209話─魔眼の邪戦士! サモンマスターランズ!
「切り札、ですか。何を隠し持っていようが、ぼくたちには効きません! そうだ、せっかくですからキルトくんに見せてあげます。ぼく自慢の子たちを! サモン・スケルトンナイツ!」
『これは……重武装したスケルトンが十五体も!』
「お呼びでしょうか、マスター。このブラック、どのようなご命令にも従います」
「喋ったぁぁぁぁ!? 凄い、ネクロマンサーって喋るスケルトンも作れるんだ!」
降り注ぐ隕石と飛んでくる魔力の弾丸を捌きつつ、アゼルは灰色の鎧兜と剣、盾で武装したスケルトンを15体召喚する。
そのうちの一体、黒いスケルトンが言葉を発するのを見てキルトは驚きをあらわにする。そんな彼に、ブラック隊長は一礼した。
「おお、お初にお目にかかります。我が名はブラック、マスター・アゼルの忠実なしもべにござい」
「いつまで話している! 余裕だな、ならさらに激しく行こうか! テンペストチェーン!」
「む、失礼。敵を滅して来ますれば……お前たち、出撃だ!」
「カカカ!」
追加で背中に四本の鎖を生やし、さらに攻め手を増やしてくるシモンズを倒すべくスケルトンたちは駆けていく。だが……。
「ん? どうした、ラ・グー。ああ、そうか。力を貸してくれるわけか、ならありがたく借りておこう」
「なんだ? あいつ一人で……!?」
「え!? た、隊長たちが消えちゃった!?」
「ククク、驚いたか? デッキに潜むラ・グーの持つ魔眼の力を借りスケルトンどもを消したのさ。お前たちには……こういうことが出来るぞ!」
シモンズの被っているマスクの額に、第三の目が現れる。瞳に睨まれたブラックたちは、溶けるように消えてしまった。
驚くキルトたちに視線が向くと、アゼル共々身体が石になったかのように動かなくなってしまう。ラ・グーの力の影響だ。
「まずい、このままじゃ……! とりあえず、蘇生の炎を」
「させん! 二人仲良くこの『魔剣ラズリオル』であの世に送って……」
「させると思うかえ? このわしが。闇魔法、ディザスター・ランス【雨】!」
「キルトくんに手出しはさせない! V:ストラッシュ!」
「これでも食らいなさい! エアハイツスピア!」
金縛りで動けないキルトたちにトドメを刺すべく、再度足の裏に宝石をセットしようとするシモンズ。その時、部屋の中に無数のポータルが開く。
そこから大量の闇の槍が放たれ、隕石を呼び出している目の模様を破壊する。さらにシモンズの近くにポータルが二つ現れ、そこからウィンゼルとイグレーヌが飛び出した。
「な……ぐあっ!」
「コリンくん! えーと……」
「ウィンゼルとイグレーヌです、アゼルさん。二人とも僕のいとこなんだ」
「なるほど、覚えました」
本家コンビの攻撃がシモンズに炸裂し、遠くに吹き飛ばされる。同時に金縛りも解け、キルトたちは自由に動けるようになった。
「遅れて済まんの、二と三以外の牢棟の制圧に時間がかかってしもうたわ」
『いや、間に合ってくれて何よりだ。ところで、残りの二人はどうした?』
「うむ、最後のスペシャルゲストの出撃準備が出来たようでな、迎えに行っておる。あと少しで来る、それまで持ちこたえるぞよ」
コリンとそんな話をしていると、ウィンゼルとイグレーヌが悲鳴をあげた。彼らもまた、魔眼の力を食らってしまったらしい。
「やってくれたな、虫ケラ風情が! 俺を怒らせるとどうなるかを教えてやるぞ!」
『アドベント・単眼の蛇竜:ラ・グー』
「いけない、あいつを止めなきゃ! これでも食らえ!」
【フリーズコマンド】
離れたところからラ・グーを召喚しようとしているシモンズを阻止すべく、キルトはフリーズコマンドのカードを使う。
アゼルとコリンが本家コンビの元に向かうなか、シモンズのベルトが凍り付きカードの発動が阻止された……かと思われた。だが……
「よし、今のうちに二人を」
「バカめ、魔戒王の力を甘く見るな! 出でよ、ラ・グー!」
『バカな、フリーズコマンドを無力化しただと!?』
「まずい、みんな逃げて!」
直後、ベルトを覆う氷が溶けて消えた。魔戒王の力を使い、無理矢理カードの効果を解除したのだ。仲間を守るため走りつつ、キルトは叫ぶ。
ウィンゼルとイグレーヌを背負い、後退しようとするアゼルたちのすぐ側に……単眼の蛇竜が、ついにその姿を現した。
「オオオオオオオオ!! 待っていたぞ、外に出られる時を。随分と待たせてくれおったな、え? 契約者よ」
「悪いな、だがここからはもう自由に暴れてくれて構わない。奴らを殺せ、王よ」
「!? あいつ……僕の知ってるラ・グーじゃない! あいつには、翼は一対しかなかったはずだ!」
「ん? 貴様は……ああ、なるほど。この基底時間軸世界でのアゼルか。フン、この世界では我のオリジナルに勝利したらしいな。実に気に食わぬ」
「なぬ? その物言い……まさか貴様は並行世界から来たのか!?」
かつての宿敵を見たアゼルは、違和感に気付き大声で叫ぶ。召喚されたラ・グーには、三対六枚の翼があったのだ。
ラ・グー本人の言葉から、コリンはある可能性に思い至る。すると、シモンズが得意気に語り出した。
「ああ、そうさ。オリジナルのラ・グーは闇の眷属の面汚しとして冥獄魔界の最深部に封印されちまっててなぁ、流石に買い取れなかったんだ。だからタナトスが呼び寄せたのさ。アゼル、お前との戦いに勝利した世界線のラ・グーを!」
「そういうことだ。契約者よ、例のカードを使え。我の力を貴様に使わせてやる、さっさとこやつらを殺して終わらせるぞ」
「くっ、まずいな。先走ってフリーズコマンドを使わなきゃよかった」
「なに、問題ないぞよ。わしが奴を倒してやるでな! ディザスター……」
「うるさい、これでも食らえ!」
『メテオコマンド』
衝撃の事実を知り、キルトたちは驚く。そんな中、ラ・グーは第三のカードを使うようにシモンズへ催促する。
コリンがそれを阻止せんと闇の槍を放とうとするも、再び隕石が降り注ぎ攻撃を止められてしまう。その間に、シモンズは上下に並ぶ人と獣の間に『+』マークが描かれたカードを挿入する。
『ユナイトコマンド』
「さあ、見せてやろう! ダイナライズに加えた、俺たちの切り札をな!」
『あやつ……バカな、あの蛇と融合しているぞ!?』
「あわわ、まずいですよこれ! この事態は想定外です!」
「うう、僕たちの身体が動けば……!」
直後、シモンズが消えラ・グーの顔の前に現れる。そして、蛇竜の鼻先に足がめり込みそのまま融合が始まった。
ルビィやアゼルが驚愕するなか、シモンズの腰から下がラ・グーの顔と一体化する。
「ハハハハハ! 素晴らしいな、力が溢れてくる……これが王の力か!」
「そうだとも。この力があれば……」
「うわっ!?」
「ぬおおっ!? なんじゃ、身体が浮く……」
「こういうことも可能だ!」
ラ・グーの力により、キルトたちの身体が宙に浮き上がる。そして、隕石の落下地点へと強制的に移動させられてしまう。
「うあっ!」
「くおっ!」
「きゃあああ!!」
「ハハハハ、どうだ! 隕石の雨を食らう気分は! さて、まずは誰から殺そうか……」
魔眼の力で動きを封じられ、隕石の直撃を受け続けるキルトたち。今はまだ耐えられているが、やがて装甲が砕ければ命が危うい。
抵抗も出来ない少年少女たちを見下ろし、誰から殺すか吟味するシモンズ。少しして、彼が選んだのは……キルトだった。
「やはり、まずはお前からだ! 呪われし魔剣に貫かれ死ぬがいい! ハァッ!」
「まずい、避けれな……」
『何をしようとしているのかしら? 私たちの子孫には……』
『これ以上手出しさせません。もちろん、僕の親友たちにもね!』
身動き出来ないキルトは、死を覚悟し目を瞑る。その時、どこからともなく二人の男女の声が響く。そして、天井が破壊され何者かが降りてきた。
現れたのは……死の世界から舞い戻ったフィルとアンネローゼだった。飛んでくる剣を素手で叩き落とし、アンネローゼは敵を睨む。
「貴様らは! くっ、もう来たのか!」
「嘘、ご先祖……さま? え、夢じゃ……ないの?」
「違うよー、僕とユウが連れてきたんだ! だからもう安心だよ!」
『はい! こんな隕石、全部ボクが砕いちゃうのでもう大丈夫です!』
キルトが呟くなか、リオとユウも天井の穴から降りてくる。隕石を呼び込む目を破壊しつつ着地し、ニコッと笑う。
「ホントに、ご先祖様が……来てくれたんだ。来てくれたんだよ、イル! 僕たちを助けに!」
「こんな……こんな出会い方をするなんて。どうしよう、涙でご先祖様たちが見えないわ」
『……ふふ。フィルくん、私たちの子が三人もいるわ。みんな、受け継いでくれたのね。ヒーローの魂を』
『ええ、嬉しさで胸がいっぱいですよ』
ウィンゼルたちを見ていたフィルは、軽快に指を鳴らす。すると、アンネローゼの腰に灰色をしたベルト型のサモンギアが装着された。
それを見たシモンズは、何かをされる前に仕留めようと五本の鎖を伸ばす。が、全て途中でチリとなって消えてしまう。
「バカな、何故鎖が消える!?」
「ムダだよー、僕がうすーい毒の魔力を使って障壁張ってるから。さ、フィルくんにアンネローゼさん! やっちゃって!」
『ええ、やるわよフィルくん。ダイナモドライバーに代わる力で、あいつを倒す! サモン……』
『エンゲージ! エターニティ・ラブハート……オン・エア!』
フィルとアンネローゼが手を握り合った瞬間、二人の身体からまばゆい光が溢れ出す。その場にいた全員が、あまりの眩しさに目を閉じる。
少しして、光が消えた後……そこには、六枚の天使の翼を背に生やし、黄金の鎧を纏ったアンネローゼの姿があった。フィルと本契約し、再び戦いの舞台へと舞い戻ったのだ。
『覚悟しなさい。私とフィルくんの愛のパワーで!』
『僕の子孫と友を傷付け、大切なドライバーを奪った罪を裁かせてもらいます!』
最後の審判の時が、今……訪れた。




