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列強のプライド3

神聖ミリシアル帝国 港町カルトアルパス 南西方向上空


 グラ・バルカス帝国空母機動部隊から飛び立った航空機約200機は、立ち向かってきた神聖ミリシアル帝国の戦闘機を難なく撃墜し、進路を港町カルトアルパスにとっていた。

 第1次攻撃隊の攻撃目標として進路上にいると思われるこの世界各国の艦隊に適度な攻撃を加え、その後カルトアルパスの街を爆撃し、グラ・バルカス帝国に対する恐怖を各国に与え、かつ神聖ミリシアル帝国の弱さを他国に見せつけ、神聖ミリシアル帝国は最強であるとの常識を叩き壊す事によって、離反を促し、グラ・バルカス帝国に降る属国を得やすくする。


 よって明確な軍事目標がある訳ではなく、攻撃対象はあり、目標は存在するが、ある程度現場の裁量に任されている部分もあった。


 グラ・バルカス帝国空母機動部隊第3中隊の中隊長スバウルは、眼下に多数の艦船を認める。


「ふ……帆船か。笑えるな。

 眼下の艦隊に対し、攻撃を開始セヨ!!」


「攻撃開始!攻撃開始!!」


 急降下爆撃機のエンジン音が高鳴り、水平に対して60度ほどの急角度をもって降下を開始する。

 眼下には多数の航跡が見えるが、大半が帆船のようであった。


 スバウルは、艦隊最前列を行く船に狙いを定める。


「異界の者どもよ!!度肝を抜いてやる!!!我がグラ・バルカス帝国の力、思い知るがよい!!!」


 急降下爆撃機シリウスは、世界の強国たちが揃えた新鋭艦隊に向かい、突撃していった。


◆◆◆


 神聖ミリシアル帝国 港町カルトアルパス 南方海域 第3文明圏 パンドーラ大魔法公国外交官護衛艦隊(魔道船団8隻)


「グラ・バルカス帝国の鉄龍が降下を開始しました。我が方に向かってきます!!」


 上空で行われる空中戦、ムー(第2文明圏)の戦闘機、そしてニグラート連合(第2文明圏)のワイバーンロードの隙をついて、グラ・バルカス帝国のシリウス型急降下爆撃機が降下を開始していた。


「フン!こしゃくな。調子に乗りおって!!

 ルーンアローを使え!出し惜しみは無しだ!!!」


「了解!!」


 海兵たちは、素早く動き、迅速的確に武器を取り出す。

 一見するとボウガンのように見える「それ」を上空に向ける。


「準備完了!」


「射ゃーーーっ!!」


 空に向けられたボウガンは、一斉に放たれる。

 弦の力をもって初速を得た矢は、爆裂魔法が封入された魔石の力で、速度が減衰することなく上空へ向かう。

 矢の後方は赤く光り、後方へ圧縮空気を押し出し続けている。

 対ワイバーン用に作られ、上空への射程距離が2kmとも言われる強力な矢は一斉に空に向かう。


「続けて第2射用意!!」


 次の矢を装填し、上空に向ける。


「なっ!!敵!こちらに光弾を発射!!!」


 グラ・バルカス帝国の急降下爆撃中隊の最前列にいた者が、爆撃前に12.7mm機関銃の掃射を行う。

 上空から撃ち下された12.7mm機関銃弾は、木製の上部甲板を突き抜け、弾薬室に至り、引火する。

 

 爆圧は四方八方に突き抜け、上部から壮大な火柱をあげる。


 パンドーラ大魔法公国の魔道船ウミスは壮大な火柱と共に爆散し、轟沈した。


「魔道船ウミス轟沈!!」


「なっ!何!まさか、そんなにあっさりと!?」


「攻撃来ます!」


 見張り員が悲鳴のような声をあげる。敵から再度放たれた光弾は、隣を航行していた魔道船テルミスに着弾し、同船も火柱と共に沈む。

 艦隊の旗艦ドーラでは、乗組員たちが恐慌状態に陥る。


「バカな!!そんなバカな!!」


「我が方に光弾発射!!」


 次の瞬間、旗艦ドーラの船体は穴だらけになり、爆発と共に真っ二つに折れ、轟沈した。


◆◆◆


 グラ・バルカス帝国 空母機動部隊 第3航空中隊


「降下やめ!上昇せよ!!!」


 中隊長スバウルは爆撃前に、対空兵器を減衰させるために行った敵船への機銃掃射で轟沈してしまった船を見て、急な指示を出す。

 本来であれば、爆弾を投下し、機体が軽くなった状態で機首を上げるが、重い爆弾を抱えているため、なかなか機首が上がらない。

 編隊は何とか水平飛行に移り、敵艦隊上空から離脱し、再度上昇を開始する。


「何てもろい船だ……。」


 彼は敵船のあまりの防御力の低さにあきれる。


「おっと!」


 彼の前を矢が通り過ぎる。この空域まで矢が飛ぶ事は驚きだ

った。

 機銃掃射で簡単に破壊出来る船がある事に気付いた帝国の航空機は、各船団に機銃掃射を開始する。


◆◆◆


 海上保安庁 巡視船 しきしま


「すごい光景だな……。」


 船長の瀬戸は、上空を見上げてつぶやく。

 上空には第2次世界大戦クラスの航空機が乱舞し、複葉機、そしてワイバーンロードと呼ばれる竜が交戦をしている。

 竜は口から火の弾を放ち、そして航空機からは曳光弾が発射される。

 一方、海上では機銃掃射により多数の艦船が炎上しており、連絡用に借りた魔信機からは、緊迫した音声が流れつづける。


『パンドーラ大魔法公国(第3文明圏)魔道船団壊滅!!』


『ニグラート連合(第2文明圏)竜騎士団、劣勢!!』


『ムーの戦闘機、また1機が撃墜された!!』


『アガルタ法国魔法船団、戦闘に突入!!』


 様々な文明が入り乱れ、戦いは推移する。

 きっとこれは歴史的な瞬間であり、後世に語り継がれる事となるだろう。


「航空機2機が、我が方に降下開始!!」


 まるで他人事のように見ていた彼は、その報告により、一瞬で現実に引き戻される。

 機銃を掃射されただけでも被害が出る事は間違いないため、彼は一瞬で判断を下す。


「撃墜セヨ!」


 船体前部に設置されたエリコン35mm連装機銃が上空を向く。

 射撃管制システムにより、砲身が上空を向き、寸分たがわず敵を捕らえる。

 航空機に対する射程距離が3.5kmとも言われる機関銃が煙を発する。

 鈍い音と共に曳光弾を交えって上空に打ち出された「それ」は、急降下爆撃を行おうとしていたシリウス型艦上爆撃機に着弾し、多数の大きな穴を開ける。

 機体と人員に大きな穴が開いた航空機は、噴き出た燃料に引火し、大きな火だるまとなって落下する。

 やがて、機関銃で傷つき、火によって炙られた爆弾に引火し、空中で大きな爆発を起こす。


 爆発が空中に大きく、汚い花火を出現させ、その後衝撃波が発生する。

 あまりにもあっさりとした撃墜。


 海上保安庁の巡視船しきしまは、続けて降下中の敵機に狙いを定め、機関銃を発射する。

 曳光弾を交えて発射された機関銃弾は、正確に急降下中のシリウス型艦上爆撃機に着弾し、同機は翼が取れ、きりもみ状態となって落下し、海上に叩きつけられて爆発した。




「おお!!日本軍の戦艦が、敵機をあっさりと撃墜しましたぞ!!」


 ムー国の戦艦ラ・カサミの艦橋では、あまりにもあっさりと撃墜したその光景を見て、歓声が沸き起こる。


「なんと正確な射撃か!!噂は本当だったのか?」


 ムーの艦隊司令は隣にいる若手幹部に話しかける。


「あれが、電子機械による管制された射撃……。我が軍もぜひ導入したいですな。」


「報告!!敵機2機が我が方に急降下中!!!」


 至急報告が入る。


「対空戦闘開始!!面舵いっぱい!!!」


 旗艦ラ・カサミがゆっくりと右方向に旋回を始める。

 対空砲の銃座に兵が座り、手動で照準をつける。


「てーーっ!!!」


 連続して機銃が曳光弾を交えて空に向かう。

 しかし、先ほどの日本軍の射撃に比べ、全くといって良いほど当たらない。

 やがて、グラ・バルカス帝国の急降下爆撃機から機銃が曳光弾を交えて放たれる。

 放たれた機銃弾は、激しい金属がぶつかり合う音とともに、戦艦ラ・カサミの分厚い装甲に弾かれていく。

 連続した着弾により、戦艦ラ・カサミの対空砲を扱う兵はダメージを受け、打ち上げられる対空砲火の数が、目に見えて減っていく。


「敵機、爆弾を投下!!!」

 

 ヒュゥゥゥゥ……ヒュゥゥゥゥ……。


 爆弾に取り付けられた笛の音が戦場に鳴り響き、恐怖を掻き立てる。


「取舵いっぱい!!」


 投弾を避けるために、戦艦は今までとは逆方向に旋回を始める。

 急降下速度と、重力加速度で十分に加速された爆弾は、戦艦ラ・カサミに着弾し、その威力を開放する。

 猛烈な閃光が巻き起こり、続けて艦が炎に包まれる。


 衝撃が巨大な戦艦を揺らす。


「船体前部に被弾!!!」


 報告を聞くまでもなく、艦の前部に巨大な火柱を確認する。


「状況報告せよ!!!」


「前部主砲、砲身曲損、使用不能!!!」


「右、4番、8番、11番、左、2番、6番、7番対空砲大破!!!なお、浸水は認めず!!消火活動開始!!」


「航行速力に異常なし!!!」


 続々と被害に関する報告があがる。艦は2発投下された爆弾のうちの1つを回避し、もう一つが着弾した。


 列強ムーの戦艦が破損する。


「ちくしょう!!!」


 艦長は、ムーの対空装備と、日本の戦艦の対空装備の差を実感するのだった。



◆◆◆


 日本国 海上保安庁 巡視船 しきしま


 しきしま に設置された魔信と呼ばれる通信機械からは、悲鳴のような声が上がり続ける。


『ムーの戦闘機、損耗率50パーセント以上!!』


『ニグラート連合竜騎士団全滅!!!』


『敵の一部は、カルトアルパスに爆撃を加えつつある模様!!』


 明らかな劣勢……。


『ケイル島南側から超巨大戦艦出現!!艦影確認!グラ・バルカス帝国グレードアトラスター型と判明!!

 同艦は、ケイル島南側から、海峡入口に向かい進行中!!』


「なっ!なにっ!!!おい、今のを聞いたか!!!」

 

 巡視船しきしまの船長瀬戸は、耳を疑い、副長に尋ねる。


「はい、グレードアトラスターが……、つまり戦艦大和のような軍艦が、海峡入口に向かっている。海峡を封鎖し、各国の艦隊を閉じ込めるつもりです。」


 副長は、額から汗を流し、船長の問に答える。


「何故、戦艦ほどの艦が近くにいるのに、彼らは探知できないのだ?」


「それについては、全く解りません。神聖ミリシアル帝国に、確認をしてみない事には……。ただ、日本も第2次大戦中は、艦隊戦にもつれ込んだ事がある事を考えれば、我々の想像以上に探知能力が低いのかもしれません。」


「しかし、確認されたのが、1艦だけというのは、どう思う?」


「不明です。相当な自信があるのか……それとも、エアカバーがある限り、負けないと判断したのか。」


 列強の艦隊は、敵の航空攻撃により、劣勢に立たされている。

 それでも、たったの1隻で大艦隊を相手にするのは無謀のように思われた。


 探知技術が低いようなので、他にも伏兵がいる可能性もある。

 魔信からの情報、位置を聞く限り、我が方が海峡に到達する前に、敵戦艦が、海峡に到達してしまう。


「しきしま対戦艦大和か……他にも味方艦がいるとはいえ、冗談じゃないぞ!!!

 敵艦が他の艦を狙っている隙に、敵艦に対して射撃しつつ、海峡を抜けるしかない!!」


 大日本帝国時代の伝説の艦と、戦わなければならない可能性が高くなり、船長瀬戸は、胃に穴が開きそうになり、腹を押さえるのだった。


◆◆◆


 神聖ミリシアル帝国 港町カルトアルパス 南方海峡入口付近


 マギカライヒ共同体(第2文明圏)の機甲戦列艦7隻は、運よく航空攻撃を受けずに海峡入口付近に差し掛かっていた。

 艦隊司令のギライズは、上空を眺める。

 上空での戦いは、熾烈を極めていた。

 グラ・バルカス帝国の戦闘機や艦上爆撃機が乱舞し、神聖ミリシアル帝国の戦闘機や、列強エモール王国の風竜騎士団も加わり、乱戦となっている。

 風竜が敵の爆撃機を落とし、そして戦闘機と戦う。


 一騎当千と言われた風竜も、グラ・バルカス帝国の戦闘機とは、互角に見える。

 乱戦となっているため、誤射防止で、対空砲は使えない。


 マギカライヒ共同体の機甲戦列艦、蒸気機関を搭載し、船の両翼に、水車のような駆動式のスクリューが付いており、魔導砲が側面をカバーする。


 ギライズは、前方を睨みつける。


「……来たか……。」


 目の前には、巨大な戦艦の艦影が見える。

 列強レイフォルの主力艦隊をたったの1隻で葬り、その足で首都を砲撃、たったの1艦で列強を落とした伝説の艦、グラ・バルカス帝国の超弩級戦艦グレードアトラスター。

 自分たちは、ムーの機械技術と、魔導技術を融合させ、列強レイフォルよりも、単艦性能でいえば、強力な艦隊を作っているはずだ。

 敵がいかに化け物のような艦を持っていようとも、後方からは他国の艦隊も近づいて来ている。


 艦隊司令ギライズは、勝機を見出す。


 艦と艦の距離は、どんどん近づいていく。

 敵艦の距離の詰め方を見るに、敵の方が、圧倒的に船速が速い事が伺えた。


「敵、砲塔回転!砲撃の可能性あり!!!」


 まだ、敵との距離は15km以上も離れている。

 我が方の改良型魔導砲は、射程距離が3km、すでに砲塔が旋回している姿に、レイフォルの戦場伝説を思い出す。

 曰く、圧倒的な射程距離、曰く、圧倒的な命中率、曰く、圧倒的な砲弾の威力……。

 信じれないが、レイフォルを葬った実績はある。


 ムーの最新鋭戦艦の砲の最大射程は10kmを超える事を考慮すれば、現実離れした数値ではない。


「砲撃が来るぞ!艦隊は最大船速度へ!!突っ込むぞ!!!」


 敵の戦艦が煙に包まれる。


「敵艦発砲!!!」


 グラ・バルカス帝国の超弩級戦艦グレードアトラスターは、最大射程が40km以上にも及ぶ主砲、46cm3連装砲を、発射した。

 レーダー照準による射撃、砲弾は正確にマギカライヒ共同体の機甲戦列艦に向かって飛んでいく。


 マギカライヒ共同体の機甲戦列艦の近くに主砲弾は着弾する。

 轟音と共に、戦列艦の何倍もの高さまで、大量の水が吹き上がる。

 吹き上がった水は、戦列艦隊に降り注ぐ。


「ぬぉぉぉぉ!!!」


「な……なんという威力か!!!」


 艦隊司令ギライズは、驚愕を隠せない。

 主砲の着弾によって出来た波が、旗艦マギを揺らす。


「敵艦再度発砲!!」


 再び敵艦が猛烈な閃光と共に煙に包まれる。

 突然、右前を進んでいた機甲戦列艦カーラが6本の水柱に包まれる。その水柱には、煙が混じっていた。

 水柱が引いた時、海上に戦列艦カーラの姿はすでに無く、何かの残骸が海を漂う。


「!!せ……戦列艦カーラ、消滅!!!」


 撃沈でも、轟沈でも生ぬるい。文字通り、あまりも強力な砲撃を受け、跡形も無く粉砕されたカーラを見て、報告者は「消滅」と報告する。

 敵艦との距離は、さらに縮む。

 敵は副砲でも攻撃を開始したようであり、どんどんと砲撃密度と命中率が上昇していく。一方、我が方は未だ射程距離にすら入れていない。

 次々と、滅せられる友軍の艦。

 その撃沈されていく速度を前に、あまりの力の差に、ギライズは絶望する。


「お……おのれぇ!!」


 差がありすぎる。どうしようもない気持ちが全身を駆け巡る。

 

 マギカライヒ共同体の機甲戦列艦隊は、グラ・バルカス帝国の超弩級戦艦グレード・アトラスターの単艦による攻撃により、すべて撃沈された。


◆◆◆


『マギカライヒ共同体の機甲戦列艦隊が全滅した。各艦は、密集体系を取り、各個撃破されぬよう敵に向かえ。』


 強制力は無いが、戦場をまとめるため、神聖ミリシアル帝国の指揮が各艦に流れる。

 第2文明圏の雄、マギカライヒ共同体の機甲戦列艦隊が全滅した。その事実に、各国は震撼する。

 各個撃破されないために、密集する事は、有効なように思えた。

 すでに航空機の機銃掃射や、その他航空攻撃により、外務大臣護衛艦隊の数は、半分以下まで減っている。

 海峡入口付近に突如としてやってきた、グラ・バルカス帝国の戦艦、これを放置すると、カルトアルパスに艦砲射撃を行われる危険性があり、神聖ミリシアル帝国は意地でもこの戦艦を排除する必要があった。


 各国の外務大臣護衛艦隊は、相当数やられはしたが、神聖ミリシアル帝国の魔導巡洋艦8隻と、ムーの機動部隊、そして日本国の巡視船と呼ばれる船が1隻残っているため、各国は、グラ・バルカス帝国の強さに震撼したが、未だ超強国の艦が残っているため絶望はしていなかった。



 グラ・バルカス帝国 帝国監査軍 超弩級戦艦グレードアトラスター


 神聖ミリシアル帝国で開催された、先進11ヵ国会議、その会議に、帝国の意志を伝えるために乗り込んでいた美しき女性、外務省東部異界担当課長のシエリアは、艦橋で艦長と共に、戦況を眺めていた。

 世界の歴史上最大最強の戦艦を前にして、次々と沈んでいく異界の蛮族どもの船、彼女は圧倒的な差を見て、グラ・バルカス帝国の世界統治は確実なものとなる事を確信する。


 航空攻撃についても、多少の被害は出ているようであるが、おおむね目標を達成しつつあるようだった。


「ん?」


 彼女は水平線の先に、さらなる艦隊を確認する。


「あれは……確か……。」


 艦隊の中には、ひと際目立つ白い船が見える。


「同じく転移国家、日本国の巡洋艦か……。艦長!」


 シエリアは、艦長を呼びつける。


「はい、何でしょうか。」


「あの白い船を攻撃してくれないか?これは、外交的配慮だ。」


「あの白い船よりも、前方に他の艦艇が出ております。あまり接近されると、危険があるため、先発の艦艇を先に攻撃したいと考えますが、よろしいでしょうか?」


「ああ、構わぬ。危険の無い範囲で構わないので、白い船、日本国の艦艇を攻撃、可能であれば撃沈してほしい。同じ、転移国家であっても、性能に天と地ほどの差があるというのを、この世界の蛮族どもに見せつける必要があるのでな。今後の統治を考えると、神聖ミリシアル帝国の艦艇と、日本国の艦艇は叩いておきたい。」


「承知いたしました。ただ、我々の攻撃よりも先に、空母機動部隊から発艦した第2次攻撃隊が、あの艦隊を攻撃する事になるでしょう。それでもしも撃沈してしまったら、申し訳ありません。」


「うむ、その場合は構わない。」


 超弩級戦艦グレードアトラスターは、日本国巡視船しきしまに、狙いを定めるのだった。




 グラ・バルカス帝国空母機動部隊 第2次攻撃隊


 第2次攻撃隊の戦闘機14、艦上爆撃機22、雷撃機24の計60機は、明確な攻撃目標を与えられ、飛行していた。

 目標は、神聖ミリシアル帝国港町カルトアルパス南方の海峡付近を南下中の、異世界艦隊、特に神聖ミリシアル帝国の艦隊に甚大な被害を与える事。

 編隊は、目標上空に差し掛かる。


「攻撃を開始セヨ。」


 迎撃に上がって来た神聖ミリシアル帝国の航空機と、エモール王国の風竜が、アンタレス型艦上戦闘機と乱戦に入り、シリウス型艦上爆撃機が眼下の艦隊を撃滅するために、急降下を開始した。

 



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