表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

108/311

105話─遊園地の戦い

 突き逃げ戦法を確立したフィリールにとって、その後の戦いは全て楽なものだった。最後に残ったカートを破壊し終え、安堵の息をつく。


「よし、これで片付いた。後は……」


『ひえっ! さ、さよなら~!』


「逃がすか、こいつを食らえ! グロリアスホーンシュート!」


『うひぇああああー!!』


 頼みの綱の爆弾カートを失い、どうにも出来なくなった疾走ちゃんは逃げ出そうとする。が、フィリールが逃走を許すはずもなく。


 カートを走らせつつ、槍をブン投げて疾走ちゃんを撃破した。忌々しい追いかけっこにようやく終止符を打ったフィリールは、そのまま外に向かう。


「せっかくだ、これは戦利品として貰っていこう。後でエヴァたちも乗せてやるとするか!」


 なんだかんだでカートの乗り心地が気に入ったようで、アトラクションの入り口を無理矢理突破して走り去っていった。


 カートに乗っていた方が、効率良くエヴァたちを探せるという打算もあったが。その頃、エヴァが何をしているかというと……。


「うらめし……ごぱっ!」


「しゃらくさいわね、そんなチマチマ来ないで一斉にかかってきなさいよ! このチキンゴーストども!」


「こいつ強い……恨み晴らせねっぶぇ!」


 強制転移させられたお化け屋敷の中で、本物のお化けたち相手に無双していた。ミノスの大戦斧をブン回し、所狭しと暴れ回っている。


 案内役の腹話術人形、恨めしちゃんはとっくのとうに撃滅され、残るお化けたちも斧の錆となり成仏(物理)させられていた。


「ふう、ざっとこんなもんかしらね。ったく、歯応えがなさ過ぎて全然楽しくないわねー」


「うお、おおお……」


「あぐ、うぇ……」


 終わってみれば、エヴァの圧勝だった。カードの補充をするため、一旦変身を解いてから再変身した後出口へ歩いていく。


「にしても、遊園地ねぇ……。懐かしいわね、キルトの誕生日のお祝いによく連れて行ってあげたっけ。やること全部終わったら、また行きたいわ」


「おやおや、これはおかしなことをおっしゃられる。すでに夢と不思議のワンダーランドにいるというのにねぇ」


「あっ、あんたは! よくもまあいけしゃあしゃあとそんなこと抜かせるわね、さっさとアタシたちをここから出しなさいよ!」


 無人となったお化け屋敷を脱出し、一息つくエヴァの元にクラウンズワールドの支配人たる実験体8837号ことサモンマスタートリックが現れる。


 自分たちを元の場所に戻せと抗議するエヴァだが、道化師はせせら笑いながら首を横に振る。自分から引きずり込んだだけあって、タダで返すつもりはないようだ。


「お帰りになられたいのであれば、我を倒してからにしていただきたいですね。もっとも、そう簡単に倒されるつもりはありませんが」


『ジャグリングコマンド』


「ふぅん、()る気満々ってわけ? いいわ、だったら返り討ちにしてやるわ!」


『アックスコマンド』


 実験体8837号は、口から七つのボールが描かれたカードを吐き出し左手のスロットに挿入する。エヴァもサモンカードを使い、迎え撃つ準備を固めた。


「それではとくとご覧いただきましょう、トリック・ザ・クラウンの華麗なるショーを!」


「フン、何をするつもりか知らないけど。並大抵の曲芸なんかじゃ、アタシを驚かせることなんて出来ないわよ」


「なるほど、では最初から全力で行かせていただきましょう! せいっせいっせいやー!」


 赤、青、黄、緑、紫、水色、黄緑色……カラフルな七つのボールを出現させ、高速でジャグリングする実験体8837号。


 単に円を描くだけでなく、様々な軌道を描きながらボールを投げる。その卓越した手腕に、思わず魅入ってしまうエヴァ。


「へぇ、言うだけあるじゃない。おひねりあげたいとこだけど、今お金無いから……代わりに斧の一撃をくれてやるわ! ミノスクラッシュ!」


「ふむ、なれば……ジャグリングシャワー!」


「ちょ、なんなのよこのボール!? どんだけ分裂するのよ、うざったいわね!」


 意外と上手い芸を見て、攻撃という名のおひねりをあげることにしたエヴァ。斧を振りかぶりつつ突進するも、相手は素早く後ろに下がる。


 そして、それまでジャグリングしていたカラフルなボールを全て前方に投げた。すると、ボールが分裂し元の数十倍の数になる。


 ボールの波に押し流され、後退させられるエヴァ。前に進もうにも、ボールに足を取られ転んでしまう。


「ったぁ! もう、尻もち着いちゃったじゃないの!」


「おやおや、それはかわいそうに。では、次なる芸で大笑いし、痛みを忘れてもらいましょう!」


『マリオネットコマンド』


 文句を言うエヴァに、そう答えつつ実験体8837号は第三のサモンカードを取り出す。糸で吊り下げられたデッサン人形が描かれたカードを、手のひらのスロットに入れる。


 すると、エヴァの真上にマリオネットを繰るための板付きの糸が現れた。糸が降り、エヴァの手足や身体にくっつく。


「ちょ、何すんのよ!」


「次の演目は、お客様自身に演じていただこうと思いましてね。では始めましょう、それっ!」


「ちょ、あらららら!?」


 実験体8837号の動きと連動し、エヴァに取り付けられた糸も動く。結果、珍妙な踊りを踊らされることに。


 屈辱的なポーズを取らされたり、人体構造の限界を攻めるような動きをさせられたり……と、見た目のマヌケさとは裏腹に何気にヤバい攻撃だった。


「こんのー、よくもやってくれるわね! こんな糸なんてひきちぎっぺ!」


「おっと、つい手が滑ってしまいました。お客様、お怪我はございませんか~?」


「……あんた、ホントいい性格してるわね。もうあったまきた、ぶっ殺してやるわ!」


『アドベント・キルモートブル』


「ブルちゃん、あの糸を吊ってる板をぶっ壊して!」


「ぶもお!」


 糸をちぎろうとするも、実験体8837号が自分の顔を殴ったのに連動し、エヴァも自分の顔面にパンチしてしまう。


 けらけら笑っている実験体8837号を見て、完全にブチ切れた。相手が次の動きに入るより早く、スロットから半分契約(エンゲージ)のカードを排出して再装填する。


 そうして相棒を呼び出し、自身を操っている糸繰り板を破壊させるエヴァ。キルモートブルは大ジャンプし、頭突きを放ち期待に応えた。


「!? な、なんだそれは。我のデータにそんなサモンカードの使い方は記録されていないぞ!」


「あら、やっと素に戻ったようね。生憎、教えてなんかあげないわ。キルトお手製の切り札だもの」


「くっ、なれば! 早急にトドメを刺してくれる!」


『アルティメットコマンド』


 召喚(アドベント)を目の当たりにした実験体8837号は、狼狽し元の喋り方に戻る。想定の範囲外である、本契約モンスターの顕現に驚愕しているようだ。


 連携攻撃をされる前にエヴァを倒さんと、口から最後のカードを吐き出す。笑みを浮かべる巨大なピエロの顔が描かれたカードが、スロットインされる。


「食らえっ! クラウン・ザ・ハンドシェイク!」


「フン、そんな技食らってやるつもりはないわ。ブルちゃん、こっちも奥義いくわよ!」


「ぶもう!」


『アルティメットコマンド』


 顔と手だけしかないピエロが上空に現れ、エヴァを見下ろす。どうやら、このピエロが実験体8837号が本契約しているモンスターらしい。


 両手による挟み込み攻撃が行われるなか、エヴァも切り札を使う。キルモートブルに飛び乗り、全力疾走して相手の攻撃をかわした。


「なっ……」


「これで終わりよ! カモン、エクスキューションロード! 食らいなさい、ファラリススクラッチ!」


「がっ……ぐああああ!!」


 実験体8837号に体当たりをブチかまし、上空へはね上げる。すかさず手を伸ばし、相手の頭を鷲掴みにするエヴァ。


 そして、遙か前方まで伸びる処刑用プレートに相手の頭を押し付けながら全速前進する。悲鳴がこだまするなか、エヴァは残虐な笑みを浮かべた。


「くぅ~、これよこれ! 前にオカマ鳥に使った時は相殺されちゃったから、久々に成功させられたわね。テンション上がるわぁ~! てやっ!」


「う、ぐっ……」


「じゃあね、道化師野郎。あんたの演目、まあまあ面白かったわ。とりゃっ!」


「がはあっ!」


 ある程度進んだところで、エヴァは相手を真上に放り投げる。ブン投げた実験体8837号を追って自分も跳躍し、相手を追い越した瞬間かかと落としを炸裂させた。


 力尽き落下していった実験体8837号は、真下で待機していたキルモートブルの角に貫かれ断末魔の声をあげる。


「こん、なことが……。ネガ様に、ほう、こく……がふっ」


 呟きを漏らし、実験体8837号は息絶えた。同時に、幻想の遊園地がの崩壊が始まり景色が歪んでいく。元いた廊下に、エヴァたちが帰還しようとしていた。

面白いと感じていただけましたら、ブクマ・評価等していただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] カートを迷惑料で頂戴したけど(ʘᗩʘ’) 普段ポータルを使ってるからビークル(車)の類は不要だけど移動手段に何か用意せんと現場に急行がてきんぞ(٥↼_↼)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ