159話─GOS再配備
翌日、キルトたちはラーファルセン城にて緊急会議を行っていた。レマール共和国に駐屯している騎士団から、連絡があったのだ。
「……ガトランジャ方面より、ゼギンデーザ帝国騎士団の接近を確認か。奴らめ、我が国を南北から挟み撃ちにするつもりだな」
「そのようです、父上。転移魔法か何かを使い、すでにガトランジャを落としていたとは……」
トムス子飼いの斥候たちが夜中に偵察を行っていたいた時、デルトア騎士団が占領した地域へ北進してくるゼギンデーザ軍を発見したのだ。
すでに強大な軍事国家が動いていたと報告を受け、対策を話し合うため急遽キルトたちが皇帝の元に参じたのである。
「父上、どう対策しましょう? いまだ西のウィズァーラは健在、迂闊に南北に騎士を振り分ければ……」
「確実にバルステラ王が攻めてくるな。つい先日、グラインが亡くなったのも奴にとっては好機となろう。忌々しい男だ」
会議室で円卓を囲むなか、バルクスとマグネス八世がそんな会話を行う。ディガロによる暗殺以降、西の部隊はフィリールが代理で指揮を執っている。
グラインの死によって落ちていた士気も回復してはいるが、長城の守りも含め万全とは言い難い。守り手を緩めれば、すぐに食い破られるだろう。
「そうなると、フィリールさんやドルトさんには引き続き西の守りを担当してもらうほかありませんね。もちろん、エヴァちゃ」
「あー、キルト。一つ提案があるんだけど。アタシ、北の戦線に異動していい? そっちはそっちで今大変なんでしょ?」
「うーん、確かにそうなんだけど……西の守りも疎かには出来ないしなあ……」
キルトが発言していると、そこにエヴァが割り込んでくる。手柄を立てて汚名挽回を狙っているようで、激戦地となった北への異動を願い出た。
だが、簡単に承認することは出来ない。西は西で、実力未知数なバルステラが控えているのだ。得体の知れない敵が相手な以上、人数は減らせないが……。
「やあやあ、お悩みのようだね読者君! そんな時はお姉さんになんでもお任せだよ!」
「わあああっ!? ど、どこから顔出してるんですかフロスト博士!」
「ふふふ、驚いたかい? サプライズせいこうごおおおおお!!!」
「重要な会議に水を差すな、この大バカ者が!」
突如、キルトが座っている椅子の下からアリエルが顔を出す。ポータルキーを使い、ヘンテコな場所からエントリーしてきたのだ。
驚くキルトを見て満足そうにしていたが、彼の隣に座っているルビィに引きずり出されアイアンクローを食らう羽目に。
「ギブ、ギバーップ! 潰れる、トマトみたいに潰れりゅうううううう!!!!」
「そのまま潰れろ! ……とは言えんな、全く。何の用で出てきた、貴様は」
「ふっふっふっ。いやぁなに、西方の守りを崩せないんだろう? なら、私が手伝おうと思ってね。ようやく、そこのお嬢ちゃんに壊されたサモンギアが直ったから」
「うわ、めっちゃ恨まれとるわウチ……不可抗力やのに」
アスカとの戦いで破損したアリエルのサモンギアが、ついに復活したらしい。これで、キルトたちの戦力はまた一つ増えた。
「なるほど。確か、フロスト殿は空を飛ぶことが出来るのだとか。なら、南北と西のどこに配備しても活躍が期待出来よう」
「イエス、こう見えて目もいいんですよ陛下~。実はこれ伊達眼鏡……コホン。と、そんなことは置いといて。そこの彼女が北に行くなら、私が代わりに西に行くよ」
「……胡散臭い奴ね。本当に大丈夫なのかしら」
ルビィから解放され、顔を覚えてもらおうとマグネス八世に媚びを売りつつ、西の守りに着くと主張するアリエル。エヴァの呟きは、幸い彼女には聞こえなかった。
「でも、そうなると南の守りはどないすんねん? ここにおらへんヘルガはんとウチだけで何とかせえっちゅうんか?」
「いや、それは大丈夫さ。キルトくんがボクたちと一緒に北に行く代わりに、双子を南に行かせるからさ」
「僕たち頑張るよ! ね、めーちゃん」
「うん! やる気もりもり!」
現在、キルトたちの目的は四つ。一つ、南北から迫り来るゼギンデーザ軍の侵攻を食い止めること。二つ、ウォンの生死確認と、生きていれば救出すること。
三つ、ウィズァーラ王国の東進を食い止め三方面からの同時攻撃を阻止すること。そして、四つ……メソ=トルキアに現れたネガを倒すこと。
「僕のクローンの狙いがなんなのか、今ははっきりと分かっていません。だから、僕が大きく動くことで相手を誘い出します。ゼギンデーザ軍とネガ、両方をね」
「正直、我はそんな危険なことはしてほしくないが……敵の狙いが分からぬ以上、こちらから誘い出す以外に策が無いのも事実。……歯がゆいな」
エヴァを倒して以降、ネガの行方はようとして知れない。どこで何をしているのか、何の目的で動いているのか一切不明だ。
状況が状況ゆえに、向こうから動くのを待ってなどいられない。こちらから誘い出し、一気にケリをつける必要があるとキルトは考えた。
「ごめんね、お姉ちゃん。でも、今はこれくらいしか出来ないから……」
「大丈夫よ、キルト。パワーアップしたアタシが一緒なんだもの、今度はあのクソ生意気なクローンをギッタギタにしてやるわ」
「フン、まあ期待しておいてやる。ロコモート、お前も頼むぞ。雪原でも機動力を損なわぬお前がいれば、敵軍にも有利に立ち回れよう」
「うん、任せてよ! ヒーローたる者、同じ相手に二度背中は見せない。……ウォン、必ず助けに行くよ。だから、生きていて……」
自分たちを逃がすため、身を捨ててルヴォイ一世に挑んだウォン。彼を救い出すと、プリミシアは堅く決意を固めていた。
「うむ、では布陣は決まったな。これより、各々動いてもらいたい。この国を守るために……みな、頼んだぞ」
「お任せください、陛下! 必ず僕たちがこの国を守り抜いてみせます!」
「おー!!!」
キルトの言葉に合わせ、ルビィたちは拳を天に突き上げる。大切な仲間を取り戻すため、そしてデルトア帝国を守るため。
ガーディアンズ・オブ・サモナーズの新たなミッションが始まった。
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「う……ここ、は……」
「目が覚めたか。ようこそ、ウォン・レイ。我が居城……そして、ゼギンデーザ帝国首都マルヴァラーツへ」
その頃、ウォンは皇帝の居城にある一室で目を覚ました。サモンギアとデッキホルダーを没収されたものの、目立った外傷等はない。
何故上等な部屋着に着替えさせられ、豪華な部屋のベッドで寝かせられているのか。訳が分からず混乱するウォンを、窓際にいた皇帝が見つめる。
「安心するといい、この部屋にいる限り君に危害を加える者はいない。朕が許可を出した後なら、一部の区画も自由に歩けるぞ」
「……分からないな。お前にとって、俺は敵。何故こうして生かし、捕虜ではあり得ない待遇を? 皇帝よ、お前の狙いはなんだ?」
「朕の狙いか。それはただ一つ、君を味方にしたいのだよ。この戦乱を終わらせ、もう二度と争いの起こらぬ世界を創るために」
親しげに声をかけてくるルヴォイ一世に、ウォンは問いかける。何故自分を牢に入れず、こんな好待遇をするのかと。
それに対し、皇帝は答える。帝国の戦力として、ウォンが欲しいのだと。
「……争いのない世界、だと?」
「そうだ。朕……いや、俺には夢がある。この大地を、真に平和にしたいのだ。……二度と、民が苦しむことのないようにな」
「少し興味が湧いてきたな。何故そんな志を抱くようになったのだ?」
「知りたいか? なら話そう。だが、長くなるぞ? 何せ、話は遠い昔……帝位継承戦争が始まる前にさかのぼるからな」
どこか憂いを帯びた声でそう口にする皇帝。彼の言葉に興味を抱き、ウォンは何故そんな夢を持つに至ったのかを問う。
そんな彼に、ルヴォイ一世は話して聞かせる。かつてこの地で起きた、凄惨な戦い……そして、己の過去について。




