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101話─理術研究院潜入

 ポータルを使い、移動する作戦実行メンバーたち。あらかじめ潜入していた仲間、イミーラの残した痕跡をたどり理術研究院の第二牢棟に入り込む。


「あー、ひっさしぶりに帰ってきたわね。懐かしいわー、暗域。この空気がたまんないわ」


「あまり大声を出すな、研究員どもに感付かれたらどうする。……それにしても妙だな。警備員が見当たらないが」


「ま、多いんならともかくおらへんのやったらラッキーちゃうん? さ、急いで進まへんと」


「……まあ、そういうことにしておこう」


 久方ぶりに故郷に帰ってきたエヴァは、窓から見える景色を眺めつつそう口にする。そんな彼女に声を抑えるよう注意しつつ、リリンは首を傾げた。


 本来ならば、九つある牢棟にはそれぞれ警備員が駐在している。のだが、彼らは現在仕事をサボタージュして宴をしていた。


 生憎、イミーラもそのことは知らなかったため連絡にその旨が含まれておらず、何故警備員がいないのか不思議がることになったのだ。


「単なるラッキーで終わればいいのだがな。キルトじゃないが、どうにも嫌な予感を覚える」


「なんや、心配性やなぁフィリールはんも。大丈夫や、なんかあってもそん時はそん時でどうでもなるわな。な、エヴァちゃんパイセン」


「なんでアタシに振るのよ……。まあいいわ、確か地下だったわよね、例の装置があるのは」


「ああ、地下四階にあるようだ。そこまで行くぞ、出撃!」


 警備員の代わりになる罠があるのでは、と訝しみ警戒するフィリールに、あくまで楽観的な姿勢を崩さないアスカ。


 丸投げされたエヴァが肩を竦めていると、リリンが声をかけてくる。ポータルを通る途中で頭に叩き込んだ地図を思い出しつつ、一行は地下へ向かう。


「本当に妙だな、警備員どころか研究員もいないとはな。誰もいないなどあり得るのか?」


「何か面倒なことが起きて、全員本部にいるんじゃない? あるいは、何らかの事故が発生してみんな死んだとか」


 十数分後、とりあえず地下一階まではスムーズにたどり着けた。が、あまりにもスムーズ過ぎて逆に違和感を覚えるフィリールとエヴァ。


 ちょうどその頃、研究員たちはバカ騒ぎの真っ最中だった。……のだが、セキュリティルームから通達が届いたことに一人が気付く。


「んあ? なんだ、地下のセキュリティシステムがオフラインになってるってよ」


「まーた電源落ちたのか、アレ。ここ最近、メンテナンスする時間なかったからなー。ま、後で見に行けばいいだろ。どうせ侵入者なんていないし」


「だよねー。お、上がりだ!」


「おあっ!? やべ、いつの間にか俺ビリじゃん!」


 スゴロクに興じていた研究員たちは、セキュリティシステムの異常を放置してしまった。ここで面倒くさがらず、復旧作業に当たるべきだった。


 だが、彼らはそうしなかった。結果、彼らは最悪の事態を招くことになる。魔魂香炉を破壊されるという、あってはならないことが起きるのだ。


「よし、地下二階まで来た。もうすぐ折り返し地点に着く、一気に進むぞ」


「あいあい、分かったで。しかしまあ、やっぱ楽勝やな。ここまで来たら、もう楽ち」


「オオオァァァ……」


「! な、なんだ? この不気味な声は」


「よりによって、三階に降りる階段がある方から聞こえてきてるんだけど……。やっぱり、そう簡単にはいかないわね!」


 このまま楽々作戦完了……とは行かなかった。予想外のトラブルは、どんな時にも発生するもの。地下三階に続く階段から、不気味な唸り声と共に『ナニカ』が飛び出してきた。


「オオアアァ……!」


「な、なんやアレ!? ごっつキモいバケモンがお出ましたわぁ……」


 現れたのは、身体がドロドロに溶けたトカゲのような姿をした怪物だった。暗い緑色の身体から、ポタポタと液体が垂れ、床を汚す。


 濁りきった瞳からは理性が感じられず、危険なオーラを醸し出していた。この化け物を始末しなければ、先に進めない。


 すぐさま変身し、撃滅しようとしたエヴァだったが……。


「ん? ちょっと待って。あの化け物の背中、何か刺さってない?」


「本当だ。あれは……まさか、デッキホルダーか?」


 化け物の背中に、デッキホルダーらしきものが刺さっているのを見つけたのだ。それを見たフィリールが、一つの推測をする。


「……エヴァ、まさかとは思うが……。あの化け物、サモンマスターのなれの果てという可能性はないか?」


「あり得るわね、それ。多分、なにかの実験をしててしくじった結果、本契約してたモンスターと融合かなにかしちゃったんだと思う」


「ムダ話はそこまでだ、来るぞ!」


「ウギァァァァ!!!」


 化け物の正体について推察していると、敵が動き出す。半分溶けた身体のどこからそんな力が出ているのか、凄まじい瞬発力を放ち突進してくる。


 リリンに声をかけられ、エヴァたちは散開し攻撃を避ける。幸い、彼女たちのいる廊下は広く位置取りには困らない。


「ったく、やっぱり楽に行かないじゃないのよアスカァ!」


『サモン・エンゲージ』


「ウチのせいかいな!? いや、確かにおもっくそフラグ立ててもうたけども!」


『サモン・エンゲージ』


「いいぞ、その罵声を私にも浴びせろエヴァ!」


『サモン・エンゲージ』


「貴様はいい加減その気色悪いムーヴをやめんか!」


「おっふ❤ 痺れるのもたまらん!」


 やいやい騒ぎつつ、それぞれ変身するエヴァたち。どんな時でもドMるフィリールに、ついにリリンがブチ切れ雷の矢を叩き込む。


 が、その程度ではご褒美にしかならず、結果として余計フィリールを喜ばせるだけで終わった。謎の敗北感を覚え、リリンは膝を折る。


「くっ、バカな……! アンジェリカであれば、今の一撃で撃沈するというのに! クッ、なんだこの凄まじい挫折感は……ならば、あの化け物で鬱憤晴らしをしてくれる!」


「ちょっと、なんか知らないけど勝手にキレてるわよあいつ」


「ふっ、ナイスアシストをしたというところかな?」


「いや、多分違うと思うで?」


 お仕置き失敗に動揺した結果、化け物をブチのめすことで憂さ晴らしすることに決めたリリン。再度の突進をかわし、相手の背後に回り込む。


「ちょうどいい、お前たちに見せてやろう。ネクロ旅団死天王が一人、『サンダーライズノスフェラトゥス』たる私の力をな!」


 そう叫びながら、リリンは懐から黄色い結晶を取り出す。中が透けており、稲妻の形をした何かが納められているのが見えた。


 エヴァたちが見守るなか、リリンはネクロクリスタルなる結晶を己の胸に突き刺して体内に取り込んでいく。すると……。


『ネクロ・リボーン』


「な、なんや!? 姿が変わっていくで!」


「ふう……さて、始めよう。四つの厄災が一つ、落雷を司る私の力……そのまなこに焼き付けろ」


 体内に取り込んだネクロクリスタルの力を使い、リリンは異形の姿へと身を変える。首から上が赤い馬の頭部へと変わり、額に稲妻のような角が生える。


 下半身もまた同じ色の馬の胴体へ変わっているが、脚は無く変わりに丸いブースターのようなものが取り付けられ宙に浮かんでいた。


「な、なんだあの姿は? ノスフェラトゥスなる者たちは、あんな異形になるのか?」


「まさにザ・怪人って姿ね。変身するところを見てなかったら、敵だって誤認するわねこれ」


 ノスフェラトゥスとしての姿になったリリンを見たエヴァたちは、そんな感想を漏らす。敵たる怪物も、リリンを恐れているようだ。


「グル、ウァ……」


「なんだ、私が怖いのか? ま、無理もない。異形に成り果てたとはいえ、貴様は一介の生物の範疇を超えてはいないからな。生も死も超越した、我らノスフェラトゥスを恐れるのも無理からぬこと」


「グルァァァ!!!」


 化け物は雄叫びをあげ、リリンに突撃していく。巨体を活かして体当たりをかまし、叩き潰そうとしているのだ。


 それに対して、リリンはその場から動かない。泰然自若とした構えを崩さず、ただ右手を前方に突き出すだけだった。


「グル、ア……!?」


「あら、マジ!? 片手で受け止めたわ、バケモンの突進を!」


「グ、ウウ……」


「どうした? 私は全然力を込めていないぞ? 押し返せないのか、情けない奴め。どうやら、図体だけのこけおどしのようだ…な!」


「グラァッ!?」


 怪物の鼻先を掴み、リリンは身体を横に捻って相手を背後へとブン投げる。床に叩き付けられた怪物は、たまらず悶絶する。


「ふむ、この程度なら私一人で十分だろう。お前たち、とくと見ているがいい。私の戦い方をな」


 リリンことサンダーライズノスフェラトゥスの戦いが、始まる。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] イナズマイレブンの形の何か、は流石に版権危ういぞ(٥↼_↼) [一言] 潜入チームは知らないけど今の研究所自体がダンボール一箱で潜入出来そうなヌルゲーになってるが(ʘᗩʘ’) 出てく…
[一言] >「くっ、バカな……! アンジェリカであれば、今の一撃で撃沈するというのに! クッ、なんだこの凄まじい挫折感は……ならば、あの化け物で鬱憤晴らしをしてくれる!」 もうアレは諦めろよ雷オババ…
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