世界の防衛線3
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「それでは、会議を始めます」
菱形の卓上に各艦長および軍幹部、作戦参謀が着座する。
後ろの円形状の机には中堅幹部が並んだ。
「まずは新飛空艦隊司令長官ターコルイズ様から挨拶をしていただきます」
各人が直立不動となって、ターコルイズを見る。
彼が手で合図をすると、一斉に着席した。
旧飛空艦隊長シエドロンは、日本国の幻惑魔法にかかった可能性があるとされ、軍王ミネートの力が働き、司令を外されていた。
眉毛が太く、がっちりとした体型のターコルイズはゆっくりと話す。
「諸君、栄えあるクルセイリース大聖王国はこれより新世界の開拓に乗り出す。
圧倒的なる技術と富を持つ我がクルセイリース大聖王国によって支配される国々の民は生活水準が上がる。
支配されし国の民達に幸せをもたらす事が出来る。
圧倒的なる軍事力をもって、支配領域を拡大し、新世界を統合して永遠の繁栄を築く、その第1撃目に我らは選ばれた。
我らが名は歴史に大きく刻まれるであろう。
今回の攻略対象国はシルカーク王国と呼ばれる国だ。
我が国の主戦力たる飛空艦隊の半数が投入され、その数は100隻を超える。
これほどの大戦力が投入されれば、鎧袖一触、相手にもならん。
それでは諸君、新世界開拓を始めよう!!」
『おぉぉぉぉぉっぉぉ』
熱気をもって会議が始まった。
「しかし、今回すさまじい戦力の投入ですな、過去1回戦にこれほどまでの大戦力を投入した事がありましょうか……」
新世界開拓軍飛空艦隊旗艦 100門級飛空戦艦ダルイアの艦長、タンソーが感想を述べる。
「それほど国の期待が大きいという事だ。
100隻……実に王国所有艦の半数というすさまじい数だ。
シルカーク王国の国力は低いが、新世界の東部の雄たる列強パーパルディア皇国が出てくる可能性が高い。
また……まあこれは幻惑魔法にかけられた可能性が高く、強さも怪しいところだが、日本国という強国が出てくる事も想定している。
日本国は我が国の旧式飛空艦のようなものを運用していたという目撃情報もあり、彼らが本当に強かった場合をも想定した大艦隊だ」
「過剰とも言える戦力投入ですが、これは軍王ミネート様のご指示でしょうか?」
「そうだ」
「微かな懸念すらも、大きく想定して事を動かす。さすがミネート様ですね」
これより大戦争が行われ、大艦隊が衝突する事を前提に話が進む。
軍外交官カムーラは苦笑いしながら手を上げた。
「皆様、おそらく99.9%以上の確率で我が国と新世界は衝突するでしょう。
しかし微かな可能性として、シルカーク王国が外交で属国となる可能性もございます」
ターコルイズ司令は豪快に笑う。
「おお、そうであったそうであった。
そろそろ期限の2ヶ月が来るのであったな。
まあ衝突回避の可能性は限りなく低いが……外交が失敗した場合、飛空艦で飛び立ったらすぐに通信を送れよ。出撃準備は整えておくのでな」
「はっ!!もちろんすぐにご報告いたします」
「カムーラ、もうすぐにシルカークへ行って良いぞ」
「では、私は先にシルカークへ意思確認のために行って参ります」
軍外交のカムーラは退室してシルカークへ向かう。
侵攻会議は進み、滞りなく終了した。
◆◆◆
シルカーク王国 王都タカク サルカ城
小高い丘に作られたサルカ城、2重防壁に囲まれ、鎧を着た兵達が走り回る。
まもなく訪れる可能性のある『戦争』に、兵達は緊張感をもって準備を進める。
同城の来賓室、同部屋の窓から空飛ぶ船が見えた。
「皆様、クルセイリース聖王国が来ました。
あれが彼らの飛空艦です」
シルカーク王国外務担当のトップ、外務郷カルクは来賓室で、事前に座っていた者達に説明する。
当初、砲艦外交で従属を迫られ、2ヶ月の猶予を言い渡された。
相手国は日本国のヘリコプターよりも大きな乗り物でやってきた。
高度文明を持つ事は明らかであり、それほどの文明を有しているにも関わらず、どの文明圏にも属していなかった。
小国たるシルカーク王国はこのままでは蹂躙されてしまう。
たったの2ヶ月の間、彼は愛する国を守るために奔走する。
中央世界へ圏外文明国侵攻を訴え、神聖ミリシアル帝国が動き、日本国が重い腰を上げる事となった。
日本国……恐怖のグラ・バルカス帝国大艦隊を葬り、ムー大陸から帝国陸軍をたたき出した国、カルクは日本国の自衛隊派遣の決定を聞いた瞬間、国が救われたと歓喜し、涙を流した。
今、当初は恐怖で迎えたクルセイリースの大使を、今は余裕をもって出迎える事が出来る。
彼はとてつもなく長く感じた2ヶ月を振り返りながら、来賓室の者達を見渡す。
フカフカのソファーには、
○ 日本国外務省 朝田
○ 海上自衛隊第4護衛隊群 海将補 平田
○ 陸上自衛隊シルカーク王国派遣混成団長 大内田
○ パーパルディア皇国対圏外文明国防衛艦隊司令長官バイア
○ ワイバーンオーバーロード竜騎士団長 ハムート
他、防衛の要となる……我が国を救うであろう者達がいる。
本来であれば、シルカーク王国のみで相手に対応するところではあるが、未知なる国の砲艦外交という事もあり、連合国で対応する事としていた。
飛空艦が練兵場に着陸する。
部下を引き連れ、軍外交官のカムーラはサルカ城へ向かうのだった。
◆◆◆
サルカ城 迎賓室
会議参加者達は、迎賓室へ移動し、会議が始まる。
「これより、シルカーク王国の意思決定に関する会議を開催します」
司会の挨拶により、会議が始まる。
クルセイリース大聖王国の軍外交カムーラは会議相手の多さに方眉をつり上げた。
「ふん……弱者連合か」
朝田は今まで何度も体験してきたタイプの相手であり、うんざりする。
一方高圧的態度のとられた事の無いパーパルディア皇国軍の者達はあからさまに顔に不快感が出る。
「まあ良い」
カムーラはかまわずに続ける。
「で、シルカーク王国の代表よ……。
我らが栄光の支配を受け入れ、国繁栄する道を選ぶか?
それとも、愚かにも反抗し、国滅ぶ道を選ぶのか。
聞かせてもらおう」
カルクはカムーラを睨みつけてゆっくりと話す。
「我らが答えは決まっている」
沈黙……。
「ほう、では聞こう」
「我が国、シルカーク王国は無礼で品が無い愚か者による支配を受け入れるつもりは全く無い!!!
尻尾を巻いて帰られよ!!!!」
カルクは声を荒げる。
迫力のある声に、場に緊張が走る。
「バカめ!!レベルの低い北西世界の弱小国がどれだけ徒党を組もうと、我がクルセイリース大聖王国の歩みを止められるものではない!!!
おまえ達の行動は全く合理性が無い。
自分たちの無知が国民を滅ぼす事になるという事を理解しているのかっ!!」
カムーラも語気が強まる。
彼は日本国とパーパルディア皇国の使者を見渡した。
「おまえ達の決定も、我が国の力を知らない無知が故による行動だ。
シルカーク王国に協力するという事は、我がクルセイリース大聖王国にたてつくという事だぞっ!!!
我らが陸兵は魔力増幅機により、1人1人が強力な魔法を使える力を有する。
圧倒的な航空戦力たる大飛空艦隊がおまえ達の首都の空をも埋め尽くす事になる。
それを知っての決定か!!」
カムーラの言に我慢出来なくなったパーパルディアの将が吠えた。
「解ってないのは貴様達の方だっ!!この蛮族があっ!!」
場が静まる。
「おまえ達は知らなさすぎる!!
我らが世界は3つの大文明圏が存在する。
文明圏は文明圏外国家に比べ、遙かに繁栄しているのだっ!!
その文明圏の中でも列強国は別格。比較にならないほど繁栄している。
貴様が今いる国、シルカーク王国は文明圏外国の中でも後進国だ」
彼は続ける。
「そしておまえの前にいるのは、第3文明圏の影響範囲の国、5大列強国の内の2国、パーパルディア皇国と日本国だぞっ!!
我らが第3文明圏勢力圏は、異界の大帝国たるグラ・バルカス帝国の大艦隊侵攻……。
中央世界の古代兵器でも止められなかった圧倒的艦隊の侵攻をも跳ね返すほどに強力なのだっ!!
おまえ達程度の……魔導戦列艦を空に飛ばした程度の戦力で、我らを支配出来るものではないわっ!!
この無知なる蛮族があっ!!」
朝田は呆れる。
この軍人は嘘は言っていないが……。
○ 列強国は別格、確かにそのとおりである。
レイフォルは中等国となり、日本は列強入りしたが、パーパルディアが列強というのは 微妙なところだ。
ただ、パーパルディア国内では5大列強国として教えられている
○ グラ・バルカス帝国の大侵攻を止めたのは日本国である。
しかし、日本国の本格的衝突の前に、ワイバーンや戦列艦による散発的攻撃が行われて いた。
効果はほとんど無く、パーパルディア皇国は本件に参戦していなかったが、第3文明圏 勢力圏の国という意味において嘘ではない。
「日本国の方々も、彼らに何か言う事があるのではないですか?」
パーパルディアの将は話を朝田にふる。
カムーラは朝田に目を向けた。
「えーおほん……では」
朝田はクルセイリース大聖王国の大使へ向く。
「軍事的圧力をかけ、シルカーク王国を一方的に攻撃するという行いは、シルカーク王国のみではなく、周辺国家に対して多大な影響を与え、周辺地域を不安定化させる行為です。
あなた方にはシルカーク王国を侵攻し、さらに他国をも攻め落とさんとする、領土拡大の野心がはっきりと見える」
朝田は続ける。
「日本国としましては、このような行為は誠に遺憾であると言わざるを得ません」
カムーラは怪訝な顔をし、パーパルディアの将は目を輝かせる。
「おおぉ……誠に遺憾……誠に、がついたぞ」
パーパルディアの将は小さくつぶやいた。
「はん!笑わせてくれるわ!!
誠に遺憾だと?その意思表明をしたからといって、現実が何か変わるのか?
低文明国の意思表明など、我らには何の意味も無いわ、この弱小国がっ!!
よろしい、止められるものなら止めてみるがいい!」
パーパルディア皇国の将が、カムーラの言にたまらず割って入る。
「お……おまえは自分たちが何を言っているのか解っているのか?
日本国が誠に遺憾であると申しておるのだぞ!
軍だけではなく、国ごと消されてしまうぞっ!!」
日本国による遺憾の意を表明された後、軍が完膚なきまでに叩き潰された経験のあるパーパルディア皇国はカムーラが超大国にたてついているようにしか見えない。
「いや……我らもそう見えていたのか……」
「先ほどから何を訳のわからない事を言ってる!
フン、まあ良い。
お前たちに教えておいてやろう、どうあがいても変わることの無い未来……絶望的な未来をな!!
我らは漂流物からお前たちの文明レベルをすでに特定している。
列強パーパルディア皇国よ、おまえ達の主力兵器、ワイバーンロードは、我が国の飛空艦隊の前では無力に近いぞ。
すでにこの時点で制空権は我々にあるも同然なのだ。
上空より打ち下ろされる魔導砲をお前たちは止める事が出来まい。
愚かなるパーパルディア、そして日本国よ、シルカーク王国が落ち、我が国の支配領域が広がった暁には貴様らの国とも衝突する時が来るだろう。
今回の会議において、我らが指示に従わなかったという事はしっかりと記録しておく。
その時が来れば、お前たちは相手の力も見抜けずに我が国にたてついた事を大きく後悔するだろう。
本日の会議内容は、自分の国を大きく損なうという事を知れ!!
これより、クルセイリース大聖王国はシルカーク王国に対して宣戦を布告する。
シルカーク王国半径500kmの空域および海域は立ち入り禁止区域に指定、航行するすべての者は標的になると思え!!
パーパルディア、そして日本国よ、邪魔立てする艦隊は我らがすべて消滅させる
す・べ・て・な」
カムーラはイヤらしく笑った。
シルカーク外務郷カルクはカムーラを睨みつけた。
「無礼者よ、さっさと帰るが良い!!!」
会談は破談となる。
この会議をもって、外交での戦争回避の眼は絶たれた。
国と国の衝突は多くの悲劇を生む。
彼らは衝突へと運命の舵を切るのだった。
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