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112話─御前試合、再び

 しばらくして、交渉を終えたフィリールが城から戻ってきた。前回と同じく、金獅子騎士団(レオーネリッター)の演習場を使わせてもらえることに。


 というより、話を聞き付けたエイプルの熱烈な要望により騎士団の演習場を使わされることになった……が正しいだろう。


 今回の御前試合もまた、大勢の観客が詰めかけている。前回と違い、各貴族はそれぞれの領地にいるためほぼ全員が帝都の市民だ。


「ふう……久しぶりだなぁ、こうやってウォンさんと戦うのって」


「ああ。あの気迫……向こうはかなりの力を付けて舞い戻ってきているようだ。これは気を引き締めてかからねばならないな」


 広い演習場の隅で、キルトとルビィはそんなやり取りをしていた。反対側の隅にはウォンが立ち、一人ウォーミングアップをしている。


 以前よりも遙かにキレを増した動きを見て、キルトたちは気を引き締める。強くなっているのは自分たちだけでない……改めてそれを意識した。


「会場にお集まりの皆様、長らくお待たせ致しました。これより、我が父……皇帝マグネス八世照覧の元、再び強者たちが刃を交えます」


 演習場内に設置された大銅鑼の前に立ち、フィリールが観客たちに呼びかける。全員が固唾を飲んで見守るなか、キルトとウォンが所定の位置につく。


「これより始まるは、二人のサモンマスターによる血湧き肉躍る決闘。東、幾度も帝国を救いし英雄……サモンマスタードラクル!」


「ドラクル! ドラクル! ドラクル! ドラクル!」


「キルトー! 頑張ってー!」


「また今度もいてまえー!」


 キルトの名が呼ばれ、観客席からドラクルコールが沸き上がる。観戦しているエヴァやアスカから激励の言葉を贈られ、キルトは手を振って答えた。


「西、武の頂を極めんとする流浪の闘士……サモンマスター玄武!」


「玄武! 玄武! 玄武! 玄武!」


 続いてウォンの名が高らかに叫ばれ、こちらもまたファンたちが玄武コールを行う。キルトとウォンは、それぞれの契約(エンゲージ)のカードを取り出す。


「悔いの無い戦いをしよう、キルト。出し惜しみは不要、最初から全力を俺に見せてくれ。こう見えて耐久力には自信がある、何が来ようと耐えて勝ってみせよう」


「お手柔らかに、ウォンさん。そんなこと言うと、僕手加減しないよ? ね、お姉ちゃん」


「ああ、キルトも我も新たな力に目覚め強くなった。その余裕、いつまで続くか見物だな」


「両闘士、変身を」


 お互い相手を軽ーく挑発していると、フィリールにそう声をかけられる。キルトたちは頷き、同時に変身を行う。


『サモン・エンゲージ』


「さあ、始めよう。ファンシェンウー、力を貸してくれ!」


『シャアアア!!』


「お姉ちゃん、行くよ! 僕たちの新しい力、皆にお披露目だ!」


『ああ、行こう!』


 お互いサモンマスターへと変身する。しかし、キルトはまだ変身を残している。ウォンたちが見ているなか、『REGENERATE(リジェネレイト)─相愛』のカードを取り出す。


「ほう、あれがフィリールの言っていた新しいサモンカードか……」


「見てください、父上。まだ変身もしていないのに、あれだけの冷気を……」


「楽しみだわ。前回は、病気で伏せていて見られなかったから。あの子がどんな戦いをするのか……凄くワクワクしちゃう」


 貴賓席に座る皇帝一家がそう話していると、キルトは左腕を構え盾を顕現させる。そして、スロットにカードを挿入した。


REGENERATE(リジェネレイト)


「! これは……」


「お待たせ、ウォンさん。さあ、始めよっか」


【Re:NIFLHEIMR(ニヴルヘイム) MODEL(モデル)


 赤から青へ、炎から氷へ。正反対な姿となったキルトを見て、観客たちは息を呑む。みな、圧倒されているのだ。


 キルトの全身から放出される、強者のオーラに。一方、ウォンは笑みを浮かべていた。


「……氷獄の力を得た、僕との輪舞曲を」


「試合……開始!」


 両者共に、準備は整った。そう判断したフィリールが大銅鑼を鳴らし、戦いの始まりを告げる。真っ先に動いたのは、ウォンの方だ。


「では、こちらから参る! キルト、お前が新たに得た力……存分に俺に見せてみろ!」


『ポールコマンド』


「もちろん! 出し惜しみなんてしない。全身全霊の力をお見せするよ!」


【カリバーコマンド】


 ウォンは棍を、キルトは剣を呼び出して突撃する。横薙ぎに振られた棍をしゃがんで避け、反撃に転じるキルト。


 真上から剣を振り下ろし、ウォンの脳天に刃を叩き付けようとする。対して、ウォンは棍を構え攻撃を防ごうとするが……。


「ていやっ……ああっ!?」


「!? バカな、俺の甲壊棍が一撃で……!」


『フシュッ!?』


「お、おかしいな。そんなに力込めてないんだけど……」


 つばぜり合いに持ち込まれるだろうと想定し、後々競り勝つつもりでそこまで力を入れていなかったキルト。


 にも関わらず、あっさりと棍を真っ二つにしてしまった。予想外の事態に、観客やウォン、ファンシェンウーだけでなく当のキルトも驚いてしまう。


「くっ、まだだ! こちらはまだ武器がある!」


『ナックルコマンド』


『キルト、気を抜くな! 次が来るぞ!』


「う、うん!」


 棍がダメならと、ウォンは新たな武器を呼び出して殴打の嵐を見舞う。相手の反撃を、キルトは盾を用いて堅実に防ぐ。


 剣による攻撃が強力であるのなら、盾による防御もまたこれまで以上に堅牢なものとなっていた。ボルジェイとの戦い以降、キルトは新たな力を戦いに使っていない。


 故に、彼は把握出来ていなかった。今の自分が、どれだけ強くなったのかを。その結果が、この状態なのだ。


「はあ、はあ……! ここまで守りを崩せないとは。キルト……どうやら、俺の予想以上に君は強くなったようだ」


「僕自身、驚いてるよ……。まさかこんなに強くなってるとか思わなかった……」


『我の予想以上に力をセーブしなければならないようだ。コツを掴めば、以前程度の出力に落とせるようになるだろうが……今は無理だな、これは』


 再契約(リジェネレイト)。それは、サモンマスターと本契約モンスターの魂が成長した証。魂の成長が眠れる可能性を呼び覚まし、強大な力をもたらす。


 ……のだが、今回はあまりにも目覚めた力が大きすぎたようだ。あまりにも強すぎる力は、時として振るう者に負担をかける。


「……全く。俺の想像していた以上だよ、これは。ハッキリと分かる……今の俺では、お前には勝てない。同じ土俵に上がれてすらいないのだから」


『フシュウ~……』


「うーん、まあ……そうだね。自分で言うのもアレなんだけどさ……」


「同じ高みに至らねば、勝つどころか並び立つことすは叶うまい。だが……だからと言って、持てる力の全てを出し切らずに敗北するのは戦士の恥!」


 戦いが始まって、十分が経過した。未だキルトの構える盾を攻略出来ていないウォンは、悟らざるを得なかった。


 今の自分では、キルトの強さに届かないと。足下にすら到達出来ていないほどに、歴然たる力の差があることに。


 だが、だからといって戦いを放棄するのは彼の戦士としての死を意味する。故に、最後まで足掻き、食らい付く。


『アルティメットコマンド』


「ファンシェンウー、俺たちの持てる力の全てをキルトにぶつける! 例え超えられずとも……最後まで意地を叩き付けてやろう!」


『フシュアアア!!』


『キルト、どうする? こちらも奥義で迎え撃つか?』


「うーん、そうしたいのは山々だけど……新しい奥義は相手を拘束しちゃうから。ウォンさんの出鼻を挫くことに──!?」


 ウォンは真後ろに飛びながら、アルティメットコマンドのカードを使う。一方、キルトは奥義で迎撃するか、このまま盾で防ぐか思い悩む。


 が、その時。轟音と共に凄まじい振動が演習場を襲う。直後、天井が破壊されて二人の人物が落下してきた。


「よお、キルト。殺しに来てやったぜ。ボルジェイ様の仇……討たせてもらう」


「覚悟しなさァい? あたしたち、今とってもキレてるんだから」


「ティバにネヴァル!? こんな時に!」


「まずい、奥義を止めねば!」


 現れたのは、復讐に燃える二人のサモンマスター。慌ててウォンは奥義をキャンセルし、急停止する。観客たちが唖然とするなか、ティバは歯を剥き出しにして唸った。


「今度は負けねえ。オレたちが勝ち……ボルジェイ様にてめぇの首を捧げてやるよ、キルト!」


 復讐鬼と化したティバとネヴァル。青龍、玄武、白虎、朱雀。聖なる獣の化身たる四人のサモンマスターが一堂に会し……新たな戦いが始まる。

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― 新着の感想 ―
[一言] 改めての実戦形式での検証でもあったがここまで差が出るのか(ʘᗩʘ’) サモンマスターで1番(マトモ)武人な玄武でも手も足も出ないとは(゜o゜; こりゃ戦闘値1.5倍所か2.5倍くらい出てそ…
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