216話─レドニス襲来
「よっ、到着~っと。ふーん、あいつらメソ=トルキアとかいう大地にいるって聞いてたけど、今は別のとこにいるんだな」
キルトとプリミシアがナンパ男を撃退した頃、並行世界のサモンマスターの一人……レドニスがイゼア=ネデールに侵入していた。
じゃんけんの結果一番手となり、ネガによる探知の結果キルトたちがメソ=トルキアを離れたことを知ったのだ。
「こーんないいとこで遊んでんのかぁ、いいご身分だねぇ。キルトっつったか、そいつ殺したらオレらでここ占拠すんのも楽しそうだな」
メルカニオラにやって来たレドニスは、タナトスが偽造した観光パスを使いスパリゾートへと入り込む。怪しまれないよう、アロハシャツに短パンとラフな格好をしている。
鳥の巣のようにボサボサな緑色の髪を搔きつつ、更衣室で水着に着替える。そのままプールエリアへと進みキルトがいないか探す。
「ネガの言じゃ、ここら辺に気配を感じるってことだが本当にいるのかね……。ま、遊びながら探せばいっか。とりあえずなんか食ーべよ」
キルトの捜索を後回しにして、まずは食べ歩きしようと売店に向かうレドニス。一方、キルトたちはというと……。
「はー、恥ずかしかった……。まだ顔が赤くなってるかも」
「ごめんねキルトくん。あれ以外方法が思いつかなくて……。その、迷惑だったかな。キミにはルビィさんたちがいるし」
いまだルビィたちによるナンパ男の処刑が終わらないため、流れるプールでプカプカ浮いていた。サメ型の大型浮き輪に乗り、流れにみを任せる。
「ううん、そんなことないよ。確かに驚いたけど……迷惑だなんてこれっぽっちも思ってない。むしろ……う、嬉しかったかな。プリミシアさんも僕のことを大切に思ってくれてるんだって。うう、恥ずかしい……」
「キルトくん……。ふふ、ありがとう。思えば、ボクがヒーローを目指すきっかけになったのはキミの英雄譚だったな……。あの頃から、ボクはキミのことがす、好きだったんだ」
「ありがとう、プリミシアさん。僕もルビィお姉ちゃんたちと同じくらい、プリミシアさんのこと好きだよ」
「あはは……ありがと、キルトくん。……いつかボクに恋させてみせるからね、待っててよ」
お互いの気持ちを伝え合うも、悲しいことにそこにはライクとラブの決定的な差が存在していた。プリミシアは苦笑いしつつ、キルトに聞こえないよう小声で呟く。
三十分ほど流れるプールを楽しんだ後、次はプールエリア名物スパイラルウォータースライダーに乗ろうとする二人。だが……。
「おっと、そこの道行くお二人さん。待ちなよ、ちょっとオレに付き合ってくれないかな」
「はあ、またナンパかい? 悪いんだけど、ボクたち……」
「ああ、そっちのおチビ……お前がネガの言ってたキルトって奴か。確かにあいつと顔がおんなじだなぁ。変なの」
「!? お前、ネガたちの仲間か! 何者だ、正体を言え!」
「お、やる気だね。オレはレドニス・ムルギ。こことは違う、並行世界から呼ばれてやって来た……サモンマスターさ」
売店で腹ごしらえをしたレドニスが、キルトたちを見つけたのだ。ネガの名を聞き身構えるキルトたちの前で、レドニスは指を鳴らす。
すると、どこからともなく白色をしたベルト型のサモンギアが現れ腰に装着される。バックルの部分に、クローバーのスートが描かれたデッキホルダーが取り付けられ一体化しているようだ。
「どうしようキルトくん、デッキホルダーもサモンギアも更衣室だよ……!」
「それに、こんなところで戦ったら無関係な人たちを巻き込んじゃう!」
「いい子ちゃんだねぇ、あんたら。こっちはそんなの気にしないんでね、早速……仕事させてもらうよ」
『サモン・アブゾーブ:♣A:ENGAGE』
こんなところで敵が襲ってくるなど夢にも思わず、丸腰のキルトたちに戦うすべはない。そんなのは関係ないと、レドニスはデッキからクローバーのエースのカードを取り出す。
銀色のハンマーが描かれたカードが輝き、空中に得物が実体化する。さらに、レドニスの身体が緑色の全身タイツで覆われ、その上に白い鎧が装着された。
「そんじゃ、『サモンマスターグラル』……お仕事しますかねっと! おらっ!」
「プリミシアさん、危ない!」
「わあっ!」
キルトたち目掛けて突撃し、ハンマーを振るうレドニス。間一髪、キルトがプリミシアを抱えて飛んだことで直撃は免れる。
が、周囲にいた客たちがパニックに陥ってしまう。突然の戦闘に、我先にと逃げ出していく。
「きゃああああ!! 大変、変なのが現れたわ!」
「みんな逃げろ、巻き込まれたらタダじゃ済まないぞ!」
「誰か、誰か星騎士様に通報してぇぇぇ!!」
「うるさいなー、集中出来ないじゃん。じゃ、こうするかな」
『♣7:THORN』
逃げ惑う群衆がかんに障ったのか、レドニスは不満そうな顔をしつつデッキから新たなトランプを取り出す。大きなバラのモンスターが描かれた、クローバーの七のカードをハンマーへと投げる。
すると、カードが武器に吸い込まれ無機質な音声が鳴り響く。直後、レドニスはハンマーを上空へと放り投げた。
「そおら、みんな死ね! ソーンレイン!」
「うわっ、なんだ!? 何か降って……ぎゃあああ!」
「やめろ! お前の狙いは僕なんだろ、他の人たちを攻撃する必要なんてないじゃないか!」
「そりゃそうだけどさー、うるさいんだよねぇこいつら。だからさ、静かになってもらったわけよ。分かる?」
「な、なんて邪悪な奴……! ボク、もう怒ったぞ!」
レドニスの所業に怒ったキルトとプリミシアが相手を睨むも、戦うための手段がない。このままなぶり殺しにされる……と思われた直後。
「キルト! 済まない、必要なものを取りに行っていて合流が遅れた! ここからは我も戦うぞ!」
「ルビィお姉ちゃん! よかった、間に合った! エヴァンちゃん先輩たちは?」
「ああ、じきにここに来る。それまでは、我らで奴と戦うぞ。受け取れ、ロコモート!」
「わっ、サンキュー!」
異変に気付いたルビィが、キルトとプリミシアのサモンギアとデッキホルダーを持って駆け付けてきた。これで、レドニスと戦う準備は整った。
『サモン・エンゲージ』
「待たせたね、ラモンマスターグラル。この僕、サモンマスタードラクルと」
「サモンマスターロコモートがお相手するよ! 正義の味方が悪を挫く、覚悟しなよ!」
「へえ、そういう変身方法なのかそっちは。わざわざ攻撃しないでおいてよかった、いいもん見れた。……じゃあ、もう死んでいいぜ!」
落ちてきたハンマーをキャッチしたレドニスは、改めてキルトたちへ攻撃を仕掛ける。鉄鎚を振るい、相手を叩き潰さんと猛攻を加えていく。
対するキルトとプリミシアは、エヴァたちの到着まで時間を稼ぐ作戦に出る。……が、どれだけ待ってもエヴァたちが来ない。
『おかしい、何故仲間が来ない? エヴァのポータルがあればすぐ合流出来るはずだ』
「あー、無理無理。ネガが遠くで妨害してくれてっからね、今頃更衣室に閉じ込められてるさ!」
「なるほど、つまりボクたちだけでキミを倒さなきゃいけないわけだ。ま、そんなのは簡単だけどね!」
『シューターコマンド』
「そうさ、ロコモートの言う通り! お前はここで倒してやる!」
『ソードコマンド』
キルトは剣を、プリミシアはブーメランを。それぞれの武器を召喚し、レドニスを倒そうと攻撃を仕掛けていく。
だが、二人はまだ知らなかった。並行世界のサモンマスターの恐ろしさ……そして、その真の力を。
「威勢がいいね。じゃ、こういう『コンボ』はどうかな?」
『♣3:METAL』
『♣4:REFLECT』
『MIRRORING BODY』
「ドラグネイル……うあっ!」
『キルト! こいつ、今何をした!?』
「か、カードが武器に吸い込まれて……えっ、どういうこと!?」
デッキホルダーから新たに、金属製のゴーレムと鏡のモンスターが描かれたトランプを取り出したレドニス。二枚を同時にハンマーに吸収させ、その力を使う。
攻撃反射の力を備えた鋼鉄の肉体を得たレドニスは軽々とキルトの攻撃を防いでしまう。吹き飛ばされたキルトは、プリミシア共々驚愕することに。
「そうか……多分、あいつの使ってるシステムは僕らのサポートカードをさらに発展させたような感じになってるんだ! 並行世界のサモンマスター……強い!」
「褒めてくれてありがとう。じゃ、そろそろ死んでもらえる……かな! フルメタルインパクト!」
「そうはさせない、さっき助けられた借りを返す! 今度はキミの攻撃が跳ね返される番だ!」
『リフレクトコマンド』
再びハンマーを構え、キルトへ突撃するレドニス。攻撃を阻止しようと、プリミシアはタイヤ型の盾を召喚し立ち塞がる。
ロコモートとグラル、打ち勝つのは果たして……。




