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166話─敵の喉元へ

 紺碧の長城を発ってから、五日が過ぎた。寝食をする時以外ノンストップでモートロンを駈り、ようやくマルヴァラーツ近郊にたどり着いたキルトたち。


 住民に見つかって騎士団に通報されないよう、大きな街を避けてきたため予想よりも時間がかかってしまったことに、キルトは焦りを見せる。


「まずいなぁ、ここまで五日もかかっちゃった……。ウォンさん、まだ処刑されてないといいんだけど……」


「確か、この国では敵国の要人は帝都に移送してから処刑するらしいな。そうだろう、プリミシア」


「うん、でもあれから結構日数経っちゃったし……大丈夫かな、ウォン」


「殴り込んでみりゃ分かるわよ、そんなの。もしもう執行されてたら派手に弔い合戦してやりゃいいのよ。この国を潰しちゃえばいいわ」


 帝都マルヴァラーツを囲む二重の防壁を、遠くにある林に隠れ双眼鏡で眺めるキルトたち。ウォンが無事か心配していた、その時。


「! 見て、キルト。門が開くわ。誰か出てくるわよ」


「あっ、あいつは! 間違いない、あの時長城にいた司令官の男だ! 周りにいるのは皇帝の親衛隊の連中だよ! ……一人知らないのがいるけど」


 南門が開き、レオナトルーパーズと白装束を纏うアルセナを伴ったガリバルディが姿を現す。何故彼らが姿を現したのか、それは……。


「!? あの女、こっちを見てる……まさか、気付いてるの!?」


「バカな、門からここまでは四キロほどあるんだぞ! それに、我らは林に隠れている。肉眼で見えるわけ」


「こんにちは、侵入者の皆さん。ワタシはアルセナ、誇り高き狩猟民族シュトラ族の娘。早速ですが、捕らえさせていただきます」


 プリミシアとルビィが話していた、その時。双眼鏡の向こうにいたアルセナの姿がかき消え、一瞬でキルトたちの元に現れた。


 キルトたちは、すでに捕捉されていたのだ。シュトラ族の持つ、高い感知能力によって。驚愕に息を呑みつつ、キルトたちは素早く散開する。


「くっ! いきなり来るなんて、心臓に悪いことするね! そっちがやる気ならこっちも!」


「ああ、返り討ちにしてくれる! やるぞキルト!」


『サモン・エンゲージ』


「チッ、テレポート……油断したわ。でも、挨拶代わりに一撃も与えないなんて随分悠長ね!」


『サモン・エンゲージ』


「うひー、いきなりの登場はおしっこちびるって!」


 キルトたちは四者四様のセリフを吐きつつ、変身を行う。それを見たアルセナは、笑みを浮かべ素早く木に登る。


 針葉樹林の中に身を潜め、仲間が到着するまでの時間稼ぎをするつもりだ。モモンガのように、素早く木と木の間を飛び回るアルセナ。


「さあ、来るといい。お前たちガーディアンズ・オブ・サモナーズの力……ワタシに見せてみろ!」


「そこまで言うなら、降りてきたらどう? ま、降りてこようがこまいが……全力で潰すだけだけどね!」


REGENERATE(リジェネレイト)


【Re:EXCITE(エキサイト) BEAT(ビート) MODEL(モデル)


「もう、エヴァちゃん先輩ったら初っ端から飛ばすなぁ。なら僕も!」


REGENERATE(リジェネレイト)


【Re:NIFLHEIMR(ニヴルヘイム) MODEL(モデル)


 アルセナを仕留めるべく、切り札たるリジェネレイトを発動するキルトとエヴァ。氷の聖騎士と闇の楽士となり、樹上を飛び回る敵に攻撃を加える。


【カリバーコマンド】


【ビートコマンド】


「さあ、行くよ二人とも! まずは……この木を全部切り倒す!」


「そうすりゃ相手はもう、逃げる木が無くなるものね! プ……ロコモート、ちゃっちゃとやるわよ!」


「オッケー、任せて! ……二人ともいいな、ボクも新しい姿になりたーい」


『スロウコマンド』


 それぞれの得物を呼び出し、木を伐採していくキルトたち。次第に逃げ場が無くなり、窮地に陥るアルセナだが……。


「なるほど、なら……そろそろこちらから仕掛けさせてもらおうかな」


『シックルコマンド』


 左腰に下げている、イタチの顔を模したエンブレムが刻まれた、スノーホワイトカラーのデッキホルダーから一枚のカードを取り出す。


 広がった扇状の鎌の刃が描かれたソレを、右手の中指に装着した白い指輪型のサモンギアにかざして効果を発動する。


「サモンマスターアルテミス、参る! サモンマスタードラクル、いざ尋常に勝負せよ!」


「来た! ルビィお姉ちゃん、迎撃するよ!」


『任せよ、我とキルトの力で奴を仕留めてやろうではないか!』


 マントをひるがえし、着地しながらキルトを斬り付けるアルセナ。対するキルトは攻撃を左腕の盾で防ぎつつ、相手を押し返す。


「ロコモート、アタシたちは林の向こう側に行くわよ。あいつの仲間もこっちに来てるはず、そいつらを倒すわよ!」


「いいの? キルトくん放っておいて」


「大丈夫、キルトならあんな女に負けたりしないもの。さ、こっちよ!」


 アルセナと互角に斬り結ぶキルトを見て、エヴァは一人でも大丈夫と判断する。プリミシアを連れ、半壊した林を突っ切り残りの敵の元へ向かう。


 キルトはアルセナが邪魔をするものと思っていたが、意外なことにそうはしなかった。エヴァたちを素通しし、キルトへ反撃を行う。


「行かせちゃうんだ? 仲間はサモンマスターじゃないのに」


「問題ない、我が同志とガリバルディ閣下はお前たちにも対抗出来る武器を持っているからな。むしろ、数の差でお前の仲間の方が負けるかもしれないぞ」


「それはないよ。エヴァちゃん先輩もロコモートも強いからね! 僕は信じてる、二人が勝つって!」


「そうか、だが勝つのはレオナトルーパーズとガリバルディ閣下だ!」


 互いにそう口にしながら、刃をぶつけ合う。一方、林を抜けたエヴァたちは短距離テレポートによってアルセナと合流しようとしていた残りの敵と戦いを始めていた。


「来たわね、ゼギンデーザの戦士たち! 悪いけど、仲間のところには行かせないわ。ここで全員仕留めてあげる!」


「前回はマスクを斬られて取り乱しちゃったけど……同じミスは二度しない! さあ、かかってこい!」


「ふむ、なれば俺はあのマスク女ともう一度戦おう。諸君らはもう一人を!」


「ハッ! 親衛隊、攻撃隊形用意!」


 長城で白黒つけられずに終わったプリミシアとガリバルディは、決着をつけるため再度刃を交えることに。一方、エヴァは一人で親衛隊六人を相手するつもりのようだ。


「来なさい、纏めて相手してあげるわ。アタシのグルーヴ、バチバチに魅せてあげる! さあ、ライブの始まりよ!」


「来る! 総員散開!」


「攻撃を避けつつ追え! 包囲網を構築するのだ!」


 プリミシアを巻き込まないよう、戦っている彼女から離れつつギターから破壊音波を放つエヴァ。親衛隊の面々は、当たらないよう避けながら追撃する。


「サモンマスターブレイカ、覚悟せよ!」


「あら、アタシのこと知ってんの? 光栄ね、テンション上がるじゃないのよ!」


「! 楽器で槍を……がはっ!」


 プリミシアとガリバルディがいる場所から数十メートル移動し、もう巻き込む心配はない。そうなれば、もうエヴァは止まらない。


 ギターを使って敵の槍を受け止め、メーターに溜まった魔力を解き放ち衝撃波を浴びせる。攻撃したシュトラ族の戦士は吹き飛び、雪に埋もれることに。


「一人ではダメか……二人ならどうだ!」


「挟み撃ちにしてくれる!」


「いいわ、どんどん策を弄しなさい。何をしてこようが、名前の通り全部ぶっ壊して(ブレイク)あげる! エクスビートスピーク!」


「甘い、もう軌道は見切ったぞ!」


 残り五人のうち、二人が左右に分かれてエヴァを挟み撃ちにしようとする。ギターをかき鳴らしてメーターに魔力を溜めつつ、破壊音波を放つエヴァ。


 向かって右から来る相手に浴びせようとするも、軌道を読まれかわされてしまう。が、その程度は何の問題もない。何故なら……。


「ふーん、そう。じゃ、こうするだけよ!」


「なっ、音波が戻って……うぎゃっ!」


「フェイ! 貴様、よくも!」


「おっと、あんたは直接ぶった斬ってやるわ! フォルティシモスラッシャー!」


「あがっ!」


 魔力を消費し、自動追尾効果を得た音波が背中に直撃し二人目の戦士が吹き飛ばされる。同時に攻撃をしていた三人目がエヴァを襲うも、ギターで斬られ地に倒れ伏す。


「くっ、こやつ強いぞ……! あっという間に三人もやられてしまった……」


「アルセナ様を……いや、無理だ。相手が救援を呼ぶのを許しはすまい」


「よく分かってるじゃない。さ、あんたらもちゃっちゃか倒してあげる。バイブス上げて絶好調なこのアタシがね!」


 親衛隊は残り三人。エヴァのライブは、まだまだ続く。

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― 新着の感想 ―
[一言] 今度の雌ライオンは随分と玄人筋らしいな(ʘᗩʘ’) 元祖雌ライオンは色々と未熟な所が多かったが今度は武人として完成してそうだな(٥↼_↼) どっちかと言えばアーシアよりか?(⑉⊙ȏ⊙)
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