203話─大いなる海の覇者! ウォン・ジ・アドベンチャー!
ウォンの足下に水柱が吹き上がり、彼の全身を包む。水柱から漂う潮の香りで、マルカとロギウスはソレが海水であることに気付く。
少しして水が飛散し、新たな装いに身を包んだウォンの姿があらわになる。爽やかな水色の海賊コートと錨のマークが描かれた海賊帽、白いズボンを身に着けていた。
【Re:MARINE ADVENTURE MODEL】
「これが、俺の中に眠っていた力……。ふっ、悪くないな。そういえば、子どもの頃は海賊に憧れ」
「ハッ、くだらねぇ。姿が変わったくらいでなんだってんだ! 真っ二つにしてやるぜ!」
「そうはいかない。新しく得た力、見せてやる」
【アンカーコマンド】
ウォンはデッキホルダーから水色の錨が描かれたカードを取り出し、ペンダントにかざす。マルカを後回しにし、相棒を帰還させ突進してくるロギウスを迎撃するために。
右手を横に伸ばすと、鮮やかな水色の錨…の形をした大きなハンマーが召喚された。柄の部分を握り、ウォンは相手の攻撃に合わせ思いっきり振り抜く。
「死ね、ウォ……」
「悪いが、そうはいかないな! この『マリナークラッシャー』を食らうがいい! ハァッ!」
「おごあっ!?」
大剣による攻撃が届く直前、振り抜かれたハンマーがロギウスを吹き飛ばす。黒い装甲に包まれた巨体が吹き飛び、何本もの大木を薙ぎ倒していく。
「ハハ、とんでもねえな。サモンマスターの力……凄いも……うおっ!?」
「やーれやれ、こりゃまたとんでもない目覚ましだ。およ、どしたのウォンその姿。いつの間にリジェネレイトしたのさ?」
「目を覚ましたか、アリエル。話は後だ、悪いが母上を連れて技術財団の拠点に帰還してほしい。ここにいると危険だからな」
木がへし折れる激しい音で、気絶していたアリエルが目を覚ました。小屋の残骸を翼で吹き飛ばし、倒れているマルカを足で掴む。
「はいはい、パワーアップしたようだし一人でも楽勝っしょ。ほい、行くよー」
「わりいな、片腕も折られちまったし義足出すのもしんどいしで大変なんだ。道案内はすっから、安全飛行で頼むぜ」
「りょー。じゃ、また後でねウォン」
「ああ、ここは任せろ」
二人を見送った後、ウォンはロギウスを吹き飛ばした方向へ向き直る。直後、怒り心頭なロギウスが走って戻ってきた。
「この野郎、よくもやりやがったな! もう許さねえぞ、ぶっ殺してやる!」
『パワーコマンド』
『ストライクコマンド』
「なるほど、フル武装してきたか。……来い、これ以上お前の好きにはさせない!」
「しゃらくせえ! バラバラに切り刻んでやる!」
左腕に篭手を装備し、さらにパワーをチャージして万全な状態になるロギウス。二刀流で攻め立てるも、まるで攻撃が当たらない。
リジェネレイトしたことで、より身体能力が上がっているのだ。時折ハンマーを振るい、反撃しつつウォンはタイミングを窺う。
(……まだだな。今カードを使えば、奴の猛攻の餌食になる。ここはやはり、奴のパワーブーストが切れるまで回避に専念すべきだ)
相手の身体能力もサモンカードの力で大幅に向上しているため、今カードを使うのは自殺行為だと判断したウォン。
まずはカードの効果切れを狙い、ひたすら攻撃を避け、ハンマーで受け止め防ぐ。相手のデッキ構成を考察しつつ、反撃の時を待つ。
(恐らく、強化系のカードはこれで打ち止めのはず。奴の性格を考慮すれば、武器カード二種を三枚積みするはずだからな)
「どうした、あれだけデカい態度してたわりに……ゲッ、もう効果切れか!」
「! 今だ! アンカーストライク!」
「うぐおっ!」
十数分に渡る攻防の末、ついにロギウスにかかっていたブーストが切れた。その瞬間、ウォンはハンマーを叩き付け相手を吹き飛ばす。
「さあ、ハイシェンウー……力を借りるぞ!」
【オーシャンコマンド】
「てめぇよくも……ん? なんだ……水か? それ」
「ああ、だがただの水じゃない。俺が纏っているのは海水の鎧。あらゆる金属を錆びさせる攻防一体の装具だ!」
大海原の絵が描かれたカードを取り出し、その効果を発動させるウォン。すると、彼の頭からつま先まで全てが薄い海水で覆われた。
「ハッ、くだらねえ。そんなうっすい水の膜なんかで何が出来る……!?」
「出来ることはいろいろあるぞ? こうやってお前の武器を錆びさせたりな」
「くっ、早過ぎんだろ錆びるのが! 舐めてくれやがってよ!」
「ふふふ、俺が魔力を注げば注ぐだけ錆びる速度が上がる。その剣も、もう使い物にならなくなってきたようだな。せっかくだ、俺が処分しておこう。レイ家流格闘術、半月麗脚!」
ウォンの身体を覆う海水に大剣の刃が触れた瞬間、凄まじい速度で錆びていく。ものの数分で、使い物にならないレベルで錆びてしまった。
驚愕でロギウスの動きの止まった隙を突き、ウォンは回し蹴りを叩き込み大剣を破壊する。武器を片方失った相手に、さらなる追撃を放つ。
「追加だ、食らえ! レイ家格闘術、万撃翔脚!」
「ぐおっ、ぶふっ! クソッ、武器も鎧も錆びちまう……こうなったら!」
「くおっ! ……なるほど、奥義を使うつもりか」
左腕に装備した篭手でウォンの攻撃を防いでいたロギウスだが、大量の魔力を込めた海水を纏う蹴りの連打で破壊されてしまう。
このままではせっかくの鎧も失ってしまう……と、ウォンを無理矢理弾き飛ばし後ろに下がる。奥義を使って、一気にケリを付けようとしていた。
「もう遊びは終わりだ! ダイナライズの方がリジェネレイトより上だってことを教えてやる!」
『アルティメットコマンド』
「やってみろ、俺の鉄壁の守りを崩せるのならな。言っておくが、そう簡単にはいかないぞ!」
【ガードコマンド】
相手の動きに合わせ、ウォンは海賊旗が描かれたカードを取り出しサモンギアに読み込ませる。すると、マントのように海賊旗がウォンの背中に装着された。
「ハッ、そんな気取った格好で何が鉄壁の守りだ! 食らえ、ヘビーメタルトレイン!」
「来い、『ジョリーロジャーカーテン』の前には無力だということを教えてやる!」
メタルプレイジャスを召喚し、背に股がり突進するロギウス。ウォンはマントの端を掴んでひるがえし、身体の前面を覆い待ち構える。
果たして、二人のぶつかり合いはどちらに軍配が上がるのか。一分もしない間に、二人が激突する。
「ぬうらあああああ!! 気合い入れろメタルプレイジャス!」
「グルォォォォォ!!!」
「くっ、流石に少しは押されるな……。だが、俺は負けん! 守るべき者のために、この力を得たのだから! ぬううう……はあっ!」
「ぐあっ! バカな、メタルプレイジャスが押し負けただと……」
突進を受け止め、少しずつ後退していくウォン。だが、最後には彼の執念が勝った。マントを払い、ロギウスとメタルプレイジャスを吹き飛ばす。
そして、間髪入れず大渦が描かれたカードをサモンギアにかざし……トドメの一撃を放つ。
【アルティメットコマンド】
「これで終わりだ! 行け、ハイシェンウー!」
『シャアアアアア!!』
「ぐあっ! くそっ、こんな鎖ぃぃぃ!!」
ウォンが右腕を前に振ると、手の先から水色のオーラになった相棒……『ハイシェンウー』が飛び出す。リクガメ部分がウミガメに、白蛇の部分が青白いウミヘビに変わっていた。
オーラの直撃を食らったロギウスは、水色の鎖に絡め取られ地面に縫い付けられる。主人を助けようとするメタルプレイジャスだったが、鎖に触れた瞬間デッキに送還されてしまう。
「アリエルや母上を傷付けたこと、あの世で悔やむがいい! 奥義……」
「ありえねえ、ありえねえぞ! 俺はΩ-13の精鋭、こんな」
「メイルストロームハンマー!」
ロギウスの遙か上空、真上に跳んだウォンの身体を海水が覆っていく。そして、左目に眼帯を着けた巨大な水のドクロとなった。
表面に渦を巻きながら、ドクロは落下していく。サモンマスターグリッツに引導を渡すために。
「ぐ、お……がああああああ!!」
「これで……終わりだ!」
ドクロが着弾し、ロギウスを押し潰す。断末魔の悲鳴がこだました後、水の塊が弾けウォンが前方に飛び出した。
着地してから振り向くと、そこにはドクロに押し潰され、ひしゃげた肉と錆びた金属の塊に成り果て息絶えたロギウスの骸が転がっていた。
「……これで、母上たちを守れた。ありがとう、ハイシェンウー。俺に力を貸してくれて」
『シュルアッ!』
デッキの中に戻った相棒に、ウォンはそう語りかけ微笑む。こうして、彼は愛する家族と仲間を守り抜くことが出来たのだった。




