日本国の意思
日本の意思
「間もなく首相の記者会見が開かれます」
日本人に対するフェン王国での大虐殺は、全ての国民の知るところとなった。
パーパルディア皇国の蛮行は、日本のみでは無く、日本と国交を有する全ての国にも知れ渡った。
通常の国が相手なら戦争になるだろう。
しかし、相手はパーパルディア皇国である。
多くの文明圏外国家であれば、列強の国力の強大さから、国民200名程度であれば、目を瞑るだろう。
しかし、今回の当事者は日本である。
皇国はその国力の強大さから、日本がどういう国か判断を誤ったのだろう。
日本と外交関係にある各国の外務担当は、日本国内において、テレビを食い入るように見つめる。
パシャパシャパシャ
シャッター音が鳴り、首相がスーツ姿で現れる。
顔は険しく、笑顔など微塵もない。
演題に首相が立つと、ざわついた空気が静まり返る。
首相はゆっくりと話始める。
「皆さん、知ってのとおり、フェン王国のニシノミヤコがパーパルディア皇国の攻撃により陥落しました。
ここにおいて、逃げ遅れた何の罪もない日本人が捕らえられました。
外務省がパーパルディア皇国に観光客であるため、すぐに釈放するように要求しましたが、彼らは・・・信じられないことに、非道なやり方で日本人を虐殺しました。
・・・私たちは、この蛮行に目を瞑ってはいけません。
今回の虐殺の首謀者には、必ず罪を償ってもらいます!!!
このままパーパルディア皇国を放置すれば、フェン王国の首都アマノキに至り、フェン王国軍が敗れれば捉えられる日本人観光客は3000人と推定されます。
日本国政府は日本を、日本人の命を守るという事に責任があります。
そして、我が国の同盟国であるフェン王国、他国だからといって、一方的な侵略を受けていいというものではありません。
我が国は、平和を愛する国であり、平和的に物事が運ぶのであれば、それに超した事はありません。
しかし、話の通じない侵略者に対しては、断固とした態度で対応し、彼らを追い払わなければなりません!!!
我が国と同盟国たるフェン王国は、お互い協力しあい、日本人を守るために侵略者をフェン王国からたたき出す事で意見が一致いたしました。
私は首相命として、陸、海、空3自衛隊に対し、日本人を保護するためにあらゆる措置を講じ、フェン王国からパーパルディア皇国軍を追い払うよう指示いたしました」
パシャパシャパシャ
シャッター音が鳴り響く。
様々な質問が行われ、首相会見は終了した。
◆◆◆
トーパ王国 城塞都市トルメス
「号外!!号外!!!」
情報屋が新聞を配っている。
その見出しにトーパ王国の人々は目を丸くする。
日本国と列強パーパルディア皇国がついに衝突へ!!!!
人々は話す。
「おい、どっちが勝つと思う?」
「そりゃあ日本だろ?魔王ノスグーラを倒したあの鉄龍を見ただろう?あんな常識外れなとんでもない兵器をもってるなら、日本が勝つに決まってるだろう?」
「しかし、相手は世界の上位列強国だからなぁ。パーパルディア皇国がアルタラス王国を攻めた時も、ほとんど兵に被害が無かったらしい」
「全面戦争ならパーパルディア皇国有利と見るぞ」
「しかし、今回の新聞を見ると、フェン王国からたたき出すと言っているんだろう?戦争というよりは・・・局地戦の紛争になるのでは?」
「局地戦に日本が勝ったとして、相手はパーパルディア皇国だぞ。あんなプライドの塊のような国が戦争に発展しないと思うか?」
「いや、ないな」
日本の国力を1部でも知るトーパ王国では、日本が勝利するといった意見が優勢になった。
アルタラス王国 王都ル・ブリアス 地下組織
パーパルディア皇国に攻め滅ぼされ、実質的に属国となったアルタラス王国、しかし、皇国は全て掌握できておらず、対皇国の地下組織も僅かではあるが存在する。
そんな地下組織に第3国経由で魔通信が届く。
「軍長、面白い通信が届きました」
軍長は紙に目を通す。
「文明圏外の2カ国連合が皇国と戦争をするようですね。軍長はどっちが勝つと思いますか?」
「ふぅ・・・文明圏外の2カ国程度なら、皇国の圧勝だろう?我が国は文明圏外だったが、装備のレベルは文明圏国家と同レベルだった。それでも皇国には手も足も出なかった。
まあ、少しでもダメージを与えてくれれば良いが、現実は領土が広がって、国力が増すだけだろうが・・」
「日本という国を知りませんか?」
「知らんな」
「私はこの戦い、面白くなると思います。
日本はクワ・トイネ公国をロウリア王国の侵攻から救った実績があります」
「うむ、ロウリアを破ったなら確かにすごいが、皇国は別格だぞ?まあ無理だろうな」
アルタラス王国地下組織では、この情報に希望を抱く者はほとんどいなかった。
第2文明圏 列強国ムー
パーパルディア皇国、日本国の2カ国と国交を有するこの国は、どちらに観戦武官を派遣するのか会議を行っていた。
負ける側に武官を派遣すると、戦闘に巻き込まれ、死亡する可能性が高くなるため、派遣先は十分に見極める必要性があった。
両国共に、ムーが観戦武官の派遣を要請すれば、受け入れるだろう。
「以上の報告から勘案するに、日本国は極めて高い機械文明を有しており、部分的にはムーをも上回る技術があります。
観戦武官は日本国に派遣したいと思うがよろしいか」
ムーの軍人が手を挙げる。
「報告書には何度も目を通した。しかし、私が気になるのは報告書の真意だ。
本当なのか?我が国を上回る技術というが、実物を見たのか?
そして、戦力としてパーパルディア皇国を上回る武力の投入が可能なのか?」
「国力については間違いない。日本国で勤務している外交官からも、訪問してきた国会議員からの聴取も報告書と一致する。
軍からも数人が派遣されているはずだが?」
「軍の内部からも同様の報告がなされている。しかし・・・やはり信じられんな・・・」
会議の結果、列強ムーは観戦武官を日本国へ派遣することを決定した。
神聖ミリシアル帝国 港町カルトアルパス とある酒場
中央世界にある誰もが認める世界最強の国、神聖ミリシアル帝国。
その交易拠点となっている港町カルトアルパス。
とある酒場では、酔っ払い達が話しをしていた。
「列強パーパルディア皇国と、文明圏外の2カ国連合が戦うらしいぞ」
「また、2つの国が滅び、パーパルディア皇国がその版図を広げるのか・・・しかし、最近のパーパルディア皇国は無茶苦茶をしているな。
戦争戦争戦争だぜ。
第3文明圏の統一でもするつもりか」
「パーパルディア皇国は中位列強国、神聖ミリシアル帝国や機械文明ムーに比べたら国力は落ちる。世界の主導権でも握りたいのか?」
「しかし、その2カ国も勇敢だな。国民のほとんどが不幸になると解っていて従属しないとは」
「剣の国、フェンと新興国日本だ」
「日本?あの日本か??これは、皇国も珍しくダメージを負うかもな」
酒場では、皇国圧勝という意見が大半を占めた。
◆◆◆
日本国 鹿児島県 種子島宇宙センター
ロケットの発射台にそれは置かれていた。
全長56.6m、地球であれば静止衛星軌道上に8tもの打ち上げ能力を有する日本の技術の結晶、HⅡ-B
内部には、この星を知るための光波衛星、電波衛星の2基の衛星が搭載されている。
カウントダウンが始まっている。
「12.11.10.9.8.・・・全システム異常なし7.6.5.4.3・・・SRBA点火2.1.0メインエンジン点火、リフトオフ!!!!!」
「リフトオフ!!!リフトオフ!!!」
ゴォォォォォォォォぉ!!!!!!!
轟音を轟かせ、この星を観測するための人工衛星が2基、大空へ打ちあがっていった。
◆◆◆
フェン王国首都 アマノキ
剣王シハンは上機嫌だった。
「よし!!!よし!!!」
顔は満面の笑みである。
日本国が対列強戦に参加することを決めた。
フェン王国単独ではおそらく国力の差からしてやられていたであろう。
皇国監査軍ワイバーンロード部隊を赤子の手を捻るかの如く倒した日本の魔船が今度は皇国本軍と戦うためにやってくる。
フェン王国は救われた。
剣王は日本国へ全面的に協力するよう部下に下命した。




