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列強の落日4

 パーパルディア皇国 皇都エストシラント 皇城


 緊急御前会議……国の重役の中でもトップのみが参加し、実質的に皇国の意思決定が行われる緊急会議が始まろうとしていた。

 会議の議題は、日本対策である。


 会議のメンバーは、皇帝ルディアスを筆頭とし、

 皇族 レミール

 軍の最高司令 アルデ

 第1外務局長 エルト

 第2外務局長 リウス

 第3外務局長 カイオス

 臣民統治機構長 パーラス

 経済担当局長 ムーリ

その他各局の幹部が補佐に入る。

 

 会議に先立ち、今までに判明した日本についての資料が配布される。

 第3外務局により作成された資料に各幹部は目を通す。

 時系列を追って記載された資料は、要約すると下記のとおりとなる。


○ 中央歴1639年1月、ロデニウス大陸のクワトイネ公国は日本との最初の接触を行う。同接触までの間、日本国という国の認知は各国とも無い。

 同接触の後、日本国はクワトイネ公国に大量の食料買い付けを要求する。

 ○ 同年4月、ロデニウス大陸の、当時最大勢力を誇ったロウリア王国がクワトイネ公国に侵攻し、2カ国は戦争状態に突入する。

 同戦争において、日本国はクワトイネ公国に味方し、参戦。

 ロデニウス沖大海戦で、ロウリア王国海軍は1500隻を超える船を撃沈され、さらにワイバーン部隊が大打撃を受ける。

 ○ クワトイネ公国の城塞都市エジェイ西側の戦いにおいて、ロウリア王国陸軍は壊滅する。

 ○ 方法は不明であるが、その後ロウリアハークロウリアは日本に身柄を確保された。


○ フェン王国懲罰のために出撃したパーパルディア皇国、皇国監査軍東洋艦隊は、ワイバーンロードが撃墜され、戦列艦も日本軍に追い返される。

 これが、皇国と日本国の初の軍事衝突となる。

 ○ アルタラス王国を落とした皇軍は、フェン王国制圧のために転進、フェン王国のニシノミヤコを陥落させ、同所にいた日本人200名を捉え、皇族レミールの名において、殺処分を行った。

 この行為に怒り狂った日本軍の攻撃により、フェン王国侵攻中の皇国海軍は全滅する。

 なお、本件皇軍の全滅により、皇国は海軍総兵力の三分の一が失われてしまった。

 ○ 皇帝陛下が日本国に対する殲滅戦を指示、一方日本国は同行為に対し、個別的自衛権の発動を通告してきた。

 ここにおいて、パーパルディア皇国と日本国は本格的な戦争状態となった。

 ○ 日本国はアルタラスに駐留する在アルタラス皇軍を攻撃、これを壊滅させ、属領アルタラスは独立した。

 ○ 日本軍はさらに、皇都エストシラント北方、皇都防衛隊陸軍基地を飛行機械によって攻撃し、防衛隊は壊滅する。

 ○ 一方、海上からは日本国の攻撃により、皇国主力海軍が実質的に全滅、海軍本部庁舎も、同所付近の港湾施設も完全に破壊される。


 ○ 日本は自らを異世界もしくはこの世界の別惑星から転移してきた国家と名乗っており、文明圏外国家としては考えられないほどの戦績を重ねている。

 歴史上我が国がこれほどの国家を認知していなかった現状を考えると、突如表れた国であることは間違いない。


 各員は、配布資料を読み終わる。

 一様に顔は暗い。


「まずは軍の現状からご説明いたします。」


 軍の最高指揮官アルデは説明を開始する。


「海軍の状況については、主力がほぼ壊滅し、残存戦力は竜母艦隊12隻を含む第1級艦 50隻と、監査軍の第2級艦である東洋艦隊22隻と、西洋艦隊13隻、計85隻であり、その戦力は日本軍との戦い前に比べ、10分の一以下となっており、規模は大幅に縮小しています。」


 アルデの額には汗が滴る。

 残存艦のみであっても、第3文明圏周辺国の海軍よりも戦力は上であるが、主力をあっさりと葬り去ってしまった日本軍と対峙することを考えた場合、その戦力はあまりにも小さく見える。


「次に、陸軍の状況についてご説明いたします。

 皇軍3大基地の1つ、皇都防衛隊が全滅いたしました。

 空から行われる攻撃としては、その爆弾投射量はあまりにも規模が大きく、今まで全く想定しておりませんでした。

 今後基地を作る際には、戦力を集中しすぎないように配慮する必要が生じましたが、本戦いには間に合いそうにありません。」


 説明は続く。


「皇都の防衛に大きな穴が開いてしまったため、属領統治軍を撤収し、皇都防衛の任に当たらせます。

 本件は皇都防衛といった最重要課題であり、緊急を要したため、軍最高司令の権限に基づき、すでに撤収指示は出しております。

 なお、属領統治軍を全て撤収したとしても、攻撃を受ける前の皇都防衛隊の戦力までは回復不可能です。」


「ちょ……ちょっと待って下さい、アルデ殿!」


 臣民統治機構パーラスはアルデの話に割って入る。


「属領統治軍を撤収する!?そんな事をすれば、反乱が起こりかねません!!他の2大陸軍基地から引っ張ってくるわけには行きませんか?」


「無理だ。他の基地も重要拠点であるしな。

参考だが、陸軍の最大の強みは地の利、この大基地から皇都に軍を引っ張って来たと仮定して、開いた穴に属領統治軍を当てる事は考えたが、それだと全体戦力が低下しすぎる。」


話は続く。


「臣民統治機構は、反乱を起こさせないために存在しているのでしょう?

 まあ、属領は既に牙を抜かれているし、属領同士の横のつながりは無い。そこまで心配はいらないでしょう。

 万が一、反乱が起こり、属領を失ったとしても、皇都防衛の重要性を考えると、天秤にかけるまでも無いと思うがいかがかな?」


「そ……それは……。」


「それに、先ほどの説明どおり、支持済みだ。すでに各統治軍は皇都に向かう準備を開始している。」


 パーラスは黙り込む。

 アルデは続ける。


「すでに皇帝陛下と経済担当局長には事前連絡し、ご了承を頂いておりますが、工業都市デュロの武器工場に対し、武器弾薬の量産を指示し、補給に穴が生じないようにいたします。」


 アルデが話し終わった後、第3外務局長カイオスが手をあげ、話し始める。


「現在の軍の状況から、日本が決し侮ってはいけない存在であり、そして脅威であるという共通認識は皆様持たれたと思います。

 ここで問題となるのですが……。」


 カイオスは一呼吸置く。


「今回の戦争の終わらせ方、落としどころです。」


「!!!!」


 一同に衝撃が走る。

 カイオスは誰もが感じているが、最も口に出しにくい言葉を皇帝陛下の御前で話し始める。


「アルデ最高司令にお尋ねする。」


「何だ!」


「残存戦力で日本に上陸を行い、皇帝陛下の御指示である日本人の殲滅をなす事は可能か?」


「陛下の御意思達成のため、全身全霊をかけて取り組む所存だ。」


「精神論など聞いてはいない。

 現有兵力で可能かどうかを聞いている。」


「……現有戦力では、不可能だ。

 達成のためには、兵の数をそろえ、もっと船を作る必要がある。

 時間が必要だ。」


「日本は待ってはくれまい。

 それでは、今回の戦端を開いた第1外務局長のエルト殿。」


「……何だ!?」


「この戦争、どのように収束させるおつもりか?」


 エルトは、皇帝ルディアスの顔に目線を走らせる。

 彼の額には、びっしりと汗が浮かび、目は泳ぐ。


「国家として、すでに日本殲滅を表明している今、皇国が意志を変更すれば、他国や属国に示しがつかない。

 国益を考えたとしても、このまま進むしかあるまい。」


「エルト殿は、それが可能と思っておられるのか?」


「軍の最高司令のアルデ殿が時間をかければ可能と言っている。

 軍事における戦略的な事に私は口を出す立場には無い。」


「では、日本は我が国に何を求めているか、担当である第1外務局長にお尋ねしたい。」


「日本は……フェン王国において、我が国が行った日本人の殺処分についての公式謝罪と、賠償、そして首謀者、参考人の身柄の引渡し。

 又、フェン王国に対する謝罪、賠償、物品の保障、人員に対する賠償、これを求めている。」


 レミールの顔が曇る。


「では、レミール様、この日本の要望についてはどう思われるか。」


 一時の沈黙。


「わ……私は……。」


「もうよい!!!!」


 レミールの発言に割って入る怒声、すべての者はその声を誰が発したのかを瞬時に理解し、黙り込む。

 皇帝ルディアスは第3外務局カイオスに向く。


「カイオス、お前は何が言いたい!この列強たるパーパルディア皇国、その長である皇帝と、そこのレミールを、日本に差し出すといった屈辱的な完全敗北がお前の望みか!!」


「い……いえ、決してそのような。

 ただ私は、皇国臣民のためを思い、日本が何を求め、我が国としてどういった対策が出来るのか、目を瞑らずに洗い出す、あらゆる可能性の模索をしているのです。」


 一言間違えばリアルに一族の首が飛ぶこの状況下で、カイオスは言葉を選ぶ。


「日本は強い。私は本当に危機感を感じているのです。

 このままでは、もしかすると、皇国が倒れるかもしれないと、危惧を抱いているのです。」


「ほう……確かに日本軍は強い。海軍を滅し、大規模陸軍基地の1つを潰した。

 しかし、未だ2つの大規模基地が健在であり、しかも我が国の武器を支える工業都市デュロも健在だ。

 武器が尽きる事は無い。

 そして、奴らは陸軍を上陸させる事は出来まい。」


「何故そう思われるのですか?」


「陸軍の上陸……地の利を生かした列強国の大陸を制圧するとなると、とてつもない量の投入が必要だ。

 しかし、日本は海軍の数にしてもそうだが、軍の数が少ない。

 陸の広大な面積は、質では補いきれまい。」


 皆は頷く。

 皇帝の言葉に逆らえるはずもない。

 しかし、皇国崩壊に関するカイオスの懸念はそこではないが、現時点の意見具申はカイオスの首がはねられかねないため、彼は言葉をのむ。


 日本対策会議はつづく。


◆◆◆


 パーパルディア皇国 属領クーズ


 列強パーパルディア皇国によるカスのような統治、その統治に耐えかね、ハキは独立するための仲間を集めていた。

 皇国の統治に反感を持つ者は多く、ハキ自身全く信じられない事であるが、協力者は2500名にも上っていた。

 

 反乱組織名、「クーズ王国再建軍」


 実質的な戦力は1500名程度ではあるが、大きい戦力といえる。

 組織は十数人単位の仲間がネットワークのように繋がり、2500名が一同に会して話を

することは無く、その活動は表立っていないため、奇跡的に臣民統治機構には認知されていない。

 

 その日の朝、ハキは朝食を食べていた。


 コンコンコン


 自宅のドアがノックされる。

 ドアを開けると、1人の男が息を切らして玄関前に立つ。

(いったい何があった?)

 ハキは彼を自宅に入れる。

 

 パーパルディア皇国に対する反乱組織「クーズ王国再建軍」、その長ハキの右腕とも言えるイキアは息を切らして彼の前に立つ。


「どうした?こんなに朝早くから……何があった?」


 イキアは息を整え、話し始める。


「属領統治軍が、2日前から撤退を開始していた!!

 本日の午前中で、ほぼすべての属領統治軍がクーズから出て行くぞ!!」


「本当か?組織の存在がバレて、そのあぶり出しの偽情報ではないのか?」


「いや、これから話す内容は、兵たちが話していた確度の高い情報だが……。」


「何だ?」


「パーパルディア皇国の皇都防衛隊が全滅したらしい。今回の撤退は、その穴埋めの一部にするということだ。」


「そんな……バカな!本当か?相手は、日本国か?」


「そうだ。日本国の大型飛行機械が多数、空から皇国に侵入し、攻撃を行ったらしい。

 それで、基地が全滅したと……それと、あと1つ情報がある。」


「?」


「日本海軍と、パーパルディア皇国主力海軍が戦い、皇国は戦列艦、竜母艦隊を550隻も失い、さらにエストシラント南方港湾施設も全滅させられた。

 しかも日本艦約20隻は1隻も沈まなかったようだ。」


絶句……。


ハキはあまりの常識外れな戦果にすぐには言葉が出ない。


「あ……いや、待て待て、では何でまだニュースになっていないんだ?

他文明圏のニュースくらいにはなっていてもおかしくないではないか。」


「信じられないほどの大戦果だからかもな。

 この情報が本当なら、日本はもはや列強のレベルをも大きく超えている事になる。

 適当な事を言って信用を失ってはいけないし、双方の国も、他国も正式発表をしていない。

 情報が来ていないだけかもしれないが。」


 第3文明圏列強パーパルディア皇国との戦いに敗れ、糞のような統治を受け続けたクーズ王国、奴らは我らの土地を属領クーズと呼び、我らが民の事をクズのクーズなどと呼んでいた。

 自らの国を取り戻したかったが、列強軍はあまりにも強く、クーズ王国が最盛期の軍をもってあたったとしても、皇国の属領統治軍にあっさりと敗れていただろう。

 まして、大した装備も無く反乱したとしても、あっさりと滅せられるのは目に見えていた。

 

 列強軍と我らの軍は、圧倒的……いや、絶望的な開きがあった。

 しかし……日本という国が現れ、状況が変わる。


 彼らは皇国の属領となった、アルタラスを救い、列強は最強ではないと教えてくれた。

 そして、日本は皇国に相当なダメージを与えた。

 属領軍を皇都に引くほどのダメージ……ハキの心が燃える。


「イキア!!」


 ハキは大きな声でイキアに話し始める。


「な……何だ?」


「時は来た!!!」


「ん!?」


「クーズ王国再建軍の初陣だ!!本日午後3時に一斉決起!!臣民統治機構の建物を打ち破り、クーズ王国を取り戻すぞ!!!」


「本気か?我らの武器は剣と盾くらいのもの。統治軍が戻ってきたら全滅するぞ!!!」


「統治軍は戻ってこない。皇都の防衛に穴を開ける訳にはいかないからな。

 そして、臣民統治機構など1500人で攻めたらあっさりと落ちるだろうよ……クーズは我らの国だ!!!」


 ハキは反乱を決意する。


 彼の頭は皇国を倒す事でいっぱいであり、その後何を成すのかは頭にない。

 復讐の亡霊は、彼の心を燃やし続ける。


◆◆◆


 パーパルディア皇国 属領クーズ


「ハキは何も解っていない!!」


 イキアは衝動的に反乱を決めたハキの短絡的な判断に不満を持っていた。

 反乱は人と人との命をかけた戦いであり、遊びではない。

 その人には当然家族もあり、命をかけるには納得できる理由が必要、反乱後一時的に統治が可能となったとしても、皇国が戦争に敗北するような事が無い限り、力を取り戻した皇国によって再度蹂躙されることは目に見えている。

 イキアは反乱の暗号を魔信で流す前に、試しに1つの組織の説得のため、とある建物の前に来ていた。

 ドアが開き、建物の中に入る。


「……という訳で、本日午後3時00分から、国を取り戻すため、クーズ王国再建軍の一斉決起を行います。

 準備のため、暗号魔信は3時間前の午後0時00分に流します。」


「一時的勝機はあるだろうが、その後の事を考えているのか?

 皇軍が戻ってきたら、あっさりと踏み潰されるぞ。」


 イキアと同じ懸念を示す組織の人間、やはり人の命を賭けるには、材料が少なすぎる。

 ……沈黙。


 ピロリンピロリン……ピロリンピロリン


 彼の家に設置してある壊れかけた映像受信機が光り始める。

 第1文明圏の魔信を拾っていたその受信機に、組織の人間とイキアは振り向く。


「……番組の途中ですが、臨時ニュースをお知らせします。

 アルタラス王国の元王女、現女王、ルミエス氏が全世界に向け、緊急記者会見を行うとの

事です。」


 一時して、ルミエスが壇上に上がる。


「みなさん、おはようございます。」


 ルミエスはゆっくりと頭を下げる。

 その姿は美しく、品性を感じる。


「今から行う発表は、当事国の日本国には了解を得ています。」


 話は続く。


「先日、アルタラス王国の北方、パーパルディア皇国のエストシラント南方海域で、日本国とパーパルディア皇国の海戦が行われました。」


 初の公的機関からの重要発表、記者たちは体を乗り出して聞き耳をたて、映像受信機の前にいるイキアたちも、自分たちに関係する重要情報であるため、体を乗り出す。


「この海戦に、日本国は海上自衛隊の護衛艦隊約20隻を投入、一方パーパルディア皇国は、主力戦列艦等約600隻を投入いたしました。」


 噂では流れていた事象が、政府機関からの正式発表として行われる。

 マスコミ関係者たちは、必死に記録を行う。


「本戦いの結果、日本国の被害はゼロ、1隻たりとも、1人の死者も出ていません。

 一方、パーパルディア皇国は約550隻が撃沈され、残りの50隻は敗走、本戦いをもって、パーパルディア皇国主力海軍はほぼ全滅いたしました。」


 会場がざわつく。


「又、日本国は、パーパルディア皇国本土の陸軍基地、皇都防衛隊に空から攻撃を行い、これを全滅させました。

 なお、この攻撃には、我が国の基地が使用されています。」


 話はつづく。


「この皇都防衛の穴埋めのため、各属領から軍の引き上げが行われているという情報が入っています。」


 ルミエスの声に力がこもる。


「パーパルディア皇国の統治に苦しんで来た人々よ!!今が動く時です!!!

 今、皆が一斉に動けば、皇国にそれを止める力はありません!!!

いまこそ、力を合わせ、自分たちの国を!!平和と幸せ、そして何よりも誇りに満ちた自分の国を取り戻そうではありませんか!!!」


「パーパルディア皇国よりも、日本国の軍の方が強い事は、今回の戦いを見たとしても、火を見るよりも明らかです!!!

 皇国は日本と戦争をしている!そして、彼らは日本には勝てない!!」


「我々も共に戦うのです!!そして悪魔のような国、パーパルディアを倒そうではありませんか!!!

 あなた方が自分の国を取り戻すという行為そのものが、本戦いに大きく影響してきます。

 戦うのです!!今なら……今なら戦いに勝つ事が出来るでしょう!!!

 今なら勝てる。そして彼らは列強の座から落ちる事となるでしょう。

 動くべきは今なのです!!!」


 記者たちが質問をはじめる。

 緊急放送は終了した。



 ……沈黙。


 皇国が手ひどくやられた事は本当だった。

 日本という国はとんでもない国のようだ。


「……わかりました。やりましょう。」


 組織の人間は同放送を聞き、ハキとイキアの方針に理解を示す。

 属領クーズは本日、皇国に対し反乱を起こし、その支配権を取り戻す事を決定した。


◆◆◆


 パーパルディア皇国 皇都エストシラント 皇城


 緊急御前会議は、一時の休憩を挟み、夕方である現在も続けられていた。

 会議の大きな流れとしては、日本に対して徹底抗戦する方向で話が進んでいる。


 第3外務局長カイオスは、会議の進行に焦りを持つ……。

 結局このままでは皇国は滅んでしまう。

 これほどまでの国力を誇り、幾多の国が存在するこの世界で5本の指に入った列強パーパルディア皇国が滅ぼされてしまう。

 

 カイオスはこの会議で、命をかけたある事を決意するのだった。


「……であり、この国は危機的状況下にあり、経済担当局による大規模な支出を行い、工業都市デュロで徹底した兵器の量産を実行、さらに属領からの徴兵をもって再軍備を実施、今までの皇国主力軍の3倍の規模を作り出し、「量」をもって、日本の首都沖合いへ夜のうちに大船団を送り込み、奴らの首都を火の海にします。

 このような方向性で行きたいと思いますが、皇帝陛下、よろしいでしょうか?」


 軍の最高司令アルデが、再建計画を出している。

 日本が何もしてこない事を前提とした完全なる机上の空論に、カイオスは頭が痛くなる。

 会議の席では、皆自信を取り戻したかのような顔をしているが、カイオスには現実から目を背け、馬鹿が雁首を並べているようにしか見えない。


 急に、軍の最高司令アルデに幹部が耳打ちする。

 幹部の顔は焦りに満ち、額からは汗が流れ、顔は青い。



 皇帝が疑問を持ち、アルデに問う。


「どうしたアルデ、何があった?」


 アルデの額からも汗が落ち、手が震えている。

 答えに窮するアルデ。


「どうした?早く申せ。」


「こ……皇国の大規模工業地帯デュロが、日本軍の空襲を受け、全滅いたしました。

 民家にはほとんど被害はありませんが、工場は……すべて破壊されました。」


「な……なに!!?」


「そ……そんな!!!」


「さらに、工業都市デュロにある大規模陸軍基地も、同じく日本軍の空襲を受け、全滅いたしました。」


「な……。」


 衝撃のあまり、沈黙する会議室、しんとしたその場所に音をたて、別の幹部が血相を変え、会議室内に飛び込んでくる。


「今度はいったいなんだ!!!もうアルデに耳打ちしなくて良い、お前がこの場で申せ!!」


 皇帝は軍幹部を怒鳴りつける。


「は……はっ!!!」


 軍の幹部は皇帝に平伏し、報告を始める。


「属領のクーズ、マルタ、アルークが反乱いたしました。

 既に同3箇所の統治機構は壊滅、反乱軍の手に落ちました。」


 衝撃……幹部はさらに続ける。


「今申し上げた3つの属領は、すでに落ちたもののみです。

 現在15箇所の他の属領が反乱を起こし、統治機構は劣勢です。」


 話はつづく。


「アルタラス王国のルミエス女王が、皇国の属領に反乱を起こすよう魔信で呼びかけています!!

 今回の反乱はその呼びかけに呼応したものと思われます。

 今後さらに属領が落ちれば、加速的に他の属領も反乱してくる事が予想されます!!!」


 絶句する幹部たち……。


 パーパルディア皇国は「恐怖」により他の国を属領とし、支配し、富を吸い上げ続けて来た。

 しかし、その恐怖を与えるための「力」が、日本国によって砕かれてしまった。

 恐怖による支配の脆弱性が最悪の形となって、彼らに帰ってくる。

 皇都の防衛を手放し、属領軍を返す事も出来るが、その方法だと皇都が丸裸になってしまう。

 それは出来ない。


「お……おのれぇ!!!!」


 怒りの言葉を吐き出す事しか出来ない皇帝、会議は深夜にまで及んだ。


◆◆◆


 パーパルディア皇国 皇都エストシラント カイオス邸


 会議では結局何も決まらず、空論が続いた。

皇国の将来は絶望的であったため、第3外務局長カイオスはある事を決意していた。

 このままでは、皇国は滅せられてしまう。

 この行動が失敗すれば、カイオスのみではなく、おそらくは一族の命すら無くなるかも知れない。

 しかし、成功すれば、少なくとも国は残る。


 彼は屋敷の一角に設置された、日本に渡された通信機に手を伸ばす。


「……やるしかない。」


 カイオスは通信ボタンを強く押し込んだ。




 友人から、スマホのゲーム、エイジオブエンパイアワールドドミネーションという最近出たゲームを進められました。

 パソコンでAOEをしたことがあり、面白かったのでダウンロードしようと思ったのですが、ストレージが足りませんでした(ショック)

 文明と文明の戦いの戦略ゲームも、楽しいでしょうね。

 スマホ買い換えようかな。

 皆さん、たくさんの感想をありがとうございます。

 全ての皆様に返信はしたいのですが、なかなか時間が取れませんので、ここでお礼をいたします。

 感想は、どんな意見であれ、もらうと嬉しいです。

 これからも、日本国召喚をよろしくお願いします。

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