開ける世界
福岡国際会議場
日本国外務省は、外交交渉の事前交流のため、神聖ミリシアル帝国使節団に対し、プロジェクターを使用して日本国の概要を説明していた。
流される日本国に関するDVD、その内容は多岐にわたり、自然、文化、建築技術等様々な分野で、差し障りの無い情報が流される。
軍事に関する情報は、僅かでも防衛技術、知識の流出を抑えるため、見送られた。
どの国に聞いても「世界最強」という返答が帰って来る、中央世界の神聖ミリシアル帝国の使者を相手にするだけあって、日本国の対応も気合が入る。
第3文明圏の列強、パーパルディア皇国と戦争状態になった原因として、国をなめられた事が悲劇につながったとの分析もあり、今回は軍事に関する情報は出さないが、決してなめられてはならないとの政府指示があり、同プロジェクターの内容も、さりげなく技術や国力の大きさを匂わせる内容となっていた。
プロジェクターの映像に魅入る使節団たち、やがて、映像が終わり、外務省職員は、今回の交流会に関し、説明を開始する。
「こんにちは、神聖ミリシアル帝国使節団の皆さま、今回は、遠路はるばる日本国まで来ていただいてありがとうございます。
私は、日本国外務省の近藤と申します。皆さま、事前にご説明したとおり、今日と明日は交流会ということで、日本の事を少しでも知っていただきたいと思います。
本日から、観光しながら東京都に向かいます。
まずは、2つの国が初めて出会えたという事を祝し、交流を兼ねてお食事会を執り行います。
食事終了後の120分後に、新幹線博多駅にご案内いたしますので、どうぞごゆっくりなされて下さい。それでは皆様、よろしくお願いいたします。」
挨拶が終わり、各人のテーブルに、様々な食事が運ばれてくる。
食事に手をつけながら、神聖ミリシアル帝国情報局員、ライドルカは、横に座る外務省職員フィアームに話しかける。
「おお、これはうまいな……。
フィアームさん、さっきの映像を見てどう感じられました?
私は、とんでもない技術を持った国と認識し、興奮が抑えきれません。
先ほどの映像が事実ならば、例えば鉄道の新幹線は、我が国の弾丸列車構想の……未来の構想の段階での高速鉄道よりも速い。
それがすでに実用化して国内を走り回り、約50年間も故障や事故等が原因での死者がゼロという驚異の安全記録を持っている。
その事実が、あまりにも衝撃的です。」
「う……うん、そうですね。
日本国はなかなかやるようだ。
科学文明のみでこれほどまでに発展できる事に正直感心した。
しかし、魔法技術に関して、全く説明が無かった事を考えるに、なんとも国力が読みずらいというのが正直な感想だ。」
「確かに、魔法を使ってなさ過ぎて、国力が読みづらい。
ベルーノ殿はどう思われるか?」
情報局員ライドルカは、技官ベルーノに意見を求める。
「正直、この映像が本物ならば、総合的な技術力はムーよりも上であることはもちろん、産業分野においては我が国すらも凌駕している。
正直、時速300kmで走り回る高速鉄道を、実用化し、すでに国中に走らせているとは……驚愕ですな。
レールの上を時速300kmで走らせる事自体は、それほど難しい事では無いだろう。
しかし、新幹線に関してなによりも脅威なのが、その運行本数。
これほどの量の時速300kmで走る物体を、繁盛期には1日370本も走らせるとは、その制御技術が我が国には無い。
また、山岳が多く、トンネルの多いこの国で、時速300kmでトンネルに突入し、そしてすれ違う場合も多い。
この部分の衝撃波発生抑制の技術は難しい。ぜひ我が国にもほしいものだ。
また、地震発生時の緊急停止システムや、新幹線ではありませんが、緊急地震速報の技術は驚愕の至りでしたな。」
技官ベルーノは素直な意見を述べる。
話を続けたいが、会場前方から、一人の日本人がこちらに向かってやってくる。
日本人は、彼らの前で立ち止まり、一礼する。
「私は日本国外務省の近藤です。先進11ヵ国会議という世界会議の事前説明に、ご足労いただき、ありがとうございます。
今回の交流会から国際会議、そして国交開設、日本国の先進11ヵ国会議への参加まで、担当させていただく事になります。
神聖ミリシアル帝国という、大国を担当させていただき、光栄の至りです。」
非常に丁寧な対応、しかし、世界最強の神聖ミリシアル帝国に対し、大国という言葉にとどめた事について、外交官フィアームは方眉を吊り上げた。
「こちらこそ、初めまして。
神聖ミリシアル帝国外務省外交官のフィアームと申します。
我が国は、ここから遥かに西、中央世界の中心にある帝国です。
近藤殿、外交担当も貴方となるという認識でよろしいか?」
「はい、特に政府の意向により変更が無ければ、このまま私が神聖ミリシアル帝国を担当いたします。」
外交官フィアームは、邪悪な笑みを浮かべ、持ってきた大きいバッグから、袋を取り出す。
袋から取り出したそれを、近藤に渡す。
「担当の外交官への私個人からのプレゼントです。我が国で開発された、一瞬で演算するための道具です。
これを使用すれば、桁の多い掛け算や割り算であっても、一瞬で答えを導き出します。」
自信満々にそれを近藤に手渡すフィアーム。
「ありがとうございます。
ほう……これは……電卓?結構重たいですね。」
骨董品ともいえる、デスクトップパソコンほどの大きい電卓を渡された近藤は、返答に困る。
「重さは14kgありますが、演算能力の速さは産業のスピードに直結します。それは、我が国では高価なものですが、私的に近藤さんにプレゼントしたいと思います。」
フィアームは、最初に帝国の技術力を示し、国力の大きさを誇示するつもりだった。
自国では決して作り出せない技術力を示す事により、外交上有利に立とうとしていた。
技官ベルーノは、日本国の新幹線技術に、高度な演算装置が使われていると、直感的に理解していたため、フィアームが神聖ミリシアル帝国の電卓を渡す姿をみて、頭を抱える。
なめられてはならないとの政府指示を受けていた近藤は、少し申し訳なさそうに、スマートフォンを取り出す。
「演算処理装置の優秀性が産業の速度に直結するといったご意見は、全くそのとおりであると、私も考えます。
さすがは中央世界の大国ですね。
ちなみに、参考ではありますが、電卓は我が国にもあります。」
近藤は、スマートフォンをフィアームに見せながら操作し、電卓のアプリを開く。
「これは、スマートフォンといって、電話にもなりますし、電卓や辞書、ゲーム機にもなります。
計算については、我が国も力を入れておりまして、我が国のスーパーコンピューターは、一秒間に1京回計算できるものもあります。」
絶句するフィアーム。
近藤は、さらにスマートフォンを操作し、初期の電卓の画像を取り出す。
「フィアームさん、プレゼントをありがとうございます。
私、このような懐かしい物を頂いて、うれしい限りです。
貴国の高い魔導技術を研究させていただきます。
この画像をご覧ください、我が国でも、今から50年ほど前に、今いただいたような電卓が発売されていました。
車を買うくらい高価な代物だったと聞いています。
今は、小型化され、子供のお小遣いでも買えるほどの値段には下がりましたが。」
使節団の顔が屈辱にまみれる。
その後、そつない会話が続き、使節団は新幹線に案内され、博多駅から岡山駅に向かった。
◆◆◆
2日後夜 東京都
ホテルの1室で、使節団は会議をしていた。
福岡市での食事の後、時速300kmで走るにも関わらず、極めて快適な新幹線と呼ばれる高速鉄道で岡山市へ向かい、そこで巨大な橋を見せつけられた。
同橋は、あまりにも巨大であり、車、そして電車までもが走っていた。
日本国の建築技術を見せつけられた後、リニア実験場という場所に連れていかれ、試験走行中だったリニアモーターカーと呼ばれる電車に乗った。
磁気で浮上して走るリニアモーターカーは、使節団が乗った状態で、時速500kmで走行した。
天の浮舟よりも速く、鉄道が走るという事実に、使節団すべてに衝撃が走る。
日本国の近藤の説明によれば、実験ですでに時速600kmは記録しており、この走行方式だと、線路さえ長ければ、時速700kmでさえも、理論上特に問題なく行えるだろうとの事だった。
我が国の戦闘機よりも速く走る鉄道、どう表現していいのか全く分からなかった。
そして、日本の首都、東京に至る。
使節団が案内されたのは、スカイツリーと呼ばれるタワーだった。
神聖ミリシアル帝国にも、高さ300mクラスのタワーがあるが、このタワーは、高さ634mもあった。
海抜高度450mの展望回廊から見渡す景色は、人工建造物で埋め尽くされた驚異の風景だった。
「明日からは、先進11ヵ国会議の説明になりますな、フィアーム殿、もうわかっていると思うが、高圧的には出れませんな。」
技官ベルーノは外交官フィアームに語りかける。
「わ……わかっている。まさか、これほどまでに我が国を凌駕しているとは、しかし、最近はグラバルカス帝国といい、何故文明圏外にこのような国が突如として出現したのだ?」
情報局員ライドルカは、少し考え込んで話す。
「もしかすると、古の魔法帝国の遺産である魔王ノスグーラが最後に言っていたように、古の魔法帝国の復活が本当に近いのかもしれませんね。」
「な……なにっ!!!」
一同が驚愕に包まれる。
「エモール王国の神の意志にアクセスすると言われる空間の占いでさえ、空間に歪みが生じすぎており、古の魔法帝国が復活する日時場所の特定は出来なかったと聞いています。
古の魔法帝国は、その発達しすぎた文明で、神に弓をひいたといわれています。
国ごと転移など、そんな大魔法は神でなければ作り出せない。
神が国ごと異世界から召喚したのか、もしくは、魔法帝国復活の空間の位相の谷間に異世界の異物が巻き込まれたのかはわかりませんが……。
まあ、こんなことを話しても、推測の域は出ませんので、意味はありませんな。
日本国は見たところ、平和主義のようですので、魔法帝国復活の暁には、我が国の強力な仲間とすることが出来るでしょう。
人類の天敵を駆除するために、彼らの力を利用しない手はありません。」
「情報局は気楽ですね。私のような、外務省職員は、日本の国力の事実を、どうやって本国に報告するか、今から頭が痛いですよ。
私が上司ならば、絶対に信じないような報告書が出来上がります。
国ごと転移などという現象は、現実的では無さ過ぎるのです。
となると、日本の国力は本国の考え方では説明がつかず、私たちは、日本にまんまと騙された愚か者のレッテルを貼られてしまう。
本国に帰国したら、情報局の上層部から、外務省上層部に話を通してほしいものです。」
葬式のような会議はつづく。
翌朝~
日本国外務省
神聖ミリシアル帝国の外務省職員、フィアームは、緊張の面持ちで、日本国外務省幹部の前で、先進11ヵ国会議に関して説明をしていた。
各人には、紙が配られ、必要事項や詳細が記載してある。
要約すると、下記のとおりとなる。
○先進11ヵ国会議は2年に1度開催される。
○次回開催は、およそ1年後である。
○参加国は、世界に多大な影響力を及ぼす事の出来る大国のみで構成され、今後の世界の
運営方針について、会議を行う。
○世界中(彼らの把握している範囲の世界)の国々が、同会議には注目しており、日本国
が出席すれば、世界に大国として認識され、国益にもかなうと思慮される。
○参加国は、世界運営について、新たな意見を述べる事ができる。
○第3文明圏については、今まで固定参加1か国、持ち回り参加1ヵ国の計2か国であっ
たが、今回は固定参加国を日本国にしたい。
「開催まで、たったの1年しかない事は、大変申し訳なく思っていますが、世界に大国として認識される事は、貴国としても国益にかなうと思われます。
今までは、第3文明圏列強としてパーパルディア皇国が参加していたのですが、あなた方日本国が解体してしまったため、我が国は日本国を大国と認め、第3文明圏の長として、いや、ここは文明圏ではなかったですね。
東方国家群の長として、是非先進11ヵ国会議には参加していただきたい。」
一通り説明を聞いた後、外務省の幹部が手を挙げる。
「質問が一つあります、よろしいでしょうか?」
「はい、どうぞ。」
「前回の参加者の欄に、第2文明圏列強レイフォルとあります。同国は、さらに西側にあるグラ・バルカス帝国という国家に攻め滅ぼされたと伺っています。
レイフォル国が抜けた部分は、何処の国が来るのですか?」
「それは……レイフォル国の抜けた部分は、いまおっしゃられたグラバルカス帝国が参加する方向で、検討をしています。
まだ日本国と同じように、打診をしている段階なので、1年後という国際会議としてはあまりにも急な打診に対応できるのかはわかりませんので、貴国も含めて参加するかどうかはわかりません。」
「ほう……。解りました、ありがとうございます。」
様々な質問が飛び、先進11ヵ国会議の説明は終了した。
後日、日本国政府は、中央世界、神聖ミリシアル帝国の開催する先進11ヵ国会議に出席する事を正式に決定した。
◆◆◆
第2文明圏列強レイフォル 首都レイフォリア跡地
グラバルカス帝国の超弩級戦艦グレードアトラスターの全力砲撃により、灰燼に帰し、王の戦死によりあまりにもあっさりと降伏した列強レイフォル、同土地は、グラバルカス帝国領レイフォル地区と改名され、首都の跡地には、帝国式の建造物が建築中であった。
首都には空港が整備され、海軍航空隊が駐留し、レイフォリアの上空には、レシプロ戦闘機が飛び回っている。
その光景を眺めながら、ため息をつく者たちが4名。
神聖ミリシアル帝国の使節団の姿がそこにはあった。
○西部担当外交部長シワルフ
○武官パーシャ
○技官ゴルメス
○情報局員ザマス
彼らは、海路でグラバルカス帝国領レイフォル地区まで、先進11ヵ国会議の説明にや
ってきたのだった。
本来ならば、帝国本国へ行きたいところだったが、グラバルカス帝国の意向で、会議の場所が、レイフォル跡地に指定された。
上空を飛び回る戦闘機を眺め、武官パーシャは、真剣な面持ちで話す。
「速いな、もしかすると、我が国の戦闘タイプの天の浮舟の速度を凌駕しているかもしれない。」
「確かに、沖に見える戦艦も、我が国の魔導艦隊の戦艦に匹敵するほどの大きさを持っている。
レイフォル程度では、あれは手に負えぬだろう。」
「グラバルカス帝国との、ファーストコンタクトか……。」
4人は、緊張した面持ちで、案内された建物に入るのだった。
神聖ミリシアル帝国の美意識とは異なる、別種の美しさを持った建物に彼らは入る。
応接室に案内された使節団は、ソファーに座り、グラバルカス帝国の外交官を待つ。
やがて、ドアが開き、グラバルカス帝国外交官ダラスが姿を現す。
神聖ミリシアル帝国使節団は立ち上がり、外交官シワルフが挨拶を始める。
「はじめまして、私は中央世界の中心にある、神聖ミリシアル帝国、西部担当外交部長のシワルフと申します。
このたび、貴国から打診のあった、先進11ヵ国会議について、返答を行いたいと思い、訪れました。」
グラバルカス帝国の外交官ダラスはわずかに笑い始める。
「あなた方現地人の技術でここまで来るのはさぞや大変だったでしょう。
まずはその労をねぎらいます。
フッ……。中央世界か、たいそうな名前ですな。
して結果は?」
嫌味を受けながし、神聖ミリシアル帝国の外交官は返答する。
「列強レイフォルの代わりに、貴国、グラバルカス帝国の参加を認める事とします。
開催の要綱は、その書類のとおりです。」
ダラスは笑いをこらえる事に、必死になる。
「クックック……ハーッハッハハ!!!!
いや、失礼失礼、我が国の戦艦たったの1隻に降伏した弱小国、レイフォルが……噂には聞いていましたが、本当に列強とは!!!ハッハッハ!!
あまりにもあなた方現地人の基準が低すぎて、笑わざるを得ないのです。
ハハハハ!!」
静まる使節団、シワルフはゆっくりと口を開く。
「国家間の会議でその言いよう、弱小国家が文明圏内国家に虚勢を張った場面は、何回も目にしてきましたが、中央世界の神聖ミリシアル帝国外交官に対し、そこまで言ったのは、あなたが初めてです。
その勇気は認めましょう。しかし……はっきり言って、不愉快ですね。
世界5列強国といっても、その国力には大きな差がある。
列強最弱のレイフォルに勝ち、貴国は少し鼻が伸びているようですが、気を付けた方が良い。
我が国や、ムーをレイフォルと同じと思って対応すると、大きなケガを負いますぞ。
我が国は、あなた方の国を、先進11ヵ国会議参加に足る国と判断したにすぎません。
貴国が辺境でいかに強力であろうと、中央世界では通用しないでしょう。
世界は1国のみでは生きられませぬぞ。」
「あなたのその言葉、そのまま皇帝陛下にお伝えしましょう。」
静まる会議室、シワルフは会議を進める。
「会議に先立ち、確認を行いたいのですが、貴国の本国の位置と、首都を教えていただきたい。」
ダラスは首を横に振る。
「本国の位置は、現地人に対しては極秘事項です。首都の位置も、お教えする事はできません。
帝国への連絡事項があれば、ここ、レイフォル地区で承ります。」
「国とのやり取りで、それではお話になりませんな。
今後、会議参加について、不明な点があれば、神聖ミリシアル帝国まで足を運んでいただきたい。」
本国の位置ですら、教えないというグラバルカス帝国の姿勢に嫌悪感を抱きつつ、使節団はグラバルカス帝国領レイフォルを後にした。
◆◆◆
神聖ミリシアル帝国 帝都ルーンポリス 情報局
情報局長室で、局長アルネウスと2人の職員が報告を交えた会議を行っていた。
日本国へ派遣されたライドルカと、グラバルカス帝国レイフォル領へ派遣されたザマス、3人で、情報を共有する。
「と、いう訳で、先進11ヵ国会議概要は伝えたのですが、帝国は終始そっけない対応であり、本国の位置や首都名ですら教えないという、国際関係上信じられない暴挙に出ました。
旧レイフォル国の首都レイフォリアを窓口とするとの事です。
会議に参加するのかも怪しい状況であり、あの国は本当に要注意国家です。
なお、レイフォルの首都上空を飛んでいた飛行機械は、ムーのそれよりも速く、我が国の制空型の天の浮舟に匹敵する速度が出ていました。
国力の総力が全く不明な状態ですが、少なくとも技術力は侮れません。」
報告を受けた局長アルネウスは考え込む。
「では、グラバルカス帝国本国の位置は、謎のままか……。」
「はい……。」
沈黙。
様子を伺い、ライドルカが彼らに話始める。
「局長、日本国に関する報告の前ですが、1つよろしいでしょうか?」
「何だ?」
「実は……。」
ライドルカは、机上に、地図を広げる。
「なっ!!」
「こっ!!これは!!!」
情報局長アルネウスとザマスは、そのあまりにも精巧に描かれた世界地図に驚き、山の高さ、谷の位置、主な川の流れ、主だった街の詳細な位置等極秘にしてきた自国の精巧な地図を凝視する。
「我が国が精巧に描かれた図に驚かれるのも解りますが、グラバルカス帝国の位置はここです。」
ライドルカは、地図上の一点を指示する。
ムー大陸よりもさらに西方約5000kmの位置に、島というには大きく、大陸と呼ぶには小さい陸地が見える。
その場所も山や湖の位置が精巧に記されており、ご丁寧に、主だった街の位置等も記されていた。
「こ……これはどうしたのだ?」
アルネウスが尋ねる。
「実は、日本国と先進11ヵ国会議について話をした際、この地図を持参してきて、どの部分を通過して神聖ミリシアル帝国に来れば良いか、尋ねてきたのです。
他国の領海や、聖地指定をしているような部分を避けて航行するためと申し立てておりました。
日本の担当者は、「この地域の地図を持参した」と申し立てていたことから、もしかすると日本国は、この世界の全容をつかんでいるのかもしれません。
私は、この地図を見た時、驚愕しましたが、領海等調べて回答するため、地図を持ち帰って良いか尋ねると、問題ないとの回答であったため、持ち帰る事が出来ました。
まさか、通常は極秘事項に認定される地図を、あっさりと入手出来るとは思っていませんでしたが……。
担当者は、先進11ヵ国に関係する国が記された地図を持ってきますと言って、持ってきたため、グラバルカス帝国の位置も丁寧に記載されたものを持ってきたのでしょう。
正直かなり驚きましたが。」
アルネウスとザマスは絶句する。
一時の沈黙の後、ゆっくりと口を開く。
「なんと言っていいか、わからんな。まずは、日本国について、話を聞かせてもらおう。」
ライドルカは、日本国に関する説明を開始するのだった。
◆◆◆
ムー大陸西方約1000km地点
第2文明圏文明国 イルネティア王国 王都キルクルス
ムー大陸の西方約1000kmの地点にある島国、イルネティア。
北海道ほどの面積を持つこの島国は今、滅亡の淵に瀕していた。
王国軍の統合参謀本部には、各地の戦況が刻々と送られている。
「西部方面諸侯軍、全滅!!敵戦車はけん引式魔導砲の効果がありません!!!敵は王都キルクルスの西方約30km付近に迫っています!!」
「王下直轄海軍38隻、敵船10隻にすべて撃沈されました!!敵砲は、威力、射程距離共に我が方を遥かに凌駕しています!!!」
「東部方面竜騎士団及び、王下直轄竜騎士団のワイバーンは、すべて撃墜されました!!敵の飛行機械の速度は500km以上出ている模様です!!!」
初老の男性、国王イルティス13世は力なくつぶやく。
「もはや、残存戦力は無いに等しいか……これまでか……。」
突如として現れた、グラバルカス帝国という名の強国、1000年続いた歴史あるイルネティア王国は異界の大帝国の侵略により、その歴史を閉じようとしていた。
上空にはグラバルカス帝国のアンタレス型艦上戦闘機が乱舞している。
敵飛行機械の出すブーンという音、急降下する際に聞こえる甲高いエンジン音は、王国臣民に恐怖を与える。
王都キルクルスにこだまする爆撃音、国王イルティス13世は、猛烈な光と共に、この世を去った。
この日、第2文明圏文明国 イルネティア王国は、グラバルカス帝国に滅ぼされた。
次々と侵略を繰り返すグラバルカス帝国に対し、第二文明圏列強国ムーは、国際社会に対し、共同して非難声明を出すよう働きかける事となる。
誤字や矛盾点修正前の作品ですが、ブログ
くみちゃんとみのろうの部屋 http://mokotyama.sblo.jp/
にて、開催!世界会議!!
と、 震撼する異界1
の2話を先行配信中です。
もしよろしければ覗いてみてください。
なお、開催!世界会議!!で、外務大臣級の人物が出ていないのはおかしいといった、ご指摘がありましたので、それについてはなろう掲載時には、修正する予定です。
矛盾点や、誤字についてご指摘いただくと、助かります。また、こんなのがあったら面白い等の、ご意見もいただくと、助かります。




