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168話─白き雪の狩人! サモンマスターアルテミス!

 エヴァとプリミシアが敵を撃破した頃、キルトとアルセナの戦いも佳境に差し掛かっていた。剣と鎌のぶつかり合いを、キルトが制したのだ。


「てやあっ!」


「ぐっ! なるほど、それが噂に聞くリジェネレイトか。ワタシをここまで追い込むとは……その強さ、噂以上だ」


『キルトよ、そろそろ終わらせよう。この者を倒し、ウォンの安否を聞き出そうではないか』


「そうだね、お姉ちゃん。それじゃあ、そろそろアルティメットコマンドを──!?」


 ルビィに促され、奥義を発動しようとするキルト。その時、彼とアルセナの足下にコバルトブルーの魔法陣が現れる。


 それを見たアルセナは、ニヤリと微笑む。ついに準備が完了したと、嬉しそうに呟きを漏らした。


「準備? 一体何の準備なのさ!?」


「それは着いてから分かること。さあ、共に行こう。観客たちが待っている……ワタシたちが来るのを!」


 キルトの問いに、アルセナは答えになっているのかいないのかよく分からない返答をする。キルトとルビィが口を開く前に、二人は雪原から消えた。


 気が付くと、キルトとアルセナはコロシアムの中央に立っていた。ルヴォイ一世が発動した転移により、送られてきたのだ。


「な、なにここ!? ていうか観客すごっ!?」


「アルテミス! アルテミス! アルテミス! アルテミス! アルテミス! アルテミス!」


「キャー! アルセナ様こっち向いてー!」


『どうやら、我らは敵のホームに連れてこられたようだ……んん!? 見ろキルト、あそこに浮かんでいる牢の中を! ウォンがいるぞ!』


「ほんと……あれっ、なんでアスカちゃんにヘルガさん、トムス将軍がいるの!?」


 詰め掛けた観客たちによる、盛大なアルテミスコールに居心地の悪さを感じていたキルト。ルビィの声を聞き、上を見て仰天する。


 コロシアムの上空に円筒状の牢が二つ浮いており、片方にはウォンとトムスが、もう片方にはアスカとヘルガが囚われていたのだ。


 四人ともキルトに向けて何かを言っているようだか、牢そのものが遮音の魔法結界に包まれているため何も聞こえない。


「その三人は、ヴィクトル将軍が捕らえてレマールの首脳陣共々帝都に移送してくれたのだ。はじめましてだな、サモンマスタードラクル……キルト・メルシオンよ」


「! お前は……」


「名乗らせていただこう。朕はフィリップ・オルクトキア・フォン・ゼギンデーザ。この国を束ねる皇帝、ルヴォイ一世だ」


 何故南方にいるアスカたちが囚われているのか。疑問で頭が埋め尽くされているキルトの元に、ルヴォイ一世がテレポートしてきた。


『なるほど、そういうことか。殺さず捕らえるだけに留めたのは何が狙いなのだ? 皇帝よ』


「朕は諸君らを仲間にしたいのだ。我が理想、争いの無い統一世界を創るために」


「争いの無い……世界?」


「そうだ。話せば長くなるが、最後まで聞いてもらいたい。朕がこの大戦争に参加を決めた理由でもあるからな」


 そう口にした後、ルヴォイ一世はウォンにしたのと同じ話をキルトに語る。そうして、最後に彼にこう告げた。


「ウォンは言った。力で全てを統一するのではなく、互いに手と手を取り合うやり方もあると。そして、そのやり方なら君も力を貸してくれるだろうとな」


「うん、ウォンさんの言う通りだよ。貴方の理想は、僕も素晴らしいものだと思う。だけど、流れるべきでない血を流さずとも済む方法はある。貴方はそちらを選ばず、別の道を行こうとしてる。それだけは、受け入れられない」


「そう言うだろうと思っていたよ。だから、決めようじゃないか。朕と君、どちらが正しいのかを。だが、その前に」


「まずはワタシを倒しなさい、サモンマスタードラクル。ワタシに勝てないようでは、フィリップ様を倒すことなど不可能なのだから」


 皇帝の理想に理解と共感を示しつつ、その過程だけは否定するキルト。互いに争い、血を流さずとも平和な世界を創ることは出来る。


 そう主張するも、ルヴォイ一世は首を横に振る。こうなればもう、道は一つのみ。戦いの果てに、どちらが正しいかを決めるしかない。


「朕は観戦させてもらおう。サモンマスタードラクルよ、君の強さ……存分に見させていただく」


『消えた……上の方にある席に行ったか。ならば、我らのするべきことは一つ。なあ? キルト』


「うん! 絶対に勝つ。目の前の相手にも、あの皇帝さんにも!」


「フッ、言うじゃないか。なら……極寒の地で鍛えてきた狩人たるこのワタシを! 倒してみるがいい!」


『ブリザードコマンド』


 そう叫んだ後、アルセナはデッキホルダーから吹雪の絵が描かれたカードを取り出し効果を発動する。すると、バトルフィールドに吹雪が吹き荒れる。


『あのカードの効果か! 気を付けろキルト、吹雪で視界が利かぬ……我の目でも、奴の姿を捉えられん』


「それに、足音も全く聞こえない……。雪がそれなりに積もってきてるのに、どうやって歩いたら音を出さずに移動出来るんだろ」


 猛烈な吹雪により、視界が狭まり敵の姿を捕捉出来なくなってしまう。さらに、狩猟民族特有の技術により足音を立てず雪の上を移動してくるため聴覚も頼りにならない。


「なら、やることは一つだねお姉ちゃん」


『ああ。極限まで神経を研ぎ澄ませ、肌で感じるのだ。奴の気配、息遣い、そして』


「──僅かな殺気を!」


 目も耳もダメなら、肌で感じ取ればいい。相手の気配と、完全に消しきれていない殺気を。目を閉じて集中していたキルトは、おもむろに左腕をうなじの辺りに回す。


 直後、吹雪の中から強襲してきたアルセナの鎌が盾に叩き付けられた。素早く後ろを振り向き、剣を薙ぎ払う。


「食らえ! コキュートススラッシャー!」


「ぐっ! いい一撃だ……だが、その程度でワタシは倒れんぞ! ウィゼルラッシュ!」


 咄嗟に後方に跳ぶアルセナだったが、避けきれず腹部を僅かに切り裂かれる。観客たちが声援を送るなかで、キルトに反撃を行う。


「ワタシは負けない。愛しきフィリップ様のために勝ってみせる!」


『スナッチコマンド』


 キルトとアルセナが斬り結んでいると、少しずつ吹雪が晴れていく。サモンカードによる気象操作は、長時間は持たないようだ。


 次なる攻めの手をと、アルセナは第三のカードを取り出す。金貨のマークが描かれた袋に後ろから伸びる手が描かれたカードが発動し……。


「何をするか知……あれ!? 剣が無い!?」


『見ろ、奴が持っているぞ! チッ、サモンカードの効果で奪い取ったか!』


「これでお前は丸腰。トドメを刺させてもらう!」


 キルトの剣を奪った後、魔力を流し込んで破壊するアルセナ。折り悪く、今のキルトは攻撃系のサポートカードを所持していない。


 全て補助系統のため、アルセナに対抗出来るだけの攻撃は不可能。アルティメットコマンドは次戦のために温存せねばならないため、厳しい戦いを強いられることに。


「アカン、キルトはん苦戦してはる……。くっそ~、サモンギアさえ取り戻せればウチが加勢したるのに!」


「そいつは無理だな、ここからは出られねえ。腕一本くらいなら出せるがな」


「せやなあ……今のウチらじゃ、それくらいしか出来へんもんなぁ」


 劣勢を強いられるキルトを、上空から見下ろすアスカたち。やきもきするアスカに、ヘルガはそう口にする。直後、おもむろにスーツのジッパーを下げた。


「だが……まだ出せるものがあるぜ。『一枚』だけな」


「あっ!? そ、それはサモンカード!?」


「ククク、驚いたか? この戦争が始まってから、オレは常に一枚だけデッキから取り出して()()に仕込んでるんだよ。不測の事態が起きてもいいようにな」


 豊かな胸の谷間に手を突っ込み、コピーコマンドのカードを取り出すヘルガ。心の中で嫉妬の涙を流しつつ、アスカは問う。


 サモンカードがあっても、肝心のサモンギアが無ければ意味はないのではないかと。それに対し、ヘルガは答える。


「オレとお前でありったけの魔力を込めりゃあ、何かしらカードに変化があるだろ。それを下に落とせば、キルトの助けにはなるだろうよ」


「よっしゃ、そういうことなら早速やるで! キルトはんを助けるんや、ウチとあんさんの二人でな!」


「ククク……キルトを倒すのはオレだからな。他の奴には譲らねえ、特に……あんなイタチ臭ぇ女なんぞには絶対に」


 二人の乙女は、キルトを助けるためサモンカードに魔力を込めはじめる。その様子を、地上からルヴォイ一世が見つめていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 後はアルテミス1人かと思ったがまさかの強制転移で敵国のコロッセオに送られてしまったか(ʘᗩʘ’) 今までは地元の帝国なら歓声を受けてたけど敵国だと完全アウェーな空気だぞ(゜o゜; しかも…
[一言] >豊かな胸の谷間に手を突っ込み、コピーコマンドのカードを取り出すヘルガ。心の中で嫉妬の涙を流しつつ、アスカは問う。 エステル「ぐぎぎぎぎぎ」 うさぎ「はいはい落ち着き給えw あ、クナイ向け…
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