間話 それぞれの考察
日本国 防衛省技術研究本部
防衛省技術研究本部の小野と岡本は、資料を見ながらこの世界の兵器について考察をしていた。
「まずは、この世界でメジャーな航空兵器、ワイバーンについてですが。」
小野は、資料をめくりながら、上司の岡本に話しかける。
「ワイバーンが火炎放射を行う時は、火炎魔法と呼ばれる方式をとるようですが、導力火炎弾を発射する時は、体内の粘性のある燃焼性の化学物質と、火炎魔法、そして風魔法を組み合わせているようです。
風で火を包み込み、燃焼物質も混ぜて、放出するため、導力火炎弾を発射するときは、首を伸ばし、胴体から首までを1直線に伸ばす必要があるようです。」
「では、振り向いて後方に発射する事は出来ないのか?」
「火炎放射に関しては可能ですが、火炎弾は前方にしか撃てません。」
「意外と不便だな。」
「そうですね。デリケートな生き物で、病気にもかかりやすいし、糞もする。
空戦時のスタミナ切れもありますし、火炎弾は連続発射が出来ない。
対地支援兵器としては有用性があるかもしれませんが、制空戦闘には全く使えません。」
話題が移る。
「歩兵用の兵器についてはどうだ?」
「はい、今回戦ったロウリア王国は、この世界で、文明圏と呼ばれる外の国としては、比較的戦闘能力が高い水準にありますが、未だ剣と弓が主力であり、取るに足りません。
第三文明圏の列強と呼ばれたパーパルディア皇国も、未だフリントロック式マスケット銃です。
地球基準でいえば、1620年に開発された方式であり、骨董品にしか見えません。
弾の速度、命中率、次射までの時間、どれも現代に比べるとあまりにもレベルが低く、軍隊としては全く脅威になりません。
もちろん、それでも当たれば死ぬ場合があるため、十分に注意する必要があります。
骨董品レベルとはいえ、それでも皇国は、周辺他国と比べると、技術力が突出しています。
今まで勝すぎた事が、自国に大ダメージを与える事につながったため、日本も決して慢心してはならないと思います。」
話はつづく。
「しかし、パーパルディア皇国で驚くべきは竜母と、戦列艦です。戦列艦の大砲は、明らかに1800年代の威力がありますし、ワイバーンの船での運用などの思想は、1900年代前半のレベルです。
明治初期の大英帝国や日本ならば、負けていたでしょう。
宇宙のレベルで言えば数百年は誤差の範囲に入るので、日本は幸運でしたね。」
二人は、文明レベルに日本がアドバンテージを握っていた事に安堵する。
パーパルディア皇国についての考察が終わり、次に神聖ミリシアル帝国について、話が移る。
「この付近で最強と言われている神聖ミリシアル帝国についてはどう考える?」
「魔法と呼ばれる訳の解らない兵器を進化させているため、何とも言えません。未知数ですね。
もっと研究する必要があります。
神聖ミリシアル帝国には、第零式魔導艦隊と呼ばれる世界最強と謳われる艦隊があります。
たいそうな名前ですね。
戦力は未知数ですが、艦のサイズは第2次世界大戦クラスの大きさであり、砲のような兵器も写真からは見て取れます。
もしも戦うならば、現代戦をしているつもりで、細心の注意を払う必要があると思います。」
「神聖ミリシアル帝国については、不明な部分が多すぎるな。もっと情報がほしいところだ。」
彼らは、次にグラバルカス帝国について考察を開始する。
「グラ・バルカス帝国についてはどう考える?」
岡本の問いに、小野は興奮しながら資料を取り出す。
「これを見てください!!」
1枚の写真を岡本に見せる。
「なんと!!これは……。」
「少し前にグラバルカス帝国によって滅ぼされた列強国、レイフォルの首都から撮影した、魔写と呼ばれる技術、まあ、写真ですね。
どう見ても戦艦大和です。
衛星写真を分析したところ、やはり寸法も砲の位置も、アメリカ軍に沈められる直前の大和型戦艦に酷似しています。
ただ、レイフォルの竜騎士団による空からの攻撃について、生き残りの証言からですが、近づいた砲弾の破裂状況から考えるに、近接信管を実用化しているものと思われます。
つまり、第2次世界大戦のアメリカ並みの電子技術を持ち、日本的な設計思想を持っているものと思われます。」
「第2次世界大戦レベルか……核兵器の所有も念頭に置いた方が良いな。」
「はい、技術レベルは明らかに第2次世界大戦の先進国レベルにありますので、核兵器の保有も十分に考えられるかと思われます。
グラバルカス帝国は、他国を強襲している点も踏まえると、現時点では最も注意すべき国かと思います。」
二人の考察はつづく。
「次に、この世界の伝説についてですが……。」
小野は資料を持ち出す。
「クワトイネ公国のリーンの森に、過去に魔王を打倒したと呼ばれる太陽神の使いの船が保管してあり、調査団を派遣した結果、信じられない事に、零式艦上戦闘機21型が保管してありました。
過去に旧日本軍が来ていたという事実が政府を揺るがしています。
旧日本軍が元の世界に帰れたのならば、日本国も地球に戻れる可能性が生じる事になります。
それが幸せかは解りませんが……。
現在この事象については調査中ではありますが、この世界の神話や伝説は、ある程度事実に基づいて構成されています。」
小野は続ける。
「そこで気になるのが、トーパ王国に有害鳥獣駆除の国際貢献で派遣された際に駆除した生物を作ったとされる、古の魔法帝国です。
有害獣には、遺伝子操作に酷似した高度な技術が使用されています。
様々な国で語られる古の魔法帝国は、人類とは別の種が統べる国であり、多種を見下し、まるで家畜のような扱いをしていたと記されています。
さらに、この国は技術レベルが高く、列強エモールの伝承に記されていた、過去に龍神の国を攻撃したコア魔法ですが、状況から判断するに、どう考えても単弾頭の大陸間弾道弾に酷似しており、さらに使用された弾頭は、核です。」
岡本は、核兵器が使用されたという過去の事象に驚愕する。
「な……何故核と言える?」
「カルアミーク王国をご存じですか?」
「ああ、最近国交を結んだ国だろう?」
「カルアミーク王国に、高度な古代遺跡があり、現在調査中ではありますが、おそらく古の魔法帝国の遺跡と思われます。
ここに、コア魔法の基本原理が記されていました。
円筒状の石柱内部に、起爆部分の球状のコアを入れ、同コアは爆裂魔法により多方向から同時に爆圧で包み込むことにより、原子の分裂をもって、高威力の爆発を発生させるとあります。
また、円筒状の石柱は、魔光呪発式放射エンジン(空気圧縮放射エンジンではない)で、空気の層の上まで飛び、垂直に対象国に落下、星の何処でも攻撃できるとあります。
多弾頭弾に関する記載が無かったのが幸いですが、この国は、大陸間弾道弾の核兵器を実用化し、迷うことなく使っていたようですね。
近年復活するとも言われており、もしもこの国が現れたなら、最大の脅威となるでしょう。
日本にも、アレルギーはあるものの、核兵器と大陸間弾道弾の整備が必要かと、個人的には思います。
核の整備については、最近政府が潜水艦発射型の大陸間弾道弾と、核兵器の整備を真剣に検討しているようでね。
自衛官の私が言う事ではなかったですね。」
彼らの話はつづく。
◆◆◆
リーム王国 王城
第3文明圏国家、リーム王国の王城で、王と宰相が話をしていた。
宰相は、取りまとめた情報を王に説明する。
「では、我が国ではどうあっても、ほぼすべての分野で日本国には勝てぬというのか?」
怒りと困惑が混じった表情で王は尋ねる。
「魔法に関しては、我が国の方が上ですが、決して戦ってはならない国です。
まず、武器の性能が違いすぎます。
我が国の竜騎士団がもしも日本国の航空自衛隊と戦ったら、あまりにもあっさりと、敵に被害を与えることなく全滅するでしょう。
陸上戦力にしても、日本の戦車を止める事は、我が国のどの武器をもってしても不可能です。
城の防壁も全く意味をなしません。
船にしても、かすり傷すら負わせる事はできないでしょう。
そして、なによりも恐るべきは、それを支える技術力と、量産を可能とする圧倒的生産力、そしてそれを簡単に成す国力です。
すべてが規格外です。」
宰相は熱弁する。
「盛りすぎだな。そんなにすごいのならば、神聖ミリシアル帝国よりも上という事になってまうぞ。」
「はっきり言って、私は神聖ミリシアル帝国よりも、日本に重きを置くべきと思います。
数でこそ劣りますが、彼らの技術力は、中央世界の上を行っています。
王様、決して日本に敵対するような行動はとらぬようにお願いします。
我が国が敵対したならば、パーパルディア皇国の二の舞になります。」
74ヵ国に分裂し、国力を大きく落としたパーパルディア皇国、王の頭には、それ以上の悲劇が浮かぶ。
「わ……わかった。日本に決して敵対せぬようにしよう。しかし、武器の性能が違いすぎるというが、良く解らんな。具体的にいったいどう違うのだ?」
「例えば、日本国の歩兵が装備している自動小銃と呼ばれる武器ですが……陛下、パーパルディア皇国が装備していた銃はご存知ですか?」
「ああ、知っている。あれの登場で、第3文明圏の戦いの様相は大きく変わったからな。」
「日本国軍が歩兵に装備させている一般的な自動小銃は、20発以上を連射できます。その連射速度は、一分間に650発以上です。
さらに、有効射程距離は500m以上もあり、敵対したならば、我が方の歩兵よりも遥かに遠くから、高速連射で倒されます。
また、物によっては、軽機関銃と呼ばれるものもあり、弾帯と呼ばれる帯状に配置した弾を給弾することによって、恐るべき連射が可能になる武器もあります。
毎分725発の弾がたった1人の兵によって放たれるのです。」
ひと時の沈黙、王はその軍事的な意味をかみしめる。
王の脳裏には自国の精鋭軍がなす術もなく蹂躙される姿が浮かぶ。
「バカな!信じられん!!戦いにならないではないか!!」
「今申し上げたのは、ほんの一例です。例えば、日本国は列強ムーのように、機械文明国ですが、日本国の戦闘機は音よりも早く飛び、目視が出来ないほど遠くの敵に攻撃が出来ます。
この攻撃する際のミサイルと呼ばれる兵器ですが、これは回避が出来ません。」
見えない敵を正確に攻撃でき、さらに避ける事ができないという現象が王には全く理解できない。
「それはどういう事だ?」
「回避しようとしても、弾も軌道を変え、追ってくるのです。日本では誘導弾とも呼ばれていますが。」
「それは……あのおとぎ話の……。」
「はい、古の魔法帝国の使用していた誘導魔光弾に酷似した兵器を実用化しています。」
王は絶句する。
宰相はつづける。
「船も脅威です。日本の船はすべて機械動力船であり、砲が信じられないほどに当たります。
空を飛ぶ物体にたいしても、船の砲が当たるのです。」
王はもはや理解の限界を超え、考える事をあきらめる。
「どうやって?不可能だろう?そんな事は。」
「波上でも砲を安定させる技術があるようです。また、敵との正確な相対距離を計算し、砲の飛翔速度、敵の飛翔速度を割り出し、その未来位置に向かって砲撃をする事が可能なようです。」
「バカな、それを可能にするには、確実な、一瞬一瞬での時間の、正確な距離を測る事が必要だ。
それだけではない。人間では考えられないほどの凄まじい速度の計算能力がいる。」
「日本国は、速く計算する機械も作っているようです。これは一例ですが、日本には1秒間に1京回も計算を行う機械があると……。」
「京!!京だと!?百でも凄まじいのに、百、千、万、億、兆、京の、京か?聞き間違いではないのか?」
王は声を張りあげる。
「陛下、落ち着いてください。京で間違いはありません。
もっとも、一般的に普及しているものではありません。」
王は頭を押さえ、大きなため息をつく。
「すまん、続けてくれ。」
「日本の海軍ですが、海に潜れる軍艦もあるようです。
海深く潜り、息をひそめ、魚雷と呼ばれる海の誘導弾を放ち、船底に攻撃が加えられます。
これを防ぐ術も我が国にはありません。」
王は、だんだん聞くことが苦痛となってくる。
「軍事も恐ろしいのですが、日本国はそれを支える技術力が凄まじく、兵器の新規開発能力も優れています。
技術力の一例ですが日本には新幹線と呼ばれる……。」
王は、気分が悪くなってくる。
「すまん、また今度聞く。ちょっと気分が優れぬ。」
リーム王国の王は、日本に敵対せぬことを心に誓うのだった。
◆◆◆
日本国 九州地方 南西方約700km先 上空
雲1つ無い青い空を、白く塗られた機体が飛んでいた。
機体に2つあるエンジンの後方は、青く光り、空気を噴射し、それは進む。
第3文明圏の技術レベルでは、決して作れない技術の結晶たる航空機、中央世界にある世界最強の国、神聖ミリシアル帝国の「天の浮舟35型」は、使節団を乗せ、時速310kmで日本国に向かっていた。
「間もなく日本国の領空に入ります。なお、日本国の戦闘機が2機、我が機を先導する予定となっております。
戦闘機が来ても、先導が目的ですのでご安心下さい。」
機内放送が流れる。
「長かった!あと2時間ちょっとで、やっと着きますね。」
情報局員ライドルカは、隣の外交官フィアームに話しかける。
「しかし、やはり遠いですね。もうちょっとで、東の果ての文明圏外国家を相手にしなければならないかと思うと、頭が痛いです。
戦闘機が2機先導のために来るとの事ですが、ワイバーンではなく、戦闘機を持っていた事自体が驚きですね。
さすが、ムーの恩恵を得ている国ですね。
パーパルディアに勝った理由も何となく理解できた気がします。
どんな戦闘機で登場してくれるのかが、楽しみですよ。」
外交官フィアームの脳裏には、ムーのレシプロ戦闘機(複葉機)が浮かぶ。
情報局は、今回の派遣について、ある程度の情報は仕入れていたが、その内容が不確定であり、あまりにも突拍子もなく、パーパルディアに勝った国という事実のみ伝え、具体的にどのような国かは伝えていなかった。
「フィアームさん、日本に対しては、文明圏外の蛮国といった先入観なしに見た方がいいかと思います。」
「解りましたよ。」
「いやぁ、私も日本国がどのような航空機で来るのか、非常に興味がありますね。」
技官ベルーノも話に入ってくる。
3人は窓の外を見る。
遥か下には海が見え、機内には魔光呪発式空気圧縮放射エンジンの発する甲高い音と、機体が空気を裂く音のみが聞こえる。
突如として、2機の機体とすれ違う。
遅れて轟音。
2機の機体は、遥か後方で向きを変え、あっという間に天の浮舟に追いつき、1機が先導し、もう1機が横につく。
「なっ……何!?速すぎる!!!」
「ムーの飛行機に使用しているプロペラが無いぞ!!はっ!!機の前方に空気取入口がある!!まさか、日本国も、魔光呪発式空気圧縮放射エンジンを実用化しているのか!!」
技官ベルーノは、驚愕する。
「しかし、なんて速さだ!!制空型の天の浮舟の速度を凌駕している!!」
武官アルパナが話に割って入る。
「あの翼型は……なんと!!後退翼か!!速度が音速を超えた場合に翼端が超音速流に触れないために考えられた翼型!!
我が国ではまだ研究……というか、理論の段階だが、実物がまさか見られるとは!!
アルパナ殿、あの戦闘機は少なくとも音速を超えますぞ!!」
技官ベルーノは興奮気味に話す。
航空機が音速を超えた場合、機体先端から斜め後方に向かい、衝撃波が発生する。
衝撃波境界層が翼に触れると、安定飛行を妨げるため、より影響が少ない後退翼が採用される。
ベルーノは後退翼の特性を見抜く。
外交官フィアームは、ワナワナと震え、話始める。
「バカな!!文明圏外国が、我が国を凌駕する航空機を持つはずがない!
あってはならない事だ!!」
「しかし、あの機体は明らかに音速越えを想定している。
無意味な形の航空機は作らないでしょう。」
「我が国は、先進的な学問体系もさることながら、古の魔法帝国の遺産を多数研究出来るという、他国に比べても大きなアドバンテージがある。
にも関わらず、航空機技術という、最も重要な一分野において、負けるとは!!いったいどういう事だ!!」
外交官フィアームは、困惑しながら日本国航空自衛隊の主力戦闘機、F-15J改を眺めるのだった。
天の浮舟35型は、日本国の戦闘機に先導され、九州の上空に至る。
やがて、大きな先進的都市が眼下に見えてくる。
これほどの大都市が文明圏外にあり、かつそれが1地方都市に過ぎないという事に、全員が衝撃を受ける。
「日本国には魔法が無いと聞いていたが、魔法なしでこれほどの大都市が作れるものなのか?」
技官ベルーノは疑問を呈する。
やがて、機は不必要なほどに大きな滑走路に着陸し、旅客機の横の駐機場に誘導される。
「つっ!!」
外交官フィアームは、眼前の光景に、プライドが破壊され、屈辱的な気分となる。
中央世界の、誰もが認める世界最強の国、神聖ミリシアル帝国の技術の結晶ともいえる天の浮舟35型。
その美しい機体、高度に洗練された技術、行く国々で、各国との技術差、国力差を実感し、見るたびに誇りに思ったものであるが、今横にある機体はいったい何だ!!!
この……惨めな気持ちはいったい何なのだ!!!
ボーイング777型機と、ボーイング787型機に挟まれ、駐機する神聖ミリシアル帝国の航空機は、ひどく小さく見える。
機を降りた使節団は、日本国の出迎えと挨拶を交わし、彼らの用意した移動手段、車で福岡市内のホテルに向かう。
車という乗り物は、我が国の魔導車に似ているが、形が洗練されており、車速も非常に速く、スムーズである。
しかし、何よりも驚くべきは、その車の量、聞けば民間人の下層でさえ車は持っていると日本の者は言う。
一行は、旅の疲れを癒すため、ホテルに直行した。
その日の外交官フィアームの日記より
私は今日、人生で最も衝撃を受け、最も疲れた一日であった。
我が国、神聖ミリシアル帝国は、古の魔法帝国の遺産を研究する事により、高度な魔法を柱とした文明を築いてきた。
その文明レベルは、古の魔法帝国を除くと歴史上最大であり、最も栄えていると言って差し支えない。
魔法をいかに活用するかが、文明レベルを決め、栄の度合いを決める。
機械文明ムーがいかに優れているとはいえ、各種乗り物等の性能は、我が魔導文明には遠く及ばなかった。
しかし、私は今日、我が国よりも少なくとも1分野において、進んだ文明を目にした。
それが、信じられない事に、文明圏外の国家が成しえ、しかも魔法をほとんど知らない国が成しえたという事実に、私は衝撃を受けずにはいられない。
科学文明も、極めればこれほどになるのかと。
日本国の規模がどの程度なのかは、これから調べていくところではあるが、少なくとも質においては、悔しいが我が国を凌駕している。
日本国は、パーパルディア皇国に代わり、第3文明圏、いや、東方の大陸国家群の代表となる存在になっていくだろう。
3日後から、私は日本国に対し、先進11ヵ国会議に参加するよう正式に交渉を行わなければならない。
心して仕事を成し遂げよう。
しかし、我が国の他の外交官に、日本国に対しては、高圧的態度をとらないように、今後釘をささなければならない。
しかし、私がそうであったように、日本を体感しなければ、高圧的態度は是正出来ないかもしれない。
長い間、すべてにおいて世界の頂点に君臨してきた国の外交官には、魂まで自国の優位性が刷り込まれている。
これを是正する事は、大変な事だと私は思う。
「明日から、日本の外交官との交流か……。」
外交官フィアームは様々な不安をもって、眠りについた。




