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150話─戦争は終わらない

 ディガロを打ち破った日から、三日が経過した。捕虜たちがルマリーンの街に移送されるなか、一度キルトたちはアジトに戻る。


 アスカやウォンたちと合流し、それぞれの近況を報告しあうためだ。リビングに集まり、それぞれの出来事を報告しあう。


「……という感じで、こちらは特に動きはない。不気味なほど、ゼギンデーザ帝国は沈黙を保っている」


「そうですか……今のところ、参戦してくることはない感じですね。ところで、イゴールくんたちの訓練は進んでます?」


「ああ、バッチリだ。命王の嫡子たちだけあって、適応能力が高い。メキメキ実力を伸ばしているよ。この分だと、すぐ実戦に投入出来るようになるだろう」


 北部の監視に当たっていたウォンは、キルトたちにそう報告する。新しい仲間であるイゴールとメリッサも、順調に実力を伸ばしているようだ。


「ならよかった。じゃあ、次。アスカちゃん、そっちは大丈夫だった?」


「ん、こっちは問題あらへんで。ヘルガはんにも協力してもらって、襲ってくるレマール軍を返り討ちにしてやったさかいな」


「そうか、我とキルトがいなくても問題が無さそうで何よりだ」


「トムスはんが、もうそろそろこっちから打って出る言うてなぁ。近々、今度はこっちから進攻して首都を落としにかかるみたいやで」


「まあ、仕方ないことだ。ただ防衛しているだけでは戦争は終わらない。どちらかの国が倒れるまではな」


 続いて、アスカから報告が行われる。初戦以降リンシャは姿を見せていないらしく、リジェネレイト体を得たアスカ相手にレマール軍は敗北を重ねているらしい。


 この勢いをさらに強固なものにすべく、トムスはレマール共和国への逆侵攻を実行するつもりのようだ。首都を落とし、南の脅威を取り去るために。


「確かに、ウォンさんの言う通りですね。レマールの国民は気の毒ですが、こちらにも守らねばならない民がいますから」


「と、いう感じでウチからの報告は終わりや。最後はフィリールはんやな」


「ああ、実はな……」


 アスカの報告も終わり、最後にフィリールがこれまでに起きたことを話す。兄を敵国の暗殺者に殺されてしまったことを聞き、アスカとウォンの表情が沈む。


「そないなことがあったんか……。お兄さんの冥福、祈らせてもらうわ」


「俺もだ。まさか、そんなことが起きていたとはな」


「ありがとう、二人とも。確かに、兄上を喪ったのは辛いことだ。今もまだ、油断すると涙がこぼれそうになる。でも……だからこそ、私は決意を新たに出来た。大切な者を守るためにね」


「フィリールさん……」


 お悔やみの言葉をかける二人に礼を言った後、フィリールは微笑む。そうして、次にキルトの方を見る。


「それに、私はもう一つ気付けたことがある。キルト……私は君が好きなのだとね。異性として、君を愛しているのだと……己への問いかけを通して、やっと理解出来た」


「えっ!? そ、そうなんですか!?」


「奴も染まったな……キルトの魅力に。フッ」


 キルトが慌てふためき、何故かルビィが得意気にしているなかフィリールはソファーを立ち上がる。キルトの前に進み、ひざまずく。


 少年の右手を取り、じっと顔を見上げる。いつになくキリッとした表情のフィリールに見つめられ、キルトは顔を赤くしてしまう。


「あ、あうう……」


「キルト。私は今ここで、改めて誓う。君を永久に守り続ける騎士になると。そして……君に相応しい伴侶になってみせるとね。私の愛……君に届けよう」


 愛の告白をした後、フィリールはキルトの手の甲に口付けをする。続いて、ゆっくりと立ち上がり今度はキルトの唇にキスをした。


「ん……ふふ、ファーストキスはなかなか照れくさ」


「ちょい待ちや、ズルいでフィリールはん! ウチだってまだキルトとちゅー出来てないのに、順番抜かすんはダメやで!」


「ん? ならアスカもすればいい。別に恥ずかしがることはないだろう?」


「僕が恥ずかしいんですけど!? ウォンさん、助け」


「さて、お邪魔虫は退散しよう。ごゆっくり楽しむといい」


「ウォンさぁぁぁぁぁぁん!?!!?!??!?」


 以前キスが不発になったアスカが怒り出し、キルトへキスしようと席を立つ。キルトはウォンに助けを求めるも、空気を読んだため救いの手は差し伸べられなかった。


「じゃ、アタシもキスしよーっと。お手本見せたげるわ、キスってのはこうやってやるもんだってね!」


「我を除け者にはさせんぞ、魂の伴侶なのだからな。さあ、炎のように熱く燃え上がる情熱的な口付けを交わそう、キルト!」


「ひえっ……。ちょ、ちょっと待っ……ああああああああ!!」


 獲物を前にした獣と化したルビィたちに包囲され、キルトはもう逃げられない。少年の悲鳴と、キスのリップ音がリビングに響くのだった。



◇─────────────────────◇



「ふーん、そう。サモンマスターギーラとドロウが脱落したんだね」


「ああ。とはいえ、まだどの国も余力はある。こちらが引っかき回してやれば、まだまだ戦争は終わらないだろう。どんどん泥沼に嵌まっていくさ」


「楽しみだねえ、そうなるのが。ふふふふ」


 同時刻、理術研究院ではタナトスがネガに戦争の状況を報告していた。アリエルとディガロの脱落を聞いたネガは、楽しそうに笑う。


「ああ、そうだ。ようやく完成したよ、リジェネレイトに匹敵する強化手段がね。これで、こっちの戦力を引き上げられるよ」


「それはよかった。では、ついに……」


「うん、タナトスにエルダードラゴンを確保してもらえたし出撃するよ。この僕……『サモンマスタードラグナ』がね」


 ニヤリと笑いながら、ネガは一枚のサモンカードをテレポートで呼び出す。描かれているのは、漆黒の身体を持つエルダードラゴンが描かれた『契約(エンゲージ)』のカード。


「このエルダードラゴン……『オニキス』と僕が力を合わせれば、オリジナルにも勝てるさ。楽しみにしててよ、タナトス。あいつの首を土産にするから」


「では、期待させてもらおう。ところで……君の開発した強化手段の名はなんだ?」


「おっと、大事なことを教えてなかったね。完成したアレの名は……『REVOLUTION(レボリューション)』だよ」


 ついに、理術研究院最強の刺客が動き出そうとしていた。



◇─────────────────────◇



 キルト陣営とタナトス陣営、双方に変化が訪れるなか……メソ=トルキアから遠く離れたとある大地にて、密かに研究が進んでいた。


「こんな感じでいいかなぁ? ふーちゃん、出力計はどう?」


「はい、こちらは問題なく稼働しています我が君。この分だと、もうじき実戦テストが出来るかと」


「ふーむ、流石自動人形(オートマトン)だけあってキカイ系に強いのう。いや、やはりリオも巻き込んで正解じゃったわ。のう、アゼル」


「ええ、そうですね。正直、ぼくたちだけじゃ手に余ってましたよこれ」


 ベルドールの魔神たちの本拠地、キュリア=サンクタラムの大地。天空に浮かぶ巨大な研究施設に、数人の人物がいた。


 一人目、魔神たちの頭領であるリオ。二人目、リオの妻でありメイドも務める自動人形(オートマトン)の女性、ファティマ。


 三人目と四人目は、アゼルとコーネリアス。そして、五人目は……。


『あの……ボク、本当に役に立てているんでしょうか。こうやって突っ立ってるだけで……なんだか申し訳ないです』


「何を言っておる、ユウ。お主が創世六神より授けられたスキル、『庇護者への恩寵』があるからこそわしらが大きな事故を起こさずにこのサモンギアの研究を出来ておるのじゃ。立派に役に立っておるよ」


『そ、そうですか? なら……よかったです』


 広い研究室の中、複数のアームで空中に固定されたサモンギアを見つめる五人目の人物。腰から九本の尻尾が生えた、銀色の髪を持つキツネ獣人の少年。


 声を出せないのか、念話によって近くにいるコーネリアスに不安そうに話しかける。自分はここにいていいのかと不安になっていたが、返事を聞いて安心していた。


「これでよし、と。一応、これで実験に使えるようにはなった……はず」


「ブラックボックスを強引に改変しましたから、何が起こるか予想出来ません。安全性を最大限確保してから実験に望むべきかと進言致します」


「じゃな、わしもその方がよいと思う。ふふ、楽しみじゃのう。このサモンギア、キルトに見せたら驚くじゃろうな」


『キルト……さん。ボクも、会ってみたいな……』


 キルトたちの知らないところで、英雄たちの企みが進む。彼らの行いがキルトたちの助けになるか、それともならないのか。


 それはまだ、誰にも分からない。

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― 新着の感想 ―
[一言] ウォンさん逃げた(笑) 敢えて「お前も男ならば、責任持って受け入れろ」とスパッと切り捨てなかったのが大人らしい……リオやコリンなら茶化しそうだけど。(アゼルやフィルは苦笑いするだけで実質何も…
[一言] 戦争の経過報告と愛の告白か(ʘᗩʘ’) 此処までの戦いでリジェネレイトに至ったのはアスカとフィリールだけど(゜o゜; キルトとの付き合いが1番長いエヴァがまだって事に焦らんといいが(-_-メ…
[一言] >「おっと、大事なことを教えてなかったね。完成したアレの名は……『REVOLUTION』だよ」 どっからどう見てもあの曲やんけw それと、ネガはアレを意識しとるからなw
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