127話─新たな仲間を求めて
話し合いが行われてから、三日が経過した。キルトたちは手分けをして、それぞれのやるべき仕事に着手していた。
「……というわけで、戦争が始まったら招集するからちゃんと来なさいよ。サボったらどうなるか……分かるわよね?」
「アッハッハッ、大丈夫さ! 正義の味方であるボクが、戦争なんて大きな悪が暗躍する舞台に現れないわけないだろう? 期待してくれたまえ、悪はこの手で誅してみせるさ!」
「そ、じゃ期待してるわよ。次はウォンね。あいつどこにいるのかしら……」
エヴァはポータルを使い、別行動中のGOSメンバーへ情報の共有を行っていた。プリミシアやウォン、ドルトに現状を伝える。
戦争が始まれば、彼らにも別働隊として動いてもらうことになる。ドルトは恩赦を貰うために志願するだろうと、エヴァはそう推測していた。
「ふむ……なかなか見つからないものだな、サモンマスターの適性がありそうな者は。タナトスのようには行かないか、流石に」
「せやなぁ、こればっかりはウチらには一朝一夕でマネ出来へんわ」
一方、フィリールとエヴァは独自にサモンマスターの適性がありそうな者がいないか帝都やミューゼンを練り歩いていた。
ジャンゴ元帥やエイプルが協力してくれているとはいえ、彼らに頼ってばかりではいられない。のだが、結果は芳しくないようだ。
「そういえば、確か確保済みのサモンギアって四つあったはずやろ? 今更やけど、残りの一個どこ行ったん?」
「ああ、サモンマスタークインビーが使っていたものはキルトが分解したそうだ。内部機構がどう変化しているかを調べて、新しく作るサモンギアの部品にするらしい」
「ほーん。キルトも凄いなぁ、ホント頭いいわぁ」
小休憩に立ち寄ったカフェにて、二人はそんな他愛もない話を行う。その頃、話題にされているキルトはというと……。
「……よし。これでとりあえずは完成だね。前にエヴァちゃん先輩に資材を持ってきてもらって正解だったよ」
「これでまた一つ、新しいサモンギアが増えたな。キルトよ、どんな機能を搭載したのだ?」
「んー? ふふっ、今は秘密。使い手が現れたら、その時に教えるよ」
サモンマスタークインビーの用いていたサモンギアのパーツを使い、新しいギアを製作していた。内部機構にはかなりの手が加えられており、ブラックボックス以外は別物になっていた。
が、本来の製作者であるキルトからすればその程度どうということもない。半日ほどかけて、全く新しいサモンギアに新生してみせた。
「もうお昼か……。みんな、順調に進んでるかな」
「そうであることを願うしかあるまい。とりあえず、我らも帝都に行ってアスカたちと合流しよう」
「そうだね、お腹空いちゃったしご飯食べに行こっか」
ルビィとそんなやり取りをした後、キルトは作業机の上に置いてあるクリアカラーのデッキホルダーとガントレット型のサモンギアを手に取る。
作業室を出て、アジト内の自室にある金庫の中にしまう。部外者が入ることはないが、念には念を入れておくのがキルトの流儀だ。
「これでよし。さ、行こっかお姉ちゃん!」
「ああ、もう腹がペコペコだ」
立方体の金庫を机の下の空間にしまい、部屋を出るキルトたち。ポータルキーを使って帝都にあるサモナーズショップに移動すると……。
「キルト様ですね? お待ちしておりました」
「わーっ!? 誰!? ここ関係者以外立ち入り禁止なんだけど!?」
「貴様何者だ! 人の店に土足で踏み入るとは……物盗りの類いか!?」
「いえいえ、とんでもない。実は私、『竜の子を崇める会』という宗教団体の司祭をしていまして。こうしてお迎えに参ったのです」
本来であればキルトたちしか出入り出来ない店の奥の部屋に、フード付きの赤いローブを着た人物が入り込んでいた。
顔は深く被ったフードで隠れ、正体を窺い知ることは出来ない。……が、キルトはあることに気付き相手の正体を察する。
「そんな怪しい者の言うことなど、我らが信じ」
「お姉ちゃんお姉ちゃん、ちょっと耳貸して」
「なんだキルト、今我はだな……」
「実はね……ごにょごにょ」
「……ああ、そういうことか。なら、こやつは敵ではないな」
司祭を名乗る人物に警戒心を剥き出しにするルビィだが、キルトに耳打ちされてからはあっさりそれを解いてしまった。
「私が敵ではないと、理解していただけたようですね。こちらにおいでください、あなた方に是非来ていただきたい場所があるのです」
「……まあ、いいだろう。ただし、そこで飯を出せ。我とキルトは腹が減っているのでな」
「もちろん、喜んで。信者たちの中に、腕利きのシェフがいます。彼に支度をさせましょう」
司祭を名乗る者は、キルトとルビィを先導し店を出て行く。ローブの背中には、青色に輝く竜の横顔の模様が描かれている。
狭い裏路地に入り、そのまま真っ直ぐ進んでいく三人。しばらくして、行き止まりにやって来た。司祭は目の前にあるレンガの壁の一部、出っ張った部分を押す。すると……。
「ほう、隠し扉か。随分と大仰な仕掛けだな」
「どうぞ、お入りください。この先に、我々が用いている礼拝堂があります」
壁の一部が動き、中に入るための入り口が現れる。司祭に促され、キルトとルビィは中に入ることに。果たして、彼らが見たものは……。
「うわ、広い! ……っていうか、あの金ピカの像僕だよね!? 凄い恥ずかしいんだけど!」
「像の足下で信者共が祈りを捧げているな……まさかキルトをご本尊として崇め……ん? キルト、あれはフィリールとアスカじゃないか?」
「あれ!? 本当だ、あの二人なにやってるの!?」
建物の中はかなり広く、奥の方に五メートルほどありそうな金色のキルト像が建立されていた。その足下に、信者や司祭たちがおり地べたに座っている。
司祭が謎の呪文を唱えるのに合わせ、白いローブを着た数十人の信者たちがひれ伏しては頭を上げ……を繰り返していた。そして、何故かその中にフィリールたちがいた。
「ちょっとちょっとストップ、ストップ! これは一体なんなの? ていうか、アスカちゃんたちはなんでここにいるの!?」
「あ、キルト。いやな、カフェで休憩してる時に司祭さんに会うてな。ここに連れてこられたんや」
「なかなかに面白そうだったのでな、ここで信者ごっこをしていたというわけだ。……司祭の正体が正体だし、な」
乱入してきたキルトに何故妙ちくりんな信者たちに混ざっているのかを問われ、答えるアスカたち。フィリールの方は、キルトたちに接触した方の司祭の正体に感付いているようだ。
「諸君、今日は喜ばしい日だ! ついに我らの信仰対象、偉大なるサモンマスタードラクルが」
「あの、その前に一ついいですか? あなた……エイプルさんですよね?」
「え゛っ゛」
キルトたちを連れてきた方の司祭が、信者たちの元に歩み寄りそう口にする。それを遮り、キルトは相手の正体を言い当てた。
「……ひ、人違いではなかろうか。私はそんな者のことは知ら」
「いや、声がまんま同じなんですよ。ねえ、フィリールさん?」
「そうだな、というか私からすれば体捌きやらなんやらで完全にバレているぞ? エイプル」
一度は否定しようとするも、フィリールのダメ押しでトドメを刺される。信者たちが静まり返るなか、司祭はダラダラ冷や汗を流す。
「……なんのことだか分からな」
「今更しわがれ声を出しても遅いよ! お姉ちゃん、フィリールさん、アスカちゃん! やっちゃって!」
「はいはーい!」
「あああああ、待って待って待ってください! このローブ作るのに手間暇」
「しゃらくさいわ! 往生せいやオラァ!」
ルビィたちに囲まれ、ローブを剥ぎ取られる司祭ことエイプル。正体を暴かれた上、アスカにコブラツイストされ制裁を食らうことに。
「ああああああ!! ギブ、ギブギブギブ! 折れる、腕が! 腕が!」
「えー、信者さんたちはちょーっと待っててくださいね? 今エイプルに尋問しますので」
「おお、ドラクル様の尊いお言葉が!」
「ありがたやありがたや……」
「うう、やりにくい……」
一旦エイプルを解放し、洗いざらい吐かせることにしたキルト。まずは、この組織の成り立ちから問い質すことにした。
その結果、この団体……『竜の子を崇める会』はエイプル自身が創立したことが明らかになった。しかも、最初の御前試合のすぐ後の時期に。
「なんでこんなアホみたいな組織を作ったんだ、お前は」
「いえね、聞いてくださいよ。キルト様はとても強くて賢くて、まさに英雄の称号が相応しい方なんですよ? これはもう……崇め奉るよりないじゃありませんか!」
「ふむ……一理ある」
「ないからね!?」
エイプルに流されそうになったルビィにツッコミを入れつつ、キルトは問う。この団体を創り、どんな活動をしているのかと。
「平時はこのように祈りを捧げたり、新たな信者を得るべく勧誘をしたりしています。後は、世のため人のため各種奉仕活動もしていますよ」
「ほーん、今んとこはまあマトモな感じやな」
「それだけではありません! 今回のような有事に備えた組織としても機能するようにしてあるんです! ねえ、みんな!」
「はい!」
「ああ、なるほど。あの会議でお前が名乗りをあげた理由、やっと分かったぞ。信者たちを使って、サモンマスターの適性がある者を探していたのだな?」
フィリールの言葉に、エイプルは何度も頷く。そして、すでに候補を何人か連れてきているのだと言う。キルトは仲間たちと顔を見合わせ、肩を竦める。
「まあ……そういうことでしたら、こちらもとやかく言いません。その候補者たち、会わせてくれますよね?」
「もちろんですとも! 一人くらい、お眼鏡にかなう子がいるはずです! ……たぶん」
予想外の形で、エイプルの協力を得られたキルトたち。果たして、彼らの前に現れるサモンマスター候補たちは見事選ばれるのか……。




