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列強!!!パーパルディア皇国!!

 3月は年度末で忙しく、遅くなりました。遅くなったので、今話は少し長めにしました。

神聖ミリシアル帝国

 港町 カルトアルパス とある酒場


 中央世界にある誰もが認める世界最強の国、神聖ミリシアル帝国。

 その交易の流通拠点となっている町、港町 カルトアルパス ここは、各国の商人たちが集う町であり、商人たちの生の声は、各国の事情を現す生の声として、情報源としても、非常に価値があるため、商人の姿に紛れ、各国のスパイたちの集まる町でもある。

 神聖ミリシアル帝国は、文明圏の中で、魔導技術が特に優れており、光魔法を使った街灯等、町並みにも高い魔導技術が見受けられる。

 とある酒場では、酔っ払った商人たちが、自分たちの情報を交換していた。


 ビア樽のような体をして白い髭を生やした男が豪快に話し始める。


「しかし、最近の衝撃的なニュースは、やはり第2文明圏の列強レイフォルが、新興国の第八帝国とやらに敗れたニュースだよな。誰か、第八帝国について知っている者いないか?」


 ローブをかぶった顔の青白い男が話し始める。


「第八帝国は通称であり、本当はグラ・バルカス帝国というらしいな。

俺は、レイフォルの首都、レイフォリアで香辛料の商売をしていたが、あの恐ろしい日は今でも忘れない。

 ある日、突然首都近辺の警備が厳しくなって、いつもはちょっとしか配置されていない首都防衛用の魔導砲が設置された台場に、大量の人員と、予備の魔導砲までたったの数時間で設置された。

 さらに、首都近辺にある竜騎士の基地に大量のワイバーンロードが全国から飛来してきた。

 いったい何が起こるのかと、商人たちでも噂になったよ。

 兵隊さんに聞いても、「今は話せない」の一転張り、第八帝国が責めてくるのでは?といった声もあったが、皆列強レイフォルの勝利は疑っていなかったし、不安になる者もいなかった。

 そして、それは変化のあった翌日の夕方やってきた。

 昼頃から、ワイバーンロードが何度も編隊を組んで海の方へ飛び立っていったが・・・

帰っては来なかった。今思えばこの時点でおかしいと気がつくべきだった。

 デカイ戦艦だったよ。小山のような戦艦、そして陸地からでもはっきりと見えるほどの、とてつもなくデカイ砲を積んでいた。

 俺は、あんなデカイ船は、生まれて初めて見たよ。

 戦艦は、レイフォリアの沖合6kmくらいに停船した。台場の魔導砲の完全な射程圏外だ。

 そして、それは砲撃を放った。

 一隻の砲撃など、たかが知れていると思ったが、その威力は火神でも作り出せないのでは無いかと思うほどの威力があった。

 台場の魔導砲は一発で消滅した。

 レイフォリアに対する無差別砲撃は、それはそれは怖かった。

 逃げて逃げて逃げたよ。やつらは、とてつもなく強い。たった一隻で、列強の首都を消滅させたのだ!!列強ムーもあれには負けるぞ。世界はグラ・バルカス帝国に支配されると思う」


「まてまて、レイフォルに勝つとは確かに強いが、魔導超文明を持つ神聖ミリシアル帝国に勝てる訳が無いだろう。格が違いすぎる。」


「機械文明のムーも、ミリシアル帝国に順ずる強さがあるからなぁ。ムーにも勝てないだろう。なんだかんだ言っても、文明圏外の蛮国にムーは負けんよ」


「その蛮国にレイフォルは負けたんだよ」


「レイフォルなんて、列強といっても・・・言っちゃ悪いが、最弱の列強だろう?

一般国に比べれば遥かに強いが、他の列強にくらべると、実力は遥かに弱い・・・。」


「お前らはグラ・バルカス帝国の恐ろしさを知らないから、そんなことが言えるんだ」


 酔っ払いどもの話は続く。

 

「そういえば、ロウリア王国ってあっただろ?」


「東の蛮国か?あの、人口だけは超列強な国だろう?」


「ああ、俺が交易にいった時期に、隣のクワ・トイネ公国に喧嘩を売ったんだよ。亜人の殲滅を訴えてな」


「亜人の殲滅?無理に決まってるだろう。さすが蛮族の国!」


「で、日本っていう国が参戦して、負けたよ。圧倒的に強かったらしい。ロウリア王国は日本の兵を1人も倒すことが出来なかったし、4400隻の大艦隊も、日本のたったの8隻に大損害を与えられた。日本も今後、世界に名を轟かせる国になるぞ!」


「兵を1人も倒せないとか、たった8隻に4400隻が退けられたとか、どう考えても情報操作だろう。ありえなさすぎる」


「ロウリア王国が負けた?列強や、文明圏なら理解できるが、文明圏外の蛮族に!?信じられんな。」


「まあ、グラ・バルカス帝国や日本がいくら強かろうと、神聖ミリシアル帝国とは、格が違うさ。絶対に勝てないよ。結局、中央世界はいつまでたっても安泰さ!古の魔帝が復活でもしない限りな」


 酔っ払いどもの楽しい夜は更けてった。




 第2文明圏最強の国 列強国 ムー 統括軍所属 情報通信部 情報分析課


 

ここは、国の諜報機関であり、情報を分析する部署である。

様々な国の情報が集まり、分析する。

軍人からは、

・何をやっているのか解らない部署

・無意味な事をしている部署

として、忌み嫌われていおり、情報技術に対する理解は乏しい。

情報分析官であり、技術士官のマイラスはレイフォリア襲撃の際に魔写された、グラ・バルカス帝国の超弩級戦艦グレードアトラスターの写真を分析して、冷や汗をかいていた。


「まずいな・・・。」


 ムー帝国は世界で主流の魔導文明の中、科学に有用性を見出し、機械や科学に力を入れている。

 なので、私のような技術仕官が存在するが・・・。グラ・バルカス帝国は不幸な事に、我が国よりも科学文明が進んでいるかもしれない。

 軍人や政治家は頭が固いから信じないだろうし、臆病風に吹かれたとか言われるのだろうなぁ。分析も報告も胃が痛い。

 我が国の最新式の戦艦 ラ・カサミ これは、戦列艦に搭載する砲の大きさの限界を突破するため、回転砲塔といった最新式の機構を採用した。

 これにより、30.5cmといった超巨大砲を搭載するに至り、いままでの戦列艦とは比べ物にならないほどの砲撃力を身につけた。

 砲身も従来の戦列艦に搭載する砲よりも遥かに長くなり、命中率が劇的に向上した。

 風神の涙による帆船方式も廃止し、重油を燃やして動力を得る。

○排水量15140トン

○全長131.7m

○全幅23.2m

○機関15000馬力

○最大速力18ノット

 兵装 主砲30.5センチ連装砲2基4門 

    副砲15.2センチ単装砲14門 他

 このスペックは、中央世界の神聖ミリシアル帝国の魔導船とも渡り合える可能性を秘めている装備である。

 レイフォルや、パーパルディア皇国の帆船に圧勝するのは言うまでもない。機械文明最先進国ムーは、彼らの国とは別格であり、神聖ミリシアル帝国に迫る可能性を持った国である。

 しかし・・・・。

 マイラスは頭を掻き毟る。

 グラ・バルカス帝国の超弩級戦艦グレードアトラスターは、情報によれば、30ノットくらい速度が出ていたらしい。

 あの大きさだと、おそらく排水量は7万トンくらいあり、砲も38センチか、もしかしたら40センチくらいあるのではなかろうか?

 そんなデカイ船を、30ノットもの高速で移動させるなど、いったいどれほどの出力が必要になるのか・・・。概算で、7万馬力くらい必要なのではないか?

しかも砲数も格段に多い。

 砲撃の威力は、口径の3乗に比例する。

 つまり、この戦艦と、ムーの最新鋭戦艦ラ・カサミが打ち合えば、ほぼ確実に負ける。奇跡でも起きない限り、叩き潰される。

 このような、高度な艦は、もしかしたら、砲撃精度も我が方よりも上の可能性がある。

 

「写真を見ただけで負ける事が解るとは・・・。これは・・・技術レベルが50年くらい開いていないか!?」


 技術士官マイラスは、ムーの行く末を案じていた。


 そして、ムーとは離れているため、直接影響は無いであろう国の艦の写真が一枚ある。

 東の文明圏外国家 ロウリア王国 と、クワ・トイネ公国 の戦争、誰もがロウリア王国の圧勝と分析していたが、それを覆した国の船らしい。

 魔写した者の情報によれば、これは 日本 という国の、 みょうこう という名前の船らしが・・・。


「うーん・・・全く解らん」


 まず船体は大きいのに、砲をたったの1門しか搭載していない。

 よほど連射がきくのか、もしくは砲撃精度に自信があるのか・・・。連射するにせよ、1門よりも2門付けたほうが、威力は高いし、当たりやすくなる。

 設計思想が全く理解できない。

 砲が高価すぎて、1門しか設置できないのだろうか?

 理解できない装備が所々見受けられる。

 この艦に関しては、用途が全くもって理解できない。

 

「訳の解らない国が、突然出てきたな・・・。」


 技術士官マイラスの苦悩は続く。




 アルタラス王国 王都ル・ブリアス


 フィルアデス大陸の西側に位置する文明圏から少し外れた王国、アルタラス。人口1500万人を抱え、文明圏外の国としては、国力も人口も大国である。

 温暖な気候であり、王都にある建設物は円を基調としており、建物が全般的に丸い。

 魔石鉱山のあるこの国は、資源輸出国であり、国は富み、人口50万人を抱える王都ル・ブリアスは人々の活気にあふれている。

 その人々の活気とは裏腹に、王城において頭をかかえる人物が1人。

 国王ターラ14世は苦渋に満ちた表情をしていた。


「これは・・・正気か?」


 目を通す外交文章には、とんでもない事が書かれている。

 パーパルディア皇国からの要請文、毎年皇国から送られてくる要請文であるが、「要請」とは名ばかりであり、事実は命令書である。

 何度も目を通す。


「ありえないな・・・。」


 パーパルディア皇国は前皇帝が崩御した後、現皇帝ルディアスが即位した。

 皇帝ルディアスは国土の拡大、国力増強を掲げ、各国に領土の献上を迫っていると聞く。しかし、そこは無難な場所であったり、双方に利がある場合が多い。

 しかし、今回はどうだ!!我が国に全く利が無いではないか。


○アルタラス王国は魔石鉱山シルウトラスをパーパルディア皇国に献上すること。

○アルタラス王国王女ルミエスを奴隷としてパーパルディア皇国へ差し出すこと。


 以上2点を2週間以内に実行することを要請する。

 そして、最後に記載された一文

「出来れば武力を使用したくないものだ」


 魔石鉱山シルウトラスはアルタラス王国最大の魔石鉱山であり、国の経済を支える中核であり、世界でも5本の指に入るほどの大鉱山である。

 これを失うと、アルタラス王国の国力は大きく落ちる。

 さらに、王女の奴隷化。これはパーパルディア皇国に全く利の無いものであり、明らかにアルタラス王国を怒らせるためだけにある。

 初めから戦争に持ち込もうとしているようにしか見えない。

 しかし何故だ!!今まで屈辱的とも言えるパーパルディア皇国からの要請を飲んでいたのに、いきなり手の平をかえしてきたかのようなこの要求。全く持って不明である。

 国王は、王都ル・ブリアスにあるパーパルディア皇国第3外務局アルタラス出張所に出向き、事の真相を確かめる事とした。


 パーパルディア皇国第3外務局アルタラス出張所


「待っていたぞ、アルタラス国王!」


 パーパルディア皇国第3外務局アルタラス担当大使ブリガスは椅子に座り、足を組んだまま1国の王を呼びつける。

 王は立ったままであり、大使の他に椅子は無い。


(なんと無礼な・・・。)


 国王ターラ14世は話を始める。


「あの文章の真意を伺いに参りました」


「その内容のとおりだが?」


「魔石鉱山シルウトラスは我が国最大の鉱山です」


「それが何か?他に鉱山はあるだろう。それとも何か?え?皇帝ルディアス様の意思に逆らうというのか?」


「とんでもございません。逆らうなど・・・。しかし、これは何とかなりませんか?」


「ならん!!!!」


「では、我が娘、王女の事ですが、何故このような事を?」


「ああ、あれか。王女ルミエスはなかなかの上玉だろう?俺が味見をするためだ」


「は?」


「俺が味を見てやろうというのだ。まあ飽きたら、淫所に売り払うがな」


「・・・・それも、ルディアス様の御意思なのですか?」


「ああ!!!なんだ!!!?その反抗的な態度は!皇国の大使である俺の意思は即ちルディアス様の御意思だろう!!蛮族風情が!誰に向かって話をしていると思っているのだ!」


 ターラ14世は無言で後ろを向く。


「おい!話は終わってないぞ!!」


 無視して立ち去る。


「俺様を無視するなよ、蛮族の王様よ」


 国王は立ち去った。



 王城―――


「あの馬鹿国の馬鹿大使をパーパルディア皇国へ送り返せ!!要請文も断る、国交を断ずるとはっきり書くと共に、パーパルディア皇国の我が国での資産を凍結しろ!」


 国王は吼える。


「軍を召集し、王都の守りを固めろ!予備役も全員招集だ!!監査軍が来るぞ!!パーパルディア皇国に我が国の誇りを見せ付けてやれ!!」


 このような屈辱的な条件を飲んでいては、もはや国ではない。

 監査軍に一撃を加え、早期講和に持ち込むしかアルタラス王国に生きる道は無い。

 我が国は、富があるため、軍のレベルは文明圏の国々と肩を並べる力がある。

 パーパルディア皇国内でも、比較的旧式の監査軍ならば少しは戦えるはずだ。

 国王は夕日を眺めながら来るべき皇国戦に決意を固めるのであった。


パーパルディア皇国 皇都エストシラント


 第3文明圏において、唯一の列強国、パーパルディア皇国、皇帝ルディアスの住まう皇宮は、その威を示すため、柱の1本1本まで繊細な彫刻で作られており、見る者を圧倒する。

 この世の天国を思わせる鮮やかであるが、繊細に整備された庭。

 宮殿の内装は、豪華絢爛であり、この世の富を集めたかのようだ。

 この皇宮を訪れた各国の大使や国王は思うだろう。

 柱を造るための気の遠くなるほどの人的資源。

 天国を思わせるほどの美を追求した庭、そしてそれを維持する能力。

 この世の富を集めたかのような宮殿の内装、そしてその規模。なんと凄まじい国力だろうか、と。

 皇都エストシラントは間違いなく東の文明圏、第3文明圏で最も繁栄した都市だろう。

 訪れた商人や民たちは思うだろう。

 何と凄まじい規模の都市かと。何と国民が豊かなのだろうかと。何と美しい町なのだろうかと。

 皇宮において、跪く姿の男が1名


「おもてをあげよ」


 第3外務局局長カイオスは、冷汗をかきながら顔をあげる。

 その先には27歳といった若さからは想像も出来ないほどの威厳を保つ若き皇帝ルディアスの姿があった。


「フェン王国への懲罰の監査軍の派遣、予への報告はどうした」


「ははっ!!監査軍派遣の報告を行わず、真に申し訳ございま・・・・」


「たわけ!!!!!!!!!!!!!」


「っっっ・・!!!」


「予へ派遣の報告を行わなかった事はどうでも良い。それは予が認めた第3外務局の権限だからだ。一々蛮国への侵攻報告なぞうけたら、朝から晩まで終わってしまう。そこは良いのだが、問題は・・・・・・敗北した事だ。」


 カイオスの顔から滝のように汗が吹き出る。


「何処にやられた?まさかフェン王国か?」


「ははっ!!目下全力で対象国の割り出しを行っておりますが、現在までの調査結果では、文明圏外の国と思われます結果がはっきりしないため、まだご報告する段階にありませぬ」


「まだ解らぬというのか・・・。」


 皇帝の顔が怒に満ちる。


「旧式艦とはいえ、我が国に土をつける文明圏外の国がいるとは・・・。その国には必ず責任を取らせるように。皇国に逆らうという事がどういうことか、きっちり教養を行え」


「ははっ!!!!」


 カイオスは、さらに深く頭を下げる。


「各国は、皇国がフェン王国ごときに敗れたと見るだろう。我が国に逆らった国が判明したならば、本国艦隊がフェン王国もろとも叩き潰す。解ったな。」


「ははっ!!!!」


 カイオスはおそるおそる話始める。


「皇帝陛下、もう一つ報告したいことがございます」


「何だ!!!」


 アルタラス王国の件ですが、予定どおり、魔石鉱山シルウトラスの献上を断ってきました。


「ふむ・・・」


 皇帝ルディアスの顔に笑みが浮かぶ。


「さらに、アルタラス王国は、国内での皇国の資産凍結と、国交断絶を伝えてきました」


「ほう・・・ここまであからさまに反逆を開始するとは・・。予定どおりではあるが、いささか頭にくるな・・・なめられたものよ」


 話は続く。


「アルタラス王国は、監査軍ではなく、本国の軍で叩き潰す。皇軍の準備は出来ているな?」


 皇帝は傍らに立つ軍の礼服を着た男に問う。


「皇帝の命があれば、いつでも出撃できる準備は整っております。陛下の御言葉一つで、すぐにでも出陣し、アルタラス王国を滅し、すべての魔石鉱山を皇帝陛下に献上いたします。」


「そうか・・・では任せた。アルタラス王国人の取り扱いについては、好きにいたせ」


「ははっ!!!!」


 この日、列強パーパルディア皇国はアルタラス王国に対し、宣戦を布告した。




 アルタラス王国 王都 ル・ブリアス 王城~


 国王ターラ14世は自分の娘である王女ルミエスに語りかけていた。


「ルミエス、今手配を行った。早急に王都から逃げるのだ」


 王の顔には焦りが見える。


「何故ですか?」


「パーパルディア皇国が我が国に宣戦を布告してきた・・・。この意味が解るな?来るのは監査軍ではなく、本国の皇軍が来るだろう」


「民を見捨て、王女のみ逃げるなど・・・。皆に示しがつきません!!」


「国力差を考えれば、長期的に見ておそらく我が国は負けるだろう。王族は皆処刑される。ルミエスよ。おぬしの行く末は、さらに酷いものとなる。いいから、逃げるのだ」


「しかし・・・」


「私は、国王としては、最悪なのだろうな。親族だけ逃がして・・・。しかし、1人の父親として、娘には助かってほしいのだよ。ルミエス。お父さんの言うことを聞きなさい。」


「わ・・解りました・・・。」


「商船を装って、戦争の始まる前に王都から出るのだ。もちろん、人員は用意する。南海海流にのれば、ロデニウス大陸にたどり着くだろう。もしも可能なら、ロウリア王国に打ち勝った日本に保護をしてもらえ。噂によれば、日本には優しい民族が住むそうだ。」


「・・・解りましたわ。お父様」


 この日の夜、王女ルミエスは外観としては商船の船により、王都を去った。




 アルタラス王国北東方向約130km沖合い 洋上


 晴れた空、暖かく、南国を思わせる積乱雲が広がり、風はほとんど無い。海は凪であり、海鳥たちは海に浮かび、のんびりと浮かんでいる。

 そんな平和な海を、多数の船が白い航跡を引き、南西方向に向かっている。

 その数324隻。

 パーパルディア皇国 皇軍 

 100門級戦列艦を含む砲艦211隻、竜母12隻、地竜、馬、陸軍を運ぶ揚陸艦101隻。

 中央世界を基準とすると、東側に位置する第3文明圏において、他の追従を許さないほどの圧倒的戦力。

 皇軍はアルタラス王国を滅するため、南西方向へ向かっていた。

 将軍シウスは海を眺めていた。

 戦略家であり、冷血、無慈悲な将軍、それが部下たちのシウスに対する評価だった。


「間もなくアルタラス王国軍のワイバーンの飛行圏内に入ります」


 報告があがる。


「まだ来ぬか・・・。対空魔振感知器に反応が出たら、竜母から100騎程艦隊上空で警戒させよ。細かい運用面は任せる」


 将軍は、対空魔振感知器、いわゆる魔素を利用して飛行するワイバーンを視覚外で発見するために開発された対空レーダーに感があれば、ワイバーンロードを艦隊上空で警戒任務にあたるよう支持する。

 ワイバーンロードは、各竜母に20騎ずつ配備されている。

 アルタラス王国海軍は、すでに皇軍から50km先の水平線に目視できる距離まで迫っている。しかし、まだ距離があるため、戦闘まではまだ時間があるだろう。

 (この惑星は地球より大きいため、水平線は19kmではなく、より遠くまで目視できる。)

 敵に竜母は無く、本国から洋上にワイバーンを飛ばしてくることとなるだろう。


 最小の被害で最大の効果を。シウスは決して敵を侮る事無く、洋上をにらみつけた。



 アルタラス王国 王国海軍


「我が国をのっとろうとするとは・・・イナゴどもめ!!!」


 怒気をもって、海軍長ボルドは吼える。

 地球に比べて遠方まで見渡せる広大な水平線の先に、パーパルディア皇国軍の船が多数見える。

通常の国であれば、恐れおののくことだろう。しかし・・・魔石鉱山で得た富で軍事を増強し続けた結果、文明圏外であるが、文明圏の強国に順ずる規模と装備を手に入れた。

そう簡単にはやられはしない。

自国に武器作成能力が無いと、色々ボッタクリされるが、文明圏の中に、武器輸出国はいくらでもある。

我が国の魔石鉱山で採れた魔石を輸出、文明圏の国で精製され、輸入された風神の涙を使い、アルタラス王国の帆船は加速する。

そして、富があるからこそ出来る我が国独自の兵器も積んでいる。

通常の文明圏の国々の軍が相手ならば、有利に戦いを進める事が出来るかもしれない。


「よし、本国からのワイバーンの戦闘行動半径の中に敵船団が入ったな・・。ワイバーンをいっきに送り、敵船団に攻撃を加えろ!!!」


ボルドは魔通信用器具を手にとり、艦隊に指示を出す。


「間もなく我が艦隊も戦闘に入る!!総員第1種戦闘配備!!!!いいか!!!肝に命じろ!!!王国の興廃この一戦にあり!各自奮闘努力せよ」


 命は下された。



アルタラス王国 竜騎士団 騎士長 ザラム


 竜騎士団120騎は、北東方向に展開するパーパルディア皇国 皇軍 に一撃を加えるため、編隊を組んで飛行していた。

 敵は王国になんども屈辱的な要求をしてきており、今まで幾度となく飲んできたが、今回は魔石鉱山シルウトラスの献上と王女の奴隷化を申し出てきたらしい。

 王女は性格も良く、美人で品性があるため、国民からの人気も高い。

 魔石鉱山シルウトラスを王国が失うと、国が立ち行かなくなるのも、誰もが理解している。

 一般公開されたパーパルディア皇国からの要請文を読んだ国民は激怒した。

「たとえ国滅ぶ事となっても、横暴な列強に一撃を!!」

 このような意見が一般的となった。

 ザラムは魔通信に向かって指示を出し続ける。

 やがて・・・。


「見えた!!!!!!」


 パーパルディア皇国の艦隊が目に入る。

 見たことのない大艦隊だ。


「指示どおり、散開!!後は12士長の支持に従え!!」


 アルタラス王国竜騎士団は散開して、パーパルディア皇国軍へ向かっていく。


「!!!!!!!!」


 ザラムは気がつく。


「斜め上空後方!太陽を背に敵が突っ込んでくるぞ!!注意セヨ!!」


 敵のワイバーンが太陽を背にして1列に突っ込んでくる。太陽が光輝いているため、当然ほとんど見えない。

 魔通信を傍受した者たちの編隊が乱れる。

 敵は、猛スピードで急降下してきており、すれ違い時に導力火炎弾を放ち、下方へ離脱する。

 数が多すぎるため、火炎弾の数も、猛烈な数になり、命中率もとてつもない数値に上る。

 この一撃で、アルタラス王国竜騎士団120騎のうち、60騎以上が命中し、落ちてゆく。


「畜生!!」


 アルタラス王国の竜騎士団も、敵ワイバーンロードに食いつこうとするが、速度差がありすぎて、全く追いつけない。

 導力火炎弾の射程圏外に逃れた敵は、再度上昇し、有利な上空から再度導力火炎弾を放つ。

一撃離脱!!


 アルタラス王国軍竜騎士団はなすすべも無く、全滅する。

 相手に与えた損失はゼロ


「速いな・・・。もう全滅してしまうとは・・・。」


 部下に不安な顔は見せない海軍長ボルドであったが、内心は不安に満ち溢れていた。


「敵艦隊との距離あと2km」


部下からの報告が入る。


「敵艦隊転進!」


 敵艦隊が我が軍に対し、腹をみせはじめる。


「まさか・・・魔導砲がもう届くのか!?」


パパパパパパパッ・・・敵艦の一部が煙に包まれる。

ドドドドドドドーン・・少し遅れて発砲音。


「まずい!!」


 敵艦は数が多く、まだ一部のみが腹を見せているのみである。今後まだまだ敵の攻撃可能艦の数は増えていく。

 アルタラス王国軍の魔導砲の射程距離までは、まだ1kmもあり、船速もパーパルディア皇国の方が上のようである。

 (このままでは、わが方の魔導砲の射程圏内に入る前に、全滅してしまう!!!)


「面舵いっぱい!!敵から45度の角度を取り、接近しつつ攻撃に最適角度を維持せよ!敵の魔導砲が来るぞ!!!風神の弓を使用する!!!!」


 艦隊がゆっくりと曲がる。敵の魔導砲が飛んできている事を思うともどかしいほどの遅さである。

 シュパンシュパンシュパンシュパン・・・・

 水柱があがる。

 敵の攻撃の第1波の到達である。


・・・・ドーン


「戦列艦シディ被弾!!!!!」


 戦列艦シディに敵砲弾が被弾し、猛烈な爆発を起こす。噂に聞いている炸裂砲弾か・・・。

我が砲の砲弾よりも、射程距離も威力も数も上のようだ。

 今回の第1波攻撃は、ほとんど洋上に着弾する。

 今後、砲撃数も命中数も増えていくことだろう。


「風神の弓発射準備完了!!!!」


「風神の弓、発射!!!!!」


 風神の弓、バリスタの前部に爆裂の魔石を埋め込み、中部には小さな帆と、風神の涙を埋め込んでいる。

 小さな帆に風神の涙によって作り出した風を当て、射程距離を向上させる。

 1発1発すべての弓に魔石が大量に使用されており、コストパフォーマンスは絶句しそうなほど悪い。

 しかし、射程距離2kmという広大な射程距離と、爆裂魔法の付与により、大きい威力を得た。

 通常の文明圏艦隊を相手にした場合は、敵の射程距離の倍以上先からアウトレンジで攻撃可能なアルタラス王国の切り札。魔石鉱山の盛んな富める国ならではの兵器である。


 ヒュイィィィィン・・・・


 船上に風が吹き荒れる。


 シュンシュンシュンシュン


 風神の弓は、侵略者に対して連続で発射された。


 

 パーパルディア皇国 皇軍


「敵船1隻に魔導砲命中、火災発生!!!」


「命中率が悪いな・・・。まあ、初弾だとこんなものか。」


 艦隊の艦船は数が多く、攻撃に参加する船は時を追うごとに増える。敵の射程圏のはるか遠方から攻撃しており、船速もこちらが上、一方的な戦いになるだろう。

 幹部の間では、楽観論が広がっていた。


「敵船、角度を変えて侵攻」


「何をするつもりかな?」


「!!敵船団、横を向けた艦から順次バリスタを発射しています!!!」


「バリスタ!?あんなに射程距離の短いものを、ここで発射してどうする!?」


 幹部連中が困惑する。


「!!!矢が・・・飛んできます!!」


「なにぃ!!!!」


 100門級戦列艦旗艦シラントを矢は飛び越え、約50m離れた海上に矢は落下する。

 矢の前部に設置された、爆裂魔法が起動し、爆発、水柱が上がる。


「魔力探知、おそらく、風神の涙と爆裂魔法が付与された矢と思われます」


 報告があがる。


「なんと・・・。もったいない兵器の使い方か・・・。しかし、脅威だ。」


 矢は次々と飛んでくる。旗艦に狙いをつけたかのように、周囲に水柱があがる。


ドーンドドドドドドーン


 旗艦シラントに、連続して10本の風神の弓が命中した。



アルタラス王国海軍


「100本準備していた風神の弓は、すべて撃ちつくしました」


「よし、それでは、敵艦隊に進路を向けよ!!!いっきに魔導砲の射程圏内に距離をつめるぞ!!!・・しかし・・・敵旗艦に10発も命中させるとは、王国軍の錬度は衰えていないな・・・」


 敵旗艦に集中させて攻撃、撃沈し、指揮系統が破壊され、敵が混乱している間に距離を詰めていっきに叩く・・・つもりだった。


 敵の旗艦周辺に蔓延していた煙が晴れる。


「!!!!!!!!!!!!」


 衝撃が、海軍長ボルドを駆け抜ける。


「敵艦健在!!!!あっ・・・敵艦隊発砲!!!!」


 通信士の悲鳴のような声があがる。

 爆裂魔法の付与されたバリスタは、我が国の艦が食らえばダメージはタダではすまない。10発も着弾すれば、船の大半は破壊されるだろう。

 しかし・・・。敵の旗艦は上部構造物の一部は破壊されていたが、内部は全くの無事らしく、何事も無かったかのように、航行し、我が方に攻撃を開始している。

 風神の弓は、パーパルディア皇国の誇る旗艦シラントの対魔弾鉄鋼式装甲により、いともあっさりと跳ね返され、致命傷を負わすには至っていなかった。

 皇国の砲弾は、第1波に比べ、圧倒的に数が多い。


「戦列艦ベシアル被弾、轟沈!!戦列艦ブ―デッヒ被弾、轟沈、戦列艦パケラ被弾、轟沈!!」


「戦列艦オシア、ワイバーンロードの火炎弾により被弾、火災発生!!!」


 悲劇的な報告が続く。


「ち・・畜生!!畜生!!!!」


 海軍長ボルドは燃え盛るアルタラス王国軍の主力海軍を見ながら、ワナワナと震える。握り締めた拳からは、血がしたたる。

 敵艦隊の攻撃可能艦の数は増え続け、砲弾数の着弾も徐々に増え、猛烈な数となり、戦場は凄惨を極める。

 

「あっ!!!!!」


 ドーーン


 海軍長ボルドの意識は、飛んできた砲弾により、強制的に終了した。



「敵、艦隊全滅しました」


「我が方の損害は?」


「旗艦シラントに10発ほど、敵の爆裂魔法の付与された矢が着弾しましたが、対魔弾鉄鋼式装甲により、ほとんど跳ね返したため、シラントは小破です。人的被害としては、シラントに乗船していた従軍記者が、着弾に驚いて足を捻って捻挫しています。それ以外は人員装備以上なし」


「竜騎士隊の被害は?」


「被害なし」


 第3文明圏最強の国、列強パーパルディア皇国軍は、アルタラス王国海軍を撃破し、アルタラス王国 首都ル・ブリアスを落とすため、揚陸地点のあるル・ブリアス北側約40km地点へ向かった。



 アルタラス王国首都 ル・ブリアス 北側約40km地点


 海岸と荒野が広がるこの場所は、人が隠れる場所は何処にもなく、水も出ず、魔石鉱山も無いため、人々に放棄された土地である。

 しかし、海岸線は広く、揚陸するには適していた。

 パーパルディア皇国軍は、入念なワイバーンロードの上空偵察の後、さしたる苦労も無く、同場所に橋頭堡を確保、野営陣地を構築した。


 アルタラス王国 王都

 王ターラ14世は、出陣の準備をしていた。

 アルタラス王国海軍はすでに無く、上陸を許してしまった。魔通信が途切れるまでの内容を精査した結果、さしたる損害も与えられずに全滅してしまったようだ。

 王国のために殉職してしまった兵たちのために祈りをささげる。

 家族もいただろう。親の介護を抱えた者もいただろう。婚約者がいた者もいただろう。

しかし、王国のために殉じた。

 王は思う。

 今回の敵を退けた暁には、殉じた兵たちの家族のために何かしてやらなければ・・・。

 しかし、強大な敵はほぼ無傷で王都の北側に迫っている。

 列強が敵に回っているため、味方してくる国はいない。

 王は、必勝の決意を固めるのであった。




 アルタラス王国軍その数約2万


王軍は、王都ル・ブリアスの北方約10km地点に展開していた。

軍事目標は、王都北方約40km地点に橋頭堡を確保しているパーパルディア皇国軍陸戦部隊約3千を滅する事にある。

 陸戦隊約3千に対し、2万もの超大軍を準備する。

 通常であれば、オーバーキルである。圧倒的な戦力差の前では、少々の戦略の差など大局に影響は無い。しかも、遮蔽物の少ない荒野に敵は布陣している。

 相手が通常国であれば、勝ったも同然である。

 しかし、相手はこの世界に5カ国しかいない列強である。


「今回は勝つだろうが、油断は出来ないな・・・・。」


 アルタラス王国、国王ターラ14世は決意を固めるのだった。



 パーパルディア皇国軍 陸戦隊

 皇軍は海岸線沿いを南に侵攻していた。

3000名もの精鋭部隊、前方に地竜と呼ばれる像の2倍近くの大きさの竜が32頭、パーパルディア皇国にしか住まないと言われる竜である。

昔、皇国の拡大期、この地竜を操ることによって戦略的な運用が出来るようになった。矢はもちろん、バリスタさえも通さない硬い鱗を持つ地竜の登場により、皇国の陸軍は他国を圧倒し始める。

皇国が圧倒的国力を持ち、文明3大流のうち、ハイエルフを素とする第3文明圏の頂点に登り、列強と呼ばれるようになったのはこの地竜の運用があってこそだ。

ワイバーンほどの機動力は無いが、それを上回るほどの硬い鱗を持ち、射程距離は短いが、拡散し、効果範囲の導力火炎放射を行い、何よりも地上のその場所に長い間居座る事ができる。

ワイバーンでは、そこに居座る事ができないため、いわゆる制地権を確保するには地竜をおいて他にない。

地竜~像の2倍程度の大きさの体を持ち、全体的に丸く、亀のように三角の頭が出ている。

又、パーパルディア皇国は人間で運べる程度の大きさの炸裂式砲弾の入った大砲を配備している。

馬に引かせるタイプの大砲も配備している。

歩兵にはプリントロック式のマスケット銃が支給され、球形の弾を放つ。

上空には竜母から発艦したワイバーンロードが舞い、進路上の敵情報を地上に送る。


「敵は約2万もの大軍、アルタラス王国の主力です」


「2万か・・。国力に対して随分と頑張ったものだな」


「はい・・・。しかし、これを破ると、アルタラスは皇国の州となります」


「ふふふ・・・責任は重いな」


 陸戦隊長バフラムは不適な笑みを浮かべた。




 アルタラス王国 ルバイル平野

 草1本生えていないルバイル平野、遠くまで見渡せるこの荒野でアルタラス王国軍2万とパーパルディア皇国軍陸戦隊3千が距離約2km離れて向きあう。

 国王ターラ14世は必勝の信念を持って吼える。


「全軍突撃!!!パーパルディア皇国の伸びすぎた鼻をへし折ってやれ!!」


 ウォォォォォォォ!!!!!!!

 土煙があがり、アルタラス王国の槍、弓を持った騎兵隊が先陣をきる。

 その時だった。


 ヒュルルルルルルルルル・・・・・・

 ドンドンドンドンドンドン

 味方の陣で爆発が起こる。


「なっ!!何だ!!!!!」


「まさか、魔導砲か!!!固定砲や船のみではなく、人が運べるまでに軽量小型化したというのか!!?」

 

 爆発のあった近くの兵は10人単位でなぎ倒される。

 しかし、爆発の間を縫うようにアルタラス王国兵は皇軍に向かって進む。

 人海戦術!!!!!!!

 皇軍との距離をつめる。

 しかし、それを阻むように、ワイバーンロードによる上空からの導力火炎弾の嵐が吹き荒れる。

 度重なる爆発も、アルタラス王国軍の圧倒的な人海戦術に対し、焼け石に水だった。

 導力火炎弾によって、焼かれる兵、しかし面制圧は出来ないため、弾の当たった箇所の兵が倒れるのみである。


 ウオォォォォォォォ!!!!!!


 凄まじい土煙をあげ、アルタラス王国軍はパーパルディア皇国軍に迫る

 アルタラス王国軍の前方には、横一列にならんだ地竜の姿が見える。

 大きい・・・。

 しかし、あるのはたったの32頭、竜と竜の間の間隔も50m近くあり、大きい。間を抜ければ問題なさそうだ。


「数で圧倒している!!踏みつぶせ!!!」


 騎兵は弓を持ち、地竜にねらいをつける。


「大きい的だな・・・・。くらえぇぇぇぇ!!!!」


 パシュパシュパシュ!!!


 風を切り、弓は地竜に向かい飛んでいく。


 カキン!!カキン!!!カキン!!!!!


 当たった弓のすべては、地竜の硬い鱗に跳ね返される。


「ちっ!!!では、地竜の間を抜け、後方の敵に突っ込むぞ!!いけぇぇぇぇぇぇ!!!」


 地竜と地竜の間は50m近く離れている。密度は無いに等しい。

 間を抜ければ、約300m後方に敵の部隊がいる。無意味な見かけだおしの地竜は無視し、敵を倒す!!

 軍は地竜に向かって突撃する。


 ウオォォォォォォォ!!!!!!


 その時だった

 横1列にならんだ地竜の口内が光始める。


「まさかっ!!!導力火炎弾か!!!」


 横1列に等間隔に並んだ地竜、射程距離は短いが面制圧が可能な導力火炎放射を発射した。

 火炎は口から拡散し、広範囲に地面と敵を焼く。

 地竜は首を振りながら、攻撃範囲をさらに広げる。

 アルタラス王国軍は地竜の火炎放射の中に突っ込む形となった。


 グアァァァァァァ!!!!!!


 火だるまとなって、転げまわる兵と馬、火炎の制圧範囲が広すぎるため、アルタラス王国軍は一時進軍を停止する。

 地竜は少しづつ進みながら、火炎をばら撒き続ける。

 後方の軍によりすぐには下がれない前方の軍は、どんどん焼かれていく。

 しかし、火炎放射前に竜を抜けた騎兵が300ほどいた。

 騎兵はパーパルディア皇国軍に迫る。


 パパパパパパパパーーン


 敵の歩兵たちの陣から、白い煙が上がる。

 騎兵たちがバタバタ倒れる。


「な・・・何が起こった!!!!」

 

 パパパパパーーン


 さらなる攻撃、攻撃は続き、地竜の間を抜けた騎兵たちは、歩兵のマスケット銃の一斉射撃により、全滅した。

 アルタラス王国軍の進軍は完全に停止する。

 そこにさらなる悲劇が起こる。

 王国軍陣地の中で、猛烈な爆発が連続して起こる。


「まさか!!!!」


 王は海の方角を見る。

 パーパルディア皇国の砲艦約100隻が陸地に向け、陸戦隊の支援のため、アルタラス王国軍に艦砲射撃を開始する。

 100門級戦列艦を含む砲艦100隻による艦砲射撃は、アルタラス王国軍の展開する陣地に砲弾の雨を降らせる。

 同攻撃は面制圧射撃となり、アルタラス王国軍は総崩れとなった。


 王は、戦死、アルタラス王国はパーパルディア皇国の手に落ちる事となる。


 鉱山の掘り出しのため、利用価値のある民の大半は助かったが、王族は一族郎党、親戚縁者すべて串刺しになり、王城前にさらされるという悲惨な刑に処される。


 

 アルタラス王国 王女ルミエスは、王国の無事を祈りながら、商船にゆられていた。商船は南海海流にのり、ロデニウス大陸のクワ・トイネ公国の沖合いまで流されてきていた。

 商船は、運良く日の丸国旗を掲げた白い船から臨検を受け、食料のつきかけていた商船乗組員は海上保安庁に保護され、王女ルミエスも日本に保護を求めることとなる。




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― 新着の感想 ―
常識的に考えて、わざわざ30.5㎝なんていう中途半端な口径を採用するわけがないでしょ。なんでこの星でもメートル法とヤーポン法が混在していることが前提なの?そもそもメートル法が前提なのも違和感だけど。 …
とりあえず、王女さんが日本に保護されて良かった。 良かったけど、亡国の姫なので取扱い注意。 某党首とかが姫さん利用して、戦争(表向きは領土奪還支援)起こす提案しそう。
[一言] 「軍事を増強」←「軍備」の方がしっくりくるのですが。
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