表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

180/311

175話─それぞれの夜

「ま、俺の両親は話はともかくだ。生憎、バルステラが何故こんな身の毛もよだつような所業をしているのかは分からん。役に立てなくて悪いな」


 話を終え、ウォンはそう口にする。ウィズァーラ王国の過去やウォンの家族については色々判明したが、肝心のバルステラの目的は分からず仕舞だ。


「気にすることはない、代わりに面白い話が聞けたからチャラにしてやる。さて、そろそろキルトの様子を見てくるとしようか」


「じゃあアタシも。傷心のキルトを慰めてあげないとねー」


 これ以上駄弁っていても進展はないだろうと、ルビィは部屋に戻ることにした。異形の者たちとの戦いですっかり心が疲弊したキルトを、慰めようとするが……。


「貴様はいらん、どうせキルトにイカガワシイことをするつもりだろう。大人しく部屋に帰って寝ていろ」


「はー? そんなのあんただって同じでしょうが! このスケベドラゴン、自分だけ清楚ぶってんじゃないわよ!」


「……なるほど。我を好色呼ばわりするとはよほど死にたいと見える。なら、今度こそ決着をつけてやろう、ついてこい」


「上等よ、どっちが上か思い知らせてやるわ」


 そこにエヴァが絡み、もうお約束のケンカモードに突入した。いつものことだからと、もはや気にするどころか一瞥もくれないアスカたち。


 トレーニングルームに移動する彼女らを見送りつつ、アスカはバーテンの真似事を始めウォンにカクテルを作る。


「ほい、長話で喉乾いたやろ? マティーニでも飲みいや」


「驚いた、アスカはカクテルまで作れるのか。料理に関しては、右に出る者がいないんじゃないか? 冗談抜きに」


「褒めても何も出えへんで? 酒は専門外やさかい、見よう見まねで作ったから味は保証出来へんわ。でも、こういう時に酒あるんと無いんとじゃモチベーション違うんやろ? 大人っちゅーもんは」


「ま、そういう者も大勢いるがそうでない者もいる。俺はまあ……前者だな」


「いいなー、ボクも大人になったら飲みたいねー。お酒」


 オリーブが添えられたショートカクテル用のグラスを手に取り、一気に飲み干すウォン。久しぶりの酒を味わい、一息つく。


 プリミシアが羨ましそうに見ていると、ルビィたちと入れ違いになる形でキルトとフィリールがリビングにやって来た。


「あ、キルト。もう平気なんか?」


「平気……ってわけでもないけど、ずっと落ち込んでるわけにはいかないからさ。気分転換に遊戯室で遊んできたんだよ、フィリールさんと一緒に」


「ああ、双子が案外すぐ寝たからな。暇になったから二人で卓上球技……アスカの世界だと卓球と言ったかな? それをしていたんだ」


「なんや、だったらこっちに来てたらよかったのにやぁ。ウォンの面白い話聞けたんに」


 いつまでも塞ぎ込んでいると、いざ決戦という時に悪影響が出るからとキルトはフィリールと共に気分転換をしていたようだ。


 少しずつ距離が縮まっていく二人に軽い嫉妬を覚えつつ、アスカはそう話す。今度はキルトたちに、先ほどの話をするウォン。


 彼らガーディアンズ・オブ・サモナーズが快適な夜を過ごしていた頃、ウィズァーラ王国北西部にいるルヴォイ一世たちはというと……。


「フンッ!」


「ギィ……アッ……」


「片付いたか。ミセラ、他に異形の気配は?」


「ありません、少なくともこの一帯にいるモノは全て討伐出来たようです」


「そうか、なら野営しよう。各々、必要なものを準備せよ。二人ずつ組んで、二時間毎に見張りをローテーションで回すぞ」


「ハッ!」


 キルトたちのように、バルステラに無理矢理本契約された人々と戦っていた。同行しているアルセナや、ミセラを含む六人の親衛隊と共に。


「やはり、本隊と三将軍はマルヴァラーツに待機させておいて正解だったな。彼らを見たら、間違いなく士気が下がる」


「はい、ワタシもそう思います。ゲールヴィアッセに到着後、転移魔法で呼び込む作戦にして正解でしたね、フィリップ様」


 当初、ルヴォイ一世は全軍を引き連れてウィズァーラ王国に攻め込むつもりでいた。が、それでは兵站等を考慮せねばならず、進軍速度が落ちる。


 最悪、一ヶ月以内にゲールヴィアッセに到達出来ない可能性があると考え、計画を大幅に変更したのだ。その結果が、この八人での遠征だ。


「さて、今のうちにゆっくり休ませてやろう。出るといい、カイザレオン」


「グルルル……」


「今日もご苦労だったな、存分に休め。明日もまた頼むぞ、急がねばならぬからな」


「……フスッ」


 親衛隊のメンバーたちがテントの設営をするなか、皇帝たちはそれぞれの本契約モンスターをデッキホルダーから出してリラックスさせる。


 ルヴォイ一世にたてがみをブラッシングされ、カイザレオンは満足そうにあくびをしていた。一方、アルセナはクズリ型のモンスター『ラグシュラット』と戯れていた。


「キキッ、クキキカッ!」


「こら、どこに登っている。ワタシは木じゃないぞ? そうだ、どうせなら木登り競争でもするか。どちらが早いか比べっこしよう」


「キーチチチッ!」


 突然変異で雪のように真っ白に染まった体毛を持つラグシュラットは、アルセナの身体で木登りごっこをしていた。


 ごっこでは物足りないだろうと、アルセナに提案され嬉しそうに鳴き声を出す。とにかく動きたくて仕方がないようだ。


「構わぬが、あまり遠くに行かないように。一応駆除はしたが、あの異形たちがいつ現れるか分からない。それに、次の見張り番は朕と」


「フィリップ様、ヤクソクですよ。二人きりの時は朕と言わないと」


「……ああ、そうだった。済まない、どうにもクセにやってしまって。肩肘張らないといけない生活を続けてると、どうしても……な」


 大国を束ねる皇帝ではあるが、フィリップもまだ年若い青年。十六歳の彼には、時々公私を分けるだけの余裕がなくなることがある。


 そんな時、いつもアルセナが側にいて彼を支えリラックス出来るように気遣っていた。今夜もまた、二人だけの世界が出来つつあった。


「そんな時は、ワタシに甘えてくださっていいのですよ。身も心も、ワタシはフィリップ様のモノなのですから」


「君をモノ扱いなど、そんなこと出来るわけがないだろう? もしそんなことをすれば、俺は君の部族に顔向け出来ない」


「ふふ、そう言ってくださるだけで……アルセナは嬉しく思います」


 お互いを見つめ合い、しばしそのまま動きを止める二人。そんな相棒たちを横目に、カイザレオンとラグシュラットは狩りごっこをしていた。


「ガルッ! ゴルァッ!」


「フシュア! シャーッ!」


 獲物役のラグシュラットを、前脚でパシパシ叩いて捕まえようとするカイザレオン。こちらもこちらで、大変仲がいいようだ。


 テントの設営をしながら、ミセラたち親衛隊は仲睦まじい主たちを微笑ましそうに眺めていた。



◇─────────────────────◇



「あ~、暇だ。流石に昨日の今日で来るわけねえか、あいつらは。なら、刺客でも送り込んで戦いを観戦するかねえ」


 その頃、バルステラは暇を持て余していた。キルトたちがゲールヴィアッセに来ないことには、彼の計画は進められない。


 さりとて、自分から出向くのも面倒くさい……と、やる気の無い覇王は本契約モンスターから何体かを送り込むことを決めた。


「さて、そうなるとどいつを……ああ、キルトに送り込むのにピッタリな奴がいたな。別にロストしても痛手にゃならねーし。こいつを送り込むか」


 脳内に存在するリストをチェックしていたバルステラは、どのモンスターを刺客にするか考えていたが……すぐに決まった。


『アドベント・ツインレディ』


「ひっ……! な、なんの用でしょうか……」


「ま、またお仕置きですか……?」


「いや? してほしいってんならしてやるが、呼んだのは別の用だ。お前ら、キルトの元仲間だったよなぁ? あいつが今オレ様の庭に入ってんだ、ちょっかいかけてさっさとこっちに来るよう発破かけてこい」


 双頭の巨人にされたメルムとエシェラが呼び出され、恐る恐るバルステラに声をかける。そんな彼女らに、覇王はそう告げた。


「お互いに積もる話もあるだろぉ? たっぷり話をしてこいよ、オレ様にナニをされたのか聞かせてやれ。ああ、殺したりするなよ? 分かってるよな?」


「は、はいぃっ! 分かっています、分かっていますからお仕置きだけは許してくださいぃぃぃ!!」


「いや……もう、痛いのは嫌なのお……」


「んじゃ、さっさと行け。オレ様の気が変わらないうちにな!」


「す、すぐ行きますぅぅぅ!!」


「ひええええ!!」


 バルステラに凄まれ、巨人は慌てて城を飛び出していく。四つの目には、恐怖が滲んでいた。

面白いと感じていただけましたら、ブクマ・評価等していただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] マルカの名が出たから変に感繕ったけど結局の所、前作のフィル編が完結してないから何がどおなったのか解らんじまいだしな(ʘᗩʘ’) あのマルカが変な物?危険物?を持ち込むなどあり得んし貰い事故…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ