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208話─怨敵との邂逅

 群がる敵も逃げる者も全て斬り伏せ、燃やし尽くしたキルトとルビィ。二人は本棟の最奥部、院長の執務室の前にやって来た。


「着いたよ、お姉ちゃん。この先にタナトスが……いないね、多分逃げたと思う」


『だな、この先から漂ってくる気配は奴のものではないからな。ま、誰がいようが関係ない。……我らを敵に回したことを後悔させるまで』


「うん、ご先祖様の遺産を奪った罪を償わせてやらなきゃね! 行こう!」


 ドラグネイルソードを振るい、扉を斬り捨て部屋の中に突入するキルト。部屋の奥にある執務用の椅子には、一人の男が座っていた。


 短く刈り揃えた金髪がまぶしい、傷だらけの強面の男……シモンズ・ポトクリファ。天と地のダイナモドライバーを奪った者だ。


「誰かな、お前は。そこは今タナトスの席のはずだけど」


「お初にお目にかかる、サモンマスタードラクル。俺はシモンズ、機動部隊Ω-13『ポケットの中のチリ紙』の隊長にして……サモンマスターランズの名を戴く者」


『ほう、貴様が遺産を奪ったサモンマスターか。たった一人で我とキルトを迎え撃つとは肝の据わった男だな』


「ああ、そうでなければ隊長は務まらないからな。どうだ、場所を変えようじゃないか。ここは狭い、存分にやり合うなら……」


 鬼気迫る雰囲気のキルトにも臆せず、シモンズは指を鳴らす。すると、転移魔法が発動し地下にある戦闘用フロアに移動した。


「ここがいい。さあ、来るがいいサモンマスタードラクル。こちらも最初から……全力で行く」


「!? あいつ、ダイナライズキーを四本も!?」


『チッ、ネガめ! なんという開発速度だ!』


 懐から四本のダイナライズキーを、デッキホルダーから翼を広げる巨大な単眼の蛇が描かれたカードを。それぞれ取り出し、シモンズはベルト型のサモンギアに挿入する。


『サモン・エンゲージ』


『ダイナライズ:アニマクロス』


「……サモンマスターランズ、参る」


『ディセプティス・オーヴァロード……オン・エア』


 直後、シモンズの身体を無数の目玉模様が描かれた赤黒いライダースーツが覆う。その上から、胸部に『善者必滅』の文字が描かれた銀色の胸当てが装着される。


 同時に、手足を宝石のように青く煌めく篭手とブーツが覆い、背中に真っ赤な翼が生える。そして、頭をガスマスクの呼吸器が着いた……シュヴァルカイザーの仮面が覆う。


「凄いね、ご先祖様の技術のドカ盛りなんてよくやるよネガも」


「本来なら、あと一つあったのだがそちらは手に入らなくてね。代わりにこの力を使うのさ。かつての魔戒王……単眼の蛇竜ラ・グーの力を!」


『ブレイドコマンド』


 インフィニティ・マキーナを組み合わせたキメラとなったシモンズは、デッキからいびつに歪んだ刃を持つ剣が描かれたカードを取り出す。


 それをベルトのバックルに挿入し、ドス黒く染まった剣を召喚する。あまりにも禍々しい気配に、キルトの首筋を冷や汗が伝う。


『あの剣、とても邪悪な魔力に満ちているな。キルトよ、気を付けろ。擦っただけでもただでは済むまい』


「そうだ……うわっ!」


「お前の仲間には、我が部下を倒されているのでな。その首を捧げることで鎮魂にしようではないか! ジュエルバーストトレイン!」


 翼を広げたシモンズは、足の裏に生み出した小さな宝石を爆破して前方へ猛スピードで跳ぶ。両翼でバランスを取りながらキルトへと迫る。


 咄嗟に横に転がり、キルトは振るわれた剣を避けることが出来た。が、相手は即座に止まり反転して再度攻撃を仕掛けてくる。


「ムダだ、逃げられはしないぞ!」


「本当にそうかな? 僕も本気を出させてもらうよ!」


REGENERATE(リジェネレイト)


【Re:NIFLHEIMR(ニヴルヘイム) MODEL(モデル)


 二度目の攻撃を避け、後ろに跳びながらキルトはリジェネレイトを行う。カリバーコマンドのカードを取り出そうとした、その時。


「武器は使わせんぞ! チェインウィップ!」


 シモンズの腰から、先端に三叉の刃が付いた長い鎖が生えてくる。その鎖を使い、その場から動くことなく攻撃を行う。


 ジェディンが用いるインフィニティ・マキーナ、クリムゾン・アベンジャーの力を使っているのだ。激しい攻撃に、キルトは防戦一方に追い込まれる。


「もうっ、この……凄く邪魔!」


『キルトよ、こちらも出し惜しみしている場合ではないぞ。ここはアレを使って……』


「何をゴチャゴチャ言っている? カースドスラッシュ!」


「くっ! もう好きにはさせない、こいつで吹っ飛んじゃえ!」


【サポートコマンド】


 どうにか隙を見て、真っ赤な鎧とマントを身に着けた、ヒゲ面の大男……キング・ガンドラが描かれたサポートカードを取り出し、キルトはスロットインする。


 すると、カードに封印されていた王の名を冠するサイボーグが召喚される。それを見て、シモンズは素早く距離を取った。


「アレは……! チッ、なんて隠し球を」


「行け、キング・ガンドラ! 全兵装解放!」


「グ、オオオ……ヌンッ!」


『やけに素直だな……流石にもう諦めたか』


 一度召喚されてしまえばもう抵抗は無意味と考えたのか、ガンドラは全身に格納していたミサイルをシモンズに向けて一斉に放つ。


 相手が守りを固め、爆風に消えるなか……キルトは消えていくガンドラに魔力を与え、どこかに転送する。


「グオ……?」


「じゃあね、ガンドラ。クラヴリン王とは旧知の間柄なんでしょ? 彼の元でやり直す気があるなら、そのまま生かしてあげる。ずっとカードに封じて放置してたお詫びにね」


『よいのか、キルト。こやつはお前の先祖を殺そうとした敵だぞ?』


「まあ、三百年も前のことだしもうノーカンだよ。でも、こいつが悪さしようとしたら生かすために流し込んだ魔力が消えるようにした。それがセーフティにはなるよ」


「オ前……アリガトウ」


 このまま消滅するものと諦めていたガンドラは、そう言い残し暗域のどこかへ消えた。直後、爆風が晴れシモンズの姿があらわになる。


「やってくれたな、三百年前のオモチャを捕まえていたとは。だが……ここからは俺のターンだ! マナリボルブ:フルバースト!」


『キルト、来るぞ!』


「うん、全部避けて」


「不可能だ、俺自身も突撃するからな! ジュエルバーストトレイン!」


 シモンズは左手をキルトに向け、魔力の弾丸を大量に放つ。自動的にキルトを狙うように設定されているようで、逃げ道を塞ぐような軌道で迫ってくる。


 さらに、真正面からはシモンズ本人が突撃して死角を完全に潰す。全方位から攻撃が展開され、流石のキルトも絶体絶命……。


「させませんよ! ガードルーン、イジスガーディアン!」


「! このルーンマジック……命王アゼルか!」


「アゼルさん! ありが……なんか金ピカになってる……!?」


「ええ、ショートカットするためにレイスフォームを使って霊体になってるんです。驚きました?」


 と思われたその時、キルトの足下から両刃の斧が生えてきた。そして、青色のドーム型バリアが展開され弾丸の嵐とシモンズによる攻撃を防ぐ。


 続いて、淡い金色の霊体となったアゼルがひょっこり姿を見せる。壁や床をすり抜け、ショートカットして合流してきたようだ。


『ほう、実に興味深い魔術だな』


「ええ、ぼくの仲間が開発した……いや、話は後です。シモンズといいましたか、あなたにはここで消えてもらいます。理由はお分かりですね?」


「俺がラ・グーと本契約しているからだろう? 確かに、お前には許せないだろうな。あの蛇には散々苦しめられたものなぁ!」


「ええ、だからこそぼくはお前を許さない。あいつの力で災いを振りまくお前だけは! キルトさん、じきにリオさんたちも来ます。全員で奴を倒し」


「やってみろ、やれるのならばな!」


『メテオコマンド』


 サモンマスターランズを倒し、かつての宿敵を再び葬らんとアゼルは大斧を構える。直後、シモンズは降り注ぐ隕石が描かれたカードを読み込まれた。


 すると、空中に無数の目の模様が現れる。黒目の部分から赤く燃える隕石が出現し、キルトたちを狙って落下していく。


『チッ、数が多いな。キルトよ、フリーズで妨害するか?』


「いや、あのカードはあいつが奥義を使うまで温存しておくよ。これくらいなら全部防げるからね!」


【カリバーコマンド】


「ええ、ぼくもいますから楽勝ですよ。大丈夫、いざとなればスケルトンたちを呼び出せばいいんですからね! ハアッ!」


 そんなやり取りをしながら、キルトとアゼルは落ちてくる無数の隕石を砕いていく。彼らを見ながら、シモンズはマスクの下で笑う。


「その余裕も今のうちだ。俺にはまだ切り札があるからな」


 悪との戦いは、まだ終わらない。

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― 新着の感想 ―
[良い点] リクエストに応じてガンドラにワン・チャン与えてくれてありがとね(ノ゜0゜) アイツもフルスペックで活躍できずミサイル撃って終わりじゃ勿体ないからな(´-﹏-`;) でも改心しても再登場は…
[一言] アゼルにとっては放置できない相手だもんな・・・かつて苦しめられた宿敵が宿ってる相手だし、放置は出来んよね・・・
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