197話─死を超越せし者
「ほざくんじゃないよ、小娘! 本当に死なないのか試してあげるよ!」
『シュートコマンド』
『ミストコマンド』
デューラの恐ろしさを味わいつつも、ポリーナは新たなサモンカードを使い反撃を試みる。薄い赤色のもやが描かれたカードを使い、酸性の霧を発生させた。
酸の霧により、少しずつデューラたちの外殻が腐食していく。そこに、両肩に大砲を装備したフル武装ポリーナの攻撃が放たれる。
チェーンソーによる攻撃より、酸の砲弾の方が効果がある……というのもあるが、他にも理由があった。ダイナライズキーを使うためだ。
「ダメ押しさ、こいつで纏めて! チリにしてやるよ!」
『ダイナライズ:アニマクロス』
「よっと! つるを切るのがたいへ……! 会長、あいつキーを!」
『ディセプティス・リーヴ……オン・エア』
「慌てることはないわ、コリンズ。大丈夫、私たちは強いもの」
ダイナライズキーを鍵穴に差し込み、ホロウバルキリーの力を取り込むポリーナ。背中に薄いグリーンの翼が生え、両腕に緑と茶のぶち模様の円盾が装着される。
「ははははは! どうだい、これが私に与えられた力さぁ! これならお前たちを殺せるだろうねぇ!」
「……だそうです、生徒会長。一気に押し切っちゃいますか?」
「そうね、アリス。もうすぐコリンズ副会長がこっちに来るから、連携して……」
「チッ、気に入らないね! 私を無視して作戦会議たぁ随分と舐められたもんだよ!」
『アルティメットコマンド』
切り札を解放して得意気なポリーナだったが、自分を無視して話し合いをしているデューラたちにぶち切れることに。
ネズミをつるで捕らえ、呑み込もうとしているウツボカズラが描かれたカードをデッキから取り出しスロットインする。
「来な、ラスターケルプ! 飯の時間だ、奴らを食っちまいな! 奥義、キャプチャードライブ!」
「! つるが身体に……きゃっ!」
地下シェルターに続く入り口付近に、巨大なウツボカズラの姿をしたモンスター『ラスターケルプ』が姿を現す。下部からつるを生やし、デューラたちを捕らえた。
三人を一纏めにして、自身の内部へ繋がる穴の上に運ぶ。そこに、跳躍したポリーナがチェンソーの一撃を叩き込んだ。
「これで終わりだ! ラスターケルプの内部にゃなんでも溶かす消化液がたっぷりあるんだ、あっという間に消化されちまいな!」
「わぷっ!」
「うわっ!」
「ひゃあっ!」
三人仲良く相棒の体内に叩き落とし、勝利を確信するポリーナ。実際、デューラたちはあっという間に溶かされてしまった。……が。
「へっ、呆気ないもんだ……ん? なんだ、ラスターケルプの身体が膨らんで……!?」
「やれやれ、全身ベトベトだよ! それっ、ビートルチョッパー!」
「スコーパスシザー! よし、これで外に出られたわね。この力を授けてくれた先生には感謝しないと」
「そうですね、生徒会長。人のままだったら死んでましたよ、私たち」
数分もしないうちに、ラスターケルプの胴が切り裂かれデューラたちが姿を見せた。溶かされた身体を蘇生の炎で修復し、傷一つない。
植物のモンスターゆえに悲鳴はあげられないが、相棒であるポリーナは確信する。今の攻撃で、本契約モンスターが致命傷を負ったと。
「うぐ、あっ! お前、たち……なんなんだ、本当に。まさか、冗談抜きで不死身……だったとは、ね」
「そうよ、私たちは死を超えた。何度でもよみがえり、先生の敵を討つ。それがノスフェラトゥスの役目なのよ」
「へっ、そうかい。……勝てはしなかったが、タナトスの注文は……ま、達成したよ。いいかい、アンタらは……勝って、負けたんだ」
最後にそう言い残し、ポリーナは相棒共々息絶えた。謎多き末期の言葉に、デューラたちは首を傾げることに。
「私たちが勝って負けた……どういう意味かしら。まあいいわ、こうして敵を倒したんだもの。二人とも、シェルターに戻りましょ」
「はい、魔女たちに報告しないといけませんからね」
考えても分からないものは後回しと、三人はシャッターを解除してメイナードたちの元に戻る。後には、ポリーナとラスターケルプの死体だけが残っていた。
◇─────────────────────◇
「よお、また会ったな。つくづく、あんたとオレには縁ってものがあるらしいな、え?」
「……フッ。私も同じようなことを考えていた。これが運命というやつかな……。だとすれば、悪くないね」
時は少しさかのぼる。デューラたちの戦いが始まった頃、ネオ・メルナリッソス北部にあるアーキシュナ地区にて。
ネガの命により『ある作戦』に従事しているサモンマスターメタルス……ケイリーが迎撃に現れたローグと再会していた。
「運命、ね。で、その運命に導かれて再会しちまったわけだが。どうだ、今回こそ面倒くせえ任務なんて放り投げてよ。オレと茶でもしねえかい?」
「ふふ、嬉しい誘いだ。だが……こうしてサモンマスターの力だけでなく、ダイナライズキーも下賜された以上は戦わねばならない。Ω-13の誇りもあるしね」
「なんだ、結局やり合わなきゃならねえのか。残念だよ、あんたマジでオレの好みなんだがな」
最初の邂逅時に口説かれて以来、ケイリーはずっとローグと再会する時を心待ちにしていた。それこそ、隊長であるシモンズに驚かれるくらいに。
だが、そんな彼女もローグの説得にはそう簡単に応じない。すでに同志アグレラが戦死している以上、彼の死に報いねばならない。
そして、現在の上司であるタナトスやネガの立てた作戦を成功させるため、戦わねばならないと強い意志の元決めているのだ。
「お世辞だとしても嬉しいものだ。……そこまで言ってくれるなら、逆に君が私たちの仲間にならないか? タナトスには私が口利きしよう、だから」
「それこそノーだぜ。オレは取り戻さなきゃならねえのさ、かつての友の遺産を。そのためなら、好みの女ともやり合う覚悟はあるさ」
「そう、残念ね。なら……サモンマスターメタルス、容赦はしない」
『サモン・エンゲージ』
ケイリーは腰に下げたデッキホルダーから、ハサミを振り上げるカニのモンスター『クロンキャンサー』が描かれた『契約』のカードを抜き取る。
そして、ベルトのバックルにスロットインして変身を行う。ライダースーツの上に、カニの甲殻を模した黄色い鎧が形成される。
背中に生えた八本の脚の飾りを揺らしながら、ケイリーはローグを見据える。続いて、ハサミ型のブレードが描かれたカードを使用した。
『シザースコマンド』
「あなたの手足を切り落としてでも『お持ち帰り』させてもらうわ。私を口説くと、後が大変ってことを教えてあげる」
「そうみてぇだな。だが、その方が俄然乗り気になるってもんよ。デンジャラスな女ほど、スリリングなお楽しみが出来るってわけだ!」
一戦目の時のように、左腕にハサミ型の黄色いブレードを装着するケイリー。対するローグは、武器を呼び出すでもなくその場に立っていた。
それを見て疑念を抱くケイリーだったが、何もしなければ戦いは始まりも終わりもしない。罠を警戒しつつ、先制攻撃を放つ。
「大人しくしていなさい、そうすればすぐに終わる。好きなだけお茶が出来るわよ!」
「おっと、生憎そういう受け身なのは嫌いでね。こっちから激しくやるのがオレ流なのさ! 新怪盗七ツ道具、NO.2! メルトシャンの錠抜き棒!」
相手が振り下ろしたハサミを避けた後、ローグは懐からピッキング用の細長い棒を取り出す。サモンマスターに対する、彼なりの対抗策はすでに編み出してある。
後は、それを実戦で試すだけ。怪盗に不可能はないと、ローグは笑う。
「さ、行くぜ。宣言してやるよ、お前はオレに無力化され……二度とサモンマスターの力を振るえなくなるってな!」




