。それを理解しているプリミシアは、どうすればレドニスの鎧を攻略出来るか考えを巡らせる。
(さて、どうやってあの鎧をブチ砕くかな……。一点集中攻撃で耐久力を落とす? いや、それは相手も予想して対策してくるはず。なら……)
「何を考えてるか知らねえが、オレには勝てないんだよお前はな! エレファンツクラッシュ!」
「あぐっ!」
そうしている間に、レドニスは素早く距離を詰めハンマーを叩き込む。趣向返しとばかりにプリミシアを地に落とし、ニヤリと笑う。
「ハハハハ! ざまーみろ、さっきのお返しだ!」
「う……痛い、ね。でも、ボクを守って死んだキルトくんは、もっと痛い思いをしたんだ。それを思えば、これくらいなんてことない!」
「へえ、吠えるじゃん。なら、そろそろトドメを刺してやるよ」
『♣3:METAL』
『♣6:THUNDER』
『♣7:THORN』
『ULTIMATE COMMANDO:LIGHTNING MISSILE』
前回とは違う組み合わせのカードを使い、新たな奥義を放つレドニス。電撃を纏う、金属製の巨大なトゲが空中に出現する。
レドニスは目の前にあるトゲ目掛けて、思いっきりハンマーを叩き込む。勢いよくトゲが射出され、プリミシアへ迫る。
「そーら、コイツでトドメだ!」
「なんの、そんなもの当たらないよ!」
「逃げてもムダだぜ、そいつには自動追尾能力があるんだ。お前にブチ当たるまでどこまでも追いかけていくぞ!」
「……ん? 追いかける? なるほど、なら……」
再び空に舞い上がり、電撃を纏うトゲのミサイルから逃れようとするプリミシア。そこにかけられた嘲笑に、逆転の策を閃いた。
「ハハハ、逃げろ逃げ……ん? あいつこっちに……まさか!?」
「そのまさかさ、このミサイルをお前にぶつけてやる!」
【アサルトコマンド】
「くそっ、そうはさせ……うがっ!」
相手に接近し、追尾してくるミサイルをぶつけてやろうと考えたのだ。プリミシアは素早くオートマチック式の銃を召喚し、アブゾーブカードを取り出そうとしていたレドニスを撃つ。
エスケープのカードで逃げようとしていたレドニスだが、腕を撃たれカードを落としてしまう。これでもう、自力で逃げるしかなくなった。
「クソッ、こっち来るんじゃねえ!」
「残念、飛行の速度も精度もこっちが上さ! ほら、捕まえた!」
「うおっ、離せ! てめぇオレを道連れにするつもりか!?」
「そうだよ、お前を倒せさえすれば……ボクの償いは果たされる。確実にお前の息の根を止められるなら、ここで死んだっていい!」
逃げるレドニスに追い付き、後ろから羽交い締めにして動きを封じるプリミシア。そこに、死を告げるミサイルが迫る。
もう仲間たちに合わせる顔がないからと、レドニスを道連れに死のうとするが……。
『くぉら、ふざけたこと抜かしてんじゃねえぞこのスットコドッコイ! おめえが死んだらオレまで死ぬだろうが! んなことさせるかスカタン野郎め!』
「ちょ、待ってマッハトロン……あああーー!?」
「てめ、一人だけ逃げるなんてズル……うがあっ!」
当然、そんなのは彼女の相棒……バイクからジェット機になった『マッハトロン』が認めるわけもなく。相方の身体を無理矢理動かし、着弾寸前で離脱した。
結果、レドニスだけがミサイルの直撃を食らい地上に落ちていく。分厚い鎧も、流石に砕けてしまい防御力は失われた。
『よぉし、落ちたな! トドメを刺してやれ、プリミシア。あいつの首を持ち帰る仕事があるだろ、オメーにはよ』
「……うん、そうだね。力を貸してもらうよ、マッハトロン!」
『応!』
【アルティメットコマンド】
「これで……終わりだ!」
相棒に促され、プリミシアは天を駆けるジェット機が描かれたカードを取り出しスロットインする。その直後、彼女の身体から赤いオーラとなったマッハトロンが放たれた。
よろめきながら立ち上がる途中のレドニスに勢いよくぶつかり、全身を赤い鎖で絡め取り大地に縫い付け動きを封じる。
「ぐ、なんだこれ!? クソッ、オレはまだ……」
「終わりにするよ、これで。奥義……ヘリオライトジャッジメント!」
宿敵にトドメを刺すため、プリミシアは跳び蹴りのポーズを取り急降下していく。足先から螺旋状の炎を吹き出しながら、最後の一撃を叩き込む。
「てりゃあああああ!!!」
「ぐ……ああああああああ!!!」
レドニスに奥義が炸裂し、全てを燃やし尽くす。プリミシアが相手の背後に着地して振り向くと……そこには、首から下を炭にされた相手の亡骸があった。
『これでミッションコンプリートだな、え? プリミシア』
「そうだね、マッハトロン。こいつの首を持ち帰ったら……みんな、許してくれたらいいな」
マッハトロンにそう呟くプリミシアの顔には、晴れ晴れとした笑みが浮かんでいた。




