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外伝1 日本との接触(クワトイネ編)

日本国召還 外伝1

 時を少し戻す。

 クワトイネ公国 外務局―――

 数多くの国とのやりとりを行うこの場所は、現在、新たに現れた新興国家、日本国と国交を開くための事前準備のため、使節団派遣の事前準備を進めていた。

 

「ヤゴウ!日本とかいう新興国家に使節団の1人として行くらしいじゃないか!うらやまいしいな。俺も行ってみたいよ。」


 同僚の1人が話しかけてくる。使節団派遣は、珍しいことではない。数多の国が存在するこの世界では、国の主権者が入れ替わり、国名が変わることは珍しい事ではなく、中程度の国家では良くあること。

 さらに、大国家が分裂して中小国になることも珍しくはない。

 ただ・・・。

 治安が悪いことが多く、使節団に被害者が出ることも珍しくは無く、使節団派遣の任務にあたることは、皆が嫌がる仕事であった。

 さらに、クワトイネ公国のあるロデニウス大陸は、第3文明圏の影響を多少は受けているため、文明圏からは「蛮地」と馬鹿にされるが、「蛮地」と蔑まれる中では、かなり上位の生活レベルを維持し、食事に関しては、文明圏に負けないほどの良い食事をしている。

 

 使節団派遣となる対象地域は、クワトイネ公国よりも生活水準が極端に下がる場合も多く、衛生面でも問題があり、疫病に感染する使節団も多く、治安も悪いことがほとんどである。

しかし、今回の使節団が派遣される対象となる国は、色々と注目を浴びている。

派遣される使節団に配布された事前資料に目を通すと、にわかには信じられない事が記載してある。

事の始まりは、中央歴1639年1月24日の朝、わが国の第六飛龍隊の騎士、マールパティマが、公国北東方面の海上を警戒飛行中に、金属で出来ていると思われる飛龍を発見、しかし、全く追いつけずに引き離されたという。

さらに、その鉄龍を迎撃するために出撃した第六飛龍隊は、ワイバーンの武器、導力火炎弾の射程に捕らえる事無く引き離されたという。

報告書では、全く信じられない事に、時速600kmを超えていたとある。

しかも、相手はこちらよりも遥かに大きいにも関わらず。

さらに、最初の海からの接触は、230mクラスという、想像できないほどの金属製の帆が無い巨大船で来たという。


「信じられないな・・・。」


 ヤゴウは思考を巡らす。


 ワイバーンといえば、高価な兵器であり、竜騎士はエリート中のエリート、兵なら誰しも一度は憧れる空の覇者である。

 歩兵よりは騎馬隊の騎士が格上であり、騎士よりも竜騎士は圧倒的に格上、ワイバーン1騎で1個騎士団を翻弄できる。

 時速230kmクラスの高速で飛翔し、弓の届かない高空から、ワイバーン自身の人間とは隔絶した魔力によって放たれる導力火炎弾は、人間の作り出した武器とは比較にならない威力を有し、さらに、硬い鱗は弓をも跳ね返し、対人用の刃物を通さないほど強靭である。

 ワイバーンよりも強力な生物といえば、三大文明圏で少数作られているといわれる、ワイバーンロードくらいしか思い浮かばない。

 いや、人間が制御できない存在であれば、各種属性龍や、古龍、神龍がいるが、人間が扱うのは、夢のまた夢、天災のような存在だ。

 そんなワイバーンを超える「物」を実用化し、しかも異常に大きい飛行物を飛ばすなんて、第2文明圏のムーでも無理ではなかろうか。


 信じられないが、日本の飛行物が経済都市マイハーク上空に達したのは事実であり、彼は日本という国に非常に興味を持ち始めていた。


(今回の使節団の派遣・・・。私は歴史に名を刻むかもしれないな・・・。)


「これより会議を始める」


不意に、彼の思考は号令により中断させられた。


 小さな会議室で、使節団の団長が説明を始める。今回派遣される使節団は5人、全て外務局の肩書きがあるが、軍務局の将軍ハンキも外務局への出向という形で、使節団に入っている。

 団長が話し始める。


「今回の我々の一番の目的は、日本が我が国の脅威となるかを判断する事にある。知ってのとおり、我が国の防空網が日本の鉄龍によってあっさりと破られた。

今のところ、我が国に鉄龍を防ぐ手段は無い。

 現在日本は我が国と国交を結びたいとの意思を示しているが、何を考えているのか解らないというのが正直なところである。

 覇権国家なのか、もしくはロウリアのように亜人に対して極端な差別意識を持っているのか、何のために我が国と国交を結ぼうとしているのか、真意を調査する必要がある。」


 皆が頷く


「日本がどの程度の国なのかは不明だが、技術の高い軍事力を持っていると思われる。理解しているとは思うが、毅然とした態度で接することも必要だが、相手を刺激しないように、言動には十分配意すること。

 あと1点、日本は何が強くて何が弱いのかを調べ、我々が彼らに対して優位に立てる部分を探してほしい。

 それでは、皆に配布されたレジュメを見てほしい」


 新たに配布された資料に目をとおす。


 使節団の片眉毛がつりあがる。


・・・・・国ごと転移??


説明が始まる。


「驚いたと思うが、彼らの言い分によれば、国家ごと突然この世界に飛ばされたと言っているそうだ。真意はなんともいえない」


 たしかにそうだ。日本の主張する国土のある位置は、群島はあれど、海流や風が乱れる海域であり、かつては無人だった。

 いきなり新興国家が出来上がったとしても、突然の高度文明が育つとは思えない。

 

 国ごとの転移か・・・まるで、ムーの神話みたいだ。


 第2文明圏の列強国、ムーには、1万2千年前に「大陸大転移」が起きたといわれる神話が残っている。

 正式な当時の政府記録として残っており、ムーの人々は信じているが、他の文明圏の人々は、ただの御伽噺として認識していた。


「日本側の説明によれば、レジュメのとおり、今回は日本が移動手段と船舶を提供する。

出発は1週間後の昼、みな準備をしっかりしておくこと。

 そして、出発から2日後の夕方には日本の西側に位置する都市、福岡市に上陸し、宿で3泊する。福岡市の宿で、日本で行動する上での常識を教えこまれる。日本の外務省によれば、日本の常識を知らずに勝手に外出すると、車と呼ばれる馬車のようなものに、踏まれて死んでしまう可能性があるらしい。

 上陸から5日後の昼には、福岡市を出発、新幹線と呼ばれる輸送システムで、その日の夕方には日本の首都東京に付き、翌日日本国政府の人間と会談が行われる」


・・・・・?

おかしい、時系列がおかしい。配布資料によれば、出発から2日後の夕方には日本の南に位置する島の地方都市にたどりつくとある。しかし、日本とクワトイネ公国は、1000km以上の距離がある。船でたった2日で到着する距離ではない。

さらに、福岡市から東京都までの距離も、1000kmを軽く超えているにもかかわらず、昼に出て夕方に付くとはどういった事だろうか。

 我が国の上空に現れた鉄龍ならば話は解るが、新幹線は、地上を走る乗り物であると、配布資料にはある。

 

 どうやら、我々の常識が通用しない国のようである。


 会議は終わった。


 1週間後―――


 使節団の面々は、クワトイネ公国で一番大きいマイハーク港に集まっていた。

 快晴――――――

雲は高く、きれいな青空が広がり、少し涼しい。

 スーツを着た男性が話し始める。


 「お集まりの皆様、本日は、日本へ使節団としてきていただけるとの事で、喜びの極みです。私は、皆様の今回の派遣を少しでも快適にお過ごしいただくため派遣された、日本国外務省の田上です。

  いわゆるお世話役になります。

  不便な点があれば、どうぞお申し付け下さい。」


 そんな中、1人憂鬱な顔をした使節団員が1名


 「今から船旅か・・・。」


 「ハンキ将軍、顔色が優れませんが、どうされましたか?」


 「ヤゴウ殿、今は外務局出向の身、将軍はやめてくれたまえ」


 「解りました。では、ハンキ様、どうされたんですか?」


 「いや、今から船旅と思うと、気が重くてな・・・。船旅は良いものではないぞ。いつ転覆するかも解らないし、船の中は光が行き届かないので、暗く、湿気が多く、臭い。しかも、長旅になると疫病にかかる者も多く、食べ者が腐らないための保存食しかないため、塩辛いものしか食べられない。

  何よりも水の確保が非常に大変じゃ。喉が渇いても節約節約、まあ、今回は日本が2日で着くと言っているとの事なので、我慢は短くて住むが、正直2日というのは、外務局と日本国で、何らかのやり取りのミスがあったとわしは思っておるよ。

  ありえない速度でいかないと、無理じゃ。」


 「私も、時系列がおかしいと思っています。ただ、鉄龍を飛ばした日本であるので、もしかすると我々の常識では図ってはいけないのかもしれません」


間もなく時間になる。

 島の影から、島のように大きい白い船が、現れる。


 !!!!!!!!!!!!!!!!!

 でかい!しかも帆が無い!!


 極大に大きな船は、沖合で停船した。

 田上が説明を始める。


「今回は、あの沖合に停船中の船に乗って、日本国は向かいます。本当は、この港に直接接岸したかったのですが、残念ながら、港の水深が不足しているため、あそこに停船しました。皆様には、小船に乗って、移っていただきます」


 やがて、その船から、小船が3隻現れ、これまた信じられない速度で港に向かって爆走してきた。

 その船にも、帆は無かった。

「田上殿、田上殿」


 ハンキが呼びかける。


「はい、なんでしょうか?」


「あの・・・。あの船は、見たところ帆が無いようであるが、どうやって動いているのじゃ?小船に関しても、オールが無いようじゃが、どうやったらあんな速度で走れるのじゃ?ま、まさか、第一文明圏の魔導船みたいな物か?」


「第一文明圏の魔導船というのが、どういうものか存じ上げませんが、船はディーゼル機関によって動いています」


「でぃーぜるきかん?」


「はい、いわゆるカラクリです。重油を爆発させることによって、そのエネルギーを吸収し、スクリューを回すことによって、推進しています」


「うーむ、良く解らないが、すごいのう。」


やがて、皆は小船に分乗し、大型客船に向かった。

大型客船に乗船する。

 客船内部に入ると、皆が驚く、


 明るい。光の精霊でも飼っているのだろうか。


「こ・・・この船、鉄で出来ている、いったいどうやって浮いているのだ・・・。しかも中が明るいし、広い。」


 各々に割り当てられた部屋へ案内され、一堂はくつろぎのひと時を過ごした。


その日のヤゴウの日記より

 なんという事だろうか、私は驚きを隠せない。このような大きな船は、見た事が無いし、聞いたことも、文献で読んだ事もない。

 しかも、中は快適で、明るく、信じられない事に、温度が一定に保たれている。

 このような大きな船にも関わらず、海上を矢のような速度で進んでいく。

 このような物を作り出してしまう国、日本とは、いったいどのような国なのであろうか、

 外務局の中には、新興国家の蛮国に違いないと言う者もいたが、いまのところ、言いたくはないし、認めたくもないが、彼らから我々は、蛮族に写っているのではないだろうか。

 もしかしたら、日本は文明圏の列強国に匹敵する力を持っているのかもしれない。


2日後―――


 「皆様、福岡市が見えてまいりました。福岡市は、九州地方、中国四国地方の中で、最大の都市になります。あそこに見えるのが博多港であり、博多港からは、リムジンバスで、ホテル新日航まで移動していただき、日本についての基礎知識を学んでいただきます。」


 博多港が見えてきた。高層建築物が立ち並び、都市高速が走っている。

 やがて、リムジンバスに乗り、ホテル新日航へ移動する。

 船の上で、田上から、車と呼ばれるものが、内燃機関によって動いているということを聞かされていたが、まさかこんなに量が多いとは思わなかった。

 話を聞くと、国民1世帯1台は、ほぼ車を持っており、20代そこそこの日雇い労働者であってもグレードの差はあれ、車を購入する事が出来るという。

 呆れるほどの豊かさ。


 ホテルにおいて、日本の基礎知識を学ぶ。信号システム、自動販売機、自動改札機、鉄道システム、そして、拾ったものを、そのまま自分の者にすると、占有離脱物横領という罪に問われること。

 彼らの説明によると、色々不思議なように見えるが、これは科学であり、仕組みが理解できれば誰しもが作れると言っている。


 なるほど、信号というのが無いと、あの車たちが好き勝手動いたら、車は動かなくなるだろう。


「田上殿、田上殿」


 ハンキが話しかける。


「何でしょうか?ハンキ様」


「ここは、ずいぶん発展しているようだが、首都はまだ発展しているのかね?」


「はい、まず人口が比較になりませんので、高層建築物はここよりも高いものになります。地下鉄も、数路線ではなく、網の目のように広がっています。

広い範囲で都心部が広がった状態ですね。お恥ずかしいことですが、町並みは、福岡市の方が綺麗です。福岡市から東京に来た方は、いつも雑多な感じがして汚いと言われますので・・・。」


「うーむ・・・。田上殿、日本軍を見学したいのじゃが、無理じゃろうか?」


「我が国は、軍を置いておりません。それに変わる自衛隊というものがありますが・・・。そうですね、少々お待ち下さい。」


 田上が、光る小さな板のようなような物を出し、独り言を言い始める。通信用魔法具のようなものだろうか、異常に小さいが・・。


「ハンキ様、ちょうど明日、航空自衛隊築城基地で航空祭が開催されます。一般市民向けの自衛隊と市民の交流会のようなものですが、それでよければ手配できますが。」


「おお、すまんのう、たのむ、たのむ」


 ハンキは、日本軍見学の機会を得て、上機嫌であった。


「他に築城基地航空祭に行きたい方はおられますか?来賓席を手配いたしますが。」


「私も行きます」


 ヤゴウが手を上げ、結局翌日は、ハンキとヤゴウで航空祭へ行くこととなる。


翌日――


 ハンキとヤゴウは、築城基地航空祭の来賓席にいた。


(正直、高速道路では、目を回しそうになったが、やっと鉄龍基地で、龍たちのデモンストレーションが見られる)


 やがて、航空祭が開催される。


 一般市民が基地の中へ入場し、軍と触れ合うなど、クワトイネ公国の常識からすれば、信じられないことであり、基地へ入場する人の多さを見るに、この国の軍が人々に愛されていると思い始めるハンキであった。


「ただいまより、F-15の機動飛行が行われます。右側の空をご覧下さい。F-15が時速850kmで進入してまいりました」


!!!!!!!!!!!


「田上殿!今850kmといったか?聞き間違えではないか?」


 ハンキが興奮して話しかける。


「はい、時速850kmとアナウンスしていました」


 右を見る。


 無音で、飛行物は、近づいてきた。来賓席に、近づいた時、ようやく音が聞こえ始める。


「音速に近い!!!」


ハンキが吼える。


ゴオォォォォォォォォォ


F-15は垂直に近いのではないかと思うほどの上昇を始める。主翼上部には一部剥離した空気が白い雲を作り、翼端では、主翼下部から上部へ回り込む空気により、白い航跡を引く。

雷鳴のような轟きがあたりを包み、エンジンの後ろからは、赤い炎が二つ見える。アフターバーナーの点火。

その飛行機は、短時間のうちに、青空に消えていった。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


ハンキは絶句している。


「左の空をご覧下さい。先ほどのF-15が戻ってまいりました」


「え!?もう?」


「F-15は時速600kmほどで侵入し、皆様の前で旋廻します。この間、パイロットは旋回中、大きなGがかかります」


F-15は客席前で大きく旋廻する。


「これほどの機動が可能なのか・・・。」


そのまま上昇


「あの体制から、これほどの上昇力があるのか」


様々な飛行機が乱舞し、ブルーインパルスの曲技飛行を持って、航空祭の終わりを迎える。


「なあ、田上殿、あの鉄龍は、とてつもなく早いが、いったいどのくらいの速度が出るのじゃ?」


「F15は、我が国の主力戦闘機であり、速度はマッハ2.5ほど出ます。音速の2.5倍ですね。音速を超えると衝撃波がでるため、今日の飛行は、時速850kmくらいに押さえていたみたいですが」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


その日のハンキの日記より

 町にあふれる建築物、そして巨大な上空道路、鉄道と呼ばれる大規模流通システム。

これらの凄まじいまでの建造物群を作る日本という国が私は恐ろしい。

しかも、ここは、日本の首都ではなく、一地方都市に過ぎないという事実。驚愕よりも上の驚きを表す言葉がほしいくらいである。

豊か過ぎる国日本、彼らはその強力な国力にふさわしい、凄まじいまでの軍事技術を有している。

戦闘用の鉄龍は、音の速さの2.5倍で飛行し、上昇力もとてつもない。

戦闘行動半径は、1000kmを超えるという化け物だ。

彼らから見れば、我が国のワイバーンは、止まっている的に見えることだろう。

案内役の田上に聴取したところ、鉄龍は海上攻撃や、陸上攻撃の支援にも使用可能だそうだ。

マイハークに進入した鉄龍には脅威を感じたが、彼らの実力はそんなものではない。

戦闘用鉄龍であれば、マイハークに進入した鉄龍は、すぐに落とせる。つまり、彼らのマイハークへの侵入は、本当に哨戒活動であったと推測できる。

彼らとは友好関係を構築しなければならない。

彼らを敵にまわすということは、文明圏の列強国を敵にまわすよりも恐ろしい事である。

彼らと敵対してはならない。


ホテルにて、


「なあ、ヤゴウ殿」


「なんでしょか」


「日本をどう思う」

 

 「そうですね、一言で表すなら、豊かですね。あきれるほどに・・・。ホテルの中は、温度が一定に保たれている。これほどの建物を暖めるのに、どれほどのエネルギーがいるのか・・・。しかも、外国の使節団が来るからここだけ特別に暖かくしている訳ではなく、ここに現存するほぼ全ての建物が空気を調節されている。

  捻るだけで、お湯が出る機械もある。一々火を起こさなくても暖かいお湯に浸かれる。トイレも非常に清潔に保たれている。

  外に出ると、無人の販売機械があり、冷えたジュースや、場所によっては酒まで手に入る。

  夜間開いている店舗でいつでも上質な物が手に入る。

  食品売り場では、常に新鮮な食料が手に入る。

  夜も明るいので、街中なら明かりが無くても歩けるし、治安がとてつもなく良い。

  全ての生活レベルが、我が国と比べ、次元が違う。悔しいが、国力の違いを感じます。

  そして、航空際には正直驚きました。

  圧倒的な力の差を見せ付けられた思いです。

  日本は敵にまわしてはいけないと思いました。」


 「やはり同じ思いか・・・。あの戦闘型の鉄龍の前には、ワイバーンの空中戦術は役にたたないだろうと私も思う。明日は首都に出発じゃな。日本は心臓に悪いよ」


 「私はワクワクしていますよ。このような国が、近くに突然現れ、しかも自分たち以外を見下しきっている文明圏よりも高度な文明をもっている。その最初の接触国が我が国とは・・・。彼らに覇を唱える性質がなければ、これは幸運です」


 ヤゴウとハンキは、深夜まで語り続けた。


 翌日――――


 涼しい朝、雲は高く、空気は澄んでおり、遠くまで良く見える。


 快晴―――


 中国から飛んで来ていた大気汚染物質PM2.5の影響も無く、日本の空気は連日澄ん

で見える。

 スーツ姿の男が1人、使節団の前に現れる。

 

「みなさん、おはようございます。昨日は良く眠れましたか?」


 田上が集まった使節団に話しかける。


「本日は、朝食の後、午前10時00分から東京での行事について説明があり、11時  

30分にホテルを出発、12時00分に博多発東京行きの新幹線に乗車してもらいます。

17時04分には東京駅へ付きますその後は・・・・・」


 説明が続く

 日本に来て思う事は、時を刻む概念がはっきりしている事だ。

 腕時計と呼ばれる精密な機戒が使節団に配られている。

 秒単位で時を刻む事ができ、それが簡単に持ち運び出来るということは、軍において、

時差の無い一斉攻撃が可能ということだ。

 軍の効果的運用という意味合いにおいて、これは凄まじい事である。

 さらに驚くべきことは、今配られた時計は「でんぱそーらーうぉっち」と言うらしいが、

これは光ある限り動き続け、誤差は10万年に1秒しか無いという。

 なんと形容していいのか解らない。


「田上殿、博多と東京は、1000km以上離れていると聞いていましたが・・。」


「はい、そうですが」


「今日乗る新幹線と言われる乗り物は、速度の出る地上を走る乗り物という説明は聞いて

います」


 ヤゴウは話を続ける。


「17時04分着というのはなんですか?そんなに、分まで正確に着くのですか?」


「はい、災害や事故が無ければ、時間どおりに着きます」


・・・どうやら、本当に我々の知識で日本を図ろうとしてはいけないらしい


「解りました。ありがとうございます」


「いいえ」


 田上は、満面の笑みで笑いかける。


 キーーーーっっっドン!!!!!!!!!!!!!!!

 物と物が大きくぶつかる音、いったい何が起きたのだろうか。

 ヤゴウは外を見る。

 頭から血を流して座り込んでいる女性が1名、その横に黄色に塗られた変な車が止まっている。


「またタクシーによる事故か」


 田上ははき捨てるように言う。

 福岡市の事故の半分とも言われるタクシーによる事故が起きた瞬間だった。

 事故にあった女性は、力無くうなだれている。


「まずい!早く治療せねば!!!」


 ヤゴウは駆け出そうとする。


「お待ち下さい、ヤゴウ殿、すぐに救急車がまいりますので、大丈夫です」


 ヤゴウは田上の制止を振り切り、ホテルを飛び出し、座り込んでいた女性へ駆け寄る。

 田上は、立場上外国の使節団にけが人の手当てをさせるわけにはいかなかった。

 

 女性はうなだれており、頭に開いた傷口からは、脈打つたびに、激しく出血していた。


「いかんな・・。,.vmtaiba,eo.,b,a;wsoe4igamoiseo」


 ヤゴウは何かを唱え始め、両手が淡い光を放つ。


「!!!!!!!!!!き・・・傷口が!!」


 女性の頭の傷が、みるみるうちに塞がっていく。

 周囲には人だかりが出来ていた。


「す・・・すごい!!!見た!?今の」


「見た!!あの人が何かを唱えたら、傷が塞がっていった!!」


「し・・・信じられない。まるで魔法みたいだ!!」


 誰かが叫ぶ。


「?魔法ですが、何が珍しいのですか?」


 オオオオオオオオオオオォォォォォォ


 何気なく答えた言葉に、周囲が沸き立つ。きょとんとするヤゴウ。周囲は喧騒に包まれた。



 新幹線の中にて


「いやはや、驚きました。資料には書いてありましたが、実際に魔法を見ることが出来るとは・・・。いやはや、すばらしい」


 田上がほめちぎる。


「日本では、回復系の魔法は珍しいのですか?」


 ヤゴウは、褒められて悪い気はしなかった。今までは驚いてばかりだったが、初めて日本人を驚かすことが出来、内心少し自慢してやりたい気分になっていた。


「いえ、回復系もなにも、魔法そのものが日本にはありませんから」


「え!!!!!!!!!」


 田上の何気ない一言に、使節団の一同は口をそろえて驚く。


「し・・しかし、あの飛行機と地上のやりとりは、通信魔法でなければ、なんなのですかな?」


 ハンキが問う


「あれは電波を使用しています。・・・何といいますか、前にも一度ご説明申し上げたかもしれませんが、日本の発展は、すべて科学によるものです」


「全てかがく?」


「はい、日本は物理・・・。物のことわりをとことん追求しています。これにより、作られた物により、日本は国を維持しています」


 使節団にとって、国家機密級の発言をさらっと言われた瞬間だった。

 日本に魔法が無いのなら、我が国の魔法技術を良い条件で輸出できる。

 例えば、簡易式の外科を開設し、小さな傷や肩こりを治すことも出来るし、今回のような事故による救急外来でも需要はあるだろう。

 一時的な傷の回復は、魔法が相当効果的だ。

 また、魔法学校を開設して、授業料をとることも出来るだろう。


 クワトイネ公国を発展させる上で、日本が科学のみに頼っているのは重要な発見だった。

 戦闘に使えるほどの個人の魔導士を大量にそろえるのは、そもそも素質の問題があり、魔法技術、人的資源がものをいうが、日本の言う「科学」で、理を知っていれば作ることが出来るのなら、我々にもある程度の模倣ができる。つまり、「国力」の基本値を上げることが出来る。


「田上殿、物のことわり、物理を技術輸出してくれることは、可能だろうか?」


「我が国には最近、新世界技術流出防止法という法律が出来ました。中核的な技術の輸出は禁止されていますので、難しいとは思いますが、物理だけなら、そのへんの本屋で売っています。ただ、翻訳作業が全く進んでいないので、あなた方の言葉に翻訳するのは、難しいと思います」


 この世界は、不可解なことが多く、言葉に関しても、言葉は通じるのに、文字にすると全く違う言語、文法になる。日本はこの世界に転移して間が無く、又、現時点どの国とも使節団派遣のレベルであり、国交が無いため、翻訳作業は様々な分野で急ピッチに進められているものの、困難を極めていた。

 ヤゴウは、物理、科学、化学の本をなるべく多く持ち帰る事を心に決めた。


 新幹線は順調に走行していた。


「ハンキ様、それにしても、新幹線は速いですね」


「そうじゃな、これほどの速度で走っているのに、中はほとんど揺れず、快適そのものじゃ。しかし、これほどの速度で走るなら、事故が怖いのう」


「新幹線は創業以来、事故が原因の死者は無いらしいです。日本で最も安全な乗り物との事です」


「うーん、信じられんのう。そう聞いてもやっぱり不安じゃ」


 そんなことを話しながら、新幹線は進んだ。



ヤゴウの日記より(一部抜粋)


 いくつもの大都市を抜け、我々は新幹線により日本の首都、東京に着いた。

 東京へ至る途中の地方都市でさえ、文明圏列強の首都をはるかに凌ぐ規模のものであったが、東京はまさに次元が違う。何もかもが正確に動き、人の量も多く、ビルの高さも天を貫かんとするものばかりである。

 我が国の有名なエージェイ山(海抜高度539m)を凌ぐ建造物が現実に存在している。

 私は、このような巨大な建造物郡を作り出す国力を持った国に、使節団として派遣され、明日実務者協議に挑む。

 我が国の国益にかなうよう、最大限の努力をするつもりだ。

このような歴史的瞬間に立ち会えることは、幸いである。


翌日――――――――――

 日本、クワトイネ実務者会議

 会議が始まった。

 1人の痩せ型で、めがねをかけた男がクワトイネ使節団に向かって話しかける。


「農林水産省の日村です。単刀直入に申し上げますが、私たちは今、食料を欲しています。

必要項目は・・・・」


 各種必要な食料項目が並べられているが、驚くべきはその量である。


「そ・・・総トン数年間あたり5500万トン!?」


「はい、貴国は農業の盛んな国と伺っております。食料自給率が100パーセントを圧倒的に超えているとも、さすがにこの数を貴国1国で輸出できるとは思っていませんが、このうちどれほどが可能か知りたいのです。もちろん即答は求めませんが、我々には時間がありません。なるべく早いうちに知りたいというのが本音です」


 資料を読んでいたヤゴウが話し始める。


「水産資源は、難しいですし、このコーヒー豆というのが良く解りませんが、それ以外なら輸出の量だけなら確保出来ると思います。もちろん国の許可はいりますが、ただ・・」


「だた!?」


「これほどの量を貴国に運ぶ手段を我が国は持ちません。内陸に大穀倉地帯がありますが、そこから港へ運ぶほどのインフラはありません。もしも港に運べたとしても、そこで積載するための人員も不足しています。そてに、何より船が無い」


「では、それを解決すれば、食料は輸出していただけと?」


「本国への確認が必要ですが、可能かと思います」


 日本側の参加者たちがざわつく。

 もしかしたら、いきなり日本の食糧危機を救える可能性が見え始めた。

 ダンディな白髪にめがねをかけた男性が話し始める。


「外務省の前島です。クワトイネ公国さえ良ければ、港施設の増強とクワトイネ国内の穀倉地帯へのインフラ、鉄道整備は我が国が政府開発援助により資金を出し、我が国が整備いたしますが、いかがでしょうか?」


!!!!!!!!!!!!!

 クワトイネ使節団がざわつく。水と食糧はタダを言われるクワトイネ公国において、食料輸出により、国が潤い、さらに、港と鉄道のインフラ整備を日本が買って出た。

 これほどの好条件があろうか。

 会議は良好に終了した。


10日後・・・・・・・。

 クワトイネ公国ならびに日本国における同意事項。

○ クワトイネ公国は、日本に必要量の食料を輸出する。

○ 日本はクワトイネ公国のマイハーク港の拡充、マイハークから穀倉地帯へのインフラを、日本の資金により整備する。

○ 日本国及びクワトイネ公国は、国交樹立に向けた話し合いを継続する。

○ 為替レートを早急に整備する。

○ 日本はクワトイネ公国からの食糧一括購入の見返りとして、今後1年間はクワトイネ公国国内のインフラ(水道、電気、ガス)の整備を行う。

  その後は、為替レートによる食料額に応じた対応を行う。

○ 日本、クワトイネ公国は、不可侵条約締結に向けた話し合いを継続する。


 使節団にとっては、とてつもなく良い条件で、日本と良好な関係を構築することが出来た。

 日本、クワトイネは、今後切っても切れない友好関係を築き、運命共同体となって、この世界の奔流に挑むこととなる。


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― 新着の感想 ―
中国から飛んで来ていた大気汚染物質PM2.5の影響も無く それは本当に良かった良かった! ったく、あの国は日本に何の損害賠償もせずに、おまけにコロナまで蔓延させて知らんぷりだからな。
[一言] ヤゴウの魔法を日本で最も欲しがってるのは競馬関係者でしょうね。 この魔法があれば競走馬が脚の故障で予後不良なんてことはなくなるでしょうから。
[一言] この世界の日本国は官僚の決断が早くて福岡が平和だな
感想一覧
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