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外伝 短編 語り継がれし伝説

次回から本編に戻ります。なるべく早く投稿できるよう頑張っていきます。

ロデニウス大陸 イワトの谷 ~種族間連合絶対防衛線~



 猛烈な煙をあげ押し寄せる魔物の大群、迎え撃つ各種族。

 谷を埋め尽くして魔物は進軍し、そこへ矢が雨のように降り注ぐ。谷の上からはドワーフの作りし罠から岩が多数落下し、魔物を押しつぶす。

 谷の出口には、エルフをはじめ、各種族たちにより攻撃魔法が連続して撃ち込まれ、爆炎が覆いつくす。


「ここを死守しろ!!突破されたら後は無い!!種の存続はこの一戦にある!!!!」


 突如として現れた魔王を前に、各種族は個々に戦うがほぼすべての戦いで負けた。

各種族はそれぞれの長所を生かすため、歴史上初めて手を取り合い、種族間連合という強軍を組織する。

しかしそれでも魔王軍は強く、フィルアデス大陸はすでに魔王の手に落ちた。

 魔王軍は海魔を使って海を渡り、ロデニウス大陸に至る。

 種族間連合最強の7将と呼ばれた者たちのうち、すでに4将が失われ、そして今、残る軍事色の総力を結集し、地の理を生かした作戦が実行されていた。絶対防衛線~イワトの谷~


 戦場に怒声がこだまし、剣と金属がぶつかり、火花があがる。

悲鳴と血飛沫があがり、魔物も倒れるが、各種族の強戦士たちも、しだいにその数を減らしていく。数は敵が圧倒的に上。


 戦場を見ていた将軍達が話始める。


「数は敵が上だが、このままいくと何とか魔王軍主力を撃退出来るだろう」


「味方の被害も甚大になるが、ここで負けると我らに未来はない。何としてでも……どれほど犠牲を払おうとも、必ずここで食い止める!」


 彼らの会話には、種を守るという強い意志が見て取れた。


「あれはなんだ!!」


 突如として、踏ん張っていた陣地が吹き飛び、味方が宙に舞う。


「あれは……レッドオーガか?」


 レッドオーガと呼ばれた魔物は、大きな斧を持ち、一振りで兵が吹き飛ぶ。仄かに体を囲む淡い光は回復魔法をかけ続けているのだろう。

 鋼のような体毛と回復魔法の組み合わせを持つレッドオーガは、次々と重要な陣を崩していく。歴戦の魔法使いが攻撃魔法を仕掛けるが、防御力があまりにも高く、効果が無い。

 槍も剣も魔法も効果が無い。


「陣が崩されたぞ!!」


 たったの1匹が戦場の流れを変える。

 魔物が雪崩を打って弱くなった陣をこじ開け、軍団は総崩れとなり、圧倒的な量の差により各個撃破され始める。

 それでも負ければ未来が無い事は全員が理解しており、絶望的な戦いを続けた。

 やがて敗色が確実となる。


「おい、副団長!!」


 人狼族の団長が、副団長に語りかける。


「はい、なんでしょうか?」


「この戦いは、100%負ける。これ以上の戦いは、自殺と変わらん。お前は兵を連れ、神森まで撤退せよ。」


「ははっ!!しかし……相手のこの勢いでは、撤退する間が無いでしょう。オルアクスル団長はどうされるので?」


「俺は……人狼族を背負ってきた男だ。他の種族も多くの命が散っている。お前たちを逃がす時間稼ぎをする。」


「そんな!!団長は、皆を導く義務があります。」


「だからこそだ!!だから義務をここで果たす。人狼族最強と言われた俺以外に、単騎で奴らを足止め出来る者はそういないだろう。問答する時間が惜しい……早く行け!!人狼族を……頼んだ。」


「どうか……ご武運を!!」


 副団長は、目に涙をためながら、人狼の軍を引かせ始める。すでに他の種でも軍は撤退を開始していた。


 人狼族団長オルアクスルは大剣を持ち、馬に乗り魔軍へ突入していく。


「我は人狼族団長!オルアクスルなり!!すべての種の盾となりて魔を滅さん!!」


 戦場に響き渡るほどの大声を発し、彼は単騎で魔軍に向かう。ゴブリンを蹴散らし、オークを大剣で薙ぎ払う。

 人狼族団長オルアクスルの竜巻のごとき剣裁きは、彼の周囲の魔物を葬り去りながら、陣を崩した原因であるレッドオーガに向かう。魔軍の習性、一番強い魔物が倒れた場合はその群れは撤退を開始する。

 しかし、やはり多勢に無勢、ゴブリンがしがみつき、オーク10体が物量で体当たりしてくる。所々傷つきながらもレッドオーガにたどり着いた。


「これが……我が人狼族の力だぁ!!!」


 彼は大剣をふりあげ、オーガに叩きつける。

 付近に金属がぶつかり合う激しい音が鳴り響いた。


「ば……ば……バカな!!」


 オーガは攻撃を受けても何事も無かったかのようにオルアクスルを殴りつける。

 落馬した彼は土煙をあげ、地面を転がり、そこへ魔物が襲いかかった。

 

「ぐっ!お……おのれぇぇぇぇ!!!」


 多くの戦士が散った……。


 この日、種族間連合の総力を結集した最後の作戦は失敗に終わり、絶対防衛線であるイワトの谷は突破された。多くの歴戦の戦士が命を落とし、生き残った各々はその背後にあるエルフの聖地、神森に立てこもる事となる。

 

■エルフの聖地 神森


「ううっ!!うううっ!!!」


 歴戦の戦士たちが……決して弱みを見せてこなかった将までもが絶望に打ちひしがれ、泣き崩れる。

 最後の作戦は失敗に終わり、もう魔王軍を止める事は出来ない。後はこの神森も焼かれ、人間族、ドワーフ、エルフ、獣人族等各種族は絶滅する。

 物語ではなく、現実的な絶滅……しかも惨たらしい方法で絶滅する事が確定し、どうしようもない感情があふれ出す。

神森が焼かれたら、エルフは全滅する。それはつまり、大規模魔法が使える者がいなくなるという事……森の後方の集落に住まう命も絶望的だった。


「長老が、エルフの神に救いを求める予定らしい」


「神は厳しい。甘い存在ではない、効果があるか……」


 戦士たちは悲しみに暮れる。





「神よ……我らを悪魔より救いたまえ……もう万策が尽きました、このままでは我々エルフ族のみではなく、獣人族、ドワーフ族、人間族、竜人族、その他多くの種が絶滅いたします」


 エルフの長老が神森に住まう神にお願いをする。

 彼らが平服する前には光の玉があった。


「我が可愛い子らよ、他に手段はないのですね?」


「はい、神様……どうか我らをお救い下さい、お願いいたします」


「神は見守る者……この次元の世界に力をもって直接に介入する事は許されていないのです」


「しかし……その見守る対象は、このままでは間もなく消えます」


 沈黙……。


「……解りました。我は神の戒律を守るよりも、あなた方を救いたい。我が可愛いエルフの子らよ、あなた方を愛しているのです。私が直接創造神……太陽神様に祈りましょう」


 エルフの長老らは太陽神に祈るという行為がどういう結果をもたらすのか理解できずに返答に困る。

 また、神の戒律を守るよりも我らを救いたいという言葉がとんでもない事のような予感がし、不安となる。


「大丈夫……大丈夫……あなた方は安心して待ちなさい」


 長老らの前から光の玉が消えた。神と崇めていた者が前から消え、あっけにとられる長老たち、約20秒後、再び光は現れる。


「我が可愛いエルフの子らよ、安心しなさい。太陽神様は答えて下さった」


 エルフの神は続ける。


「直接の介入は出来ませんが、間接的な介入は行われる事になりました……太陽神様は、自らの使いを降臨させて下さる……援軍が来ます。彼らを優しく迎え入れなさい。そして……間接的介入を行ったため、私はこの森から去らねばなりません。しかしあなた方を守るため……後悔はしていません。結果は天から見守っています。

 可愛い我が子らよ、今後は争わず、各種族仲良く平和に子々孫々まで繁栄するのですよ」


 長老らの前から光は消えた。


「か……神様!」


「神様?」


 消えた光は、長老たちが語りかけても戻る気配が無い。


「一体どういう事だろう?」


「援軍が来ると……しかも我が種族の創造神……太陽神様、その使いが来ると……。」


「太陽神様の使いが魔軍と戦ってくれると?」


「神の使いなだけに、魔を滅するほどの御力があるのだろうか?」


 長老たちは、初めて聞く言葉、「太陽神の使い」を前に、困惑するのだった。


 数日後絶望の淵にあった彼らの前に、太陽神の使いらは空を飛ぶ神の船で現れ、鋼鉄の地竜を操り、雷鳴の轟きと共に大地を焼く強大な魔法によって魔王軍を焼き払った。

 太陽神の使いによって救われた各種族はこの歴史を、神話として語り継ぐ事となる。


日本国召喚一 ~導かれし太陽~ 発売中!

 書籍はロウリア王国編が4倍以上に膨れ上がるほどの大幅な加筆と、編集さんの指示による文章是正、そして地図が付いています。(エピソードも相当量の加筆があります。内容についても、相当色々編集さんと話し合いました)

 原作よりも、世界観に入りやすくなっております。

 また、電子書籍も併せて発売しています。

 どうかよろしくお願いします。

 日本国召喚は、3巻まで出る事が決まり、現在第2巻の加筆中であり、投稿が遅くなっています。

 申し訳ありません。

 ブログストック分を放出いたします。(ブログも、なるべく今月中には更新したいと考えています)


 また、ユーチューブで日本国召喚で検索すると、日本国召喚のPV映像が見れます。(16秒程度)

 これからも、日本国召喚をよろしくお願いします。

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[良い点] 面白い [気になる点] 閑話や外伝の頭に、その閑話が「いつ」「どこで」起こっている話なのか、説明入れて欲しい。伏線貼りの為にわざと入れない手法もあるとは思いますが、この作品の様に閑話や外伝…
[一言] 最高です!
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