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163話─鳴り響く戦いのメロディ! エヴァ・オンステージ!

 エヴァがギターをかき鳴らす度、楽器の表面に浮かぶ円形のメーターに魔力が少しずつ溜まっていく。魂を揺さぶる激しい旋律と共に、攻撃が繰り出される。


「こいつを食らいなさい! エクスビートスピーク!」


「へえ、指向性のある破壊音波ね……でも、当たらなくちゃ意味ないね!」


「そうね、逃げられるんならの話だけど!」


「!? この音波、僕を追って……ぐはっ!」


 ギターの弦が震え、三重のリングの形をした音波が放たれる。音波は真っ直ぐネガに向けて飛んでいく……が、速度があまりないため避けられてしまう。


 余裕の笑みを見せるネガだが、エヴァがメーターに溜まった魔力を消費したことでリングに変化が現れた。色がオレンジから紫に変わり、速度を増してネガを追尾したのだ。


「わあ、凄い! エヴァちゃん先輩、これどうなってるの?」


「簡単な話よ、キルト。アタシが演奏をする度、このビートメーターに魔力が溜まるの。それを消費することで、量に応じて攻撃の特性を変えられるのよ」


「ナルホドナ、今ノ攻撃ニ追尾性能ト速度ノ上昇ヲ付与シタトイウワケダ。面白イ、我ニモ通ジルノカ試シテミルガヨイ!」


 音波の直撃を食らったネガが血飛沫をあげて吹き飛ばされるなか、続いてオニキスが動く。エヴァは再び楽器を鳴らし、音波を放つ。


 だが、彼女の堅い鱗には普通の破壊音波は効かないようだ。キルトはリジェネレイトし、相手を迎え撃とうとするが……。


「ストップ、キルト。ここはアタシに任せて。この力を試したくてウズウズしてるのよ……こんな風にね! てやっ!」


「ゴハッ!」


「奴め、直接殴りに行くとは。だが、このままでは落ちるぞ!?」


「心配無用よ、ルビィ! アタシには翼があるから!」


【ウィングコマンド】


 ルビィの頭を蹴って前方に飛び出し、オニキスの額を斧刃で殴り付けるエヴァ。このままでは落下してしまうが、そうはならない。


 デッキホルダーから七色に輝く『♪』の形をした音符が描かれたカードを取り出し、ティアラに挿入する。直後、エヴァの背中に音符を模した翼が生えた。


「グウッ……オノレ、ヤッテクレルデハナイカ。デハ、コチラモ本気ヲ……」


「出しちゃおうか、オニキス。もっとデータを取るには、本気の抵抗をしてもらわなくちゃいけないしね」


 数歩後退したオニキスは、頭を振って体勢を立て直す。傷を癒やし頭上に降り立ったネガと共に、キルトたちを葬るため魔力を解放する。


 キルトたちが身構えるなか、ネガはデッキホルダーに手を伸ばし……。


「そこまでだ、ネガ。名残惜しいだろうが、タイムアップだ。帰るぞ、理術研究院にな。クラヴリン王から買った部隊用のサモンギアを作ってもらうぞ」


「あ、タナトス。ちぇー、しょうがないなー。君たち、運がよかったね。今日はもう帰らなくちゃいけないから、また今度遊んであげるよ」


「はあ!? 待ちなさいよ、こっからがいいとこなんじゃない! ちょっとタナトス、水差すんじゃないわよ!」


 サモンカードを引き抜こうとした瞬間、タナトスがネガの前に現れる。どうやら、ネガに仕事をさせるため連れ帰りに来たらしい。


 ご丁寧に結界を張って自身とネガ、オニキスを包み込んでキルトたちの攻撃を遮断する徹底っぷりだ。


 当然、納得いかないエヴァは猛抗議して戦いを続行させようとする。だが、そんなのは知ったことではないとばかりにタナトスはポータルを開く。


「悪いな、こちらも忙しくてね。新たな力を得た君に興味はあるが、今は別件が最優先なのでな」


「次はちゃんと殺してあげるからさ、楽しみにしててよ。僕に怪我をさせたこと、後悔させてあげる」


「フシュル……仕方アルマイ、決着ヲツケルノハ次ニ持チ越シダ」


「あっ、待て! ……行っちゃった。もう、タナトスったら本当空気読まないな!」


「ま、いいわ。とりあえず前回やられた分はやり返してやったし。次会った時にぶっ殺してやればいいのよ」


 ネガに逃げられ、憤慨するキルト。そんな彼を宥めつつ、相手に少なくはないダメージを与えリベンジ出来たことに一旦満足するエヴァ。


「しかし、キルトのクローンか……。薄気味悪いな、キルトが二人もいるとは。頭が混乱しそうだ」


「そうだねー、平行世界から来た別の僕ってんなら気にならないけど……なんか嫌だな、あいつ。……っと、いつまでもここにいるわけにいかないや。早くロコモートの援護に行かなきゃ!」


 撤退されてしまったものは仕方ないため、キルトたちは長城に戻る。その頃、プリミシアは長城の内部を進んでいた。


 モートロンをデッキに戻し、片っ端から襲いかかってくる敵兵を叩きのめしていく。そうしてどんどん制圧していくなか……。


「くんくん。匂う、匂うぞ~。助けを求める人たちの匂いがぷんぷんするねぇ。こっちの方かな、人の気配が……むっ!」


「よくぞ来た、デルトア帝国に与するサモンマスターよ。我が名はガリバルディ、ゼギンデーザ三将軍が一角『幻槍将軍』なり!」


 紺碧の長城を奪取した敵の総大将、ガリバルディが姿を現した。緑色の大槍を携えた敵を前に、プリミシアは微笑む。


「へえ、敵の大将のお出ましだね。いいよ、いざ尋常に勝負! ……と言いたいけど、逃げた方がいいんじゃない? サモンマスターに普通の騎士は勝てないよ?」


「ハッハッハッ! 心配無用、こんなこともあろうかと……我ら三将軍は皇帝陛下よりオルタナティブ・コアの技術を応用した特製の武器を賜っておる! 貴様とも互角に戦えるほどの銘品をな!」


 そう叫びながら、ガリバルディは槍を構え突進していく。穂先が近付くにつれ、プリミシアを薄ら寒い感覚が襲う。


(あいつが言ってることはハッタリじゃない! 避けないと……死ぬ!)


「ほう、避けたか。見事、ではこれはどうかな!」


「くっ、危なっ!」


 サモンマスターとしての勘に従い、横に飛んで突進を避けるプリミシア。ガリバルディは急ブレーキをかけ、槍を横薙ぎに振るい追撃を放つ。


 それなりに広い通路にいるとはいえ、完全に避けるには至らず……プリミシアの被っているマスクに、穂先がかすり僅かに裂傷が走る。


「! ボ、ボクのマスクが!」


「そういえば、貴様は常にマスクを被っているそうだな。情報部の調べでも、正体はようとして知れず……ちょうどいい、ここで素顔を暴かせてもらおう!」


「ひいっ! ダメダメダメ、それだけは絶対にダメだって! そんなのは許さないよ、天地がひっくり返ったってダメー!」


 素顔を見られることに強いコンプレックスとトラウマを抱いているプリミシアにとって、ほんの僅かでも顔が露出するのは耐えられないことだった。


 それまでのヒロイックな雰囲気が一変、パニックに陥り滅茶苦茶にブーメランを投げまくる。これには、流石のガリバルディも攻めあぐねてしまう。


「むう、なんだこの変わりようは……。まるで癇癪を起こした子どものよう……」


「ロコモート、どこー!? 加勢に来たよ、返事してー!」


「この声は……! むう、仲間が戻ってきたか! 流石に多勢が相手では勝算薄し……ここは潔く退くとしよう!」


 ガリバルディにとってタイミングが悪いことに、キルトたちが長城に戻ってきてしまった。このまま合流されれば、流石に分が悪い。


 せっかく占領した長城を手放すことにはなるが、捕まってしまうよりはマシと撤退を選ぶ。特別製の転移石(テレポストーン)を使い、残存している仲間全員を連れ帝都に帰還する。


「今回は貴様に勝ちを譲ろう。だが、次は盤石の軍勢を引き連れこの雪辱を果たさせてもらう! ではさらばだ!」


「はあ、はあ……。よかった、いなくなった……。素顔、見られなくてよかったぁ……」


 ガリバルディが撤退し、ようやく正気に戻ったプリミシア。へなへなと座り込み、安堵の息を漏らす。目尻には、涙が浮かんでいた。


「ロコ……あ、いた! ……って、大丈夫!? もしかして、敵に何かされたの?」


「キルトくん……うう、うえええん!」


 そこにキルトたちが現れ、プリミシアに駆け寄る。仲間と合流したことで涙腺がさらに緩み、プリミシアは泣き出してしまった。


「こやつが取り乱すとは……余程強い恐怖を味わったようだな。敵将の仕業か……?」


「かもしれないわ。帝国三将軍は皆手練れだし、今はオルタナティブ・コアなんてパチモンもあるから。ゼギンデーザ帝国、恐るべし……ね」


 泣きじゃくるプリミシアを見て、ルビィとエヴァはそんな会話を行う。が、その推測が間違いだと、のちに二人は知ることになるのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] これからクライマックスのステージをドタキャンするとは相変わらず空気の読めない奴よ(ʘᗩʘ’) でも新しい手駒が到着したのは聴き逃がせんな(↼_↼) ロコモートも普段は気取ってるのに肝心の時…
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