参戦 2
漫画日本国召喚第1巻発売中!是非よろしくお願いします。また、小説 日本国召喚5巻は来月発売予定です!!日本国召喚の書籍は基本的に大幅加筆をしています。
よろしくお願いします!!
ムー国 リュウセイ基地
グラ・バルカス帝国の脅威が及ぶアルーの街から、東側に約200kmの位置に、ムー国空軍ホーウキ基地がある。
ホーウキ基地から北北東方向、アルーの街からならば北東方向500kmの位置に、このリュウセイ基地は存在していた。
先日、航空自衛隊の偵察機、RF4Eは、グラ・バルカス帝国軍基地の詳細偵察のため、飛び立つ、帝国の技術では絶対に撃ち落とされる事は無いと思われたが、念のためにジャミング(電子妨害)を行い、敵のレーダーを無効化した状態で、この作戦は行われた。
念には念を入れ、護衛として先着したF-2戦闘機2機がつく。
『武器使用の場合は、後の作戦で一気にたたくため、こちらの能力を極力知られてはならない。
緊急時を除き、護衛以外の武器使用は許可しない』
航空自衛隊のF-2戦闘機パイロットである神藤は、こう指示を受けていた。
レーダーを確認していると、明らかに不穏な動きをする機体を認める。
上昇し、再び低空へといった動作を繰り返しているようだった。
神藤は、かつて祖父から聞いた言葉を思い出す。
第2次世界大戦当時、日本国本土を爆撃していた敵軍の中には、子供や、動いている村人を故意に狙って機銃を放つようなパイロットもいたと……。
祖母は、それで殺されたと……。
明らかな命令の拡大解釈、しかし今自分が戦えば、助かる命がある。
血が沸騰した。
彼は、敵の高度に合わせるために急降下を行い、地表を這うように進んだ。
やがて、目視範囲に入ると、明らかに地上の避難民に対して機銃掃射をしている敵航空機を発見する。
日頃沈着冷静である神藤は激高した。
「いたずらに命を失う者、狙われる者達の気持ちを……思い知れ!!!」
彼は、冷徹に……訓練されたとおりの動きを行い、短距離空対空誘導弾で敵機をロックオン、ミサイル発射ボタンを躊躇すること無く押し込む。
ミサイルは轟音と共に射出され、正確に飛翔、地上を狙っていた敵機を粉砕した。
さらに、上空には2機の敵機を認める。
この者たちによる、地上の避難民に対する攻撃の可能性も否定出来ず、情報を持ち帰られる訳にはいかない。
彼はすぐさま撃墜することを決意し、急上昇しながら敵機を撃墜、反転し、残りの1機を撃墜した。
そして、今に至る。
目の前には、怒鳴りちらかす上司が一人。
「……だから、敵に我が方の能力を悟られる訳にはいかん!!今回の貴様の行動で、命を救われた者もいるだろうが、その行動は不用意としか言い様がない解ったか!!」
たっぷりと絞られた神藤はやっと説教から解放されたのだった。
施設を出て、外を歩いていると、遠くの方から聞きなれた音が響く。
彼は空を見上げた。
「お!?海自さんも到着か……」
彼の目には、編隊飛行してきた12機のBPー3Cが着陸体制に入る姿が写る。
パーパルディア皇国、皇都エスシラント陸軍基地を爆撃し、皇国崩壊のきっかけを作った部隊
さらに、P-1、そしてC-2等、様々な機体が飛来する。
基地機能は強化され続けるのだった。
◆◆◆
グラ・バルカス帝国 最前線基地 バルクルス
最前線基地バルクルス、星形の要塞であり、その外側には飛行場が整備されている。
同飛行場では、帝国の誇る戦闘機、爆撃機が整然と並び、帝国整備兵が行き来する。そのきびきびとして姿は練度の高さをうかがわせる。
同基地の総司令である第8軍団長ガオグゲルは、執務室から外を眺めていた。
郊外には飛行場が整備され、ムー国のアルーを落とした第4機甲師団も、一時整備のため、歩兵を主とする第3師団と交代し、燃料、弾薬補給のため、このバルクルスに随時帰還していた。
圧倒的兵力、この世界には我々に抗するほどの力を持つ者はいないであろう。
コン……コン……
「入れ」
執務室のドアがノックされ、各階級の幹部が入室し、会議が始まった。
アルーの街を攻撃していた陸軍幹部が報告をはじめる。
「アルーの街は敵国の駐留軍主力を全滅させ、ほぼ掌握しました。
ゲリラ的な反抗はあるでしょうが、現時点、任務遂行に影響はありません。
また、敵ムー国の航空機性能は、海軍からの資料のとおりの性能であり、帝国航空兵の敵ではありません。
敵最新鋭戦闘機の速度は時速にして約380km程度であり、爆撃機であっても、高度と最高速度を維持すれば、振り切れるでしょう」
各幹部の顔が、多少の安堵に包まれる。
ムー国本土戦、懸念はあった。
艦載機と陸上機では、基本的には性能が異なる。
艦載機は、陸上で運用される機体に比べ、飛行機本体の強度を船からの発着に耐えれるよう強化しなければならないため、性能が低くなる傾向にある。
仮にも世界第2位の列強を名乗っている国、もしかすると、ムー国本土では、事前の情報よりも強力な機体があるかもしれない。
まだ辺境を落としたのみなので、この懸念が払拭された訳ではないが、敵が情報通り
の強さを見せた事で、幹部達は安堵するのだった。
続いて、陸軍航空隊が報告を開始する。
「アルーの街から東へ約200kmの位置に、ムー国人がホーウキと呼んでいる航空基地があります。
アルーへ出撃されたらやっかいなので、このホーウキの爆撃をアルー侵攻と時を同じくして行いました。
先制攻撃は成功し、敵戦闘機のほとんどを地上撃破、約7機が上がってきましたが、護衛の帝国航空兵により、撃墜、損失はアンタレス型戦闘機1機が、対空火砲により、被弾していますが、損傷軽微であり、修理3日で戦線復帰が可能です」
基地司令ガオグゲルは満足そうにうなずいた。
「懸念事項が1点あります。
アルー東側の空域を哨戒飛行中の第2飛行隊所属リースク小隊3機が消息を絶ちました。 消息を絶つ寸前に、レーダーが一時使用不能となり、無線も使用出来なくなったので、この惑星に時々ある大規模な磁気嵐が発生したものと思われます。
ただ、磁気嵐で3機も失った事は前代未聞であり、同3機の探査を開始いたしました」
かすかに心に引っかかる報告……。
「未知の敵の可能性は?」
「磁気嵐と同時に強力な敵機が多数襲来したのであれば、説明がつきますが、今のところその可能性は極めて低いと考えます。
ただ、可能性はゼロではないので、各方面から情報を収集中です。
この星はまだ良くわかっていない事が多すぎます。もしかしたら、レーダーが効かなくなるほどの大規模磁気嵐が時折発生していて、敵機はそれに対して耐性をもっている事も、否定は出来ないのです」
人は、理解できない事が起きた場合、経験と知識で解決しようとする。
極めて高度なジャミング(電子妨害)が日本国によって行われた事は、彼らの想像の外側の現実であった。
「神聖ミリシアル帝国の、未知の戦闘機が参戦した可能性もある。
今後、新たな事象を発見したならば、細目漏らさず報告するように!!」
「はっ!!」
神聖ミリシアル帝国は、空中戦艦という化け物を先の戦いで投入した。
超戦艦グレードアトラスターの主砲でぶち抜き、撃墜したらしいが、陸上にそこまで強力な砲は無い。
「懸念はありますが……」
第4機甲師団長ボーグが発言を開始した。
「次の陸上作戦について説明します。
アルーの街の東側に、空洞山脈と呼ばれる区域があります。
空洞山脈の空洞は戦車でも通行可能との報告を受けておりますので、そこを突破し、さらに東側にある街を制圧します。
この空洞山脈東に位置する街は人口22万人です。ムー国陸軍及び増援軍との武力衝突が予想されます。
この街は、ムーの大動脈とも言える南北を結ぶ鉄道のうち、西周りの鉄道拠点でもあります。
ここを制圧することで、ムーへの打撃は相当なものとなるでしょう。
作戦の制度を高めるため、航空戦力による制空権の確保が必要です。
一番槍は……我が第4機甲師団がいただきます。
事前の空爆と、出てきた敵の殲滅は私たちが行いますが……市街戦となると……」
「ああ、市街戦までいくならば、増援部隊を派遣する」
「ありがとうございます。敵主力を誘い出すよう、策を練りたいと考えます。平野部での戦いであれば、我が機甲師団に敵はいません。
ムーだろうが、神聖ミリシアル帝国だろうが、蹴散らしてみせましょうぞ」
「豪儀だな、たのんだぞ!!」
会議が一通り終了し、廊下において、軍団長ガオグゲルがボーグに話しかけていた。
「ボーグ君、アルーはどうだね?」
「はっ!!軍団長の指令は、各兵に伝えられ、士気はこの上なく上がりました」
ボーグはゲスのような顔をする。
「ボーグ君、私も味わってみたいものだよ」
「これは……ガオグゲル軍団長、失礼いたしました。今夜3名ほど、ムー国人の手配をおこないます」
「ボーグ君、解ってるじゃないか、時にボーグ君、本国の人間には……解ってると思うけど、極秘だよ」
「ははっ!!その辺はわきまえております!!」
会議室の姿とは打って変わったゲスのような姿、ガオグゲル軍団長の闇の一面が姿を現す。
戦時国際法など無い異世界、負けた民の人間は、「戦利品」として物のように扱われるのだった。
◆◆◆
ムー国、空洞山脈東側 キールセキの街
ムー国を南北に縦断する大陸鉄道……その西回りにあり、国境の街アルーから最も近い街、キールセキ……特殊な金属がとれるこの場所は、鉱山を主な産業として発展してきた。
このキールセキのとある酒場では、酔っ払いどもが話をしていた。
「聞いたか?アルーの街は、グラ・バルカス帝国の手に落ちたらしいぞ」
神妙な顔をした男が、一杯飲みながら話はじめる。
「ああ、住民は、兵によって大変な目にあってるらしい、具体的に話すと、胸くそ悪くなるので言いたくねぇがな……飲まなきゃやってられねぇよ」
「もしも、次に奴らが狙うなら、一番近くて、鉄道の重要拠点であるこのキールセキを狙うんじゃねえか?」
「そうだろうが、ムー国軍も、世界第2列強の意地があるだろ?西部方面隊主力基地も近くにあるし、さすがにアルーとは防御力が違い過ぎる。
このキールセキが落ちる事はねぇよ」
圧倒的で、絶望的な力差があるグラ・バルカス帝国、奴らが目と鼻の先とも言える場所にいることを、誰もが不安に思っていた。酔っぱらい達は、不安を取り払うかのように、強がりながら話す。
「違えねぇ」
「お前たちは何も解っていないな!!!」
不意に酒場に響き渡る大きな声、フードをかぶった1人の男が、酔っ払いどもの話を遮るように話はじめる。
フードの横からは、尖った耳が出ており、おそらくはエルフ族の者と思われた。
「お前たちは、グラ・バルカス帝国の恐ろしさを何も解ってはいない!!!」
男の手は震え、手に持つコップからは酒がこぼれる。
酒場の者達は、その男に釘付けになった。
「俺は……俺は、イルネティア王国海軍に所属していた事がある!!」
酔っ払いたちは、はっとする。
イルネティア王国……ムー大陸の西側、約500km、パガンダ島の北側に位置する文明圏外国家……パガンダと同様に、西方世界との交流の拠点であり、国は栄えていたと聞く。
近年、グラ・バルカス帝国の侵攻を受け、たしかあっさりと陥落している。
帝国と戦った実戦経験を持つ男の話に、酒場の酔っ払いたちは耳を傾ける。
「帝国は、明らかに宣戦布告ととれる、挑発活動を行った。イルネティア王は、これに激怒し、帝国外交官が帰る際、移動に使用した戦艦、グレードアトラスターに乗り込んだ瞬間を狙って攻撃を開始した。
砲撃は正確に着弾し、敵艦は爆煙に包まれたよ……」
今まで、伝説級の強さを誇ってきた恐怖の対象、超戦艦グレードアトラスター、これに文明圏外国家が、砲撃を着弾させていたという事実に、場はざわつく。
「至近距離の射撃だったので、当たった。
我が国は、第2文明圏列強、レイフォルと同じように、着弾したら爆発するタイプの砲弾を、使用した。
さらに……魔法砲撃術のリミッターを解除することにより、砲身の寿命と引き替えに砲撃の威力を上げるといった……我が国の秘術までもを使用し、グレードアトラスターに攻撃を続けた……しかし……
奴は……化け物だ!!」
話しながら、恐怖を思い出しているのであろう……語りだす男はの額からは冷や汗が流れ、手は震え始める。
「当たった……確かに当たったんだ!!我が国最強の技術と……我が国最強の砲撃が!!
でも……でも、奴らは何も無かったかのように……何も無かったかのように、我が艦隊を砲撃したんだ!!
しかも……1発で、魔導戦列艦が、爆散するほどの威力で!!
とてつもなく重い1発……たったの1射で、魔導戦列艦が、粉々に粉砕されるんだぞ!!
あんな攻撃見たことが無かった……。
俺は、古の魔法帝国の空中戦艦が、グレードアトラスターに落とされたと聞いて、不思議には思わなかった」
場が静まる。
「ま……まあ、お前さんが、大変な思いをしてきた事は良くわかった。
しかし、このキールセキは、ムーにとっても絶対に落としたくない戦略的拠点だから、簡単には落ちねぇよ。
ほら、知ってるか?
ええと……何だったかな……日本国、そうそう、日本国も、ムーを救うために参戦するらしいぞ。
なんとかなるって!!」
「認識が甘いと言っているのだ!!奴らの次元は、私の知る戦闘の次元を遙かに超えた位置にいる!!
陸軍だってとてつもなく強い!!奴らの陸軍で使用された戦車という名の超兵器も、私は見たのだ!!
鋼鉄の車に、高威力の魔導砲が取り付けてあり、我が方の魔導砲が直撃してもびくともしない。
しかも、かなりの高速で動くのだ!!」
酒場の熱が高まる。
「まあまあ、ご主人、そう熱くなりなさんなって、お!?みてくださいよ、援軍が、汽車で到着したみたいですよ」
酒場の横の線路を、ゆっくりと汽車が通り過ぎる。
「ああ、ご主人が見た戦車って、あんなの?」
熱く語っていた男が、窓の方を向く。
「つっ!!!!」
目を見開く。
そこには、彼の見たグラ・バルカス帝国の戦車に比べ、遙かに大きく、洗練された形を持ち、遙かに巨大な砲を積んだ10式戦車が、汽車の荷台に積まれて通り過ぎる姿があった。
「こ……これは……すごい!!!」
グラ・バルカス帝国によって国が滅ぼされ、絶望の中でムー国に逃げた。
第2文明圏列強ムーの力をもってしても、とてもかなわないと思われた国、神聖ミリシアル帝国や、世界連合でさえも退けた恐怖の帝国、グラ・バルカス帝国……。
彼の心に、かすかな希望の光が生まれる。
◆◆◆
ムー国陸軍 西部方面隊主力 キールセキ陸軍駐屯地 司令室
「失礼します」
一人の男が司令室に入った後に、報告を開始する。
「ホクゴウ司令、まもなく日本国陸軍第1陣が、駐屯地駅に到着いたします」
「うむ、ご苦労……さてと……客人を出迎えるとするか」
キールセキ駐屯地は、キールセキの街につながる駅とは別に、駐屯地へ鉄道が引き込まれており、迅速に大規模な陸軍展開が可能となっている。
そのなかには、まさに戦車の駅とでもいうべき構造になっており、積まれた戦車はそのまま方向転換をすれば、荷台から降りることが出来る。
「しかし……最近は、グラ・バルカス帝国や、日本国等、我が軍以外の軍が国土を
我が物顔で駆け回るな……」
グラ・バルカス帝国がアルーの街西側に展開をはじめた時、ホクゴウ司令は、帝国基地に対する先制攻撃を上申した。
アルーには多くの陸軍を展開させる能力は無く、攻撃を受ければあっさりと落ちる事が予想され、住民と少数の守備隊を見捨てる事になるのが目に見えたためだった。
すでに帝国からは宣戦布告を受けており、戦略的にも戦術的にも攻撃に反対する者はいないだろうと、軍部では予想されていた。
しかし……政治家と外務省が反対をした。
軍部は、街を放棄する事になる、守備隊も見捨てる事になると、強く反対したが
○ すでに街には避難指示を出している。危険性も、全住民に重ねて説明済みであり、街 が仮に落ちても政府は出来る事をした
○ 日本国と現在参戦の協議中であり、ムーが宣戦布告を受けているとはいえ、グラ・バルカス帝国に攻め入ったという事実を作りたくない。
仮に、日本国がムー国での陸戦を拒否すれば、ムー国にはアルー以上の甚大な被害が 及ぶ
との理由だった。
高度な政治的判断によるものだろうが、先制攻撃により、アルーの侵攻は遅れると予想されていたため、多くの救えた命を見捨てたという事実に、司令ホクゴウは、怒りを押さえることが出来ない。
「対空戦闘に対する日本国の強さは、聞き及んでいるしかし……陸戦は、対空戦闘とは異なるのだ……日本国に、いったいどれほどの力があるというのだ」
軍上層部からは、全面的に協力するように命令を受けていた。
司令ホクゴウは、複雑な感情をもって、出迎えに向かう。
キールセキ ムー国陸軍駐屯地駅
駅には、ムー国政府がこれほどまでに気を遣う、日本軍を人目見ようと、陸軍軍人たちの人だかりが出来ていた。
けたたましく列車の汽笛が鳴り、駅では到着を知らせるベルが鳴り響く。
「さて……どんな奴らが来るのか」
ホクゴウ司令は傍らに立つ部下につぶやくように話しかけた。
「政府や海軍は、日本国の技術を高く買っているようですが、陸軍は数と戦略がものを言う事が多い。
今回の1万人弱の派兵は、どう考えてもムーを救うには少なすぎます」
「……そうだな……援軍は助かるが、中途半端な援軍は軍の運用を妨げる場合がある。
数の優位を覆すほどの力があるとは思えないが……。
まあ、ここに到着する者たちだけではなく、航空支援も着くらしいから、少しは期待 しているが……」
ゆっくりと駅に入線してくる貨物列車、その荷台を見たホクゴウ司令は固まる
「つっ!!!」
見たことの無い兵器、圧倒的な存在感がそこにあった。
野次馬に来ていた兵たちも、ざわつきはじめ、各々が話し始める。
「おいおい見ろよ!!あれ!!」
ムー国で開発されている初期の戦車とは比べものにならないほどの大きさ、角張っており、ビス止めの跡も見られない、先進的な戦闘車両が運ばれてくる。
「あ……あれ、戦車かな?」
「解らん、たぶんそうだろうが……色々な種類がありそうだな」
自走榴弾砲を見たムー国陸軍兵士が各々の考察を述べる。
ゆっくりと入る貨物列車に積まれた車両達は、どれも見たことが無く、重厚感があり、大きかった。
用途、戦闘力等、判然としない部分は多かったが、「とても強そう」に見え、陸軍の士気は上がるのだった。
ゆっくりと貨物列車がホームに到着し、連結されている客室から、軍人が降りる。
存在感を放つ日本の軍用車両に、圧倒されたホクゴウ司令だった、気を取り直し、最初に降りてきた軍人に近づき、声をかける。
「よくぞおいでくださった、私は基地司令のホクゴウといいます。日本陸軍を我がムー国陸軍は、歓迎いたします」
彼は手を出す。
「出迎えありがとうございます。私は、日本国陸上自衛隊第7師団の司令です。大内田
和樹といいます。よろしくお願いします」
彼らはしっかりと握手をかわす。
陸上自衛隊の幹部達は、すぐにムー国軍と、作戦会議に移行した。
◆◆◆
ムー国 キールセキの街 西側約50km地点 空洞山脈
平らな平野部から上空に向かい、石が生える。
石は様々な形をしており、とてつもない大きさのコロニーを形成、人間から見ると山に見える。
同場所は、上空からの視認を妨げ、陸戦となると、上空支援は得られない。
空洞山脈と呼ばれるこの場所で、ムー国陸軍の偵察隊隊員は、バイクにまたがり、西の方向を眺めていた。
「き……来た!!!」
遠くの方から、黒い煙がかすかに見える。
グラ・バルカス帝国の戦車部隊が侵攻してくる姿……。
「な……なんて数だ!!!」
ムー国の常識として、戦車は虎の子であり、少数で運用し、あくまで大地を制するのは歩兵の役割だった。
しかし、敵はほぼすべて、戦車や、自動車に乗っているように思える。
大地を黒く染め、侵攻してくる敵、戦慄した彼だったが、すぐに我に帰り、無線で報告を入れるのだった。
コミック1巻発売中!! 小説5巻来月発売予定!!(今までとは違う感じの大幅加筆です)是非よろしくお願いします!!




