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参戦

 日本国召喚コミック1巻、1月21日発売です。早い店だともう置いているようです。

 どうかよろしくお願いします。

 また、小説、日本国召喚5巻は今年2月発売予定です。かなりの量加筆がありますので、こちらも併せてよろしくお願いします

ムー国 西部航空隊 リュウセイ基地


 ムー国で比較的西側に位置するこの基地で、軍の技術士官マイラスは、他の航空隊に対して説明を行っていた。

 

「と、いう流れでして、政府の依頼により日本国自衛隊が派遣される事になっているのは皆さん知ってのとおりであり、すでに先遣隊との交流はある事と思われますが、本日中には日本国の戦闘機が到着します」


 政府、軍の上層部からの説明があった後、リュウセイ基地の一部が増強され始めた。これはムー国の工事関係者のみではなく、日本国の工事関係者も工事に入り、やがて自衛隊の補給部隊が到着した。

 初めて見たC-130と呼ばれる化け物じみた大きさの飛行機を見たとき、ムーの軍人たちは度肝を抜かれた。

 しかし、マイラスの説明によると、今度はプロペラの無い飛行機が来るという。


「マイラス殿に質問があります」


「何でしょうか?」


「私たちが受けている説明では、日本軍に全面的に協力するように指令を受けています。

ムー国を支援に来てくださる友人に支援を惜しむつもりもなく、命令どおり全力で支援、支持いたしますが……日本国とは、世界第2位の列強国であるムーが、これほどまでに気を使うほどに力を持っているのでしょうか?」


 ムー国にも日本の本は出ているし、富裕層に至っては日本国を旅行し、その国力を直に感じる者もいた。

 しかし、軍人等の一般市民レベルになると、政府の通達や、時々伝え聞く噂程度しか情報源が無く、特に興味のある者以外は、これほどまでにムー国政府が気を使う事が、理解出来ないようだった。


「練度や士気に関しては、私は自衛隊の事を良く知りません。しかし、こと軍事技術面においては、日本国とムー国のそれは、ムー国と文明圏外国家以上の差があります」


 軍人達は身震いする。

 文明圏外国家とムー、その軍事技術の差は歴然であり、絶対に超えることが出来ない、絶対に戦闘となったら勝つことが出来ないほどの差があった。

 それ以上の差であると、軍の……しかも歴代最も優秀とされる技術士官マイラスが断言しているのだ。


「そんなばかな事があると思うか?」


 新人航空兵は、隣の同僚に話しかける。


「いや、さすがに盛りすぎだろう。同じ科学技術国家で、空力をつかった航空機にそこまで差が出るとは思えない」


「おれも、正直あり得ないと思う。参戦してくれるのはありがたいが、ちょっと日本国を神格化しすぎてやしないか?」


 先輩航空兵も、新人航空兵の意見に同調した。

 マイラスは話を続ける。


「今回の、日本国の戦闘機飛来について、西部航空隊の中では友軍を出迎えようといった意見も出ました。

 しかし、空中においてマリンが遅すぎ、日本の航空機が失速してしまう可能性が出てくるため、私が上申し、中止となりました」


 ムー国最強のマリン型戦闘機の最高速度をもってしても遅すぎるとは、いったいどういう事か、一同が困惑する中、聞いたことの無い轟音が聞こえ、F-2戦闘機が飛来した。


「な……なにっ!!」


 一度上空を通過した後、ゆっくりと左旋回を行い、滑走路へと進路をとる。

 日本人が見たならば、いつものゆっくりとした着陸前の旋回……しかし……。


「は……速い!!」


 ムー国軍人は、唖然とする。

 マリンよりも大きい機体、プロペラを持たずに飛行しているが、神聖ミリシアル帝国の天の浮船よりも美しく見える。


 軍人達を驚愕させたF-2戦闘機、およびF-15戦闘機は次々と着陸し、戦闘の準備を整えるのだった。



◆◆◆


 グラ・バルカス帝国 レイフォル領東側 帝国陸軍航空隊   ムー国領空


 第8軍団、第2飛行隊所属のリースクは、部下を3機で哨戒飛行をしていた。

 リースク隊は、性格に問題はあるが、技量に関しては一目置かれる存在であった。

 異世界転移後、初めて本格的な近代国家への陸上侵攻という事もあり、信頼できる彼らは最前線の哨戒任務についていた。


「ガオグゲル軍団長からは、怪しい奴は容赦なく撃てと言われています。よろしいですね?」


 部下のアルべーシがリースクに訪ねる。

 

「ああ」


 上司の命令……彼は小さくそう答えた。

 技量はあるが、アルべーシは性格に難がある。

 転移直後の戦いでも、ゲームのように笑いながら非戦闘員を機銃で撃ったその姿、誇り高い帝国軍人としてはあるまじき姿だ、反吐が出る。


 現在地ムー国アルーの街東側約50km地点……。


「おっ!獲物発見えーーーん」


 アルべーシは上司であるリースクに了解を取る事無く、急降下を開始した。






 ムー国の貴族、パーメル家の娘イネスは、幼い妹メルンを後ろに乗せ、バイクで東へ向かっていた。


 ひたすら続く一本道、もう少しで空洞山脈に入る事が出来る。

 空洞山脈……遠くから見ると、一見山のように見えるが、近づくとスカスカであり、人間のみならず、トラックやバスでさえも容易に通り抜け出来る。


 しかし、上空には枝の化石のようなものが折り重なっており、空からの攻撃から隠れるには絶好の場所となっていた。


「あと少し……あと少し……」


 空からの攻撃を受ければひとたまりも無いことは、理解出来る。

 私たちを、先に逃がした両親、無事であってほしい……そして、預かった妹の命を必ず守らなければならない。

 彼女は決意に燃える。


 やがて、先に出発した避難中の車に追いついた。

 彼女は、車の後を、ついて行く。


「おねえちゃん、あれ何?」


 メルンが空を指さした。イネスはその方向を向く。


「!!!!」


 明らかに解る形、グラ・バルカス帝国の飛行機が1機、急降下を開始していた。

 ほかにも2機、上空にいる!!!

 

 急降下してくる1機は、あきらかにこちらを狙っているように見えた。


「メルン!!しっかり捕まって!!!」


 彼女は後輪をロックさせ、急速に向きを変える。向きを変えた後、ロックを解除し、アクセルを全開にした。

 土煙を上げ、バイクは旋回する。

 急降下してくる航空機の音は地上にも聞こえ、甲高いその音は死へ誘う死神の笛のように聞こえる。

 次の瞬間、先ほどまでいた場所に光の雨が降る。

 敵の放った機関銃弾が曳光弾を交えて着弾した。

 着弾箇所は猛烈な土煙を上げ、先ほどイネス達の前を走っていた車は、バラバラに破壊され、炎上を始める。

 悲鳴を上げる暇も無いほどの一瞬の死。イネスの背中に冷や汗が流れた。


「くう!!」


 彼女はアクセルを全開にして空洞山脈に向かう。

 付近に遮蔽物は無く、なんとか被弾する前にそこまでたどり着きたかった。


「し……しまっ!!!」


 速度を上げすぎたため、わずかに突き出た小石に前輪をとられる。


「ぎゃっ!!」


 バイクは転倒し、土煙をあげて彼女らは転がる。

 幼いメルンはあまりの痛さに声をあげて泣きそうになるが、敵はゆっくりと泣く暇をあたえてはくれなかった。

 再び急降下する敵、明らかに戦闘力の無い自分たちを狙っている。

 

「そうだ!!!」


 彼女はメルンを連れ、急降下してくる戦闘機の方向に向かって走る。

 戦闘機はさらに角度をつけることが出来ず、なんとか攻撃をやり過ごした。

 第2次世界大戦中、日本国民が子供に教育していた航空機の機関砲から狙われた時の回避方法を、彼女は無意識に実践したのだった。


 しかしーー獲物を狙う敵はしつこく、上昇した後機首を下に向け、ゆっくりとこちらに狙いを定めようとしいている。


「ち……ちくしょう!!!」


 速度差のある戦闘機に平野部で狙われ、そう何度も逃げ切れるものではない。

 自分の命と引きかえに、送り出してくれた両親の顔が浮かぶ……守り切れないかもしれない。


「ちくしょう!!ちくしょう!!」


 グラ・バルカス帝国の航空機は明らかにこちらを狙っている。

 殺意をもって、圧倒的な力を振り下ろそうとしていた。

 涙があふれる。

 絶望……。

 気がつくと。、彼女は震えていた。


「うわぁぁぁぁ!!!」


 狼狽、そして悲鳴をあげ、妹の手を引き、走り始める。

 機首をこちらに向けようとする敵はひどくゆっくりと見える。

 速度差は絶望的……。


「助け……助け……助けて、神様!!!!」


 漏れ出す声。


「え!?」


 何かが……光の矢が通りすぎる。

 恐怖の対象に、矢が突き刺さる。

 一瞬空気が震える衝撃波の後、大きな爆発が出現した。


 翼が折れた敵は炎に包まれ、少し遅れて大きな爆発音が鳴り響いた。

 自分を襲おうとしていた飛行機は炎に包まれ落下する。

 飛行機が燃えさかり、落下する様は、ひどくゆっくりと見える。

 

 その飛行機に何が起こったのか……まったく解らなかった。

 



 グラ・バルカス帝国 航空隊


「何だ!!いったい何が起こった!!!」


 驚愕するリースク……。


「あ……アルべーシ機が撃墜されたぞ!!!」


 しかし、部下の無線からは反応が無い。


 突如として爆散したアルべーシ機……翼が折れるほどの爆発は、故障では無く、明らかに攻撃と判断した。

 彼は必死に戦場を見回す。


「あ……あれは!!!」


 低空で、地表を這うように侵入してきたそれは、帝国の航空機よりも遙かに速く、信じられない速度で近づく。


「あいつか!!」


 彼らは戦闘態勢をとる。


 リースクと残りの1機は反転、急降下を開始する。


「ぐっ!!」


 Gが体にのしかかり、機体に体が押し付けられる。

 襲来した敵は愚かにも低空から侵入してきた。空戦は高度が高い方が有利なのだ。

 エンジンのスロットルを全開にし、機は加速する。エンジンと風の織りなす合成音、機内は轟音に包まれた。

 

「な……なにっ!!」


 突如として敵が上昇をはじめる

 翼端から何かを発射した。


「え!?」


 速すぎる攻撃が部下の機体をおそう。

 一瞬……一瞬で部下の機体が爆発炎上を始めた。

 こちらの機関銃射程距離の、遥か外側からの攻撃……。


 敵機は瞬く間に……まるで高度を感じさせぬかのように、リースク機下方から上空へ抜ける。

 彼の人生で見たことの無いほどの速度、そして垂直ではないかと感じるほどの角度、圧倒的な上昇力で天空へ昇る。

 敵の通った後、バリバリといった雷鳴の如き轟きが響き渡った。

 機体はプロペラが無く、後方から1本の炎を出す。


 帝国の航空機をあっという間に2機撃墜した敵航空機は一瞬で青空に消える。


「は……速い!!速すぎる!!!」


 次元そのものが違う運動能力……。絶望的な性能格差。

 操縦技術、技量では決して埋められぬ機体の能力差を痛感する。


「ばかな!!化け物か!!」


 こんな化け物がいることを把握している帝国軍人はいないだろう。

 このまま戦争に突き進めば、あの化け物と、確実に対峙するようになる。

 彼はすぐに無線を手にとった。


「司令部!!司令部!!!」


 無線に応答は無い。

 そういえば、少し前から……無線が反応していない。


「司令部!!司令部!!!くそっ!!来やがった!!」


 何度も無線で呼びかけるも、司令部からの応答はない。リースクは、自分一人で化け物と戦う事を決意する。

 一瞬で空へと消えた化け物は、すぐに反転してこちらに機首を向け、翼端から何かが発射された。


「ちぃぃぃぃ!!!!」


 リースクはすぐに旋回を試し見る……しかし……。

 敵から放たれた光矢の如き攻撃は、一瞬で彼の機体に追いつく。

 F-2戦闘機から放たれたAAM-5はアンタレス型戦闘機の近くで近接信管が作動し、金属片をまき散らす。

 リースクは痛みを感じる暇も無く、その意識を手放した。

 バラバラに破壊されたアンタレス型戦闘機は炎を纏い、落ちていくのだった。



 航空自衛隊F-2戦闘機はアルーの街東側空域において、敵機3機を発見、非戦闘員に攻撃を加えようとしていたことから、交戦し、これを撃墜した。


◆◆◆


 結果として命を救われたパーメル家の娘イネスは空を呆然と見上げていた。

 戦闘機からの機銃掃射を受け、絶望の淵にいた彼女……。

 突如として自分達を攻撃しようとしていた戦闘機が爆発した。

 

 何が起こったのか……空を見上げていると、突然轟音と共に、自分たちの上を青く、鋭い形をした何かが通り過ぎる。

 おそらく、「それ」が彼女を救ってくれた正体なのだろう。

 耳をふさぎたくなるような轟音、翼端から雲を引き、雷鳴の如き轟きを発しながら、彼女が見たことの無い速度と上昇力で空に上る。

 途中、グラ・バルカス帝国の戦闘機1機をさらに撃墜、そして反転してきた後、もう1機を撃墜した。


「す……すごい。こ……こんなことって……こんな事が起こりうるの?」


 彼女は旋回してきた戦闘機に釘付けになった。

 明らかにムーの戦闘機ではない。


「!!!」


 青い機体、翼には赤い丸が描かれていいる。

 

「に……日本の飛行機??」


 最近良く聞く国名、日本国、彼らの強さは噂には聞いたことがある。

 しかし、グラ・バルカス帝国にはそれでも通用しないのではないかと言われていた。

 

 あまりにも一方的な戦闘、そのとてつもない強さに、彼女は希望を抱くのだった。




◆◆◆


 グラ・バルカス帝国 レイフォル領 帝国陸軍航空隊司令室


「いったいどうなっている!?何故哨戒中の3機が帰って来ない!?」


 突如として管制塔のレーダーが砂嵐となった。

 故障かとも思ったが、上空飛行中の友軍機とも連絡がとれなくなる。


 当初は時折発生する大規模磁気嵐かとも思われた。

 しかし、レーダーの調子が戻ると、最前線を警戒していたアンタレス型戦闘機3機の姿がレーダー上に見えない。

 無線で呼びかけるも応答せず、さらに5時間が経過したが、未だに基地に戻ってはこなかった。

 レーダーからロストした場所は国境のさらに向こう側、未知の攻撃によって撃墜した可能性もあるため、大規模な捜索隊を出わけにもいかない。

 

「時々起こる、大規模な磁気嵐かもしれません」


 グラ・バルカス帝国が転移後、まれに起こる現象、磁気嵐……。

 レーダーが全く聞かなくなり、機器が正常に作動しないほどの、とてつもないものであり、帝国では天体現象としてとらえられていた。

 この星においては、日本国もかつて、磁気嵐と不運が重なり、陸自の輸送機が墜落した事があったため、太陽観測衛星を打ち上げ、現在はある程度の予測が可能になっている。


「……そうかもしれんな……不運が重なったのかもな……準備でき次第、消息を絶った付近を空から捜索させよ!!」


「了解しました!!!」


 グラ・バルカス帝国陸軍に、わずかな疑心が生まれる。




日本国召喚 漫画1巻がお店によっては発売されてます。どうかよろしくお願いします

また、小説5巻は2月発売です。こちらも大幅加筆をしていますので、どうかよろしくお願いします


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