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【コミカライズ】二周目の人生で学園無双 ~人類最後の冒険者、【絶滅エンド】を避けるため成り上がる~  作者: 絢乃


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016 初めてのお泊まり

 アリサの強い押しに負けて、彼女を学生寮まで送る羽目になった。

 正直、送る必要があるのか疑問だったが、「デートでしょ?」と言われてしまえば反論できない。


「すっげぇ……これが学生寮? 大富豪のセカンドハウスじゃなくて?」


 到着したのは、国魔の近くにある高級マンションだった。

 敷地内には庭園らしきスペースがあり、外観もやたら豪華な造りだ。

 俺のイメージする“学生寮”とは全く異なるものだった。


「一部を国魔の生徒に貸し出しているの。あなたも借りたら? 無料だよ」


「マジで検討するレベルだ……」


 ロビーでセキュリティの認証を済ませて、エレベーターに乗る。

 上階を示す数字が高速で変わり、やがて目的のフロアへ到着した。


「じゃ、ここでお別れな」


 俺はエレベーターを降りたところでそう告げた。

 しかしアリサは「待って」と腕を引っぱってくる。


「ここまで来たんだから、部屋の前まで送ってよ」


「えぇ……」


 俺は戸惑いを隠せなかった。


(どうしてこうなった? 昨日は敵視されていたのに)


 女性経験があれば、彼女の気持ちが理解できるのかもしれない。

 しかし、俺は前世から今日に至るまで恋人ができたことすらなかった。

 現世では国魔に受かったことで告白されまくったが……。


「そんなに嫌がること? すぐそこじゃん」


「ま、まぁ、そうだな。分かったよ」


 高級感の漂う廊下を歩く。

 そうして、アリサの部屋の前までやってきた。


「じゃあ、また明日」


 理性が残っている間に帰らないと。

 そう思って足早に去ろうとするが――。


「ねえ、泊まっていってほしい」


 アリサが服の裾を掴んできた。

 さすがの俺でも少なからず期待していたが、さすがにそれはまずい。


「いや、いやいやいや! 無理だろ、それは! というか、どうして急に誘ってきたんだ!? 嬉しさ以上に怖いんだが!?」


 俺は身振り手振りを交えて言った。

 本来なら無条件に喜ぶ場面だが、ここまで急展開だと恐怖が勝る。

 すると、アリサは怯えた表情で言った。


「実は……まだ怖いの。ダンジョンで不良連中に絡まれたこと」


「あぁ」


「もしレンが一緒じゃなかったら、私、今ごろ……」


「でも、俺がいなかったらダンジョンに行くこともなかったぞ」


「そうじゃなくて、ほら、ダンジョン内で別行動をしていたかもしれないじゃん? あそこの敵、弱かったし。二手に分かれて魔石を集めたほうが効率的だからってなる可能性もあったでしょ」


「たしかに」


 実際、それに関してはアリサの言う通りだ。

 効率だけを考えた場合、二手に分かれた方がよかった。


「私、ああいう冒険者がいるって知らなくて。それで怖くなっちゃって……」


 アリサの気持ちは理解できた。


「でもさ、俺たちは昨日知り合ったばかりだ。しかも異性で、ここは学生寮も兼ねているんだろ? 一緒に泊まるどころか、こうして話しているのですら、他の人に見られたら誤解されると思うぞ」


 これはアリサの名誉を思っての配慮だ。

 今の状況を傍から見たら、アリサは尻軽な女に思われるだろう。


「誤解されてもいいよ。だって、他に頼れる相手がいないんだから。親にも勘当されたし、こんな性格だから友達なんていないし。だから……いいでしょ?」


 上目遣いで迫ってくるアリサ。

 そんな風に言われると、もはや断ることなどできない。


「……仕方ないな。親に泊まるって伝えておくよ」


「うん! ありがとう、レン!」


 こうして、俺はアリサと一夜を明かすことになった。


 ◇


 アリサの部屋は2LDKで、外観と同じく内装も高級感に満ちていた。

 壁に掛かっている謎の絵からダイニングテーブルまで、全てが高そうだ。

 それに新品同然のピカピカした綺麗さで、さながらモデルハウスである。


「なんというか、生活感が全くないな」


「昨日から住み始めたばかりだもの。基本的には最初から全て揃っている状態だったし、私物は服くらいしかないわ」


「バスタオルとかも備え付けだったのか?」


「うん。タオル類はフロントに連絡したら交換してもらえるよ」


「ホテルかよ!」


 アリサは壁面のパネルを操作し、全室の照明と空調をオンにした。


「レン、とりあえずシャワーでも浴びてきたら? その間に衣類を洗濯しておくわ。埃や血飛沫で汚れているから」


「助かる。でも、着替えがないんだよな。フロントに頼めば持ってきてもらえるかな?」


「さすがに着替えは無理だけど、バスローブならあるよ。それでいいんじゃない? 2時間もあれば乾燥まで終わるから」


「そうか、乾燥機ってものがあるんだな。ウチみたいな貧乏家庭には存在しないものだから忘れていたよ」


 お言葉に甘えて、俺は浴室に向かった。


 ◇


 シャワーを終えた俺は、リビングに来ていた。

 バスローブ姿で革張りのソファに腰掛けてスマホを取り出す。


「実家よりも快適だな……!」


 家族用のグループLINEを確認する。

 そこに「アリサの家で泊まる」との旨を書いておいたのだ。


(お! 返事が来ている……!)


 さっそく父親が何やら発言していた。


『レン、避妊は男の義務だからな』


 これに母親が『異議あり!』と書かれたスタンプを押している。


「勘違いしていやがる」


 両親の反応に苦笑いを浮かべる。

 そんな時、するりと俺の手元からスマホが消えた。


「ニヤニヤ笑って何を見ていたのかなー?」


 アリサだ。

 背後からスマホを奪いやがった。

 いつの間にか入浴を終えていたようだ。

 可愛らしい寝間着姿をしている。


「ちょ、人のスマホを勝手に見るなって!」


「いいでしょ! ……って、なにこれ! 避妊!? あんたのお父さん、何かすごい誤解しているじゃん!」


 アリサの顔がカーッと赤くなっていく。


「ちゃんと俺の発言まで読めよ! 本当のことしか言っていないからな! 勝手に誤解されただけだから!」


 きっちり弁明しておく。


「もう! こんなつもりじゃないのに!」


 アリサは俺にスマホを投げつけ、その場でジタバタし始めた。

 それから両手で自分の顔を扇ぐと、隣に座って深呼吸する。


(だから、その距離感が誤解されるんだって……)


 俺は真横で恥ずかしがるアリサを見て思った。

 彼女の寝間着はレースのネグリジェに近いデザインだ。

 鎖骨は丸見えだし、生地が薄いため他も透けている、

 口には出さないが、ブラを着けていないことも分かった。


(目のやり場に困るなぁ……)


 俺だって男だ。

 こういう展開になれば期待はする。

 それを理性によって必死に抑えているわけだ。

 なのにアリサときたら――。


「レンの家族……羨ましいな、仲が良くて」


 突然、アリサが呟いた。


「たしかに仲はいいほうだと思う。貧乏だけどな」


「いいじゃない、貧乏でも。ウチじゃ、レンのところみたいな温かいやり取りなんか一度もなかったよ。何をするかは全て親が決めて、従わなかったら怒られる。それだけの生活だったもん」


 アリサが悲しそうに目を伏せる。


「まぁ、これから国魔で色々な思い出を作って楽しんでいこうぜ。そのために親の反対を押し切って国魔を選んだんだろ?」


「うん……」


 俺はアリサの肩に腕を回し、頭を撫でてやった。


「そんな暗い顔をするなよ。似合わないぞ。昨日みたいに強気でギャーギャー喚いてくれたほうが似合うって」


「……うるさいなぁ」


 と言いつつ、アリサは嬉しそうに笑った。


「大変なこともあるだろうけど、一緒に乗り越えていこうぜ。来年までは嫌でも同じPTで活動するんだからさ」


 アリサはコクリと頷いたあと、体を俺に預けてきた。


「こうしてくっついていると、落ち着く」


「そ、そうか」


 俺は落ち着くどころか鼓動が跳ね上がっている。

 今にも心臓発作を起こしそうだ。

 そんな俺に対し、アリサはさらに追い打ちをかけてきた。


「レン……」


 アリサは恥ずかしそうに呟くと、顔を俺に向けてまぶたを閉じた。

 それが何を意味しているのか、俺ですら分かる。


(もうダメだ……! なるようになれ!)


 俺は顔を近づけ、アリサとキスした。

 彼女の唇は柔らかくて、俺の理性がガタガタと崩れていく。


「ん……」


 アリサの口から小さな吐息がこぼれる。


「レン、もっと……」


「分かった」


 要求に応えて再びキス。

 今度は先ほどよりも深く、互いの舌先が軽く当たる。

 そこから、ねっとりと舌を絡め合っていく。


「はぁ……レン……」


 アリサの呼吸が乱れる。

 熱のこもった色っぽい声が俺の耳を刺激した。


「アリサ……」


 俺はアリサのネグリジェに触れて腹部を撫でる。

 その手をスライドさせようとしたが――。


「ダ、ダメだ、これ以上はやめておこう」


 ――寸前のところで思いとどまった。


「なんで……。や、やだ、私は、もっと……」


 アリサの体が震える。

 上気した頬と潤んだ瞳が誘うように俺を見つめる。


「だって、ほら、俺たち、まだ知り合ったばかりじゃないか。いくら何でも早すぎる。勢いだけで進めちゃダメだ」


 最後の最後に理性が勝った。

 俺がただの高校生なら止まらなかったはずだ。

 しかし、前世の記憶があるせいで先に進められなかった。


「……分かった」


 アリサは未練がましく俺の手を握ったまま俯く。

 唇には熱が残っていて、俺もどうにかなりそうだった。


「じゃあ……寝るだけならどう? 一緒のベッドで寝るだけ」


「は?」


 まさかの提案に俺は固まった。


「本当にただ同じベッドで寝るだけだから。そういうことは一切なし。それなら別にいいでしょ?」


(いや、同じベッドで寝るだけとかあり得ないだろ!?)


 俺は拒もうとするが、その前にアリサが動き出した。

 強引に俺の手を引っ張って寝室に連れていったのだ。


 寝室では、ダブルサイズのベッドが俺たちを待っていた。


「ほ、本当に、寝るだけだからな……? 同じベッドで」


「分かっているわよ」


 アリサはベッドに入ると端に陣取った。


「ほら、レンも早く入りなよ」


「いや、俺、バスローブだし……」


「あっ……」


 アリサのますます赤くなる。


「違うから! 本当にそういうのじゃないから! 早く服に着替えてきてよ!」


「いや、まだ乾燥はおろか洗濯すら終わっていないから」


「うっ……! 知らない知らない! 私は寝る! おやすみ!」


 アリサは照明をオフにしてベッドの中に潜っていった。


「やれやれ、後先を考えない女だ……」


 俺はため息をつきつつ、バスローブを脱いだ。

 服の乾燥が終わるまで着るものがないので、全裸でベッドに入る。


(同じベッドにいて、俺は全裸……この状況で耐えるんだから、自分の理性を褒めてあげたい。いや、ただのチキンなだけか?)


 とにかく、この日は“そういうこと”にはならずに終わった。

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