戦争前夜
遅くなりました。投下します。
戦争前夜
パーパルディア皇国 皇都エストシラント 第1外務局
第1外務局長エルトの指示により、日本の情報がかなり集まってきた。
まず、グラ・バルカス帝国とは関係が無く、国旗は白地に赤の丸であること。
これにより皇国監査軍を退けたのはほぼ日本であることに間違いは無いと思われる。
監査軍のワイバーンロード部隊が全て未帰還となっているが、どうやったのかは不明。
また、敵の主力艦には砲がたったの1門しか付いていないという。何故1門にしたのかは不明であるが、多少命中率が高いくらいでは、100門級戦列艦の数の暴力を覆せるとは思えない。
おそらく単艦での質は高いのだろうが、そこまで差があるのだろうか?
どうしてもそれほどまでに差があるとは思えない。
グラ・バルカス帝国のグレードアトラスターと呼ばれる魔艦は、たった1隻でレイフォルを滅ぼすに至ったというが、この情報はやはり何かの間違いだったのではないかと思えてくる。
どう考えても盛りすぎである。ただし、グラ・バルカス帝国がレイフォルを滅する力があるのは事実であるため、今後帝国には気をつけなければならない。
皇国監査軍の提督ポクトアールの報告書では、100発100中の砲が配備されていたとの記載がある。
この件について、皇国の頭脳集団「兵研」に問い合わせてみたが、「100年後の未来の皇国の技術でも不可能」との回答を得ている。
やはり、文明圏外国家が皇国よりも100年以上進んでいると考えるのは現実的ではない。
ロウリア王国と、日本の対戦について、ヴァルハルなる人物が荒唐無稽な報告書を挙げてきているが、彼を医師に診断させたところ、精神の病を患っていたとのことであり、この報告書は信用に値しない。
日本については、第3国経由でおもしろい情報を入手した。
日本国は、軍備に現時点で国内総生産の1%程度しかかけていないらしい。
これでは、多少装備の質がよかろうが、いかなる大国だとうと、数がそろわないため、軍としてはたかがしれている。
○ なめてはいけないが、恐れるほどの国ではない。
○ 日本が軍備を拡張する前の現時点で叩いておくのが良策である。
第1外務局はこのように結論付けた。
パーパルディア皇国 皇都エストシラント 皇城
国の重臣たちが平伏し、空気が張り詰める。
皇帝ルディアスが出席する最高会議が始まろうとしていた。
「それでは、これより帝前会議を始めます」
議長があいさつし、その後皇帝が話し始める。
「アルタラス王国は完全に掌握したな?」
皇帝ルディアスに突然問いかけられた軍の最高司令官アルデが返答する。
「はい、アルタラス王国内は完全制圧できました。現在本軍は撤収の準備にかかっています」
「次の軍の使用法だが・・・第2外務局長リウス、どう考えるか?」
「はっ!!北方の蛮族を滅し、新たな資源獲得を・・・・・」
「却下だ」
話を遮り、皇帝は第2外務局長リウスの案を一蹴する。
「は・・・はいっ!!!」
ゆっくりと、皇帝は話始める。
「余は・・・・怒っているのだ」
誰も何も言えない空気が流れる。
「監査軍を1度退け、調子に乗っている蛮国が東にいるな・・・・」
沈黙・・・・
「日本・・・とかいったな?」
「ふ・・・まずは日本と友好関係にあるフェン王国を滅せよ。昔から生意気な国だしな。日本と友好的な国はどうなるのかを各国に知らしめるのだ」
話は続く
「地理的にも、フェン王国の方が我が国に近く、日本を先に攻めるのは得策ではないしな・・・。
異論のある者は?」
誰も何も言わない。
皇帝ルディアスは軍の最高指揮官アルデに顔を向ける。
「出来るか?アルデ」
「はい、もちろんであります」
「監査軍を退けた日本も出てくるかもしれんぞ?」
「当然撃破いたします。
栄えある皇国に、旧式装備の弱軍とはいえ、文明圏外国家に敗北するとは・・・第3外務局と監査軍は皇国の恥であります」
くっっ!!!!第3外務局長カイオスの顔が苦痛に歪む。
アルデは話を続ける。
「陛下、フェン王国の東に隣接するガハラ神国についてはいかがされますか?」
「ガハラの民には構うな。あの国はまだ謎が多すぎるし、巻き込まれたなら仕方ないが、1戦で2国を相手にするのは、あっさりと勝てるだろうが、原則として避けたい。
私の代で例外は作りたくないな・・・。それに・・・ガハラ神国には皇国初代皇帝が世話になったからな・・・・」
「戦略や細かい所はお任せしていただいてよろしいでしょうか?」
「うむ、好きにしてよい。そうだな・・・フェン王国については、戦後の国土や民の扱いまでも好きにして良いぞ」
「な!!!!!」
一同に衝撃が走る。
1国の領土と民をたかが1機関が好きにして良いとの皇帝陛下からの暖かいお言葉、アルデは考える。軍人にある程度振り分けたとしたら、軍の士気はとてつもなく上がる事だろう。
アルデは陛下に平伏する。
「あ・・あ・・あ・・ありがたき幸せ!!!」
フェン王国500万人の民と広大な土地が手に入る。軍人、部下にある程度振り分けたとしても地方の貴族を一気に抜き去り、1国を得るのと同じであるこの措置、アルデは皇帝への忠誠をいっそう強くしたのであった。
◆◆◆
フェン王国
パーパルディア皇国のあるフィルアデス大陸から東へ210kmの位置にフェン王国はある。
その東がガハラ神国であり、ガハラ神国から東へ約500kmの位置に日本国はある。
大陸と日本の間にあり、この国が友好国であるという事は、日本にとって重要な意味を持つ。
国全体が、どこか昔の日本を思わせる街並みに治安が極めて良い事もあって、国交が結ばれた後は水中翼船等の高速船の定期便が出ており、首都アマノキや、フェン王国の西の端にあるニシノミヤコにおいて、日本人観光客が多く見られるようになった。
日本人観光客は他国の観光客に比べ、圧倒的に量が多く、行儀も良く、金払いも良いためフォン王国国民からも歓迎されていた。
また、パーパルディア皇国の皇国監査軍東洋艦隊を日本国の軍が追い払った事を知ったフェンの人々の対日感情は極めて良好であり、日本人観光客が現地で籠(日本で言うところのタクシー)を使用し、料金を支払おうとしたところ、
「恩人から金は取れない」
と料金の受領を拒否することも珍しくなく、両国の関係は極めて良好であった。
フェン王国の十士長アインはフェン王国の西の端にある町、ニシノミヤコにおいて警備をしていた。
フェン王国の治安は極めて良く、今のアインの仕事はもっぱら現状把握や、道に迷った外国人(ほとんど日本人)への地理教示であった。
「平和だな・・・ずっと続けば良いが・・・・」
皇国はプライドが高い。
監査軍を追い出しただけで黙っているとは思えない。
もしも、皇国が本格的に侵攻してきたら、このニシノミヤコは最前線となる。
彼は、住民の避難誘導をどうするか、具体的措置を検討するのだった。
ふと疑問が浮かぶ。
日本人たちは、今のフェン王国の現状を正確に理解したうえで観光に来ているのだろうか?
どうも彼らを見ていると、平和が絶対的に保障されているので遊びに来たようにしか見えない。
現に、ニシノミヤコに滞在する日本人はすでに1000人近くになっており、首都アマノキにおいては、3000人近くの観光客がいる。
フェン王国に来る観光客は、「特に金を持っている」訳ではないらしい。そんな一般的国民が簡単に海外旅行を出来るのだから、私の想像以上に日本は裕福なのだろう。
皇国が来なければよいが・・・。
アインは皇国の影に身震いをするのだった。
◆◆◆
パーパルディア皇国 皇都エストシラント 第3外務局
窓口勤務員ライタはいつものように仕事をしていた。
数多くの蛮国の相手をするのは本当に疲れる。
彼は今、ゲッソリと痩せてしまっていた。
数多くの蛮国の一つと思っていた日本国、課長がなかなか帰ってこないのが悪いのだが、ライタが日本の使者を窓口であしらい、組織に乗せていなかった。
課長に引き合わす前に第3外務局直轄の皇国監査軍と日本の軍がぶつかってしまったようだ。
いつものように勝てば全く問題にならなかったのだが、あろうことか敗北してしまった。
この件で、皇帝は激怒したという。
「ああ・・・くそ!!なんで俺だけこんな貧乏くじを引かなければならないんだ!!」
その後は報告書の嵐であった。彼は、今までは出世願望があったが、今回の1件で消し飛んでしまった。
「ああ・・ちくしょう」
彼は落ち込んでいた。その時
「こんにちは、日本国の外務省の者です。何度も申し訳ありませんが、課長様のご予定はその後どうなりましたでしょうか?」
間の抜けた声が響く。ライタが顔を上げると、そこには自分の出世の道を断った日本という国の使者が立っていた。
(ああ、ちくしょう。・・・何で俺の窓口に来やがるんだ?こいつらは!!隣の窓口も空いているだろう!?こんな時に俺の窓口にきやがって・・・・俺を報告書の嵐で潰す気か?過労死させる気か?)
彼は叫びたくなったが、ぐっと声を飲み込む。相手が相手だけに、今回はすぐに上司に報告することにした。
「しばらくお待ち下さい・・・確認してまいります」
第3外務局の皇帝陛下からの信頼を地に落とした相手だけに、上司はその上司へ、課長は部長へ、そしてその上へ迅速な報告が行われた。
一時して・・・
「お待たせしました。第3外務局長カイオスが対応いたします。どうぞこちらへ」
日本人外務省職員は顔を見合わせる。
いきなり局長との会談、完全に想定外だ。
他の国々の使者で、今の声が聞こえた者たちは驚愕の表情で日本の使者を見つめる。
普通は絶対にありえない措置だった。
日本の外務省職員は、窓口のある建物とは別館に案内される。
建物は白を基本とした色で、柱の1本1本に繊細な彫刻が刻まれている。
天井には金で出来た彫刻が施され、国力を強調している。
一般の文明圏外国家の外交担当がここを訪れたならば、威圧され、国力に恐れをなしたかもしれない。
外務省職員は待合室で雑談する。
「なんだか、ここは私が旅行で行ったイタリアのヴェネツィアを観光した時の城の名前忘れましたけど、そこの待合室に似ています」
「ああ、私もそこには行った事があります。ええと・・名前なんだったかな・・・」
そんな話をしていると、ドアがノックされ、先の窓口勤務員のライタが入ってくる。
「局長カイオスの準備が整いました、どうぞこちらへ」
ライタについて廊下を歩く。
何度か曲がり、やがて重厚な扉の前に着く。
一呼吸して・・・・
コンコン・・・
「どうぞ」
中から声が聞こえる。
「失礼します」
ライタが先に入る。
「どうぞ、こちらへ」
日本の使者がライタに続いて入室する。
中に入ると、数人の男がテーブルに座っていた。
ライタが日本国外務省職員に話しかける。
「ここで自己紹介をして下さい」
「あ・・はい」
日本国の外務省職員は、ライタに言われるがまま、自己紹介を始めた。
「日本国、外務省職員の朝田です。こちらは私を補佐する篠原です」
いわゆるイケメンの朝田、少しポッチャリとしているが、自信に満ち溢れた篠原が礼をする。
「どうぞかけて下さい」
最奥の男が声をかけ、朝田、篠原は席につく。
(なんだか、会談というよりも面接みたいだな・・・。)
パーパルディア皇国の面子も自己紹介を始める。どうやら、外交担当でも相当権力を持った者たちのようだ。
朝田に力が入る。
○第3外務局長
○東部担当部長
○東部島国担当課長
○北東部島国担当係長
○群島担当主任
上から下まで勢ぞろいだ。
第3外務局長カイオスが口を開く。
「貴方たちが日本国の使者か・・・最近貴国は有名ですな。して・・・今回は何用で皇国に来られたのだ?」
「はい、私たちは、不幸な行き違いから衝突してしまいました。よって、その関係修復と国交樹立の可能性の模索に参りました。」
東部島国担当課長が急に立ち上がる
「なんだとっ!!! 不幸な行き違いだぁ!!監査軍に攻撃を仕掛けておいて、何事も無かったかのようなその言動!タダで済むと思っているのか!!」
課長はいつも文明圏外国家の使者に対して行うのと同じ口調で日本人に活を飛ばす。
朝田は怯まない。
「いいえ、先に攻撃してきたのはあなた方です。我々は、降りかかる火の粉を叩いたに過ぎません」
「栄えある皇国監査軍を火の粉だとぉっ!!!!!」
課長の目は血走っている。
局長カイオスが、課長を手で制し、座らせる。
「なるほど・・・関係修復ですか・・・」
局長カイオスは考え込む
「うむ・・・私はもとより、このパーパルディア皇国の者は、誰も貴方たち日本の事は良く知らない。まずは貴方たちの国がどういった国なのか、教えていただきたい。我々と国交を結ぶに値する国なのか、私は知りたいですな」
日本の使者はニッコリと微笑む
「ペーパーしかありませんが、写真付きです。我が国を紹介するためのレジュメです」
篠原はパーパルディア皇国の各人に資料を配布する。
パーパルディア皇国の面々は、その資料を見る。フィルアデス大陸共通語で書かれており、文はしっかりと読める。
「な・・・・・に・・・?」
東部担当部長が顔を上げる。
国土面積は大した事無く、中規模国家程度である。しかし、人口が1億2千万人と、皇国の7千万人よりも多い。
文明圏外国家でも、ロウリア王国のように、人口だけは多い国もあるので、この人口に対して特別に驚いた訳では無いが、こんなにも人口の多い国がこれほどまでに近くにあったのに、今までの歴史上1度も気がつかなかったのがおかしい。
さらに資料を読み進める。
「国ごと転移だと!?」
ロウリア王国とクワ・トイネ公国との戦争の少し前、中央歴1639年に国ごとこの世界に転移してきたと記載してある。
突然の転移であれば、皇国がこれまでの歴史上1度も認知していなかった事実につじつまが合う。
しかし・・・・ムーの神話や、古の魔帝の未来への国家転移の神話以外に、国ごとの転移など聞いたことが無い。
第3外務局からすると、彼らがたわごとを言っているようにしか聞こえない。
「馬鹿馬鹿しい!!そんな、国ごと転移などあるわけがない!!おまえたちは皇国をからかっているのか?」
東部担当課長が声を荒げる。
「転移については、我が国でも、原因がまだ解っておりません。全力で調査中ではありますが・・・」
日本側の説明が一通り終わる。
「最後に・・・特使を一度日本に派遣していただきたいと思います。パーパルディア皇国大使の目で現実の日本を感じていただきたいのです」
今回の皇国への配布資料には、日本の軍事力や、圧倒的な技術格差、車の台数や、首都の圧倒的な写真等は載せていない。
差し障りの無い位置情報や人口、特産物等の情報が記載してある。
皇国は危険でプライドが高い国と聞いていたので、相手の国を落とすような技術的優位性については、日本から伝えるよりも大使から、自国民から伝わった方が効果的との判断による。
又、特使さえ送らない国であれば、正常な国家関係が築ける訳も無く、このような判断に至った。
東部担当部長が話し始める
「はっはっは!!!第3文明圏最強の国であり、世界5列強に名を連ねるパーパルディア皇国が、文明圏外の蛮族に使者を送るだと!?少し質の高い軍を持っているようだが、お前たちが戦ったのは旧式兵器を持った軍だ!!本軍の装備と規模であれば、こうはいかんぞ!?」
局長カイオスは、東部担当部長を睨みつける。
「おい、言い過ぎだ。日本との関係は、皇帝の御意思も入っている事を忘れるな」
「は・・・はっ!!」
東部担当課長は着席する。
「ところで、日本の方々よ、我が国には文明圏内に5カ国、文明圏外に67国、大小の差はあるが、計72カ国おっと、最近アルタラス王国が加えられたので、計73カ国の属国があるが、日本は何カ国属国をお持ちか?」
「属国・・属国は日本国にはありません」
「ほほほほほ・・・・」
「あはははは・・・・」
「ぬふふふふ・・・・」
パーパルディア皇国の面子が笑い始める。
「こらこら、日本の方々に失礼だぞ。属国が、1カ国も持っていないからといって、そんなに笑うものではない。ここは外交交渉の場ぞ」
カイオスが皆をたしなめる。
「失礼・・・ところで、皇国から日本への人員派遣については、2ヶ月ほど待っていただけますか?こちらも色々と内部事情がありますので・・・。
2ヶ月後にまた第3外務局へ来ていただけますか?宿はこちらで手配しましょう」
「はい、解りました」
「ふ・・・では、2ヵ月後が楽しみですな」
カイオスは不気味に笑う。
日本のパーパルディア皇国との最初の会談は終了した。
会談後
「カイオス様、何故あのような穏便な事を?皇帝陛下の命では、「日本にきっちりと教養を行え」だったはず。つまり、日本なぞに遠慮すること無く、かの国の外交官に皇帝の意思を伝えた方が良かったかと思いますが・・・。」
「フフフ・・・まあ良いではないか。日本への外交担当のトップは私だ。わずかな可能性だが、私にも少し考えがあってな」
「お考えとは?」
「まあ良い、余計な詮索をするでない」
「ははっ!!申し訳ありませんでした」
「フフフ・・・日本か・・・。我が期待にこたえるだけの国力がある国だと良いのだがな。まあ、ただの蛮族ならば、このまま滅せられるのみだ」
カイオスは不気味な笑いを浮かべるのだった。
2週間後―
フェン王国西側約200km先洋上
見る者に圧倒的な恐怖をもたらす艦隊が東へ向かっていた。
パーパルディア皇国、皇軍である。
100門級戦列艦を含む砲艦211隻、竜母12隻、揚陸艦101隻、合計324隻。
向かう先はフェン王国。
皇国からの領土献上案を蹴り、監査軍を日本国支援の元、退けた。
皇軍は、フェン王国に対し、懲罰的攻撃を行うのでは無く、滅するために東へ向かう。
今回は監査軍が事前に敗北しているため、将軍シウスの肩に力が入る。
「警戒を厳とせよ」
ゲキが飛ぶ。
皇軍は、アルタラス王国に続き、フェン王国を滅するために東へ向かった。
日本国 首都 東京 内閣総理大臣官邸
慌しく動き回る職員、閣僚が真剣な面持ちで報告を受ける。
防衛省からの情報により、パーパルディア皇国軍が大艦隊で東へ向かったと判明した。
他国を通じて得た情報等総合的に判断すると、艦隊はフェン王国へ向かったと思われる。
「どうする?」
総理が焦る。
「フェン王国には、多数の日本人観光客がいる。直ちに退去命令を出すべきです」
「それはもちろんそうするが、現地には当然携帯電話の電波塔など無い。外務省を通じて王国に頼んでも、江戸時代のように掲示板に貼られるだけだ。伝わらんよ」
「では艦隊を止めるべきです」
「日本とフェン王国の間には集団的自衛権を盛り込むだけの法整備はなされていない。前回のように、護衛艦による接触は出来ないか?」
「フェン王国への攻撃の意思を明確にされたら、国家間の話になるため何も出来なくなる。それとも、また護衛艦に大砲を撃たせて対応させる気か?大砲でも1発当たれば死者が出るんだぞ!
しわ寄せを現場に求めるような無責任な事が出来るか!!
大体、皇国監査軍と呼ばれる軍を現場の判断で追い返した、やりすぎだと外務省が音頭をとって糾弾して、艦長を処分するような決断を下したのは我々だ。今更どの口がいうのか」
「外務省は何をしている。止める事は出来ないのか?」
「パーパルディア皇国とは、やっと外交チャンネルが開けそうな時だ。まだ正式なルートは無い」
「転移から何ヶ月たった?外務省の怠慢だ」
「喧嘩をしている場合ではない。何か出来ないのか?」
結局何も決まらずに、空論が続く。無常にも時は過ぎていくのだった。
次回 間話前編 辺境の魔王 は明後日6月17日午後4時00分に投下します。




