初めての新世界3
遅くなりました
なかなかパソコンに向かう暇がとれなくてすいません
「これより、皆様には日本国の軍事力について、簡単な説明を行います」
クルセイリース大聖王国調査団は、ガハラ神国との会談後、富士演習場に来ていた。
この場所への移動だけでも日本の国力には驚かされる事ばかりだった。
新幹線と呼ばれる大規模高速移動手段は時速にして270kmもの高速で安定して駆け抜ける。
しかも室内は快適な温度に保たれていた。
滑るように進んで揺れも無い。
魔法技師テタルと、魔法武具士アニーナは終始脂汗をかいていたようだ。
超高層ビル群を抜けて田舎を走り始める。
これほど遠くまで大建造物群が続いていた事にも驚く。
「もうこれ以上は驚かんぞ!!」
今まで日本の国力に驚き続けていた。
魔戦騎士団長アバドンは自分に言い聞かすようにつぶやいた。
今から軍事部門の紹介が行われるという事、自国の騎士団が日本国軍にどの程度優位性があるのか、兵の強さはどの程度かを見極めようとする。
広い敷地、眼前には雲の上まで伸びるとてつもなく高い山がそびえ立つ。
「左をご覧下さい」
ゴゴゴゴゴゴゴ……
地響きかと間違うほどの音と共に、3両もの種類の異なる金属の巨大な箱のようなものが、高速で眼前に現れた。
「な……何だ?」
この箱が起こす地面の震動が圧倒的重みを、質量を物語る。
「て……鉄の塊か!?」
騎士団には無い大質量の物体。
あれがもしも高速で突っ込んできたら、我が方の爆裂魔法でも壊れないかもしれない。
「これは……脅威だな」
きっとこれは正面突破戦力なのだろう。
『これより、あちらの的を狙います』
「え?」
説明者が指示する先、遙か2kmくらいはあるだろうか。
そこには四角い板があった。
「何を言っている?あんな所まで陸上戦力による攻撃が届くはずが無い!
近づく所から始めるのか?」
アバドンが横に立つシエドロンに話しかけた。
「いや……あれは砲ではないのか?」
戦車から突き出る棒状の物体をシエドロンは指す。
「まさか……」
これほどスマートでコンパクトにまとまった砲は今まで見たことが無い。
「それにしても、遠すぎる。
とても届くとは思えんが……。
仮に届いたとしても、いったい何発打ち込むつもりなのか」
思考は巡る。
「てーーっ!!!」
ドウン!!!
陸上自衛隊10式戦車は2km先の的に向かって撃つ。
日本製鋼所製44口径120mm滑腔砲は、従来のライフル砲よりも遙かに速く飛翔し、2km先の的に向かう。
信じられないことに、直線状に飛翔した弾は的の中心を打ち抜いた。
「!!!!」
絶句……。
アバドンはかっと目を見開く。
「続けて、スラローム射撃を実施します」
戦車は走り出し、スラロームを行う。
走行しながら次々と砲を撃ち出した。
「こ……こんな事が出来るはずが!!」
動きながら射撃しているにも関わらず、次々と的の中心部を破壊していく。
不安定な土壌、動きながらの射撃、遠い的、当たるはずが無いのに当てる。
「あんなの人間業では無いぞ!!」
FCSによって射撃管制され、相手が移動していても砲は未来位置に飛んでいく。
砲安定化装置によって砲身は揺れる地面でも安定して敵を向く。
戦車はテクノロジーの塊であり、文字通り人間業では無かった。
弾は1発1発が、騎士団の組織級魔法よりも遙かに威力が高い。
射程、威力、おそらく防御力さえもすこぶる高いだろう。
彼は圧倒的戦力差を感じざるを得なかった。
『次に、航空自衛隊F-15による機動飛行を行います。
東の空をご覧下さい』
アナウンスが流れ、東の空から矢尻のような物体が3機飛んでくる。
信じられない速度で侵入してきたそれは、調査団の前で機首を上げる。
雷鳴のような轟きが空気を振るわせ、耳では無く体全体で轟音を感じた。
機首を上に向けたそれは、見たことも無い上昇力で空に向かい、すぐに視界から消えた。
「シエドロン飛空艦隊長、大丈夫ですか?」
ニースはシエドロンの様子がおかしく、具合でも悪いのかと思って声をかける。
シエドロンは小刻みに震え、顔からは脂汗が滴り、酷く具合が悪そうだった。
「あ…あ…ありえん!!ありえんんん!!」
「どうされました?」
ニースが聞くと、彼は日本国の者には聞こえないほど小さい声で話し始めた。
「あれは速すぎる。あんなのは対ワイバーン用の連射式魔光砲や、対空陣でも全く効果が期待できない。
はっきり言って当たらんぞ。
我が飛空艦隊の装備では制空権が確保出来ない。
この差は練度で埋められるレベルを遙かに超えている!!」
打ちのめされるシエドロン。
この日、様々な軍事技術の差を見せつけられ続け、調査団の一日は終了した。
◆◆◆
夜~ 帝国ホテル
クルセイリース大聖王国調査団は会議を行っていた。
「1つだけ、確定した事があります」
ミラは皆を向く。
「日本国は決して敵に回してはいけない。
異論ある者はいますか?」
王国の要、主戦力を率いる飛空艦隊長シエドロン、陸戦の主力たる魔戦騎士団長アバドン、そして各種技術を支える魔法技師テタル、魔法武具士アニーナ。
武を揃えるための力、国政経済学者イルナ、誰一人として異論がある者はいなかった。
シエドロンが神妙な面持ちで話し始める。
「かつて、この周辺を治めていた列強国、パーパルディア皇国であれば、規模は向こうが大きいにしても、運用で戦いを有利に進める事が出来ただろう。
しかし日本国は別格だ。
いや、この言葉は適切では無かった。格が違いすぎる。
聞けば、その列強パーパルディア皇国でさえ、日本軍は戦死者を1人も出さずに圧勝したというではないか。
彼等と戦う事は、亡国への道を歩む事だ。
反対する訳が無い」
国の中核戦力、飛空艦隊を知り尽くしたシエドロンの言は重い。
皆一様に黙った。
様々な意見交換が行われたが、日本国を敵に回してはならないという1点は、皆一致するのであった。
彼等調査団は衝撃を受けて帰国するのだった。
◆◆◆
クルセイリース大聖王国首都 セイダー 夜
ロウソクの炎が部屋を微かに照らす。
揺らめく炎はテーブルを挟んで2つの影を写し出していた。
金色の正装を身に纏った短髪の初老の男が上座に座る。
男の前にあるテーブルを挟んだ向かい側に、白色のローブを着た男が座っていた。
「軍王ミネート様、この報告書をどうなさるおつもりで?」
テーブルの上には1冊の報告書が置かれていた。
しかも、王家の印が押印されているため、極めて重要視しなければならない公文書だった。
「日本国とは敵対するな、日本国は強すぎる……か。
しかし内容は荒唐無稽だ」
ミネートは不機嫌そうに報告書の評価を行う。
国のために、国富むために動こうとしているのに、荒唐無稽な報告書を入れて阻害しようとする。
彼にとって、これを書いた者が、仕事の邪魔をしているようにしか思えなかった。
それはつまり、国民が富む事への邪魔であり、国民の敵に思えてならない。
「こんな物は、幻惑魔法をかけられたに違いありません。
しかし……」
「そう、王家の印のある公文書を軽視する訳にはいかん。
北西には多くの可能性と、世界が広がっている。
北西新世界をあきらめる訳にはいかないのだ。
頭の片隅に入れつつ、考えるとしよう」
「では、シルカーク王国は?」
「簡単な事、聖王子前会議で否定すれば良い。
そもそも当初の報告書では、日本国にも飛空艦はあるが、小さくて武装は貧弱であったとの報告が上がっている。
その飛空艦そのものが、彼等にとっても旧式だった可能性もあるが、旧式と新型でそこまで戦闘力が変わるとは思えん。
それに……。」
「はい、万が一、いや億が一、日本国が飛空艦隊を破ったとしても、我が国には『あれ』があります」
「黒月族の対ラヴァーナル用決戦兵器、キル・ラヴァーナル……か。
あれを見つけた時は、うれしさに震えたぞ。
貴殿の占いは凄まじいな」
「軍王様にお褒めの言葉を頂けるなど、光栄の至り」
「キル・ラヴァーナルがあれば、地上を制圧される事は絶対に無い」
「はい、その他にも『あれ』がありますしね」
「それにしても、我が国に黒月族の遺産があるとは……」
軍王は棚から1冊の本を取り出してパラパラとめくった。
伝承にはこうある
黒月族……遙か古代、古の魔法帝国に立ち向かった少数民族。
ラヴァーナル帝国とは異なる独自の魔法技術形態を持ち、少数の人数で大きな軍事力を動かす術に長ける。
性格は民族のためならば、多種族をあっさりと殺す、極悪非道であった。
例示として、同族の擦り傷を癒やす為に他民族の命が必要だとしたら、何万何百万人を殺傷したとしても、何とも思わない。
一説によれば、何処に住んでいるのか全く掴めず、いつしか空に見えない黒い月があり、そこに住んでいるのだと世界は思い始める。
いつしか彼等は黒月族と呼ばれるようになった。
ラヴァーナル帝国は黒月族の首に大きな賞金をかけ、集落を見つけたら即座に軍を派遣して殲滅していった。
数百人が他民族の都市に紛れていれば、都市ごとコア魔法で消滅させる等、徹底した殲滅戦を行った。
黒月族のラヴァーナル帝国に対する憎悪は凄まじく、たった1人で動かすことの出来る超巨大決戦兵器を世界の各地に残す事となる。
現在、黒月族が何処へ行ったのか、知る者はいないが、まれに遺産が世界の何処かで発見される事があった。
「軍王様、我らの切り札は、キル・ラヴァーナルだけではありません」
「聖王直轄軍は戦力には数えられんぞ」
「いえ、あの魔法の事でございます」
「あれか、確かにな……しかしお主が国家級殲滅魔法を知っているとは……。
まあ、我らの負けは絶対に無い!!!
クワーッハッハッハッハーーッ!!!」
国を動かす者達は大いに笑うのだった。
ブログも今度の日曜までのいずれか時間のある時に更新します




