伝播する恐怖
日本国召喚のコミック版の公開が開始されました!!
異世界コミック と ニコニコ漫画
の2つで見ることが出来ます。
どうか、漫画版日本国召喚も、よろしくお願いします。
中央世界 中央法王国 王前会議
中央世界にある魔法を基とした文明、中央法王国……神聖ミリシアル帝国のような、古の魔法帝国の研究による魔法工学に基づく文明とは異なり、古代魔法を研究、開発し、個々の大魔導師の能力を極限まで引き出す古代魔法に長ける。
故に、魔導師の量も限られ、今回のグラ・バルカス帝国懲罰のための世界連合艦隊では大魔導艦2隻を派遣するにとどまった。
王の前では国の重役……大魔導師達が集まり、間もなく入るであろう国家運営の重大な影響を及ぼす情報を待つ。
「……そろそろ、世界連合主力とグラ・バルカス帝国海軍との結果が解るはずだが……」
送り込んだのは大魔導艦たったの2隻……木造船の中では群を抜いた大きさを誇り、たったの2隻であるものの、国のトップクラスの魔導師達を集めたエリート部隊だ。
敵、グラ・バルカス帝国は、神聖ミリシアル帝国の港町カルトアルパスに対して奇襲し、帝国の地方隊を壊滅させ、先進11ヵ国参加国の艦隊にもダメージを与えたと聞く。
しかし、これは奇襲の結果であって、世界連合が準備を整えた後に送り込んだ艦隊に勝てる訳はない。
増して、今回の派遣は世界最強の国家、神聖ミリシアル帝国が国の主力艦隊を3艦隊も差し向けているため、負けるはずはない。
「我が軍も戦果を上げていると良いのですが……」
一人の若手魔導師が心配そうにつぶやく。
「何を言っている?精鋭を送り込んだのだ、負けぬに決まっているだろう?」
すかさず反応する老年の魔導師。
「いや、勝つのは当たり前です。しかし、我が国はたったの2隻……他国が先に敵を滅してしまって、我が国が全く活躍出来ないとなると、外交上でもあまりよろしくないのではと……」
若手魔導師の指摘、王が話始める。
「そちらの心配か……確かに、今回の世界連合は史上最大の連合艦隊と言っても差し支えない、神聖ミリシアル帝国のみならず。ムーまでもが主力を送り込み、蹴散らそうとしているからな……まあ、確かに戦果は取れぬかもしれないが、致し方なかろう。
仮に敵が強大ならば、国一番の魔導師、ファルタス提督の、古代禁呪火炎閃光魔法……イクシオンレーザーが火を噴いているかもしれんな」
「あれは凄まじいですからなぁ」
彼らは魔導通信を、今か今かと待ち構えていた。
コン……コン……
「失礼いたします!!!」
通信を受けた魔導師が会議に入室する。
「おおお、来たか来たか、して、結果はどうだった?」
「ゼ……全滅に近い被害を……」
「やはり、敵を全滅させたか……」
「まあ当然の結果でしょうな」
「いえ、違います。世界連合艦隊は、全滅に近い被害を出し、撤退を開始しました。
神聖ミリシアル帝国魔導艦隊も、半数以上が撃沈されています」
『!!!!!!!!!!!!』
会議室が凍り付く。
報告は続く。
「世界連合艦隊はあの列強ムーでさえも、グラ・バルカス帝国の強さを前に手も足も出ずに全滅、第2文明圏連合竜騎士団も壊滅し、別動隊であった神聖ミリシアル帝国魔導艦隊でさえも劣勢に追い込まれたため、帝国は古の魔法帝国……ラヴァーナル帝国の超兵器、空中戦艦パル・キマイラを投入致しました」
「おおおおお!!!」
「あのおとぎ話に出て来る古の超兵器、噂には聞いていたが、実在していたのか……」
「神聖ミリシアル帝国が古の超兵器を出さざるを得ない状況まで追い込まれるとは……」
場がざわつく。通信を報告する立場の魔導師は、言いにくそうに続けた。
「空中戦艦パル・キマイラはとてつもなく強力で、多くの敵艦を撃沈しましたが……情報の確度は定かではありませんが、敵の超大型戦艦の主砲により轟沈したとの報告が上がってきています」
場が凍り付く。
古の超兵器が落ちるなど、あってはならない事だし想像もつかない事だった。
沈黙が流れる中、王は問う。
「超大型戦艦とは?」
「グレード・アトラスターです」
震撼……。
パガンダ王国戦で初めてその姿が確認され、イルネティア王国の艦隊を単艦で滅ぼし、列強レイフォルでさえも単艦で滅ぼした。
港町カルトアルパス攻防戦では多くの強国の船を轟沈させ、列強パーパルディア皇国を無傷で降した日本国の超高性能軍艦でさえも撃沈したと聞く。
これだけでも生ける伝説であるのに、古の超兵器までもが落とされた。
もはやこの艦に勝てる艦など、この世界には存在しないのではなかろうか?
「レイフォルを単艦で滅ぼしたという噂は本当だったのか!?」
「まさか、古の超兵器が沈むとはっ!!!グラ・バルカス帝国はそれほどまでの力を有しているというのかっ!!」
「して……我が国の大魔導艦隊はどうなった!?」
通信員は、言いにくそうに答えた。
「……直接魔導艦隊からの通信がありませんので、第3国経由の情報ですが……大戦初期に、グラ・バルカス帝国飛行機械の落とした爆弾による攻撃を受け、2隻とも轟沈したと……一瞬の出来事だったとの未確認情報が入っています」
「なんという事だ!!」
「ファルタス提督は、反撃の暇すら無くやられたというのか!!!」
大魔導師達の損失は大きく、動揺は拡大する。
世界連合艦隊敗北の衝撃は大きく、各国に動揺は広がる。
◆◆◆
第2文明圏 列強 ムー 日本大使館
日本大使館では緊急の会議が行われていた。
席には外交官である御園、そして本人が希望せずにグラ・バルカス帝国の担当となった朝田が座る。
「先日行われた異世界連合艦隊と、グラ・バルカス帝国の海戦について、まだ全容は解っていませんが、現在判明している大まかな内容については配布資料のとおりです」
各人は配布資料に目を落とす。
1 世界連合推定被害
〇 第二文明圏竜騎士団約700騎 全滅
〇 世界連合艦隊 三分の二 撃沈(ムー含む)
〇 神聖ミリシアル帝国艦隊 半数 撃沈 同国 古代兵器 空中戦艦1隻 轟沈 航空兵力損失不明(非公開)
2 グラ・バルカス帝国推定被害
〇 艦隊 半数が大破もしくは撃沈
〇 航空兵力 300機以上を撃墜
〇 推定中破……
「こ……これは……」
御園が絶句する。
「はい、双方共に、大きな被害が出ています。
数値を見ると、海戦としては痛み分けに見えますが、政治的目線で見るならば、神聖ミリシアル帝国の敗北です」
世界を率いて、世界最強と呼ばれた国が、自国の主力を出して戦った。
しかし、グラ・バルカス帝国を第2文明圏から……少なくとも海上兵力を追い出すという目的達成には至らなかった。
「作戦が未遂に終わったならば、各国の動揺は大きいだろうな」
「この……空中戦艦というのは何でしょう?」
職員の一人から質問が出る。
司会進行役の職員が、それに答えた。
「文字通り、空飛ぶ戦艦みたいです。神聖ミリシアル帝国は、2隻の古代兵器を投入し、グラ・バルカス帝国に大きな被害を与えたのですが、1隻が撃沈されるとすぐに撤退したようです」
御園は大きなため息をついて朝田を見る。
「これからとてつもなく忙しくなる事だけは確かでしょうね」
「そうですね……」
朝田も御園もここ最近休んでいない。
国家の一大事だから仕方がないと、心では納得しているが、やはり休みは欲しかった。
「それでは、今後の基本的方針ですが、ムー国から今回の海戦における情報提供を求め……」
バタン!!!
ドアを開け、大使館職員が飛び込んで来る。
「会議中失礼します。ムー国外務省が、大至急大使に会いたいと来訪しています。
可能な限り早く会いたいと……課長クラスが直接来訪し、大使の予定が空くまで待たせてほしいと申し出ております。
前代未聞です」
御園が苦笑いをした。
「……さっそく来ましたね」
外交官御園は、情報収集も含め、ムー国外務省列強担当部の課長オーディグスと会談を行う事とした。
同日 会議室
会議室には、緊張した面持ちで、ムー国外務省列強担当部 課長オーディグスが座る。
彼らは気迫に満ちており、前に座った御園も緊張する。
「突然の来訪にも関わらず、会議の場を設けていただいて、ありがとうございます」
簡単な挨拶の後、オーディグスが話始めた。
「今回は、日本国にお願いがあって参りました。
ムー国北西にある高原の街、アルーという人口13万4千人の町があります。
同街は、旧レイフォル領国境から20kmの位置にあり、国境の町といって良いでしょう」
御園は嫌な予感がする。
彼は続ける。
「旧レイフォル領側にも、小さな町があります。
最近我が国が得た確度の高い情報によりますと……グラ・バルカス帝国陸軍が集結しつつあるようです。
間違いありません」
!!!!!!!!!!!!
御園も含めた外交官に衝撃が走る。
宣戦布告、そして海上侵攻があったため、陸の侵攻の可能性も当然予測出来た事だった。
しかし、事実として突き付けられると、やはり衝撃は大きい。
「……陸上……侵攻ですか……」
「街にはすでに避難指示を出しており、我が軍も向かいつつあります。しかし……」
一瞬の沈黙。
「しかし、バルチスタ沖海戦、そしてカルトアルパス沖海戦において、我が軍はグラ・バルカス帝国に手も足も出なかった。
一方的に敗退しています。
さらに……あの神聖ミリシアル帝国でさえも、劣勢に追い込まれ、最後には古の魔法帝国の超兵器、空中戦艦でさえも撃沈されています」
彼は続ける。
「我が国では戦う前、グラ・バルカス帝国の真の脅威を主張する者は、技術者等、ほんの一部しかいなかった。
多くの軍人、外交官、政治家も、これほどまでに……奴らが……奴らが強すぎるなんて、考えてもいなかったのです!!!
ある程度は戦えるだろう。
神聖ミリシアル帝国までもが参加すれば、第2文明圏から駆逐できるだろう。そう考えていました」
「今、陸上侵攻の可能性が高まり、現在アルーの民は命の危機にさらされています。
帝国とムーがぶつかり、市街戦となった場合はどれほどの被害が出るのか……考えただけでも恐ろしい。
彼らの侵攻は、この街にとどまらず、戦火はムー全土に及ぶでしょう。
そして、彼らを止める力が我々には無い」
水を一口含む。
「グラ・バルカス帝国の脅威を唱えた技術者たちは、口をそろえてこうも言います。
『日本ならば勝てる。日本国に救いを求めるべきだ』と……。
我が国の願いはただ一つ、軍事支援です。
グラ・バルカス帝国を第2文明圏から叩きだす事が出来る、効果的な軍事支援が欲しい!!!
貴国にも色々と事情があるだろうが、少しでも……可能な限り早い支援をお願いしたいのです!!
日本国が1日でも早く軍を派遣して下さると、数百、いや、数千の命が救われるでしょう。
本件要請については、後刻、正式な書面をお渡しします」
オーディグスの溢れる熱意、御園は圧倒される。
御園は言葉を選び、話始めた。
「ムー国は、我が国にとって最も大切な友好国の一つです。私も今お受けした要望を、可能な限り早く本国へ伝えます。
ただ、私個人の見解を申し上げますと、我が国には色々と法的な制約もあり、難しい部分も出て来るでしょう」
日本国にも色々と事情があり、法的に様々な制限がある事は理解している。
しかし、今、祖国は滅亡の危機に瀕しているのだ。
絶対に日本国を祖国防衛に引きずり込まなければならない!!!
オーディグスはムー国の運命を簡単にあきらめる訳には行かなかった。
「我が国は、日本軍が来た場合、最大限の支援を行う準備があります。
重ねて申し上げますが、1日の意思決定が早まるだけで、数千人の命が救われます。
どうか……1日も早い意思決定と支援を……何卒……なにとぞよろしくお願いします」
オーディグスは、日本国外務省の担当者たちに、深く頭を下げた。
他の文明国が見たら、考えられないような光景……。
祖国を救うために、プライドはとうに捨てていた。
「……頭を上げて下さい。
本件要望は、可能な限り早くとりまとめ、すぐに本国に送ります」
会議は終わり、御園はすぐに情報を取りまとめる準備をはじめるのだった。
◆◆◆
グラ・バルカス帝国レイフォル自治区情報局技術部 レイフォル出張所
情報局には軍の上層部も詰め、幹部達による会議が行われていた。
「知ってのとおり、今回の海戦で帝国は転移後初の甚大な損失を出した」
東方艦隊司令長官カイザルが出席しているとあり、情報局職員にも緊張が走る。
「世界連合艦隊は前時代的なものばかりで敵では無かった。
唯一の敵は、神聖ミリシアル帝国で、彼らの戦力については……情報局の敵戦力に関する分析は、大体合っていた。優秀であるという証拠だ……しかし……。
敵は空中に浮かぶ戦艦というバケモノを本戦に投入した。
数は……確認されている数はたったの2隻だが、我が艦隊損失の大きな部分を占めるほどの強力な艦だった。
グレード・アトラスター砲手の神技とも言える技量によって救われたが、今後の方針を神技に頼る訳にもいかない。
我が軍が欲しいのは他にイレギュラーな存在が無いのか、そして、最大の脅威である神聖ミリシアル帝国の空中戦艦があと何隻存在するのか、国力を最大投入した場合の建造ペース、艦の詳細なスペック、これが知りたい」
東方艦隊司令長官のお願いに、情報局技術部レイフォル出張所の幹部、ハミダルが直立不動になり、返答を開始した。
情報局として、空中戦艦の存在を察知出来なかったのは痛手であり、ハミダルの額から汗が噴き出る。
「艦の運用基数、開発能力は現在神聖ミリシアル帝国に渡った収集部が全力で調査中です。
技術部についても、収集部が持ち帰えるであろう情報を元に全力で調査致します」
「政治家や他官庁はイマイチピンと来ていないらしいが、軍部は今回の海戦結果を重く見ている。
ただ、神聖ミリシアル帝国さえ攻略できれば、この世界で我が国に対応できるほどの敵はいなくなるため、神聖ミリシアル帝国攻略は最重要課題だ。
神聖ミリシアル帝国……他にイレギュラーな武器を持っていなければ良いが……」
ふと漏らした司令長官の一言に、ハミダルは部下であるナグアノからの報告を思い出した。
日本国の存在である。
曰く、戦闘機や戦闘爆撃機は、音速の2倍以上の速さで飛ぶ。
曰く、誘導弾と呼ばれる爆弾を保有し、一度狙われると航空機であっても回避する事は出来ず、対艦用になると、その射程距離は100kmを超える。
曰く、日本国の保有する艦船は、1艦に対し、多方向から同時に攻撃したとしても、帝国水準の航空機であれば、すべて撃墜される。
あまりにも突出した性能であり、そのようなSF的な性能を持った兵器を現実に所有しているならば、今頃日本国は世界を支配しているだろう。
そうなっていない事や、カルトアルパス沖海戦の結果から、この情報は欺瞞情報である可能性が極めて高い。
彼の本能は全力で、今、日本国に関する情報を発言すべきだと主張するが、理性がそれをかき消した。
「ところで、同じ転移国家と思われる日本国についてだが、情報局は何か掴んでいないか?」
「はい、日本国について、転移直後は混乱したようですが、第3文明圏や、他国家との交易により窮地を脱し、現在はムーとの国交により、国力……経済力が増しているようです。
これは日本国のみならず、ムーについても交易を原因として、経済力が増しています」
「……まずは第2文明圏列強と呼ばれるムーを落とす必要がある。
通商破壊作戦を実行して、少しでも国力を落とした方が良いだろうな。
日本国については同じ転移国家だが、カルトアルパス沖海戦での巡洋艦の弱さを考えるに、多少国力が上がったところで大した脅威にはならないだろう」
軍の問いかけに対し、ハミダルは情報局が確実とみなした差し障りの無い報告を続けた。
一々ナグアノの顔がちらつくが、こんな現実離れした報を行えば、間違えていた場合に情報精査能力を問われかねない。
会議では、ムーの国力を弱らせるため、他国との交易や通商破壊作戦、そして陸軍によるムー攻撃準備が並行して行われることとなった。
◆◆◆
「お疲れさまでした!!!」
部下たちが駆け寄って来る。
軍の司令部や外交官までもが参加した会議から、執務室に戻って来たハミダルは疲れ果てていた。
「ナグアノ、ちょっと来てくれ」
「はい」
「すまないが、日本国の事について、もっと良く調べてくれないか?
この前見たような欺瞞情報満載の雑誌ではなく、ムー国内に流通している製品から技術力を割り出す方法もあるだろう。
とにかく、日本国について、多角的な情報がほしい」
「解りました……何かあったのですか?」
前回、日本国に関する情報で一括された彼は、不思議そうに問う。
「……いや、念のためだ」
ナグアノは、日本国に対する調査に専従する事になった。
日本国召喚のコミック版がの公開が開始されました。
異世界コミック
ニコニコ漫画
のどちらかで、1話目はタダで見ることが出来ます。
是非一度見てみて下さい。
また、現在 ブログ 「くみちゃんとみのろうの部屋」で、迫る戦火1、2、3、終わりの始まり
の、4話先行配信中です(誤字はなろう版より多いです)興味のある方は、是非いらして下さい。
これからも日本国召喚をよろしくお願いします。




