古の超兵器2
日本国召喚4 本日発売!!
ムー大陸北方 バルチスタ海域~
第2文明圏連合竜騎士団
透き通るような青い空を、竜が飛ぶ。
空を覆いつくさんとするほどの竜、第二文明圏の意地とプライドをかけた航空戦力の主力が、異界の敵を滅するために飛行していた。
竜騎士団長アルバンは、後方を眺める。
300騎以上の竜が飛ぶその姿は圧巻そのものであり、その光景は、例えいかなる敵が相手であっても勝てると確信させるほどの力強さを持つ。
第2文明圏の主力ワイバーンロード……稼働可能な範囲でのほぼ全力出撃、彼らの向かう先には、異界からの侵略者とも言えるグラ・バルカス帝国の軍艦42隻。
「ん!?」
アルバンの飛ぶ先に点のように見える物体が出現した。
その点は、徐々に大きくなり、その姿を鮮明にする。
アルバンは魔信を手に取り、ゆっくりと各員に伝えた。
「諸君、我々第2文明圏精鋭竜騎士団は、第2文明圏の希望であり、最後の砦だ!!!
我らが世界にやって来た異界の侵略者たち……奴らを第2文明圏から叩きださなければならない!!!
君たちの愛する祖国を……守るべき家族を……救えるかどうかは、この一戦にかかっているといっても過言ではない。
各自奮闘努力せよ」
魔信を切る。
第2文明圏の守護者たちは、覚悟を決めるのだった。
◆◆◆
「くそっ!!また来たぞ!!!」
「は……速い!!」
「隊列を崩すな!!!」
グラ・バルカス帝国の誇る艦上戦闘機、アンタレス型艦上戦闘機の甲高い音が付近にこだまする。
彼らがすれ違い様に撃つ光弾により、また友軍機が落ちる。
一方我が方の放つ導力火炎弾は、全くと言って良いほど当たらなかった。
敵の数はたったの36機だというのに、300騎を超える竜が……大空の覇者が一方的に叩き落される。
しかし、数を減らしながらも竜騎士団は進行し、やがてグラ・バルカス帝国の艦隊を発見した。
「見えたぞぉ!!!」
すでに騎士団の数は213騎まで減っている。
竜騎士団を翻弄した敵戦闘機は弾切れのためか、すでに飛び去っており、上空には友軍のみが飛び交う。
「突げきぃぃぃ!!!」
彼らは闘志を燃やし、眼下の敵艦隊に突撃を慣行した。
艦隊から打ち上げられる猛烈な対空火砲は曳光弾を伴い、空を埋め尽くす……一言でいうならば、その密度は雨のようであり、付近には発射音、炸裂音の混じった轟音がこだまする。
見た目のみならば現代戦よりも遥かに猛烈な攻撃にさえ見える。
打ち上げられる砲弾は、近接信管が内蔵されており、弾そのものの出すレーダーの反射波を捕らえ、竜の近くを通過しただけで爆発してゆく。
次々と落ち行く竜……。
しかし、彼らも勇敢だった。
人間の使用する魔法量とは隔絶した魔力量によって放たれる導力火炎弾……。
次々と撃ち下される火炎弾による攻撃は、グラ・バルカス帝国の軍艦に次々と命中し、最上甲板で作業していた軍人や、対空砲火を放っていた者等、非装甲箇所にいた者達を焼く。
しかし、第2次世界大戦水準にある帝国軍の艦に致命傷を与えることは出来ず、対空火砲にからめとられて徐々にその数を減らしていった。
また帝国の軍艦に火炎弾が命中した。
膨れ上がった火球は艦前方を包み込む。
しかし、何事も無かったかのように敵艦は進み、空に向かって攻撃を打ち上げる。
竜の攻撃を……圧倒的ともいえる火炎魔法を食らって全くダメージが無いようにさえ見える。
まさに海の怪物たちの行進だった。
「ば……バカな!!!」
竜騎士団長アルバンは絶望しながらも、自らの持てる武器で攻撃を続ける。
列強の魔導戦列艦であっても、対魔弾鉄鋼式装甲は一部にしか使用されず、多くは木材が使用されている。
粘性の伴った火炎弾の消火は難しく、相手が船であってもワイバーンは十分に通用する……はずだった。
しかしどうだ……眼下の船に、火炎弾の効果は全く認められず、ほぼ無傷ではないか……。
出撃時、300騎以上いた味方は、自分を含めて数機しか残っていない。
「お……おのれ!!おのれっ!!」
何かがはじけた。
体の右側が異常に熱い。
滑っとした感覚と、続けて訪れる平衡感覚のズレ、何故か自分が落ちていき、体の感覚がなくなった。
第二文明圏竜騎士団長アルバンはワイバーンロードに乗騎中、打ち上げられてきた近接信管が作動し、空に散った。
◆◆◆
バルチスタ海域 世界連合艦隊 ムー国機動部隊 旗艦 ラ・エルド
『第二文明圏連合竜騎士団……通信途絶』
『敵航空攻撃、第3波接近中』
「ぐっ!!お……おのれぇ!!!」
すでに列強ムーの誇る空母は、度重なる航空攻撃により、その機能を損失し、飛び立った艦載機も大半は撃墜されていた。
世界連合艦隊も、多くの船が被弾して煙を上げている。
にも関わらず、敵編隊のダメージはほぼ無いに等しく、唯一戦えるはずの神聖ミリシアル帝国と、列強ムーの艦隊も、グラ・バルカス帝国の航空攻撃を前に絶望的な戦いを強いられていた。
機動部隊司令レイダーは今まで味わった事の無い無力感に苛まれていた。
『間もなく敵艦隊、目視圏内に入ります』
彼の脳裏にカルトアルパス沖での被害状況が浮かぶ。
間も無く大艦隊と合敵し、航空機との同時攻撃を受ける。
「くっ!!グラ・バルカス帝国……これほどまでとは!!」
レイダーをはじめ、各国の指揮官は絶望的な気分に支配されるのだった。
◆◆◆
上空には、すでに友軍の姿は無く、敵の航空機が乱舞している。
海上では敵艦の『猛烈』ともいえる砲撃により、多くの船が炎上し、また多くの船が粉砕されていった。
ムー艦隊旗艦 ラ・エルド とて例外では無く、敵巡洋艦のたったの一撃の着弾で艦前部に設置された主砲は使用不能となり、これらの射程内にはまだ入っていない。
戦場を見渡すと、世界連合艦隊に随伴していた世界最強のはずの神聖ミリシアル帝国艦隊もすでに数隻が撃沈され、旗艦セインテルからも炎があがり、猛烈な煙を発していた。
一方、敵に対する損害はゼロ……まさかのゼロである。
戦力差は明らかであり、世界連合艦隊の多くの者たちが絶望していた。
「もはや……これまでかっ!!!」
ムー国艦隊司令レイダーは、力なくつぶやく。
「しかし……我々が負ければ、あの戦力は本国の……我々が守るべき民に向けられます!!
世界連合艦隊はまだ力を残している!!
戦える力が……完全に牙が無くなるまでは、少なくとも我々は引くわけにはいきません!!!」
ラ・エルド艦長テナルは司令に力強く話す。
「しかし……どうすれば……これほどまでの戦力差、精神論でどうにかなる内容では無い!!見よ!!」
司令レイダーは艦橋の部下を指さす。
艦長テナルは気付く。
部下は皆怯えた顔をしており、士気は最低だった。
国民のため、民のために敵と刺し違え、散る事が出来るならば皆勇敢に戦うだろう。
しかし現実は敵に被害を与える事が出来ず、一方的に虐殺される。
みな怯えきっていた。
「緊急魔信入ります!これは……神聖ミリシアル帝国旗艦セインテルからです」
通信員が魔信の出力を上げる。
『神聖ミリシアル帝国、セインテルより各局、セインテルより各局、これより我が帝国は、古代兵器を使用する。
繰り返す。
古代兵器……古の魔法帝国の発掘兵器を使用する。
各局にあっては空中戦艦に対し、決して攻撃をしないように周知徹底お願いする。
これより現れる空中戦艦は友軍のため、決して攻撃しないように周知徹底お願いする、以上』
魔信が終わった。
艦橋の兵たちは、今の無線が理解出来ずにぽかんとしている。
理解出来ないという意味においては、ムー国司令レイダーも例外では無かった。
「……今の魔信は……どういう意味でしょう?」
テナルが疑問を呈す。
「空中戦艦を使用するといったな……。
神聖ミリシアル帝国の奴らは、空を飛ぶ戦艦を持っているというのかっ!!!
そんなものが……そんな事が可能なのか!?」
「古代兵器……古の魔法帝国の兵器と言っていましたね、発掘兵器という事でしょうか?」
『北方より巨大飛行物体接近中!!』
彼らの話を遮り、見張員から報告が入る。
「い……いかん!!攻撃させぬよう指示せよ!!」
部下に指示し、北の空を見た。
ゴ……ゴゴゴゴ……。
聞いた事の無い音、と共に、海面に水しぶきを発生させながら空中戦艦が迫る。
その大きさは、このラ・カサミ級戦艦を遥かに超え、戦艦の速度を基準にするならば、猛烈な速度でこちらに向かって来た。
「つっ!!」
絶句……。
見た事の無い圧倒的ともいえるその物体に、額から汗がしたたり落ちる。
「あんなものが……あれほどの物体を空に浮かべる事が可能だというのか!!!
機械文明では超えられぬのか……魔法文明でないとたどり着けない領域があるというのかっ!!!」
レイダーは驚愕の至りに達する。
やがて、上空を乱舞していたグラ・バルカス帝国の航空機が空中戦艦に向かって飛ぶ。
彼が注視していると、空中戦艦上部から今まで見た事が無いほどの光弾が打ち上げられた。
数秒……たったの数秒の攻撃で、あれほど強力だったグラ・バルカス帝国航空機が空から消える。
「え!?」
空からは、航空機だったものがバラバラに粉砕され、燃料に引火したのだろうか?火の雨が降る。
何事も無かったかのように進んで来る古代兵器。
圧倒的だった。
グラ・バルカス帝国は我が方に比べ、明らかに圧倒的な強さを誇っていた。
それが……帝国の力でさえも、まるで児戯に等しいと……無力な存在であると知らしめる。
司令レイダーの指はカタカタと震えていた。
「な……な……なんという事だ!!
あ……あ……あれが……あれが古代兵器の力だというのかっ!!!」
神代の刻、圧倒的力で全世界を恐怖で支配し、竜神の国を滅ぼし、神々にさえ弓を引いたとされる古の魔法帝国……。
ラヴァーナル帝国の超兵器……。あまりにも異次元に見えるその力……。
彼だけではない。
各国の指揮官は震えずにはいられなかった。
「これほどまでに差があったのか!!」
機械文明国、ムーは間もなく神聖ミリシアル帝国に迫り、機械文明は魔法文明を凌駕すると考えていた。
しかし、絶対に到達するとは思えない力を前に、彼は絶望する。
『神聖ミリシアル帝国……空中戦艦、敵艦に攻撃開始!!』
その後は夢を見ているようだった。
敵の射程外から次々と攻撃を加え、確実に1隻づつ撃沈していく。
あの強きグラ・バルカス帝国が手も足も出ずに撃沈されていき、最後はこの世の攻撃とはとても思えない、猛烈な爆撃で敵戦艦を葬ったのだった。
「な……なんとすさまじい!!!」
「あれが古代兵器か!!」
「やはり神聖ミリシアル帝国は凄い!!世界一を名乗るだけの事はある!!」
「神聖ミリシアル帝国バンザイ!!」
各国の兵に士気が戻る。
神聖ミリシアル帝国 古代兵器 空中戦艦パル・キマイラのうち1隻は、バルチスタ海域において、グラ・バルカス帝国第8打撃群42隻と交戦し、これを撃沈した。
◆◆◆
バルチスタ海域 グラ・バルカス帝国海軍 本隊北方海域
海が振動し、水しぶきを散らしながら、美しい青空を禍々しき物体が行く。
現代日本人が見たならば、巨大なUFOと感じるだろう。
自衛隊の誇る最大のヘリ搭載型護衛艦よりも大きい、直径が約260mにも及ぶ物体が空を行く姿は驚異的であり、海抜高度200mという低空に浮かぶその姿は圧倒的な威圧感を持つ。
神聖ミリシアル帝国の誇る、古の超兵器、空中戦艦パル・キマイラ……。
絶対的な「力」を与えられた艦長メテオスは、部下からの報告を聞いていた。
「世界連合艦隊を攻撃していた敵艦と、飛行機械は初号機が全滅させたもようです」
「フム……当然の結果だね、初号機の艦長ワルマーンも容赦しないな」
「ワルマーン様はそのまま敵本隊に向かって西進するとの事です」
「そうかね……では、空中戦艦同士で時間を合わせて攻撃を行うとしよう。
あと……そうだね……
我々だけが敵を滅すると、軍のメンツも立つまい。
艦隊司令レッタル・カウランにも、敵艦隊本隊にこれより向かうと伝えてあげたまえ」
「ははっ!!!」
メテオスの乗る2号機、そしてワールマンの乗る初号機、さらに神聖ミリシアル帝国の魔導艦隊はグラ・バルカス帝国艦隊本隊を滅するために進路をとるのだった。
◆◆◆
グラ・バルカス帝国海軍連合艦隊 旗艦 グレード・アトラスター
「世界連合に向かっていた第8打撃群42隻、通信途絶……」
しんと静まり返る艦橋。
転移後これといった敵は無く、今まで連戦連勝を誇って来たグラ・バルカス帝国……初めて受ける甚大な被害に誰もが絶句する。
圧倒的な大軍や、奇抜な戦略から一時的に被害を受けたのであれば、これほどまでに衝撃を受ける事は無かっただろう。
しかし、これがたったの2隻……2隻の……空中戦艦という、規格外の化け物によってなされた戦果。
その内容は、彼らを絶望させるには十分だった。
猛将と言われた東方艦隊司令長官カイザルは、眉一つ動かさずに海を睨む。
航空攻撃をものともせず、対空攻撃は当たらず、小口径の対空砲火では攻撃が通用しない……。
まさにバケモノであり、内心は動揺していたが、部下の前ではそのような姿を見せることは一切無かった。
司令官が動揺していては、部下はついて来ない。
「レーダーに感あり、敵空中戦艦2隻、こちらに向けて侵攻開始、なお偵察機によれば、敵艦隊本隊も増速し、こちらに向かっているとの事です」
「そうか……第3潜水艦隊に対し、敵艦隊を攻撃するよう下命、本隊にあっては飛べる機をすべて上げ、敵空中戦艦を迎撃せよ、また、艦爆は高空より敵空中戦艦に爆撃を加えよ」
「了解!!!」
「魔法か……全く、厄介なものを持ち込んで来る……」
美しく青い海、グラ・バルカス帝国の誇る世界最大最強の戦艦、グレードアトラスターは波を押し出し、進む。
艦長ラクスタルは、まだ見えぬ先の空中戦艦パル・キマイラの方角を睨みつけるのだった。
〇 日本国召喚4、本日発売!!よろしくお願いします。
〇 コミカライズ決定!!(角川系列です)漫画家、高野千春さん
〇 外伝制作決定!!日本国召喚の世界が広すぎて手に負えない部分があるので、WEBには無い部分ですが外伝制作が決定しました。著者 髙松さん(日本国召喚の編集さん)
〇 3巻の法人特典をブログで順次公開します。(許可はとっています)
2巻の法人特典までは、ここで公開していたのですが、(外伝が間に入って物語が切れる)という
ご意見も多数あり、流して読む分には逆に読みにくくさせていた可能性も指摘されたため、編集さんと 話し合って法人特典公開はブログに限って行うという方針に決定いたしました。
どうしても読みたい方は(くみちゃんとみのろうの部屋)で公開していますのでどうぞ。
なお、4巻の法人特典が公開出来るかは未定であるのでご注意お願いします。
(4巻は法人特典公開やめる可能性はあります)




