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128話─命王の双子

 竜の子を崇める会、礼拝堂。エイプルや信者たちが見繕ってきた、十数人のサモンマスター候補たちがキルトの審査を受けていた。


「君は……うーん……あんまり適性ないかも……」


「そんなぁ……。あ、でもドラクル様とお話出来て嬉しいです! 握手いいですか!?」


「え、あ、はい。どうぞ?」


「キャー! ドラクル様と握手しちゃった! 後で友達に自慢しーちゃおっと!」


 こんなやり取りをしつつ、審査を進めていく。が、めぼしい成果は無く残り二人となってしまった。


「あと二人……子どもか。お前たち、名は?」


「僕はイゴール!」


「私はメリッサ!」


「僕と私は二人で一つなんだよ!」


 最後に残った、二人の少年少女。どちらも紫色の髪を長く伸ばしており、一見して見分けがつかない。どうやら、双子のようだ。


 イゴールは左目、メリッサは右目の瞳に髑髏の紋様が浮かんでいる。それを見て、キルトは二人の正体に気付いた。


「! もしかして、二人はアゼル王のご子息なのでは?」


「えっ!? んなわけあらへんやろ、この子らどう見ても十三、四歳くらいやで。親子っちゅーか兄弟なんやないのん?」


「いや、違うんだよアスカちゃん。昔、僕の家系図を調べに行った時チラッと見たんだよ。カルカロフ家の家系図もね」


「そーだよ! 僕とメリッサはねー」


「アゼルパパとアーシアママの子なんだよー」


 アスカが驚くなか、イゴールとメリッサがキルトの言葉を肯定する。大地の民と闇の眷属のハーフとして生を受け、約四百年。


 イゴールとメリッサの見た目年齢は十四歳になり、かつてキルトの先祖と会った頃から大幅に成長を遂げていた。


「あの二人の、か。で、何故お前たちがこの大地にいるのだ?」


「パパにねー、もう四百歳になったんだから一人前の戦士になれるように旅に出なさいって言われたの」


「だから、いーくんと一緒にいろんな大地を巡って武者修行の旅をしてるんだよ。ねー」


「ねー」


 ルビィに問われ、イゴールとメリッサはお互いの手を取りらんらんスキップしながら答える。アゼルの命を受け、一人前になるため旅をしているらしい。


「……エイプル、このことは知ってたのか?」


「いえいえいえ、とんでもありません! たまたま勧誘しただけです、まさか隊長たちのご友人の子息子女だとは……」


「でも、彼らならきっと……使いこなせるんじゃないでしょうか、このサモンギアを」


 意図せずとんでもない者たちを引き入れていたことを知り、エイプルは仰天していた。フィリールに問われ、全力で否定する。


 一方、キルトはイゴールとメリッサに素質を見いだしたようだ。ジャケットのポケットに手を入れ、二組のサモンギアとデッキホルダーを取り出す。


「わー、これがサモンギアってやつなのー?」


「おにーさん、これくれるのー?」


「あなたたちから、強い力を感じるんです。きっと、二人ならサモンギアの力を正しく使えると思うんですよ。出自が出自ですし」


「まあ、確かにアゼルの子なら悪事にサモンギアを使ったりはすまい。……いや、そもそもそういう発想がこやつらに無いか」


 信者たちが見守るなか、キルトはかつてサモンマスターアノードとカソードが使っていたデッキを双子に渡す。


「持ってみてください。もし二人に素質があるのならば聞こえてくるはずです。そのデッキに宿っていた、モンスターの残滓の声が」


「……うん、聞こえてくる。今度は、君たちの番だよって」


「私たちに使ってほしいって言ってるよ。ね、いーくん」


「うん、めーちゃん」


「……なるほど、分かりました。では、続いてこのサモンギアを着けてみてください。二人にサモンマスターの素質があれば、自然に起動するはずです」


「わーい、ありが……」


「わ、すっご……」


「ど、どうした? いきなり黙って」


 続いて、キルトはグローブ型のサモンギアをイゴールとメリッサに渡す。……が、ここで想定外の事態が発生した。


 サモンギアを受け取った瞬間、イゴールとメリッサの様子が変わったのだ。互いに向かい合い、手を繋いでトランス状態に突入する。


 そんな二人の周囲を、二組のサモンギアとデッキホルダーが衛星のように回転する。


「な、なんや!? この二人どないしたんや!?」


「分かんない……みんな、とりあえず離れて! エイプルさんは信者さんたちの方に、何か起きた時に備えてください!」


「わ、分かりました!」


 ブツブツと小さな声で何かを呟いているイゴールたちから距離を取り、いつでも離脱出来るように信者たちを誘導するエイプルたち。


 そんななか、キルトは耳を澄まして双子が何を言っているのか聞き取ろうとする。そんな彼の耳に、懐かしいフレーズが聞こえてきた。


「……今、魂の絆で結ばれし我らの繋がりをさらに強めん。父母より継ぎし御魂(みたま)の輝きを以て楔を刻む」


「我らの命、心、血……全てを束ね、ここに魂の契約を成さん。運命のカードよ、我らの命を繋ぎたまえ!」


「ま、まさかあの二人……互いを対象に本契約を!?」


「なんだと!? 可能なのか、そんなことが!?」


「……エンゲージ・ライト&ダーク!」


 イゴールとメリッサは、()()()()()()()()()()()()()()サモンマスターになるための儀式を行っているのだ。キルトたちが驚愕するなか、双子の身体が光に包まれる。


 イゴールは黒、メリッサは白。そんな二人に呼応するように、彼らの周囲を回っていたサモンギアとデッキホルダーに変化が現れる。


 錆色のデッキホルダーは、それぞれダークグレーとライトグレーの配色に変わる。グローブ型のサモンギアも、同様の色になった。


 さらに、カードスロットの側面にサモンカードを読み込むための溝が現れ、本来の装填部が消える。


「な、何が起きてるんや……?」


「……生まれたんだよ。新しいサモンマスターが。とんでもないイレギュラーだけどね」


 キルトたちが見守るなか、イゴールとメリッサは手を離しそれぞれのデッキホルダーを手に取る。イゴールはライトグレー、メリッサはダークグレーの方を。


 すると、イゴールの持つデッキホルダーの表面にはL、メリッサの持つ方にはDの文字がエンブレムとして浮かび上がる。


「……ふあっ。あれ? みんなどうしたの?」


「なんでそんな不思議そうにしてるのー?」


「いや、覚えていないのか? お前たちは、互いを本契約モンスターとしてサモンマスターの契りを交わしたのだぞ」


「えっ、そうなの!? わーい、これでずっと一緒だね!」


「えへへ、嬉しいなー!」


「いや、それでいいのか……?」


 デッキを手にした瞬間、トランス状態が解け意識が戻るイゴールとメリッサ。自分たちが何をしていたのかを覚えていないようで、きょとんとしている。


 そんな彼らにルビィが説明をするも、二人はより絆が深まったと喜んでいた。そんな双子に、ルビィは呆れてしまう。


「ま、まあとにかく。これで二人もサモンマスターになれたわけですし。一回変身してみませんか?」


「うん、やるやる! めーちゃん、()()()()()()()()やる?」


「んー、じゃんけんで決めよ!」


 キルトに促され、サモンマスターとして初の変身をお披露目することに。何やら意味深なことを口にし、じゃんけんを始める二人。


 ふわふわ漂っているグローブ型のサモンギアを手に取り、イゴールは右手、メリッサは左手に装着する。


「おっけー、最初はグー……」


「ジャンケンポン! あ、負けちゃった……じゃあ今回はいーくんメインね」


「やったー! それじゃ、いっくよー!」


『サモン・エンゲージ』


 じゃんけんの結果、イゴールが勝った。デッキホルダーを信者用ローブの右腰にぶら下げ、そこから側面に読み取りコードが付いたカードを取り出す。


 双子の姉、メリッサの似顔絵が描かれた契約(エンゲージ)のカードを、グローブの手の甲にあるカードスロット側面の溝にスラッシュする。


 すると、メリッサが白い光の粒になりイゴールに吸い込まれていく。直後、イゴールは両肩と胸部に水色のオーブが取り付けられた純白の鎧を着た姿に変化した。


「へーんしーんかんりょー! 今日から僕は『サモンマスターライトサイド』なのだー!」


『いえーい! ぱちぱちー!』


「……驚いたな、これは。エイプル、とんでもないファインプレーをしたな」


「お褒めにあずかり光栄です! 隊長!」


 予想外の展開が続いた末、新たな仲間を得ることに成功したキルトたち。信者たちがどよめくなか、フィリールはかつての部下を褒めるのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] また予想を大きく上回るキャラの登場だな(٥↼_↼) 以前はフィル達シュバルツカイザーに憧れる子供だったけど今では武者修行の旅に出る程になったか(ʘᗩʘ’) それでまさかのお互いを本契約対象…
[一言] おいおい、こんな事が起きやがったとは……
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